水平性骨欠損と垂直性骨欠損の違いと治療選択

水平性骨欠損と垂直性骨欠損は、歯周病による骨吸収の形態が異なるだけでなく、適切な治療法もまったく異なります。再生療法の適応や骨壁数の重要性を正しく理解できていますか?

水平性骨欠損と垂直性骨欠損の違いと適切な治療選択

垂直性骨欠損と診断しても、骨壁が1壁性なら再生療法の成功率は3壁性の約半分以下になります。


🦷 この記事の3ポイント要約
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骨欠損の「方向」で治療法がまったく変わる

水平性骨欠損はSRPが主体、垂直性骨欠損は再生療法の適応あり。形態を正確に読み取ることが治療成功の第一歩です。

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垂直性骨欠損は「骨壁の数」で予後が決まる

3壁性・2壁性・1壁性で再生療法の成功率が大きく異なります。骨壁数の評価がエムドゲイン・リグロス・GTR法の適応判断の鍵です。

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リグロスは保険適用、エムドゲインは自費

リグロス(FGF-2製剤)は2016年に日本発・世界初の歯周組織再生剤として保険収載。1歯あたり自己負担約1〜3万円(3割)で受けられます。


水平性骨欠損と垂直性骨欠損の基本的な定義と形態の違い


歯周病が進行すると歯槽骨が吸収されていきますが、その吸収の「方向」によって大きく2種類に分類されます。水平性骨欠損と垂直性骨欠損です。この分類は単なる形態の違いにとどまらず、治療方針を根本から左右するものです。正確に覚えておく必要があります。


水平性骨欠損は、複数の歯にわたって骨が水平方向に均一に吸収していく形態です。レントゲン写真では歯槽骨頂が全体的に平らに低下して見え、歯根に対して骨がほぼ均等に失われています。全顎的に歯周病が進行しているケースで多く見られ、中等度歯周炎以下であればSRP(スケーリングルートプレーニング)を中心とした歯周基本治療で比較的良好な改善が期待できます。


垂直性骨欠損は一方、特定の歯の根に沿って垂直方向(歯根の長軸方向)に骨が失われていく形態です。イメージとしては「コップ状の穴」や「くさび形の溝」が特定の歯の隣接面に形成されている状態です。レントゲン写真では三角形の黒い影として認識でき、骨縁下ポケット(骨縁下欠損)を形成します。これが大きなポイントです。


水平性骨吸収は「骨縁上ポケット」を、垂直性骨吸収は「骨縁下ポケット」を形成するという関係は歯科衛生士国家試験でも頻出の知識ですが、実際の臨床では混合型(水平性と垂直性が合わさった形態)も少なくありません。レントゲン読影時は「部位ごと」に注意深く観察する習慣が大切です。


日本歯周病学会が公開している「歯周基本治療の進め方とポイント」にも、骨欠損の形態評価がSRP後の治療計画立案に直結することが明記されています。


参考:日本歯周病学会による歯周基本治療に関する指針(骨欠損の評価と治療計画の根拠が記載)
https://www.perio.jp/file/news/info_220415.pdf


水平性骨欠損・垂直性骨欠損の歯周病新分類(2018年)との関係

2018年6月にAAP(米国歯周病学会)とEFP(欧州歯周病連盟)が共同で公表した歯周病の新分類では、歯周炎の診断に「ステージ」と「グレード」の2軸が採用されました。この新分類において、骨欠損の形態は診断ステージを決める重要な因子として明確に位置づけられています。


ステージの判定基準と骨欠損の関係を整理すると、次のようになります。





























ステージ 骨欠損の特徴 最大PD目安
ステージⅠ 主に水平性骨吸収(軽度) 4mm以内
ステージⅡ 主に水平性骨吸収(中等度) 5mm以内
ステージⅢ 3mm以上の垂直性骨欠損あり、根分岐部病変あり 6mm以上
ステージⅣ 重度の垂直性骨欠損、10本以上の歯の喪失 6mm以上


つまり、垂直性骨欠損の存在がステージⅢ以上の診断根拠になるということです。これは臨床上とても重要です。ステージⅢ・Ⅳの症例は一般開業医での歯周基本治療だけで対応するには限界があり、歯周専門医や外科的介入を検討する必要が出てくる段階です。グレード(A・B・C)は進行速度のリスクを示し、喫煙・糖尿病などのリスクファクターによって決定されます。


診断ステージを正しく伝えることは患者説明の質にも直結します。「垂直性の骨欠損があります」という事実を新分類のステージ表現と結びつけて説明できると、患者の理解が深まり治療への動機付けにもつながります。これは使えそうです。


参考:日本歯周病学会による歯周病新分類対応の指針(ステージ・グレードの判定基準を解説)
https://www.perio.jp/file/news/info_191220.pdf


垂直性骨欠損の骨壁数分類と再生療法の適応判断

垂直性骨欠損が確認できた場合、次に重要なのが「骨壁数」の評価です。骨壁数とは、骨欠損を取り囲む残存骨の壁の数のことで、1壁性・2壁性・3壁性(または4壁性)に分類されます。この分類が、再生療法の適応と予後予測に直接影響します。



  • 🧱 3壁性骨欠損:欠損の三方向を骨壁が囲んでいる状態。コップに水を注ぐように薬剤や再生材が留まりやすく、再生療法の成功率が最も高い。

  • 🧩 2壁性骨欠損:二方向のみ骨壁が残存。条件次第で再生療法の適応となるが、3壁性より再生量は限定的。

  • ⚠️ 1壁性骨欠損:一方向しか骨壁がなく、材料が流れ出しやすい。再生療法の効果は低く、フラップ手術や抜歯を検討するケースも多い。


エムドゲイン(EMD)とリグロス(FGF-2製剤)の適応症として、日本歯周病学会「歯周病患者における再生療法のガイドライン2023」では以下のように明記されています。エムドゲインは「歯周ポケット6mm以上、レントゲン上で深さ4mm以上・幅2mm以上の垂直性欠損」が適応基準です。リグロスは「歯周ポケット4mm以上、骨欠損の深さ3mm以上の垂直性骨欠損」が基準です。骨壁数が条件です。


なお、実際の臨床現場では「歯冠側が2壁性、根尖側が3壁性」というような複合型の骨欠損が少なくありません。一概に○壁性とは言えないケースが多いのが現実で、CBCTによる3次元評価がより精確な診断に有用とされています。意外ですね。歯科用CTを活用することで、二次元レントゲンでは確認しにくい頬舌側の骨壁の状態も把握でき、適応判断の精度が向上します。


参考:日本歯周病学会「歯周病患者における再生療法のガイドライン2023」(適応基準・骨壁分類の根拠が記載)
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_regenerative_medicine_2023.pdf


水平性骨欠損に対するSRP中心の治療と限界、再生が難しい理由

水平性骨欠損は「骨縁上ポケット」を形成し、SRPによる炎症コントロールが主な治療手段となります。水平性骨欠損ではSRP主体でOKです。なぜ再生療法が適応外になるのかというと、骨欠損の周囲に材料を保持してくれる骨壁が存在しないためです。お皿の上に水を置いても流れ落ちるイメージと同じで、エムドゲインやリグロスなどの再生材が欠損部に留まれないのです。


SRPによる治療では以下のような改善が期待できます。



  • 🦠 プロービングデプスの減少(歯周ポケットの浅化)

  • 🩸 BOP(プロービング時出血)の改善

  • 🔬 歯槽骨頂線の安定(さらなる吸収の防止)

  • 🧹 歯石バイオフィルムの除去による炎症の鎮静


ただし、一度水平性に吸収された歯槽骨が自然に再生することはありません。SRPで「現状維持・進行抑制」はできますが、「失った骨を取り戻す」ことはできないというのが原則です。このことを患者へ正確に伝えることが、定期的なメンテナンス(SPT:支持療法)の必要性を理解してもらう鍵になります。


水平性骨吸収でも、棚状骨形態(shelving bone)が形成されている場合は骨整形術を組み合わせたフラップ手術の適応となることがあります。新分類でステージⅡ以下の症例であれば、まずは徹底した歯周基本治療とSRPを行い、再評価でポケット残存がある場合に外科的処置へ進む流れが基本です。歯周基本治療の徹底が原則です。


参考:水平性骨吸収に対するSRP後の結果と再生困難性について解説した臨床ページ
https://www.shimabukuro-dc.jp/paper/perioco067/


垂直性骨欠損に対する再生療法の選択肢:GTR法・エムドゲイン・リグロスの違い

垂直性骨欠損に対しては、現在日本の臨床現場で主に4種類の再生療法アプローチが用いられています。それぞれの仕組みと特徴、費用感を整理しておくと、治療説明や担当者間の連携に役立ちます。


































治療法 仕組み 保険 費用目安(患者負担)
GTR法 遮断膜(GTR膜)で上皮の侵入を防ぎ歯根膜細胞を誘導 保険適用 1〜3万円程度(3割)
エムドゲイン(EMD) 豚の歯胚由来エナメルマトリックスタンパク質を塗布 自費のみ 1歯あたり4〜8万円
リグロス(FGF-2) 塩基性線維芽細胞増殖因子で細胞増殖・血管新生を促進 保険適用 1〜3万円程度(3割)
骨移植術 自家骨・異種骨・人工骨を欠損部に補填 材料により異なる 数万〜十数万円


特に注目したいのがリグロスです。2016年に日本発・世界初の歯周組織再生剤として承認・保険収載されたFGF-2製剤で、1回の手術で2歯まで保険適用が可能です。3割負担であれば1歯あたり約1〜3万円が目安で、患者の経済的負担を抑えながら再生療法を提供できます。


ただし注意点もあります。リグロスは細胞増殖促進作用があるため、口腔内に悪性腫瘍がある患者・既往のある患者への使用は禁忌です。また、骨補填材との併用は保険診療では認められていないため、欠損量が大きい症例では再生量に限界があるケースも出てきます。使用前に適応をしっかり確認することが大事です。


一方のエムドゲインは1990年代から世界的に使われてきた歴史があり、長期的な臨床エビデンスが豊富です。自費診療のため費用は高くなりますが、患者が長期的な歯の維持を希望する場合に提案できる選択肢として、経済的な説明と合わせて提示する価値があります。


参考:エムドゲインとリグロスの違い、保険適用の有無について詳しく解説したページ
https://orange-dental.com/topics/2024/10/10/difference-between-ligros-and-emdgain/


見落とされがちな視点:垂直性骨欠損は「放置すると歯の喪失リスクが水平性より70%高くなる」

ここで多くの歯科従事者が見落としがちなポイントを取り上げます。垂直性骨欠損があると聞くと「再生療法ができる=予後が良い」と受け取りがちですが、実は逆の側面もあります。治療前提での話が多い中、見落としてはいけない事実があります。


ある研究報告では、垂直性骨欠損を有する歯は水平性骨欠損を有する歯と比べて、10年間歯周病治療を行わない場合に歯を喪失する確率が「水平性の約70%以上高い」と報告されています(jiads.org, 2025年12月の文献引用より)。つまり、垂直性骨欠損は治療できる可能性があるという希望の一方で、放置した場合の歯の喪失リスクがきわめて高い形態だということです。


この事実は、患者に治療の必要性を伝える際に非常に重要です。「再生療法で骨が戻る可能性がある」というポジティブな説明と同時に、「今すぐ適切な治療を開始しないと、その歯を10年以内に失うリスクが非常に高い」という具体的なリスク説明も組み合わせることが、治療同意率の向上に直結します。数字を使った説明は説得力が増します。


また、もう一つの盲点として「垂直性骨吸収は必ずしも進行中を意味しない」という点もあります。レントゲン上で垂直性の陰影が確認されても、炎症がコントロールされていれば進行が止まっているケースもあります。重要なのは「現在進行しているかどうか」をBOP(プロービング時出血)や排膿の有無、プロービング深さの変化などと合わせて総合的に評価することです。



  • 📈 BOP陽性:炎症が活動中の可能性が高い → 治療を急ぐ

  • 📉 BOP陰性:炎症がコントロールされている状態 → SPTで経過観察も可

  • 🔄 プロービング深さの経時変化:前回比較で増加していれば進行中のサイン


垂直性骨欠損の診断と処置に関する症例ベースの解説が参考になります。


https://oned.jp/posts/8986




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