垂直性骨欠損の原因と分類・治療への影響を徹底解説

垂直性骨欠損の原因はプラーク感染だけではなく、咬合性外傷・歯根形態・局所因子が複雑に絡み合っています。骨壁数や深さが治療の予知性を左右する仕組みとは?

垂直性骨欠損の原因から分類・治療予知性まで深掘り解説

咬合性外傷だけでは、垂直性骨欠損は起こりません。


この記事のポイント3つ
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垂直性骨欠損の本質的な原因

プラーク性歯周炎が「主因」で、咬合性外傷・局所因子は「修飾因子」。この関係を正しく理解することが治療計画の出発点です。

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放置すると10年後に68%が抜歯

骨欠損深さ4.5mm以上の重度例を無治療で放置した場合、10年後に68%の歯が喪失するという研究データがあります。早期対応の重要性を示す数字です。

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骨壁数が治療の成否を決める

1壁性・2壁性・3壁性で再生療法の予知性は大きく異なります。分類を正確に把握することが、適切な術式選択の鍵となります。


垂直性骨欠損とは何か:水平性骨欠損との違いと定義


歯周病が進行すると歯槽骨の吸収が起こりますが、その吸収パターンには大きく2種類あります。「水平性骨欠損」は隣在歯と同じ高さで骨が水平に溶けていく状態であり、「垂直性骨欠損」は特定の歯の周囲にだけ、骨がボコっと垂直方向に深く失われていく状態を指します。イメージとしては、水平性は平らなプールの底が一様に削れていくのに対し、垂直性は一か所だけ穴が掘られていくような形です。


垂直性骨欠損は、両隣在歯のセメント-エナメル境を結んだ仮想線に対して、斜め・垂直方向の吸収が認められるものと定義されています(北海道医療大学学術リポジトリ)。臨床上は「骨縁下ポケット」と深く関連しており、プロービングデプスの深さだけでは診断が不十分であることも少なくありません。


この2つの骨欠損では、放置した場合のリスクが大きく異なります。研究によると、中等度の垂直性骨欠損を治療せずに10年放置した場合、抜歯に至る割合は45.6%に上ります。重度では68.2%という高い数値が報告されています。一方、水平性骨欠損を同様に放置した10年後の抜歯率は12.7%にとどまります。つまり、垂直性は水平性の約5倍以上のリスクを持つ非常に危険な骨欠損形態です。


水平性と垂直性は「どちらも歯周病」と同列で扱われがちですが、治療の緊急性や術式の選択が根本的に異なります。垂直性骨欠損が確認された時点で、早期の外科的介入を含む積極的治療計画の検討が必要です。





























項目 水平性骨欠損 垂直性骨欠損
吸収方向 水平方向(均一) 垂直方向(局所的)
ポケット型 骨縁上ポケット 骨縁下ポケット
10年後の抜歯率(無治療) 約12.7% 中度45.6% / 重度68.2%
再生療法の適応 基本的に非適応 条件を満たせば適応あり


垂直性骨欠損への対応が遅れると、治療選択肢が激減します。早期発見と早期介入が原則です。


参考:垂直性骨吸収の経過に関する後向き研究(北海道医療大学学術リポジトリ)
https://hsuh.repo.nii.ac.jp/record/6483/files/歯学雑誌29-1_119.pdf


垂直性骨欠損の原因①:歯周炎(プラーク感染)が主因である理由

垂直性骨欠損の成因に関して、長年にわたり「咬合性外傷が骨を垂直方向に溶かす」という認識が歯科臨床に広まっていました。これはGlickmanが1950年代から70年代にかけて提唱した「共同破壊因子説(Co-destruction theory)」に由来するもので、炎症と外傷的咬合力が共に作用して垂直性骨欠損を生じさせるという理論です。


しかし現代のエビデンスは、その理解を大きく修正しています。その根拠はWaerhaugら(1979年)をはじめとする動物実験データです。歯にジグリングフォース(前後に繰り返す咬合力)を加えると、歯槽骨の吸収は確認されるものの、骨縁上の結合組織への影響はなく、歯周病の進行を加速させることはなかったと報告されています。つまり、咬合性外傷は「単独では垂直性骨欠損を引き起こさない」というのが現在の学術的コンセンサスです。


歯周炎が存在しない歯に過剰な力が加わっても、骨吸収は一時的・可逆的なものにとどまるとされています。垂直性骨欠損の主因はあくまでプラーク由来の感染性歯周炎であり、咬合性外傷はその「進行を修飾する二次的因子」として位置づけられます。


この知識は臨床判断に直結します。垂直性骨欠損が見つかった歯に咬合調整を先行させることは誤りで、まずプラークコントロールと感染制御が優先されます。治療の優先順位を誤ると、炎症が残ったまま外科処置に進むことになり、再生療法の予知性が大幅に低下します。感染制御が条件です。


参考:歯周病病態における「咬合性外傷」を再考する(日本臨床歯周病学会 東北支部)
https://www.jacp.net/pdf/shibu/20211014_tohku_1.pdf


垂直性骨欠損の原因②:咬合性外傷・局所因子・歯根形態の関与

プラーク感染が主因であると述べましたが、垂直性骨欠損の形成には、複数の局所因子が重なることで骨吸収が「垂直方向」に進む誘因となります。これらを正しく把握することで、原因への対処をより精密に行えます。


まず咬合性外傷については、歯周炎が存在する歯に外傷的な咬合力が繰り返し加わると、炎症の波及が垂直方向に促進されることがあります。これは「二次性咬合性外傷」と呼ばれ、歯周支持組織がすでに弱った歯に生じる現象です。早期接触や強い側方圧、ブラキシズムなどが典型的な誘因となります。日本歯周病学会のガイドライン(2022年版)でも、外傷性咬合が併発すると組織破壊が急速に進行し垂直性骨欠損を生じさせうると明記されています。


次に注目すべき局所因子として、歯根形態の異常があります。根面の陥凹(凹み)は清掃が困難な部位をつくり、そこに局所的なプラーク蓄積が起きやすくなります。また、エナメル突起(エナメルプロジェクション)は歯頸部に向かって伸びた異常なエナメル質であり、歯根膜の付着を妨げるため、周囲の骨吸収を促進する因子となります。日本歯周病学会の検査・診断指針(2008年版)でも、エナメル突起や根面陥凹などの病変を促進する局所因子への留意が求められています。


さらにセメント質の異常も、垂直性骨欠損の一因として挙げられます。セメント質の肥大や吸収によって歯根面の性状が変化し、局所的な歯周組織の破壊が進む可能性があります。



  • 🔸 二次性咬合性外傷:歯周炎が存在する歯への外傷的な咬合力。ブラキシズムや早期接触が引き金になる。

  • 🔸 根面陥凹(歯根形態の異常):器具が届きにくく、局所的なプラーク蓄積を招く隠れた原因。

  • 🔸 エナメル突起:歯頸部への異常なエナメル質の伸展。歯根膜の付着を局所的に途絶させる。

  • 🔸 セメント質の異常:根面の性状変化による歯周組織への影響。

  • 🔸 食片圧入:隣接面への食物の押し込みが局所的な炎症の起点となる。


局所因子は見落とされやすいですが、これらを見逃すと治療後の再発につながります。エックス線写真とCBCTによる3次元的な骨欠損形態の把握と合わせて、根面形態の診査も重要です。


参考:歯周病の検査・診断・治療計画の指針 2008(日本歯周病学会)
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_plan_2008.pdf


垂直性骨欠損の分類(骨壁数)と治療予知性への影響

垂直性骨欠損が確認された際、次に重要なのはその「骨壁数による分類」です。残存する骨の壁がいくつあるかによって、再生療法の予知性が大きく異なります。骨壁数は治療計画の核心です。


骨欠損の形態分類は以下のように区分されます。



  • 🔹 3壁性骨欠損:骨欠損の周囲に3つの骨壁が残存。再生療法の予知性が最も高い。「バケツに土が落ちにくい」イメージで、再生材料がとどまりやすい。

  • 🔹 2壁性骨欠損:2つの骨壁が残存。条件が整えば再生療法の適応になる。

  • 🔹 1壁性骨欠損:残存骨壁が1つ。塗布した再生材料が流れ出しやすく、再生療法の効果が得にくい。

  • 🔹 4壁性骨欠損(骨内ポケット):歯根を囲む4方向すべてに骨壁がある特殊な形態。

  • 🔹 複合性骨欠損:上記が混在するもの。実際の臨床では最も多く見られる形態。


再生療法(GTR法・EMD・リグロス®など)の適応は、基本的に「3壁性の深くて狭い垂直性骨欠損」が最適とされています。目安としては骨欠損の深さ3mm以上、幅が狭い形態が条件です。1壁性や2壁性では、再生材料が欠損部にとどまらず流れ出てしまい、十分な効果が得られません。


リグロス®(FGF-2)の第三相試験でも、3壁性・2壁性でより良好な新生骨量の増加が認められており、骨欠損形態が再生療法の結果を左右することがデータで示されています。2016年に保険収載されたリグロス®は世界初の歯周組織再生医薬品であり、適切な症例選択のもとで使用することが求められます。


エックス線写真(デンタルX線)での確認に加えて、CBCTを用いた3次元的な骨欠損形態の分析が診断精度を大幅に高めます。骨壁数と欠損の幅・深さを正確に把握することが、術式選択の基盤となります。垂直性骨欠損と診断したら、3次元的精査が条件です。


参考:歯周組織再生治療に関する概要(水天宮前 1818歯科医院)
https://www.1818.gr.jp/perio/


垂直性骨欠損の診断・治療計画に活かす独自視点:「見えない原因」を見つける診査フローの重要性

垂直性骨欠損の臨床においてしばしば見落とされるのが、「何が主因で骨欠損が生じたか」を体系的に評価する習慣の有無です。骨欠損を見つけた時点で再生療法を計画するのではなく、その骨欠損が「なぜこの部位に、なぜこの形態で起きたのか」を掘り下げる診査フローが、長期的な治療成功には不可欠です。


たとえば、プラークコントロールが良好な患者に垂直性骨欠損が発見された場合、歯根形態の異常(エナメル突起・根面陥凹)や咬合性外傷がより強く疑われます。一方、全体的なプラーク量が多い患者では、まず感染制御の徹底が先決で、基本治療後の再評価なしに外科へ進むことは禁物です。


診査フローの一例として、以下のステップが実践的です。



  • ステップ1:デンタルX線写真で骨欠損の深さ・形態を確認し、3mm以上の垂直性骨欠損の有無を把握する。

  • ステップ2:プロービングで骨縁下ポケットの位置と深さを確認し、骨欠損の「骨壁数」を推定する。

  • ステップ3:CBCTにより3次元的な骨欠損形態・残存骨量を分析する(可能な場合)。

  • ステップ4:局所因子(根面陥凹・エナメル突起・食片圧入など)と全身因子(糖尿病・喫煙)を記録する。

  • ステップ5:咬合診査でブラキシズム・早期接触・側方力の有無を確認する。

  • ステップ6:歯周基本治療を先行させ、再評価で炎症が消退した後に外科的対応を検討する。


特に重要なのはステップ6の「再評価を必ず挟む」という原則です。日本歯周病学会のガイドラインでも、歯周基本治療後の再評価に基づいて外科処置の必要性を判断することが明示されています。


また、垂直性骨欠損が「治療後に再発」するケースでは、咬合のコントロール不足・局所因子の見落とし・SPT(歯周支持療法)の不徹底が背景にあることが多いです。再生療法が成功しても、原因を取り除かなければ数年以内に骨欠損が再発します。再生療法はゴールではなく通過点です。


治療後の長期安定のために、最低でも3〜6か月間隔のSPTと、必要に応じた咬合調整を継続することが求められます。再発リスクを早期に検知するためのモニタリングとして、定期的なプロービング検査やデンタルX線での骨レベル確認が有効です。


参考:「科学性のある歯科治療」で永続性ある治療結果を目指して(大阪府歯科医師会 学術論稿)


垂直性骨欠損の治療オプションと予知性を高めるポイント

垂直性骨欠損に対する治療法は、骨欠損の形態・深さ・原因・全身状態によって選択が異なります。大別すると「非外科的アプローチ」「切除療法」「再生療法」の3つに分かれます。


非外科的アプローチは、感染制御(スケーリングルートプレーニング)を中心とした基本治療です。骨欠損が浅く(3mm未満)、炎症のコントロールが主目的の場合に選択されます。切除療法は骨縁下ポケットを外科的に除去し、平坦な骨形態を獲得する方法で、不整形な骨の段差を整えることを目的とします。ただし、骨切除により歯根露出を招く可能性があるため、適応症の選択が重要です。


再生療法は、失われた歯周組織(歯槽骨・歯根膜・セメント質)を再生させることを目的とした治療です。骨欠損深さ3mm以上で、狭く深い垂直性骨欠損(主に3壁性〜2壁性)が適応とされます。現在広く使われている再生材料・手法は以下の通りです。



  • 🔬 GTR法(組織再生誘導法):メンブレンを設置して上皮細胞の侵入を防ぎ、歯周組織の再生を誘導する。1980年代から臨床応用が進む。

  • 🔬 EMD(エナメルマトリックスデリバティブ)エムドゲイン®として広く使用される。歯周組織の発生過程を再現し、再生を促す。

  • 🔬 リグロス®(FGF-2):世界初の歯周組織再生医薬品として2016年に保険収載。線維芽細胞増殖因子が歯根膜細胞の増殖・遊走を促進する。3壁性・2壁性での臨床成績が特に良好。


再生療法の予知性を高めるためには、炎症の徹底的な除去・骨欠損形態の正確な把握・縫合技術・術後のプラークコントロールがすべて噛み合う必要があります。一つでも欠けると骨再生の質が落ちます。


また、喫煙は再生療法の成功率を大幅に低下させることが知られています。喫煙者への再生療法を計画する場合には、禁煙指導と十分なインフォームドコンセントが求められます。糖尿病のコントロール状態(HbA1c)も同様に術前の確認が必須です。再生療法は「全身管理も含めた総合的な判断」が条件です。


参考:歯周治療のガイドライン2022(日本歯周病学会)
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_2022.pdf




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