骨吸収 骨形成 薬の選択と歯科治療のリスク回避

骨粗鬆症患者の治療薬選択で悩む歯科医向けに、骨吸収抑制薬と骨形成促進薬の特徴、費用対効果、そして患者の歯科治療時に生じやすい顎骨壊死のリスクとその対策について、最新の臨床情報をまとめました。患者さんの全身管理と口腔管理を両立させるために知っておくべき知識とは?

骨吸収 骨形成 薬の選択と患者管理

あなたの患者さんの数割が、骨粗鬆症薬で顎骨が腐ってしまうリスクを抱えています。


3ポイント要約
💊
薬の分類と作用機序

骨吸収抑制薬(BP製剤・デノスマブ)と骨形成促進薬(テリパラチド)の根本的な作用の違いが患者の予後を左右します

⚠️
顎骨壊死のリスク

BP製剤で6年以上、特に経口薬では1万人中1~2人の確率で薬剤関連顎骨壊死が発症します

🦷
歯科治療時の対応

抜歯前後の管理と口腔衛生指導が、合併症予防の決定的な分岐点になります


骨吸収 骨形成 薬の分類と作用メカニズム


骨粗鬆症治療の現場では、骨の代謝メカニズムを理解することが患者さんとの対話の質を大きく変えます。骨は常に古い骨を壊す「骨吸収」と新しい骨を作る「骨形成」を繰り返しています。


これを骨代謝とも呼びます。


骨吸収抑制薬の代表格であるビスフォスフォネート製剤(ボナロン、ボノテオ、アクトネル)は、破骨細胞の働きを抑えることで骨からカルシウムが逃げるのを防ぎます。週1回の内服型で月額約200~300円という圧倒的な経済性が特徴です。一方、デノスマブ(プラリア)は抗RANKL抗体として6ヶ月に1回の注射で月額約1,400円の負担になります。


骨形成促進薬は全く異なるアプローチを取ります。テリパラチド(テリボン、フォルテオ)は副甲状腺ホルモンとして骨芽細胞を活性化させ、新しい骨を作るように指令を出します。毎日または週2回の自己注射で、月額4,000~15,000円の費用がかかります。つまり同じ骨粗鬆症治療でも、薬によって月額で数十倍の開きが生じるのです。


これらの薬は2024年の最新ガイドラインでも「どちらが絶対的に優れているわけではない」とされています。高リスク患者には骨形成促進薬を、経済的負担が大きい患者にはBP製剤を、という具合に患者特性に応じた使い分けが求められます。


骨吸収 骨形成 薬と顎骨壊死のメカニズム

歯科医にとって最も警戒すべき副作用が、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)です。特にBP製剤とデノスマブが関連しているとされています。


顎骨壊死は、これらの骨吸収抑制薬が骨代謝を強く抑制することで起きます。通常、抜歯後は出血して血液から新しい骨へと治癒していくプロセスが始まります。ところがBP製剤を使用している患者さんでは、この治癒が極度に遅延します。傷口から細菌が侵入しても、新しい骨や歯肉が形成されないため感染が広がり続けます。やがて骨が腐って露出するという悪循環に陥るのです。


発生頻度は経口BP製剤で1万人中1~2人、注射型で100人中1人程度とされています。しかし抜歯後に限定すると、その危険度は跳ね上がります。BP製剤使用中の抜歯後の顎骨壊死発症率は6.67~9.1%という報告もあり、これは全体平均の50~100倍です。重篤な場合、顎の骨が部分的に壊死し、言語障害や食事困難につながります。


一方、テリパラチドや活性型ビタミンD3製剤、選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)では顎骨壊死の報告がありません。


これが重要なポイントです。


つまり歯科治療が予定されている患者さんには、薬選択の段階で顎骨壊死リスクを念頭に置いた提案が必要になります。


骨吸収 骨形成 薬の長期使用と非定型骨折のジレンマ

ここにパラドックスが隠れています。BP製剤は骨密度を高めるのに優れていますが、5~6年以上の継続使用で別の問題が浮上するのです。


非定型大腿骨骨折という症状で、太ももの骨が本来折れにくい部位で突然折れる現象です。骨密度は高まっているのに、かえって骨がもろくなる逆説的な現象が起きます。そのため現在のガイドラインでは「経口BP製剤は5年、注射型は3年の継続後に、骨折リスクを再評価してから休薬を検討する」という慎重なアプローチを推奨しています。


費用の安さに引かれてBP製剤を漫然と継続する医療者は多いのですが、5年経過時点での骨密度検査と患者との相談が必須です。中止した場合、数年で骨密度は低下していきますが、顎骨壊死のリスクは薬の沈着性があるため、中止後もしばらく存在します。このタイミングでの歯科治療は特に慎重を要するのです。


一方、テリパラチドは生涯2年を超えて使用しないというルールがあります。24ヶ月間の投与後は別の薬に切り替えるか、一定期間を空けてから再投与する必要があります。つまり長期使用による非定型骨折の心配がない代わり、投与期間が限定される制約があります。これを患者さんに事前に説明しておくことで、「骨が治ったから薬を止める」という誤解を防げます。


歯科治療前後の骨吸収 骨形成 薬の管理戦略

抜歯を含む外科処置が必要な患者さんへのアプローチは、診断後の速度が勝負です。


理想的には骨粗鬆症薬の開始前に歯科処置を済ませることです。特にBP製剤開始前の患者さんには、「薬を始める2週間以上前に、むし歯や歯周病の治療、必要に応じて抜歯を済ませてください」と明確に伝えましょう。


これだけで顎骨壊死発症の大部分を防げます。


既に薬を服用中の患者さんで急遽抜歯が必要になった場合、2023年の改訂ガイドラインは「原則として薬を休薬しない」と明記しました。


これは重要な方向転換です。


かつては「3ヶ月前から休薬すること」と推奨されていました。しかし実際のデータから、休薬してもMRONJ発症は必ずしも減少しないこと、むしろ休薬による骨粗鬆症悪化の方が大きなリスクであることが判明したためです。


そこで実務的には、薬を継続しながら抜歯を行い、感染予防に全力を尽くす戦略に転換しました。具体的には、術前の抗生物質予投与、丁寧な創管理、術後2~3週間の抗菌性含嗽薬(500ppm次亜塩素酸水)での毎日のうがい、そして4~8週間の厳密な口腔衛生管理です。この管理で実際のMRONJ発症は大幅に減少しています。


骨吸収 骨形成 薬選択時の患者説明ポイント

患者さんが納得した選択をするためには、薬ごとの特性を正確に伝える必要があります。


BP製剤を選ぶ患者さんには「月額200~300円と非常に経済的で、週1回の内服で対応できます。ただし5年以上の使用では非定型骨折のリスクがあるため、5年経過時に再度検査して薬の継続を判断します。また、歯科治療が必要な場合は事前に医者と相談してください」という説明が標準的です。実際、約5割の患者さんが飲み忘れで治療を中断しているという調査結果から、「飲みやすさ」は重要な選択基準になります。


テリパラチド選択時は「毎日または週2回の注射で月額5,000~15,000円の負担がありますが、骨密度の改善が速く、顎骨壊死などの歯科関連副作用がありません。ただし24ヶ月という投与期間の制限があり、その後は別の薬に切り替えます」という説明が適切です。高リスク患者(既に椎体骨折がある、超高齢など)には、骨形成促進薬を最優先する施設も増えています。


デノスマブは「6ヶ月に1回の注射で月額1,400円。継続的な投与が必要で、中止するとリバウンドで骨密度が急低下します」という説明になります。中止のルールが厳しいため、長期的なコミットメントが可能な患者さんに適しています。


生涯限定のテリパラチドを既に使用済みの患者さんでは、その後はBP製剤やデノスマブに移行するしか選択肢がないという制約も、事前に説明しておくべき重要な情報です。患者さんが後年「別の薬がいい」と言い始める前に、この制限を理解させておくことで、医療者への信頼度が大きく変わります。


日本歯科医師会による骨粗鬆症治療と歯科治療の関係についてのガイダンス


最新の骨粗鬆症治療薬の使い分けと費用対効果に関する臨床情報


ビスフォスフォネート製剤と顎骨壊死の詳細な解説




インソール 中敷き 衝撃吸収 扁平足 サイズ調整 中足骨パッド かかと 土踏まず 内反足 立ち仕事 足底筋膜炎 サポーター O脚矯正 足底腱膜炎 M