辺縁性歯周炎治療の基本から急性発作対応まで

辺縁性歯周炎は歯周病の一般的な形態で、適切な治療で進行を止められます。本記事では歯科医師向けに、スケーリング・ルートプレーニングから急性発作時の薬物療法まで、実践的な治療アプローチを解説しています。患者の回復を加速させる治療戦略は何か?

辺縁性歯周炎の治療

抗生物質だけでは治りません。 根本治療には機械的な清掃処置が必須です。
辺縁性歯周炎の治療3つのポイント
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スケーリング・ルートプレーニング

歯周ポケット内の歯石や汚染物質を徹底的に除去

急性発作時の薬物療法

腫脹・発熱時には抗菌薬投与で症状軽減

🎯
咬合調整とメインテナンス

再発防止のための定期管理が重要


辺縁性歯周炎とは何か。根尖性歯周炎との違い


辺縁性歯周炎は歯周炎の中で最も一般的な形態です。歯肉辺縁を炎症の起源とし、歯周ポケットを形成しながら歯根膜歯槽骨へと炎症が波及していく疾患です。これは「歯槽膿漏」という別名でも知られており、一般的に「歯周炎」と言えばこの辺縁性歯周炎を指すことがほとんどです。


根尖性歯周炎と辺縁性歯周炎の最大の違いは炎症の発生起点にあります。根尖性歯周炎は歯髄壊死が原因で歯根の先端に炎症が生じるのに対し、辺縁性歯周炎は歯周病菌による感染が主な原因で、歯肉辺縁部から始まります。つまり臨床的には、辺縁性歯周炎では深い歯周ポケットが存在し、その周囲に目に見える歯肉の腫脹と発赤が特徴づけられます。これは根尖性歯周炎の症状と類似することがあるため、診査時には歯周ポケット測定が重要になります。


成人の約8割が歯周病患者もしくは予備軍とされており、その多くが慢性の辺縁性歯周炎です。早期に発見して適切な治療を開始することが歯を残すための重要な鍵となります。


ボンベルタ歯科クリニックの歯周病基礎知識では、歯周病の進行段階と初期段階での対応について詳しく解説されています


辺縁性歯周炎の初期治療:スケーリング・ルートプレーニング

辺縁性歯周炎の治療の中心は機械的な清掃処置です。初期治療として行われるスケーリングルートプレーニング(SRP)は、全ての症例で実施される基本治療であり、この段階での治療効果が全体的な治療成功を左右します。


スケーリングとルートプレーニングは異なる処置です。スケーリングは歯肉縁上、つまり歯ぐきの上に見える部分の歯石を除去する処置で、通常は麻酔を必要としません。これに対しルートプレーニングは、歯肉縁下、つまり歯ぐきに隠れて見えない部分に付着した歯石や汚染物質を除去する処置です。歯根表面の汚染された歯質を除去し、表面を滑沢にすることで歯垢や歯石の再付着を防ぎます。


ルートプレーニングでは深い歯周ポケット内での処置になるため、局所麻酔が必要になることがほとんどです。この処置により歯肉の炎症を抑え、歯周組織の回復を促進させます。処置後は歯周ポケットの改善が期待でき、多くの症例では明らかな臨床的改善が得られます。


スケーリング・ルートプレーニング後の歯周ポケット測定により、治療効果を判定します。改善が不十分な部位に対しては追加処置が必要になる場合もあります。


日本歯周病学会誌では、スケーリング・ルートプレーニングの高い有効性とEr:YAGレーザーの併用効果について学術的検証がされています


辺縁性歯周炎の急性発作への対応:症状軽減と排膿処置

辺縁性歯周炎は通常、緩慢に進行する慢性疾患ですが、時に急性発作を起こします。患者が急激な痛みを訴える場合、多くは歯周膿瘍の形成が考えられます。この急性発作への対応は治療の重要なステップです。


急性発作時の症状は持続的な痛みで、中等度から重度では咬合接触で痛みが強くなります。その歯は打診に敏感で、動揺している場合も見られます。より重篤な場合は、炎症性の腫脹、発熱、悪寒を伴うことがあります。膿みの袋が増大すると、歯周ポケットからの排膿が抑止されて症状が悪化します。


こうした急性症状には抗菌薬の投与が有効です。細菌感染によって引き起こされた炎症反応を抑えることで、24時間以内に症状の改善が期待できます。抗菌薬は感染源の細菌を除去することで、間接的に症状を改善するため、スケーリング・ルートプレーニングなどの機械的処置との併用が不可欠です。


腫脹、発熱、悪寒がある場合は、ペニシリン系(アモキシシリン)やマクロライド系(ジスロマック)などの抗菌薬の投与が効果的です。通常は3日間の投与が標準的ですが、その後1週間程度は薬効が持続します。しかし抗生物質だけでは膿を除去できないため、排膿が確保されない場合は切開による排膿処置が推奨されます。


膿みの出口が確保されることで、痛みは大幅に軽減され、治療の次の段階へ進むことができます。


辺縁性歯周炎の治療に含まれる咬合調整とポケット掻爬の役割

スケーリング・ルートプレーニングと併行して行われるべき重要な処置が咬合調整です。辺縁性歯周炎では患歯が打診に敏感になっているため、対合歯との接触を除去することで痛みを軽減させます。


咬合調整は単なる症状緩和ではなく、歯を支える組織への過剰な力を減らす意義があります。歯周組織が破壊された状態での過度な咬合力は、さらなる組織破壊を招くため、早期の調整が推奨されます。患歯の咬合接触を軽微にすることで、炎症の軽減と組織の回復を促進させます。


ポケット掻爬術も非外科的処置として重要です。これは歯周ポケット内壁の上皮や炎症性結合組織を除去し、歯根面と歯肉の再付着を促す処置です。暗視下での処置のため技術的には難しく治療時間も要しますが、歯肉の形態変化や歯根露出が他の外科処置よりも少ないという利点があります。


ポケット掻爬は深さ4mm以上の歯周ポケットに対して効果的であり、浅いポケットから段階的に行うことが理想的です。処置後はポケット内を生理食塩水で十分に洗浄し、消毒薬を注入することで感染を防ぎます。


辺縁性歯周炎治療における薬物療法の位置づけと再発防止

抗菌薬は辺縁性歯周炎治療の補助的な役割です。基本治療であるスケーリング・ルートプレーニングと組み合わせることで初めて効果を発揮します。日本歯周病学会が発表した「歯周病患者における抗菌療法の指針2010」では、慢性歯周炎に対する経口抗菌薬の投与は、スケーリング・ルートプレーニングと併用する場合に有効とされています。


しかし注意すべき点は、抗菌薬だけでは完治しないという点です。歯周ポケット内に既に形成された膿瘍内の死んだ組織や膿を除去することはできません。そのため、抗菌薬の効果が切れた後に症状が再燃することがあります。


治療後の再発を防ぐには、定期的なメインテナンスが不可欠です。通常は3~4ヶ月ごとの定期検診とプロフェッショナルクリーニングを継続することで、良好なお口の状態を維持できます。患者自身の正しいブラッシング指導も重要で、特に歯周ポケット部位への適切なプラークコントロールが成功の鍵となります。


再発が認められた場合、単に繰り返し抗菌薬を投与するべきではなく、治療計画の見直しと根本的な原因の除去に重点を置くべきです。


日本歯周病学会の公式ガイドラインでは、各症例における抗菌療法の適応基準と投与方法の詳細が示されています




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