保険適用のリグロスを選べば、エムドゲインの治療費を5分の1に抑えられます。
エムドゲイン治療は歯科医院によって料金設定が大きく異なる自由診療です。一般的な費用相場は1歯あたり5万円から15万円程度となっており、使用する薬剤の量や骨補填材の併用、治療する歯の本数によっても金額が変動します。
この料金の幅が生まれる理由は、自由診療であるため各歯科医院が独自に価格を設定できる点にあります。都心部の歯科医院では10万円を超える設定も珍しくありませんが、地方では5万円前後で提供している医院も存在します。たとえば東京医科歯科大学では1歯あたり17万円~34万円という高額な設定になっていますが、一般的な歯科クリニックでは6万円~8万円程度が最も多い価格帯です。
料金に含まれる内容も歯科医院によって異なります。基本的にはエムドゲインゲル本体の薬剤費用、フラップ手術の技術料、麻酔費用などが含まれますが、術前のCT撮影費用や術後の消毒代、抗生物質の処方代などが別途必要になるケースもあります。
さらに骨補填材を併用する場合は追加で3万円~5万円程度の費用がかかることがあります。骨補填材は失われた骨の量が多い場合に使用され、エムドゲインゲルの効果を高める役割を果たします。つまり重症度が高いほど治療費も高額になる傾向があるということです。
複数の歯を同時に治療する場合、2歯目以降は割引料金を設定している歯科医院も多く見られます。例えば1歯目が8万円でも2歯目以降は3万円追加といった料金体系です。複数箇所の治療が必要な場合は、事前に歯科医院に料金体系を確認しておくと良いでしょう。
治療費の支払い方法については、現金一括払いのほか、クレジットカード払い、デンタルローン、歯科医院独自の分割払いシステムなどが利用できることが多いです。デンタルローンを利用すれば月々数千円からの分割支払いも可能となり、一度に大きな金額を用意できない方でも治療を受けやすくなります。
石川歯科クリニックの治療費ページでは、エムドゲイン0.3mlで4万4千円、0.7mlで5万5千円という明確な料金設定が公開されており、使用量による価格の違いが分かりやすく示されています。
エムドゲイン治療は保険適用外の自費診療ですが、2016年に登場した「リグロス」という再生療法は保険適用となっており、費用負担の面で大きな違いがあります。3割負担の場合、リグロスは1歯あたり7千円~1万円程度で治療を受けることができ、エムドゲインと比較すると5分の1から10分の1程度の費用で済みます。
両者の主成分も異なっています。エムドゲインはブタの歯胚から抽出されたエナメルマトリックスタンパク質を主成分としており、1990年代からスウェーデンで開発され、世界中で30年以上の使用実績があります。一方リグロスは遺伝子組み換え技術で作られたヒト由来の成長因子(bFGF)を主成分としており、日本で開発された比較的新しい薬剤です。
治療効果については、両者ともに歯周組織の再生を促す作用があり、垂直性骨欠損に対する効果はほぼ同等とされています。多くの歯周病専門医は「骨の再生する度合いに大きな差はない」と評価していますが、エムドゲインの方が長期的な臨床データが豊富であるという安心感があります。
形状の違いも重要なポイントです。エムドゲインはゲル状で粘性が高く、骨欠損部に留まりやすい性質があります。これに対しリグロスは液体状で流動性が高いため、深い垂直性骨欠損には適していますが、浅い欠損部では流れ出てしまう可能性があります。このため症例によってはエムドゲインの方が適している場合もあります。
保険適用であるリグロスにも制約があります。リグロスを保険で使用する場合、一度に治療できるのは2歯までという制限があり、また人工骨などの骨補填材を併用すると保険適用外となってしまいます。骨補填材との併用が必要なケースでは、結局自費診療となるため、リグロスを選んでも費用が大きく抑えられないことがあります。
さらにリグロスには使用制限もあります。がん治療中の患者さん、特に口腔がんの既往歴がある方には使用できません。これに対しエムドゲインには特定の使用禁忌がないため、より幅広い患者さんに適用できます。
歯科医師の立場から見ると、エムドゲインは長年使い慣れた材料であり、扱いやすさや予測可能性の点で信頼されています。リグロスは保険適用という患者メリットは大きいものの、まだ登場から10年未満のため、長期的な予後データの蓄積が十分でない面もあります。どちらを選ぶかは、患者さんの経済状況、症例の特徴、歯科医師の経験などを総合的に考慮して決定されます。
藤本歯科登戸医院の歯周組織再生療法解説ページでは、エムドゲインとリグロスの詳細な比較と、それぞれの適応症について専門的な情報が提供されています。
エムドゲイン治療はすべての歯周病に適用できるわけではなく、骨欠損の形態によって適応が決まります。最も効果が期待できるのは「垂直性骨欠損」と呼ばれる、歯の周囲の骨が縦方向に深く溶けてコップのような穴ができている状態です。この形態では骨が50%から90%再生することが報告されており、抜歯を回避できる可能性が高まります。
逆に適応が難しいのは「水平性骨欠損」です。これは歯の周囲全体が平らに骨吸収している状態で、再生療法の効果はほとんど期待できません。水平性骨欠損の場合、エムドゲインゲルが骨欠損部に留まらず流れ出てしまうため、再生が起こりにくいのです。このため術前の診査で骨欠損の形態を正確に評価することが極めて重要になります。
成功率を左右する要因はいくつかあります。
まずプラークコントロールの状態です。
歯磨きが不十分で口腔内が不潔な状態では、手術後に感染を起こしやすく、再生療法の成功率は著しく低下します。実際、アクティブなプラーク管理を行った患者では再生療法の成功率が顕著に高いという研究結果があります。
喫煙も大きなマイナス要因です。タバコを吸う人は血流が悪化し、組織の治癒能力が低下するため、エムドゲイン治療を行ってもほとんど効果が得られないケースが多くあります。重度の喫煙者は治療の適応外とされることもあり、禁煙が治療の前提条件となります。
全身疾患も考慮すべき点です。コントロール不良の糖尿病患者、骨粗鬆症の治療でビスホスホネート製剤を長期服用している方は、感染リスクや骨壊死のリスクが高く、エムドゲイン治療が行えないことがあります。これらの方は主治医と連携しながら、全身状態が安定してから治療を検討する必要があります。
術後のメンテナンスも成功の鍵を握ります。エムドゲイン治療で一度骨が再生しても、その後のケアを怠れば再び歯周病が進行し、せっかく再生した骨が再び失われてしまいます。定期的な歯科受診、プロフェッショナルクリーニング、自宅での丁寧なブラッシングが継続できない方は、長期的な成功は望めません。
年齢による影響もあります。若年者ほど組織の再生能力が高く、治療成績が良好です。高齢者でも条件が整えば十分な効果が得られますが、一般的には再生量が少なくなる傾向があります。
骨欠損の壁数も重要です。2壁性や3壁性の骨欠損(周囲に骨の壁が残っている状態)では高い再生率が期待できますが、1壁性の骨欠損では再生が難しくなります。CT検査などで骨欠損の詳細な形態を評価し、再生療法の成功見込みを事前に判断することが重要です。
エムドゲイン治療には外科手術が伴うため、いくつかのデメリットとリスクが存在します。まず術後の症状として、腫れ、痛み、内出血が一時的に発生することがあります。手術部位の歯茎を切開して剥離するため、通常の歯周病治療よりも侵襲が大きく、術後数日間は不快感が続くことが一般的です。
感染のリスクも無視できません。外科手術である以上、細菌感染の可能性があり、術後に抗生物質の服用が必要になります。術後の口腔ケアが不十分だと感染を起こし、再生した組織が失われてしまう可能性もあります。このため術後1~2週間は特に注意深い口腔管理が求められます。
治療効果の個人差も大きなデメリットです。溶けてしまったすべての骨が必ず再生するわけではなく、再生できる量は50%~90%と幅があります。期待していたほど骨が再生しないケースもあり、最悪の場合はほとんど効果が得られないこともあります。100%の成功を保証できる治療ではないという点を理解しておく必要があります。
歯茎の退縮も起こりうる問題です。手術で歯茎を切開すると、術後に歯茎が下がってしまい、歯根が露出して歯が長く見えるようになることがあります。これは審美的な問題だけでなく、知覚過敏を引き起こす原因にもなります。特に前歯部の治療では、見た目への影響を慎重に考慮する必要があります。
費用面でのデメリットは既に述べた通りですが、治療費だけでなく、治療期間中の通院費用、仕事を休むことによる機会損失なども考慮すべきです。手術から骨が再生するまでには数ヶ月から1年程度かかり、その間定期的な通院が必要になります。
治療の適応症が限られることもデメリットです。水平性骨欠損や全体的な骨吸収には効果がなく、また重度の喫煙者や全身疾患のある方は治療を受けられません。歯周病が進行しすぎている場合も適応外となり、抜歯を余儀なくされることがあります。
まれではありますが、神経損傷のリスクも存在します。下顎の奥歯の手術では、顎の骨の中を走る神経や血管を傷つける可能性があり、術後に唇や舌、頬、歯肉の感覚マヒが一時的に発生することがあります。ほとんどは数週間から数ヶ月で回復しますが、完全に回復しないケースも報告されています。
再発のリスクも忘れてはいけません。エムドゲイン治療で一度骨が再生しても、その後のメンテナンスを怠れば歯周病は再発します。再発した場合、再度の再生療法は困難になることが多く、結局抜歯に至ることもあります。治療後も生涯にわたる継続的なケアが必要です。
これらのリスクを避けるためには、手術前にセカンドオピニオンを求めることも有効です。複数の歯科医師の意見を聞き、本当にエムドゲイン治療が最適な選択肢なのか、他の治療法はないのかを慎重に検討すべきです。
エムドゲイン治療は高額ですが、医療費控除の対象となるため、確定申告を行うことで税金の還付を受けられます。医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、その超過分を所得から差し引くことができる制度です。年間の医療費総額が10万円を超える場合(または総所得金額等の5%を超える場合)に控除を受けられます。
具体的な還付額は所得税率によって異なります。例えば年収400万円の方がエムドゲイン治療で40万円かかった場合、医療費控除額は30万円(40万円-10万円)となり、所得税率10%なら3万円、住民税10%なら3万円で、合計約6万円が還付されることになります。年収が高いほど税率も高くなるため、還付額も増えます。
医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。会社員の方は年末調整では医療費控除は受けられないため、翌年の2月16日から3月15日の確定申告期間中に、自分で申告書を提出する必要があります。ただし医療費控除の申請は1月から可能で、また期限を過ぎても5年間は遡って申請できます。混雑する3月を避けて早めに申請するのがおすすめです。
申請に必要な書類は、医療費の領収書またはレシート、医療費控除の明細書、源泉徴収票(会社員の場合)などです。2017年以降は領収書の提出が不要となり、明細書の提出だけで済むようになりましたが、領収書は5年間保管する義務があります。エムドゲイン治療を受ける際は、必ず領収書を発行してもらい、大切に保管しておきましょう。
医療費控除には通院交通費も含めることができます。電車やバスの料金、やむを得ない場合のタクシー代も対象となります。自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外ですが、公共交通機関の運賃はメモを取っておくだけで申請できます。遠方の歯科医院に通院している場合、交通費も積み重なると大きな金額になるため、忘れずに記録しておきましょう。
支払い方法については、現金一括払いが最も一般的ですが、高額なため分割払いを希望する方も多くいます。クレジットカード払いに対応している歯科医院では、カード会社の分割払いやリボ払いを利用できますが、金利手数料がかかることに注意が必要です。年率15%程度の手数料が発生するため、支払総額が大きく増えてしまいます。
より有利な選択肢がデンタルローンです。デンタルローンは歯科治療専用のローン商品で、クレジットカードよりも金利が低く設定されています。金利は年率3%~8%程度が一般的で、月々5千円~1万円程度の支払いに分割できます。審査はありますが、安定した収入があれば比較的通りやすく、高額な治療費を無理なく支払う方法として人気があります。
一部の歯科医院では独自の分割払いシステムを提供しています。「金利0円プラン」として、手数料なしで数回に分けて支払えるサービスもあります。例えば治療費を10回払いまで無利息で分割できるといったプランで、患者の負担を軽減する試みです。ただし回数制限があり、長期間の分割はできないことが多いです。
治療費の支払いタイミングも歯科医院によって異なります。手術前に全額支払いを求められる場合もあれば、治療完了後の支払いでよい場合もあります。分割払いを希望する場合は、事前に歯科医院に相談し、どのような支払い方法が可能か確認しておくことが重要です。
国税庁の医療費控除に関する公式ページでは、歯科治療における医療費控除の対象となる具体例が詳しく解説されており、確定申告の参考になります。
エムドゲイン治療を受けた後の経過は、治療の成否を左右する重要な期間です。手術直後から数日間は、腫れや痛みが出ることが一般的で、処方された痛み止めや抗生物質を指示通りに服用する必要があります。この時期は激しい運動や飲酒、喫煙を避け、安静に過ごすことが推奨されます。
術後1週間程度で抜糸を行います。この間、手術部位は極力触らず、反対側の歯で食事をするようにします。柔らかい食事を中心に、熱すぎるものや刺激物は避けましょう。歯磨きは手術部位以外を丁寧に行い、手術部位は処方されたうがい薬で優しくすすぐ程度にとどめます。
骨の再生には時間がかかります。エムドゲインゲルが働きかけて新しい歯周組織が形成されるまでには、通常3ヶ月から6ヶ月程度必要です。この期間中は、再生中の組織に負担をかけないよう、硬いものを噛んだり、手術部位に強い力をかけたりしないよう注意が必要です。
術後3ヶ月、6ヶ月、1年といった節目には、レントゲン撮影やCT検査で骨の再生状態を確認します。歯周ポケットの深さも測定し、治療効果を評価します。期待通りに骨が再生していれば、歯の動揺が減少し、歯周ポケットも浅くなっているはずです。逆に再生が不十分な場合は、追加治療や別の対応を検討することになります。
長期的なメンテナンスが最も重要です。エムドゲイン治療で骨が再生しても、その後のケアを怠れば歯周病は再発します。3ヶ月から6ヶ月ごとの定期検診を受け、プロフェッショナルクリーニングで歯石やプラークを除去してもらうことが不可欠です。この定期メンテナンスは生涯続ける必要があります。
自宅でのセルフケアも欠かせません。毎日の丁寧な歯磨きに加えて、歯間ブラシやデンタルフロスを使って歯と歯の間のプラークも確実に除去します。
電動歯ブラシを使うのも効果的です。
歯周病菌を抑制する効果のある歯磨き粉や洗口液を併用することも推奨されます。
生活習慣の改善も治療効果を維持するために重要です。喫煙している方は禁煙することが強く推奨されます。タバコは血流を悪化させ、歯周組織の治癒を妨げるため、せっかく再生した骨を維持できなくなります。また糖尿病のある方は血糖コントロールを良好に保つことが、歯周病の再発予防につながります。
食生活にも気を配りましょう。栄養バランスの良い食事、特にタンパク質やビタミンC、カルシウムを十分に摂取することが、歯周組織の健康維持に役立ちます。よく噛んで食べることで唾液分泌が促進され、口腔内の自浄作用が高まります。
ストレス管理も見落としがちですが重要です。過度のストレスは免疫力を低下させ、歯周病を悪化させる要因になります。十分な睡眠、適度な運動、リラックスする時間を持つことで、全身の健康とともに口腔の健康も保たれます。
咬み合わせの管理も忘れてはいけません。特定の歯に過度な力がかかると、せっかく再生した骨にダメージを与えることがあります。歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、ナイトガードの使用を検討しましょう。定期検診で咬み合わせのチェックを受け、必要に応じて調整してもらうことも大切です。
治療後10年、20年と長期にわたって歯を維持するためには、患者自身の継続的な努力と、歯科医師・歯科衛生士との協力関係が不可欠です。エムドゲイン治療はゴールではなく、長い歯の健康維持のためのスタート地点と考えるべきでしょう。