「歯科衛生士国家試験は合格率90%以上だから、一度くらい落ちても来年受ければ大丈夫」と思っていると、浪人した途端に合格率が40%台まで落ちて取り返しのつかない時間ロスになります。
「合格率90%以上の試験」という印象を持っている歯科医療従事者は多いですが、直近の数字はじわじわと低下傾向にあります。
日本歯科衛生士会が公表している公式データによると、第34回(令和7年・2025年)の合格率は91.0%でした。受験者数8,026人のうち合格者は7,300人、不合格者は726人です。前年の第33回(令和6年・2024年)が92.4%だったことと比べると、さらに1.4ポイント低下しており、過去10年間でもっとも低い合格率となっています。
10年前のピークを確認すると、第23回(平成26年)には97.1%という最高値を記録していました。それ以降は96%前後で推移していた時期もありましたが、第30回(令和3年)に93.3%まで下がり、直近2回は92.4%、91.0%と低下が続いています。つまり「90%超えが当然」という感覚は、データ上は依然正しいとはいえ、余裕の幅は着実に縮んでいるのが現実です。
注目すべき点は受験者数の増加です。第23回(平成26年)の受験者数は6,685人でしたが、第34回(令和7年)は8,026人と、約1,300人以上増えています。受験者の絶対数が増えれば、合格最低ラインギリギリの受験者層も厚くなりやすく、それが合格率の安定に影響している可能性があります。
合格率が高止まりしているとはいえ、その数字だけを見て安心するのは危険です。
参考リンク(日本歯科衛生士会・国家試験合格者数の公式データ)。
国家試験合格者・免許取得者数|公益社団法人 日本歯科衛生士会
試験の基本的な構造を正確に把握することが、対策の第一歩です。
歯科衛生士国家試験は、毎年3月の第1日曜日に全国各地で実施されます。2026年(令和8年)の第35回は3月1日(日)に実施され、合格発表は同年3月26日(木)の午後2時です。
試験は午前・午後の2部構成で、それぞれ150分(2時間30分)ずつ、計300分(5時間)かけて行われます。出題数は午前110問・午後110問の合計220問で、すべてマークシート方式の四肢択一または四肢択二形式です。合格基準は全問題の正答率60%以上、つまり220問中132問以上の正解が必要です(採点除外問題がある年は調整されます)。
出題科目は以下の9つです。
- 人体(歯・口腔を除く)の構造と機能
- 歯・口腔の構造と機能
- 疾病の成り立ち及び回復過程の促進
- 歯・口腔の健康と予防に関わる人間と社会の仕組み
- 歯科衛生士概論
- 臨床歯科医学
- 歯科予防処置論
- 歯科診療補助論
- 歯科保健指導論
「正答率60%で合格」という基準は、実は他の国家資格と比べてもかなり低い設定です。看護師国家試験でも正答率60%前後が目安ですが、医師国家試験は科目ごとの足切りがあり構造が異なります。歯科衛生士国家試験には科目別の足切りが一切ないため、苦手科目があっても他の科目で補うことができる点は、受験者にとって有利な特徴といえます。
これが基本です。
参考リンク(厚生労働省・第35回歯科衛生士国家試験の施行)。
歯科衛生士国家試験の施行|厚生労働省
「全国平均91%」という数字の裏には、大きな落とし穴があります。
新卒者(現役受験者)と既卒者(浪人・再受験者)では、合格率に40〜50ポイント以上の差が生じています。具体的な数字をあげると、新卒者の合格率は95%以上で推移しているのに対し、既卒者の合格率は50%を下回るのが実態です。さらに浪数が重なるほど合格率は下がり、2浪では52.7%、3浪では38.9%、5浪では9人に1人程度しか合格できないというデータもあります。
なぜここまで差が出るのでしょうか?
最大の理由は「学習習慣の断絶」です。養成学校在学中は、授業の進度に合わせて毎日一定量の知識をインプットする仕組みが自動的に機能しています。ところが卒業後は誰もスケジュールを管理してくれません。仕事をしながら勉強時間を確保するのは想像以上に難しく、自己流の学習が続くうちに苦手分野が放置されてしまいます。
また、一度落ちた受験者の中には「自分のどこが弱いのかわからない」という人が多く、同じ失敗を繰り返しやすい構造があります。加えて、試験問題の難化傾向も影響しています。第34回(2025年)の試験は、受験者からも「模試よりも難しかった」という声が多く、覚悟なく臨んだ既卒者が不合格になるケースが増えた可能性があります。
厳しいところですね。
もし院内のスタッフが既卒状態で国家試験を目指している場合、自己学習だけに任せずに学習の仕組みづくりを支援することが、合格率を上げるうえで大きな効果を持ちます。歯科衛生士国家試験専門のオンライン個別指導塾(例:「はぐもぐ」など)では、毎日のチェックテストやLINE報告といった継続的な伴走サポートを提供しており、仕組みの面から合格をサポートする選択肢として検討できます。
参考リンク(新卒・既卒合格率の差に関する詳細解説)。
【最新5年比較】歯科衛生士国家試験|現役と浪人の合格率はここまで違う|はぐもぐ
専門学校の募集要項などでよく目にする「国試合格率100%」という数字。これをそのまま受け取るのは要注意です。
学校によって合格率が100%になるのには、理由があります。多くの養成学校では、国家試験を受験させる前に独自の卒業試験を課し、合格ラインに達しない学生には受験を控えさせるという対応をとっています。つまり「国試100%」は、本当に全員が合格したのではなく、合格できそうな人だけを受験させた結果である場合があります。
第34回(2025年)の学校別データを見ると、受験者数1人〜5人程度の小規模校が「合格率100%」を記録しているケースが複数見られます。一方で、100人を超える大規模な学校では合格率が84〜95%程度に分散しており、単純に学校の「実力」を合格率だけで評価することはできません。
これは使えそうです。
歯科医院のスタッフを採用する際、出身校の合格率を参考にする場面もあるかもしれませんが、受験者数・新卒比率・分母の設定方法も合わせて確認する必要があります。また、在校生やその保護者が学校選びをする場面でも、合格率100%の数字を鵜呑みにしないよう、受験者数と合格者数の両方をチェックすることを勧めるのが親切です。
参考リンク(第34回学校別合格者状況・公式資料)。
【歯科衛生士国家試験2025】試験結果と学校別合格者数一覧|DentalWave
「過去問を繰り返せばいい」という勉強法だけに頼ると、近年の難化傾向に対応できなくなる可能性があります。
第34回(2025年)の試験は過去10年で最低の合格率91.0%を記録し、受験者の間では「例年の模試よりも難しかった」という声が多数出ました。この傾向を踏まえると、単純な過去問の反復暗記だけでなく、問題の背景にある仕組みや理屈を理解する学習が重要になっています。たとえば「歯周病と全身疾患の関連」「口腔保健指導の根拠となる統計」「感染予防の法的根拠」といった、横断的な理解を問う問題が増えている傾向があるためです。
具体的な対策として効果が高いのは、以下のアプローチです。
- 苦手科目の早期特定:模擬試験や市販の科目別問題集で、自分の弱点を9科目単位で可視化する
- 1問1答よりも解説精読:選択肢の「なぜ正解か・なぜ不正解か」を毎回確認し、知識を文脈で覚える
- スキマ時間の活用:国家試験対策アプリ(例:「歯科衛生士国家試験問題集アプリ」など)を使い、通勤・休憩中に単語帳感覚で知識を定着させる
- 試験時間の感覚を養う:220問を300分で解くため、1問あたり約65〜82秒のペースが必要。時間を測った演習を早めに習慣化する
1問65秒は、実際には「問題文を読んで→選択肢を比較して→マークする」までのすべてを含む時間です。これを体に染み込ませるには、模擬試験を本番と同じ環境・同じ時間で繰り返すことが最も効果的です。
また、勉強を継続するうえで見落とされがちなのが「体調管理と生活リズムの整備」です。試験は3月上旬という、インフルエンザや体調不良が起きやすい時期に行われます。試験当日に万全の状態で臨めるよう、試験2〜3週間前から睡眠・食事・移動ルートの確認といった非学習面の準備も進めることが理想的です。
合格率が基本です。ただし、その数字を上回るためには「仕組みと理解」が条件です。
参考リンク(第35回歯科衛生士国家試験の日程・概要)。
【2026年】第35回歯科衛生士国家試験の日程は?過去合格率や受験概要|クオキャリア
国家試験の合格率は、歯科衛生士本人だけでなく、歯科医院で働くすべてのスタッフに関係する情報です。
院内に歯科衛生士を採用する立場や、スタッフの成長を支援する立場から見たとき、合格率のデータはいくつかの実践的な判断材料になります。まず、新人歯科衛生士が「新卒で合格してきたかどうか」は、その人の学習経歴や習慣のひとつの指標になりえます。新卒合格率は95%以上ですが、既卒合格者には試験を突破するための強い意志と自己管理能力が必要だったことも事実です。どちらが優れているという話ではなく、背景を理解したうえで関わることが大切です。
次に、院内の歯科助手スタッフが歯科衛生士資格の取得を目指している場合の話です。既卒での合格率が低い理由は、決して「やる気がない」からではありません。働きながら試験勉強を続けるための「仕組みがない」ことが最大の要因です。院長や先輩スタッフが学習スケジュールの相談に乗る、勉強時間の確保を配慮するといったサポートが、合格率の改善に直結します。
いいことですね。
さらに、歯科衛生士国家試験の合格率データは、厚生労働省や日本歯科衛生士会のウェブサイトで毎年公式に公表されています。近年の受験者数増加(第34回は8,026人)と合格率低下という二つの流れは、今後の歯科医療現場における人材の質と量の両面に影響を及ぼす可能性があります。歯科業界全体として、歯科衛生士の育成・定着・再教育の仕組みをより強固にしていくことが求められています。
つまり合格率を知ることは、職場づくりの視点でも重要です。
参考リンク(厚生労働省・歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討資料)。
歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討の進め方(案)|厚生労働省(PDF)