インプラント撤去の費用と保険適用・再治療の全知識

インプラント撤去の費用は自費で1本3万円〜10万円が相場ですが、条件次第で保険適用も。撤去後の骨の状態や再埋入の可否、骨造成が必要な場合の追加費用まで、歯科従事者が知っておくべきポイントとは?

インプラント撤去の費用と保険適用・再治療の全知識

自院で入れたインプラントを撤去すると、1,400円では済まず全額自費になります。


📋 この記事の3つのポイント
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撤去費用の相場は「院内か他院か」で天と地の差

自院での撤去は全額自費(3万〜10万円以上)。他院での撤去なら保険適用で3割負担約1,400円。この違いを患者に事前説明できているかが重要です。

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撤去後の骨の状態が再治療の可否を左右する

骨吸収が進んでいる場合、骨造成(GBR・サイナスリフトなど)が追加で必要となり、費用は5万〜20万円の上乗せに。再埋入できるかの判断基準を整理しておくことが患者満足度につながります。

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インプラント周囲炎は患者の28〜56%が罹患するリスク

撤去の最大の原因はインプラント周囲炎。定期メンテナンスと早期発見が撤去回避の鍵です。歯科従事者としての適切な説明・管理体制が問われます。


インプラント撤去の費用:保険適用になるケースとならないケース


インプラント撤去の費用で、最も「知らないと損する」ポイントが保険適用の条件です。多くの患者が「インプラントは自費だから撤去も全部自費」と思い込んでいますが、実際には条件次第で保険が使えます。


インプラント除去が保険適用になるのは、インプラント治療を受けた歯科医院とは別の歯科医院で撤去を行う場合に限られます。保険点数は1本あたり460点(4,600円)で、3割負担の患者さんであれば自己負担は約1,400円です。骨を削って除去した場合は若干加算されますが、それでも2,000円前後に収まります。


一方、同じ医院でインプラントを撤去する場合は保険適用外となり、全額自費負担です。つまり自院内での撤去はすべて自由診療という点が、歯科従事者として患者へ正確に説明しなければならない重要事項になります。


保険適用には別途、「除去前のレントゲン写真の撮影」と「歯科医師による必要性の判断」という要件を満たす必要があります。これも確認が必要です。


自費診療での撤去費用は医院によって大きく異なりますが、1本あたり3万円〜10万円前後が目安です。これは撤去のみの費用であり、感染コントロールや骨の処置が加わると別途費用が発生します。難症例では10万円〜15万円以上に達することもあります。


参考リンク(保険適用条件の詳細)。
インプラントを除去しなければいけないケースとは?除去方法と費用 | 武内歯科医院


インプラント撤去の費用:難易度別の相場と費用が跳ね上がる条件

撤去費用は一律ではありません。これが重要です。撤去の難易度によって、費用は数倍の差が生じます。


費用が低く抑えられるのは、インプラント周囲炎が進行してオステオインテグレーション(骨結合)が失われ、インプラント体がすでに揺れている状態のケースです。骨との結合が弱まっているため、専用器具(フィクスチャーリムーバー)を使わなくても摂子で除去できることがあり、比較的短時間・低コストで処置できます。


逆に費用が高くなるのは、インプラント体が骨と強固に結合している場合です。逆回転トルクをかけるフィクスチャーリムーバーを使用し、場合によっては骨を一部削合しながら取り出す必要があります。外科的難易度は高く、処置時間も長くなります。結果、自費診療では15万円を超えることも珍しくありません。


また、複数本を同時撤去する場合は本数分の費用が加算されます。たとえば3本同時に撤去するケースでは、15万円〜30万円前後になることもあります。スポーツジムの月会費に換算するなら、2〜3年分に相当する金額です。


撤去前の術前検査(CT・レントゲン)や感染コントロールの処置も費用に含まれる場合があり、総費用の相場は15万円〜25万円程度とする見解もあります。患者への説明では「撤去だけで終わらない可能性」を必ず伝えることが、後のトラブル回避につながります。


🦷 撤去費用の目安まとめ。


| ケース | 自費目安(1本) |
|---|---|
| 揺れているインプラント(骨結合弱) | 3万円〜5万円程度 |
| 骨と強固に結合したインプラント | 5万円〜15万円以上 |
| 骨削合を伴う難症例 | 10万円〜15万円以上 |
| 複数本(3本の例) | 15万円〜30万円前後 |
| 保険適用(他院での撤去、3割負担) | 約1,400円〜2,000円 |


難易度の判断には、術前CTが欠かせません。


インプラント撤去が必要になる主な原因と歯科従事者が注意すべきサイン

撤去に至る原因を早期にキャッチすることが、結果的に患者の費用負担を抑え、再治療の選択肢を広げることにつながります。


撤去が必要になる原因として最も多いのはインプラント周囲炎です。歯周病と同じ細菌感染症ですが、天然歯と異なりインプラント周囲には結合組織性付着がなく、プラーク歯垢)が直接骨に達することがあります。これが歯周病より進行が速く、治療に難渋する原因の一つです。


有病率の報告は複数ありますが、インプラント患者の28%〜56%がインプラント周囲炎に罹患しているというデータがあります(Koldsland et al., 2010)。インプラント本数ベースでは12%〜43%とされており、決して低い値ではありません。2016年にNHKが報道した「インプラント治療後3年以上で40%以上の患者が罹患」というデータは、歯科業界に大きな衝撃を与えました。


その他の原因として、フィクスチャーの破折・スクリューの緩み(咬合力過負荷や歯ぎしりによる金属疲労)、上顎洞へのインプラント体の迷入、神経麻痺の発生、チタンアレルギーの発症などが挙げられます。


歯科従事者が早期に察知すべき主なサインは以下の通りです。


- 🔴 プロービング時の出血(BOP陽性)
- 🔴 インプラント周囲ポケットの深化(特に急激な増加)
- 🔴 排膿・膿瘍形成
- 🔴 X線写真での辺縁骨吸収(1年比較で2mm以上)
- 🔴 インプラント体の動揺(オステオインテグレーション喪失のサイン)


「動揺していれば撤去」が基本です。動揺が確認された時点では骨結合がほぼ失われており、保存的治療では改善が見込めません。


参考リンク(インプラント周囲炎の診断と対応の詳細)。
インプラント周囲炎の原因と対応 | 新谷悟の歯科口腔外科塾


インプラント撤去後の骨の状態と再埋入の可否判断

撤去後の患者対応において、多くの患者が最初に投げかける質問が「また入れられますか?」です。この問いに対して的確に答えるためには、撤去後の骨の変化を正確に理解しておく必要があります。


インプラント撤去後、埋め込まれていた部分の骨は削合されるうえ、その後の自然吸収によってさらに減少します。特に骨がもともと薄い上顎奥歯部位(上顎洞近接部位)や下顎前歯部では、撤去後に急速な骨吸収が起こりやすいとされています。一般的に骨吸収は歯の喪失直後の数か月が最も急速で、その後は緩やかに進行します。


インプラント周囲炎が原因の撤去では、炎症によってすでに骨が大きく溶けているケースも多くあります。この場合、骨欠損が不規則な形状になるため再埋入の難易度が上がり、骨造成手術(GBR法・サイナスリフトなど)が必須になることがあります。骨造成の追加費用は5万円〜20万円程度とされており、再埋入にかかる総費用は45万円〜70万円程度に達するケースもあります。


再埋入が可能かどうかの判断基準として、以下の点を総合的に評価することが原則です。


- ✅ 炎症・感染が完全に収束しているか
- ✅ 十分な骨量・骨質が残存しているか(CT評価)
- ✅ 全身疾患のコントロール状態(糖尿病・骨粗鬆症・免疫疾患など)
- ✅ 喫煙習慣の有無(喫煙は骨結合を著しく妨げる)
- ✅ 歯ぎしり・食いしばりの改善状況


骨の損失が軽微で炎症も軽度であれば、撤去と同時に新しいインプラントを埋入する即時再埋入が可能な場合もあります。ただし、即時再埋入はあくまで条件が整った症例に限られます。つまり「誰でも同日に再スタートできる」わけではないということですね。


参考リンク(撤去後の骨と再治療の判断基準)。
インプラントを撤去することになったら?費用・骨の状態・老後の選択肢まで解説 | 東京日本橋あさひ歯科


インプラント撤去費用を左右する「見落としがちな追加コスト」と患者への適切な説明

費用の話をするうえで、撤去費用単体だけを伝えると患者の期待値と現実が大きくずれることがあります。実際の治療では、撤去本体の費用以外にいくつかの追加コストが生じる可能性があります。


まず、術前に必要なCT撮影・精密検査の費用があります。これは保険診療と自費診療で異なりますが、診査・診断料として3万円〜5万円程度かかる医院もあります。


次に感染コントロールのための投薬・処置費用です。インプラント周囲炎が重度の場合、外科的処置と合わせて抗菌薬の投与や洗浄処置が複数回必要になることがあります。これが数回分加算されると、費用は当初の見込みを超えることがあります。


撤去後の「補綴の再設計」も費用要因のひとつです。インプラント撤去後、隣接歯の状態によってブリッジが選択できる場合もありますが、支台歯の形成・補綴物の製作費用が別途必要になります。再インプラントを選ばない場合でも、義歯(入れ歯)製作や「インプラントオーバーデンチャー」(2〜4本のインプラントで入れ歯を固定する方法)を検討する場合にはそれなりの費用が伴います。


歯科従事者として患者に伝えるべき費用の枠組みは以下のようになります。


- 💴 術前検査・CT:3万円〜5万円(自費の場合)
- 💴 撤去手術本体:3万円〜15万円以上(難易度・本数により変動)
- 💴 骨造成(必要な場合):5万円〜20万円
- 💴 再インプラント(希望する場合):約40万円〜(骨造成込みで70万円超も)
- 💴 代替補綴(入れ歯・ブリッジ):保険適用で数千円〜、自費で10万円以上も


この全体像を最初に丁寧に提示することが、患者の「こんなにかかるとは思わなかった」という不満を防ぎます。治療費の範囲を「最低額〜最高額の幅」で示すことが患者への誠実な対応の基本です。


なお、インプラント治療の一部費用は医療費控除の対象となる場合があります。確定申告時に医療費控除を申請できるケースがあるため、患者へのアドバイスとして紹介しておくと、治療後の信頼関係構築にもつながります。これは使えそうです。


参考リンク(インプラントの費用内訳と控除)。
インプラント治療の費用内訳|仮歯の値段や骨造成の費用も解説 | 仙台仙台坂総合歯科


インプラント撤去を回避するための管理体制:歯科従事者として実践できること

撤去に至る最大の原因はインプラント周囲炎であり、その多くは適切な管理によって予防または早期介入が可能です。歯科従事者として患者の撤去リスクを下げる実践的な管理体制を整えることが、長期的なインプラント成功率の向上に直結します。


定期メンテナンスの頻度は、3か月に1回程度が推奨されています。インプラント周囲炎の初期段階(インプラント周囲粘膜炎)は自覚症状がほとんどないため、プロによる定期的な評価が早期発見の唯一の手段といえます。メンテナンス時には、プラーク・BOP・ポケット深さ・排膿・動揺度・X線所見を総合的に評価することが原則です。


セルフケアの指導も重要な役割を担います。インプラント周囲は天然歯よりプラークが付着しやすく、通常の歯ブラシだけでは清掃が不十分になりがちです。インプラント対応フロス歯間ブラシタフトブラシの使用を丁寧に指導し、抗菌性マウスウォッシュの活用も勧めることが効果的です。セルフケアが習慣化された患者ほど、インプラントが長持ちする傾向があることが報告されています。


噛み合わせの管理と生活習慣指導も欠かせません。歯ぎしり・食いしばりのある患者にはナイトガードの使用を提案し、日中の食いしばり癖への意識づけも行います。喫煙は血流を妨げてインプラント周囲炎のリスクを数倍に高めることが知られており、禁煙・減煙の指導は「インプラントを守るための医療的アドバイス」として伝えると患者の受け入れも良くなります。


全身疾患のコントロール状況も定期的に把握しておくことが重要です。糖尿病・骨粗鬆症・高血圧など、インプラントの成功率に影響する全身疾患の状態を内科主治医と連携しながら確認することが、長期安定の鍵になります。特に骨粗鬆症治療薬(ビスフォスフォネート製剤)を服用している患者では、顎骨壊死のリスクがあるため細心の注意が必要です。


撤去が必要な状況を「失敗」と捉えるのではなく、「次の最善策」を速やかに提示できる体制を整えることが、患者との信頼関係を維持するうえで最も大切なことといえます。撤去・再治療の選択肢を丁寧に提示し、患者のQOLを守ることが、歯科従事者としての本質的な役割です。


参考リンク(インプラント周囲炎のリスクと管理の学術的知見)。


十分な情報が集まりました。記事を執筆します。




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