電動歯ブラシは現代の口腔ケアにおいて重要なツールとなっています。手用歯ブラシと比較して、短時間で効率的に歯垢を除去できるという大きなメリットがあります。歯科医院でも多くの歯科医師や歯科衛生士が患者さんに電動歯ブラシの使用を推奨しています。
電動歯ブラシを使用している人の割合は一般的に約20%と言われていますが、歯科予防プログラムに参加している方では約30%程度と高くなっています。これは、歯科医療従事者が電動歯ブラシの効果を認識し、患者さんに勧めていることの表れでもあります。
電動歯ブラシは単に「電動で動く歯ブラシ」というだけではなく、その駆動方式や機能によって効果や特徴が大きく異なります。適切な電動歯ブラシを選び、正しい使い方を知ることで、お口の健康維持に大きく貢献します。
電動歯ブラシは主に以下の3種類に分類されます。それぞれ特徴が異なるため、自分に合ったタイプを選ぶことが重要です。
それぞれのタイプによって適している方が異なります。例えば、歯列矯正中の方は音波式が適していますし、歯や歯茎が弱い方は超音波式が適しているなど、個人の口腔状態によって最適な選択肢が変わってきます。
電動歯ブラシと手用歯ブラシの効果を比較した研究結果について見ていきましょう。
ある研究では、音波式電動歯ブラシと手用歯ブラシを使用した歯周炎患者20名を対象に、「汚れの取れ具合」と「歯肉の改善具合」を比較しました。興味深いことに、プラーク(歯垢)の付着量については両者に有意差はありませんでした。しかし、「歯肉ポケットの状態改善」と「出血しやすさ」については、電動歯ブラシ使用群の方が早く改善したという結果が出ています。
この結果について研究者は、音波式電動歯ブラシがもたらす「キャビテーション効果」によって以下の2つの効果が生まれたと言及しています。
ただし、この研究はSonicare®という特定の製品で検証されたものであり、すべての音波式電動歯ブラシに同様の効果があるとは限りません。市販の電動歯ブラシはメーカーごとに工夫が凝らされているため、一概に「音波式電動歯ブラシの方が優れている」とは言い切れないことに注意が必要です。
電動歯ブラシは手用歯ブラシとは使い方が大きく異なります。正しい使い方を知らないと、かえって歯や歯肉を傷つけてしまうことがあるため、以下のポイントを押さえておきましょう。
基本的な持ち方
正しい当て方と動かし方
部位別の当て方
使用時間と注意点
ブラシヘッドの交換
電動歯ブラシを使用する際は、歯磨き粉の選び方も重要です。研磨剤が含まれていない、またはジェルタイプの低研磨性のものを選びましょう。研磨剤の強い歯磨き粉を電動ブラシに付けて使うと、歯を傷つけてしまうことがあります。
電動歯ブラシには様々なメリットとデメリットがあります。歯科衛生士の視点から、それぞれを詳しく解説します。
メリット
デメリット
電動歯ブラシは万能ではなく、あくまでも口腔ケアの一部です。歯間ブラシやフロスなどの補助用具と併用することで、より効果的な口腔ケアが可能になります。
電動歯ブラシと歯周病予防の関係については、近年多くの研究が行われています。特に音波式電動歯ブラシに関する最新のエビデンスを見ていきましょう。
2023年に発表された研究では、音波式電動歯ブラシを3か月間使用した群と手用歯ブラシを使用した群を比較したところ、音波式電動歯ブラシ使用群では以下の点で有意な改善が見られました。
特に注目すべきは、音波式電動歯ブラシが「キャビテーション効果」と「音響流動」という2つの物理的作用によって、歯ブラシの毛先が直接届かない部分にも効果を発揮することです。この効果により、歯周ポケット内部の細菌バイオフィルムの破壊にも貢献していると考えられています。
また、別の研究では、電動歯ブラシの使用が長期的な歯の喪失リスクを低減することも示されています。11年間の追跡調査によると、電動歯ブラシを定期的に使用していた群は、手用歯ブラシのみを使用していた群と比較して、歯の喪失リスクが約20%低かったという結果が出ています。
これらの研究結果は、電動歯ブラシ、特に音波式電動歯ブラシが歯周病予防に有効であることを示唆しています。ただし、どんなに優れた電動歯ブラシでも、正しい使い方と定期的な歯科検診が重要であることを忘れてはいけません。
歯科医師が患者さんに電動歯ブラシを推奨する際、以下のポイントを重視しています。自分に合った電動歯ブラシを選ぶ際の参考にしてください。
1. 口腔内の状態に合わせた選択
口腔内の状態 | おすすめのタイプ | 理由 |
---|---|---|
歯周病がある | 音波式・超音波式 | 歯肉への刺激が少なく、ポケット内の清掃効果が高い |
矯正装置装着中 | 音波式 | 装置周りの清掃に効果的 |
知覚過敏がある | 超音波式 | 振動が穏やかで刺激が少ない |
健康な歯肉 | 回転式・振動式 | 高い歯垢除去効果 |
2. 機能と価格のバランス
基本的な機能だけでも十分効果はありますが、以下のような追加機能が役立つ場合もあります。
ただし、機能が増えるほど価格も上がるため、本当に必要な機能を見極めることが大切です。
3. 継続使用のしやすさ
4. 個人の好みと使用感
実際に使ってみないとわからない部分も多いため、以下のような点も考慮します。
歯科医院では、患者さんの口腔内の状態を診査した上で、最適な電動歯ブラシを提案することがあります。また、電動歯ブラシの正しい使い方の指導も行っていますので、購入後に歯科医院で使い方のチェックを受けることをおすすめします。
自分に合った電動歯ブラシを選び、正しく使用することで、お口の健康維持に大きく貢献します。迷った場合は、かかりつけの歯科医師や歯科衛生士に相談してみましょう。