口腔機能検査のやり方と7項目の基準値・算定の完全解説

口腔機能検査のやり方を知りたい歯科従事者向けに、7つの検査項目・基準値・保険算定の注意点を徹底解説。TCI・舌圧・パタカ・グルコセンサーの実施手順を押さえて、明日からの臨床に活かせる情報をまとめました。あなたの医院では検査の落とし穴を見逃していませんか?

口腔機能検査のやり方・7項目の基準値と保険算定を完全解説

グミ検査の直前に飴を食べると、正常な患者も「咀嚼機能低下」と誤判定されます。


📋 この記事の3ポイント要約
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7項目中3項目以上で診断

口腔機能低下症は「口腔不潔・口腔乾燥・咬合力低下・舌口唇運動機能低下・低舌圧・咀嚼機能低下・嚥下機能低下」の7項目を検査し、3つ以上に該当した場合に診断される疾患です。

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検査前の糖分摂取に要注意

咀嚼機能検査(グルコセンサー)の直前にショ糖を含んだ飴や甘い飲料を摂取していた場合、3回以上の洗口が必須。見落とすと測定値が狂い、誤った診断・算定ミスにつながります。

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50歳未満でも検査・算定は可能

「口腔機能検査は50歳以上のみ」と思い込んでいる歯科従事者も多いですが、年齢に関わらず口腔機能低下が疑われる患者に実施・算定できます。算定できる管理料の種類が年齢によって異なる点を把握しましょう。


口腔機能検査(口腔機能精密検査)のやり方と全体の流れ


口腔機能検査とは、「口腔機能低下症」の診断を目的として実施する7項目の精密検査の総称です。2018年に保険収載されて以降、算定範囲の拡大や管理料の新設が続いており、歯科従事者にとって基本的な知識として押さえておくべき内容になっています。


まず全体の流れを理解しましょう。患者に「食べこぼしが増えた」「滑舌が悪くなった」「食事中にむせる」といった口腔機能低下の兆候が見られた場合、口腔機能低下症が疑われる患者として精密検査の対象になります。「疑い」の段階では傷病名を「口腔機能低下症疑い」として登録します。


7項目すべての検査を実施したのち、3項目以上で低下が認められた場合に「口腔機能低下症」と診断されます。2項目以下の低下にとどまった場合は診断はつきませんが、口腔機能指導加算として予防的な管理が可能です。つまり、2項目以下でも対応は終わりではありません。


診断後は管理計画書を作成し、口腔機能管理料(60点/月)を軸に月1回の管理を継続します。口腔機能管理は歯科医師だけでなく、歯科医師の指示のもとに歯科衛生士も実施できます。チームアプローチが基本です。


検査項目 検査方法(主) 判定基準
①口腔衛生状態不良 TCI(視診) TCI 50%以上
②口腔乾燥 口腔水分計(ムーカス®) 27.0未満
③咬合力低下 デンタルプレスケールⅡ 500N未満
④舌口唇運動機能低下 オーラルディアドコキネシス パ・タ・カのいずれか6回/秒未満
⑤低舌圧 JMS舌圧測定器 30kPa未満
⑥咀嚼機能低下 グルコセンサーGS-ⅡN 100mg/dL未満
⑦嚥下機能低下 EAT-10(質問紙) 3点以上


参考:口腔機能低下症の検査項目・判定基準の詳細(日本老年歯科医学会ガイドライン準拠)
健康長寿ネット:オーラルフレイル・口腔機能低下症の診断(日本歯科大学 高橋賢晃 医長 執筆)


口腔機能検査①〜③のやり方:TCI・口腔乾燥・咬合力の評価手順

最初の3項目は「口腔環境」の評価です。機器を使わない視診・問診が中心で、比較的取り組みやすい項目です。


**① 口腔衛生状態不良(TCI:Tongue Coating Index)**


舌表面を9分割し、それぞれのエリアについて舌苔の付着程度を0・1・2の3段階で評価します。合計スコアが9点以上(TCI 50%以上)の場合に「口腔不潔」と判定します。視診で実施できるため機器は不要です。舌苔はただの汚れではなく、舌の運動機能低下に伴う自浄作用の低下を示すサインとして重要視されています。舌苔が白色〜黄褐色のこけ状に5エリア以上に広がっていれば、まず該当と考えて問題ありません。


**② 口腔乾燥**


口腔水分計「ムーカス®」を用いて、舌尖から10mm後方の舌背中央部の粘膜湿潤度を測定します。センサー部分を舌背部に押し当て、3回測定した中央値を記録します。27.0未満が口腔乾燥の判定基準です。機器がない場合の代替として「サクソンテスト」があり、医療用ガーゼを舌下部に置いて2分間咀嚼様運動をさせ、ガーゼに吸収された唾液重量が2.0g以下であれば口腔乾燥ありと判定します。唾液の減少は咀嚼時間の延長・味覚低下・食欲不振へ直結するため、見落とせない項目です。


**③ 咬合力低下**


デンタルプレスケールⅡ(感圧フィルム)と専用の咬合力分析ソフト「バイトフォースアナライザ」を使って、全歯列の咬合力を計測します。フィルターあり350N未満、フィルターなし500N未満で咬合力低下と判定します。機器がない場合は残存歯数で代替でき、動揺度Ⅲの歯・残根・ポンティックを除いた残存歯数が20本未満であれば低下と判定します。20本というのは、だいたい大人の歯の3分の2に相当するイメージです。義歯装着者は義歯を装着した状態で測定する点を忘れないようにしましょう。


口腔機能検査④〜⑤のやり方:パタカ検査(オーラルディアドコキネシス)と舌圧測定の実施手順

検査の4・5項目目は、舌や口唇の「動き・力」を定量的に評価します。どちらも患者の運動機能に直接関わる重要な指標です。


**④ 舌口唇運動機能低下(オーラルディアドコキネシス)**


「パ」「タ」「カ」の3音を、それぞれ5秒間でできるだけ速く繰り返し発音させ、1秒あたりの回数を算出します。パは口唇の動き、タは舌の前方部、カは舌の後方部の機能を反映しています。いずれか1つでも6回/秒未満であれば、舌口唇運動機能低下と判定します。


測定には「健口くんハンディ®(竹井機器工業)」などの自動計測器を使うと容易です。機器がない場合はペン打ち法や電卓法でも測定可能です。正常値の目安は「パ」6.4回/秒・「タ」6.1回/秒・「カ」5.7回/秒とされており、「カ」の基準が最も低い点は覚えておくと現場で役立ちます。


舌口唇運動機能の低下は、会話の明瞭度の低下や食塊形成の不具合につながります。誤嚥性肺炎の予防という観点からも、6回/秒という数字は見逃せません。


**⑤ 低舌圧**


JMS舌圧測定器(ジェイ・エム・エス社)を使って最大舌圧を計測します。舌圧プローブを口腔内に挿入し、硬質リング部を上下顎前歯で軽く挟んでから唇を閉じ、プローブ先端のバルーンを舌と口蓋で最大限に押しつぶします。30kPa未満が低舌圧の判定基準です。


30kPaというと少しわかりにくいですが、これは約300g/cm²に相当する力の目安です。舌圧が20kPa未満になると、常食の摂取が難しくなる可能性があることが研究で示されています(田中陽子ら, 2015)。つまり、30kPa未満はすでに「食事に支障が出るリスクゾーン入口」ということです。義歯を使っている患者は必ず義歯装着状態で測定します。


舌圧検査は施設基準の届出が不要で算定可能(140点/3ヵ月に1回)な点が大きなメリットです。まず舌圧測定器だけ揃えれば検査を始められます。


参考:舌圧・嚥下機能の関係について専門的な解説
日本老年歯科医学会:口腔機能低下症 保険診療における検査と診断(PDF)


口腔機能検査⑥〜⑦のやり方:グルコセンサーによる咀嚼検査とEAT-10嚥下スクリーニングの注意点

残り2項目は「咀嚼」と「嚥下」の統合的な機能を評価します。特に咀嚼検査は検査前の準備が正確な数値に直結するため、プロトコルの徹底が欠かせません。


**⑥ 咀嚼機能低下(グルコセンサーGS-ⅡN)**


グルコース含有グミゼリーを20秒間自由に咀嚼させ、その後コップの水を口に含んでから全てをメッシュ付きコップへ吐き出します。吐出水中のグルコース濃度をグルコセンサーで測定し、100mg/dL未満であれば咀嚼機能低下と判定します。


**現場で最も見落とされやすいのが、検査直前の糖分摂取問題です。** ショ糖を含んだ飴・甘い飲料・お茶菓子などを検査前に摂取していた場合、吐出水中のグルコース濃度が本来より高くなり、正常な咀嚼力を持つ患者でも基準値を超えてしまう可能性があります。このケースでは検査前に3回以上の洗口を行ってから測定します。また、誤飲リスクが高い患者やゼラチンアレルギーのある患者には実施できません。必ず問診で確認するプロセスを導入してください。


代替検査として「咀嚼能率スコア法」もあります。グミゼリーを30回咀嚼後に粉砕度をスコア表と比較し、スコア2以下を低下と判定します。機器不要で実施できる点がメリットです。


**⑦ 嚥下機能低下(EAT-10)**


EAT-10は10項目の質問で構成される自記式の嚥下スクリーニングツールです。各項目を0〜4の5段階で回答させ、合計点が3点以上であれば「嚥下機能低下あり」と判定します。EAT-10の特徴は、客観的な測定ではなく患者の主観的な評価であるため、QOLの評価にも活用できる点です。介入前後の比較指標としても有効です。


代替として「聖隷式嚥下質問紙」も使用できます。より重症を示す「A」の項目が1つ以上あれば低下と判定します。嚥下機能低下が疑われる場合は、専門医療機関への紹介も検討する必要があります。


咀嚼機能の代替検査法 方法の概要 判定基準
グルコース溶出法(主) グミを20秒噛んで吐出水のグルコースを測定 100mg/dL未満
咀嚼能率スコア法 グミを30回噛んで粉砕度を目視スコア評価 スコア2以下
カラーチェンジングガム法 ガムを2分噛んで色変化を比較 スコア3以下


口腔機能検査の保険算定:50歳未満・算定頻度・同時算定不可の組み合わせまとめ

口腔機能検査に関して、「どんな患者に」「何点で」「何ヶ月に1回」算定できるのかを正確に把握することは、医院の収益管理にも直結します。ここが曖昧なままだと、算定漏れや誤請求のリスクが生じます。


まず対象年齢についてです。「50歳以上の患者のみ対象」と思っている方がいますが、それは誤りです。50歳未満でも、歯の喪失・全身的な疾患・生活習慣などにより口腔機能の低下が疑われる場合は年齢に関わらず検査が実施・算定できます。ただし、診断後に算定できる管理料の種類が年齢によって異なります。50歳以上かつ検査項目に低下が認められた患者には「口腔機能管理料(60点/月)」が算定可能になります。


**主な保険算定点数(2024年改定対応)**


  • 🦷 舌圧検査:140点(3ヵ月に1回。施設基準の届出不要)
  • 🦷 咀嚼能力検査1(グルコセンサー):140点(3ヵ月に1回)
  • 🦷 咬合圧検査1(デンタルプレスケールⅡ):130点(3ヵ月に1回)
  • 🦷 口腔機能管理料:60点(毎月算定可)
  • 🦷 歯科口腔リハビリテーション料3:50点(月2回算定可)
  • 🦷 口腔機能指導加算(歯衛実地指導料):12点(月1回)


ここで特に注意が必要なのが「同時算定不可の組み合わせ」です。咬合圧検査1(デンタルプレスケールⅡ)と咀嚼能力検査1(グルコセンサー)は、同じ3ヵ月以内にいずれか1回しか算定できません。両方を同じ月に実施しても一方しか算定できないため、スケジュール管理が必要です。


また、管理計画書の作成と口腔機能管理料の算定には「歯科疾患管理料または歯科特定疾患療養管理料」の算定が前提になります。この前提要件を満たしていないと、口腔機能管理料だけを請求してしまうミスが発生します。これは算定誤りとして指導対象になる可能性もあるため、注意が必要です。


参考:令和6年度改定対応の算定フロー・管理料点数の詳細
株式会社ジーシー:口腔機能低下症の診断・保険算定・検査・訓練方法


検査結果に基づく口腔機能訓練のやり方と指導のポイント【歯科衛生士向け】

検査後の「管理・訓練」こそが、口腔機能低下症への対応の核心です。検査で終わらず、患者の機能改善につなげるための指導プロセスを整備することが求められます。


低下した項目に合わせてトレーニングを選択することが原則です。


**舌圧低下(低舌圧)への対応**


舌の筋力低下に対しては、舌抵抗訓練が有効です。「ペコぱんだ®(ジーシー)」などの舌圧訓練器を口蓋部に当て、舌で押しつぶす動作を繰り返すことで舌筋の筋力強化を図ります。押しつぶしてから1〜2秒キープする動作が基本です。


**舌口唇運動機能低下への対応**


パタカラ体操(「パパパ…」「タタタ…」「カカカ…」と連続発音する練習)が代表的なトレーニングです。発音速度や明瞭度の回復に加え、誤嚥予防のための口腔周囲筋のウォームアップとしても機能します。単純な動作に見えて、実は反復継続が重要です。


**咀嚼機能低下への対応**


奥歯でぐっと噛みしめた後、カチカチと軽く咬合を繰り返す「咀嚼トレーニング」が基本です。1日10回を目安に継続させます。食事の際に「柔らかいものばかり選ばない」「一口を大きく切りすぎない」「しっかり噛んでから飲み込む」という生活習慣への指導も並行して行います。


**口腔乾燥への対応**


唾液腺マッサージ(耳下腺・顎下腺舌下腺を刺激する手技)を指導します。市販の口腔保湿剤の活用や、就寝時のドライマウス対策も組み合わせると効果的です。


**嚥下機能低下への対応**


「嚥下おでこ体操」が代表的です。額に手を当ててお辞儀する動作と同時に飲み込む訓練で、舌骨上筋群を強化します。EAT-10のスコアが高い場合や3点未満でも主観的な嚥下困難を訴える患者は、摂食嚥下専門の医療機関(摂食嚥下関連医療資源マップで検索可能)への紹介も視野に入れてください。


管理内容はカルテへの記載が必須です。「口腔機能管理料」の算定に対応した管理内容と、「歯科口腔リハビリテーション料3」の算定に対応した指導内容を区別して記録することが求められます。内容が重複している場合は同時算定できないため、2つの算定が区別できるよう記載を分けることが実務上のポイントです。


参考:口腔機能管理料のカルテ記載例・訓練指導の詳細(東京歯科大学 上田貴之教授 監修)
ジーシー:口腔機能低下症の疑問に答えるQ&A 令和6年度診療報酬改定対応版(PDF)


十分なリサーチデータが集まりました。記事を作成します。




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