抜歯後6ヶ月で歯槽突起は水平方向に約3.79mmも消えています。
歯槽突起とは、上顎骨(じょうがくこつ)の骨体下面から連なる突起状の構造で、いわゆる「歯を支える骨の土台部分」のことです。上顎骨は顔面の中心の大部分をなし、左右対称に1対2個が正中で癒合して構成されています。その上顎骨体には前頭突起・頬骨突起・口蓋突起・歯槽突起の4種類の突起が存在しますが、歯科臨床で最も関わりが深いのがこの歯槽突起です。
位置としては、上顎骨体の下面から前方に凸面を描くように突出しており、形状は鉄蹄(U字形)に似た弓形をしています。この弓形の部分全体が上顎歯列弓を形成し、中切歯から第三大臼歯まで片側8本・左右計16本の上顎歯が釘植(ていしょく)しています。
つまり上顎の歯が植立している部分そのものが歯槽突起です。
後端部には「上顎結節(じょうがくけっせつ)」と呼ばれる疎な骨面があり、正中部には鼻口蓋管神経・動静脈が通る「切歯管(せっしかん)」が存在します。切歯管の位置は前歯部インプラントの埋入設計においても確認が必要な構造のひとつです。また上顎骨体内部には上顎洞(副鼻腔の一部)が存在し、特に上顎大臼歯の歯根と上顎洞底は非常に近接しているため、歯槽突起を理解することは上顎洞との関係性を把握することにも直結します。
歯槽突起が原則です。
参考:日本歯科医師会 テーマパーク8020「顎の構造」
https://www.jda.or.jp/park/function/index02.html
歯科解剖学で押さえておきたい重要なポイントとして、「上顎骨では歯槽突起(alveolar process)、下顎骨では歯槽部(alveolar part)と呼ばれる」という名称の違いがあります。国家試験でも繰り返し問われる内容ですが、臨床現場でも混同されがちです。
| 顎骨 | 名称 | 構造的理由 |
|---|---|---|
| 上顎骨 | 歯槽突起(alveolar process) | 骨体から独立した「突起」として出ているため |
| 下顎骨 | 歯槽部(alveolar part) | 骨体(下顎体)の一部として連続しているため |
上顎の場合は骨体から別構造として「突き出た部分」があるのに対し、下顎では下顎体の上部がそのまま歯槽として機能する形で連続しているため、「部(part)」という用語が使われます。下顎歯槽部は「下顎体の上部で、上顎骨の歯槽突起に対応する部分」とも説明され、下顎の歯が釘植して下顎歯列弓をつくります。
意外ですね。
この名称の違いを踏まえたうえで、どちらも総称して「歯槽骨(しそうこつ)」と呼ぶことがあります。ただし厳密には、歯槽骨という名の独立した骨体は解剖学的に存在せず、あくまで上下顎骨の歯槽突起・歯槽部を指す機能的な名称です。この点は患者への説明や診療録の記載でも意識しておくとよいでしょう。
参考:かずひろ先生の解剖学講座「歯槽骨:歯槽突起と歯槽部」
https://www.anatomy.tokyo/anatomy-41-12/
歯槽突起(歯槽骨)は、組織学的に「固有歯槽骨(こゆうしそうこつ)」と「支持歯槽骨(しじしそうこつ)」の2つに区分されます。この区別は、歯周治療やインプラント治療を行ううえでの骨質評価と密接に関わるため、歯科従事者として必ず理解しておきたい知識です。
これらの2層構造が原則です。
重要なのは、固有歯槽骨と支持歯槽骨は常に骨吸収・骨形成(リモデリング)を繰り返しているという事実です。矯正治療で歯を移動できるのも、このリモデリング能を利用しているためです。また、頬側(唇側)の骨壁は皮質骨が薄いケースが多く、特に前歯部では紙1枚程度の厚みしかない場合があります。インプラント埋入時に頬側骨壁を穿孔・損傷するリスクを最小化するためにも、CBCT(歯科用コーンビームCT)による事前の骨量・骨質評価が不可欠です。
参考:大郷町歯科医院「歯周組織について」(歯槽骨の固有・支持の詳細解説)
https://osato.aobakai.com/staff-blog/?p=5995
歯槽突起の位置を理解する際に必ずセットで押さえておきたいのが、上顎洞との解剖学的な近接性です。上顎洞は上顎骨体の内部にある副鼻腔の一つで、副鼻腔の中では最も大きな空間です。成人では鶏卵1個分ほどの容積(約15〜20mL)を持ち、歯槽突起のすぐ上に位置します。
これが使えそうです。
特に問題になるのが、上顎第一大臼歯から第二大臼歯にかけての部位です。この部分では上顎洞底が歯槽突起の根尖ときわめて近接しており、場合によっては歯根が上顎洞内に突出していることすらあります。この解剖学的特徴が引き起こす臨床問題として、以下が代表的です。
インプラント埋入前に垂直的骨量が5mm以下になった場合、上顎洞底挙上術(サイナスリフト・ソケットリフト)が必要となります。サイナスリフトの費用相場は10〜35万円、ソケットリフトで3〜10万円程度であり、抜歯後に適切なリッジプリザベーション(歯槽堤保存術)を行わなかった場合に患者が後から負担する追加コストは非常に大きくなります。歯槽突起の吸収リスクについて、抜歯前の段階から患者に説明しておくことが重要です。
参考:小嶋デンタルクリニック「上顎洞と上の歯との関係」
https://ryu-medical.com/2020/08/03/上顎洞と上の歯との関係/
「歯を抜いたら骨が減る」という知識は多くの歯科従事者が持っていますが、その速度と量を具体的な数値として把握している人は意外と少ないものです。厳密な数字を知ることで、患者への説明と治療計画の質が大きく変わります。
報告されているデータでは、抜歯後6ヶ月間の平均骨吸収量は水平的に約3.79mm、垂直的に約1.24mmとされています。3.79mmという水平的吸収量は、ちょうど鉛筆の直径ほどの骨量が消えるイメージです。
これは痛いですね。
さらに、吸収は均一には起こりません。頬側(唇側)の骨壁は舌側・口蓋側に比べて海綿骨が多く、皮質骨が薄いため、頬側から優先的に吸収が進む傾向があります。その結果、抜歯後の歯槽突起は頬側が内陥する形で変形し、義歯の安定性やインプラント位置の選定に支障をきたすことがあります。
この吸収に対抗するために有効な処置として「リッジプリザベーション(歯槽堤保存術・ソケットプリザベーション)」があります。抜歯と同時に抜歯窩へ骨補填材を填入して膜で覆い、歯槽突起の吸収を最小限に抑える術式です。費用相場は5〜15万円程度(自由診療)ですが、これを行わなかった場合には後から骨造成(GBR法:3〜15万円)や上顎洞底挙上術が必要になることがあります。抜歯時にインプラントの可能性が少しでもある患者には、早期にこの選択肢を提示しておくことが患者にとっての大きなメリットになります。
参考:小嶋デンタルクリニック「抜歯後は骨が萎縮する」(骨吸収の数値・リッジプリザベーションの解説)
https://ryu-medical.com/2024/05/02/抜歯後は骨が萎縮する/
歯槽突起の吸収度合いは、歯周病の評価指標として臨床的に活用されるだけでなく、法歯学(ほうしがく)の分野では「年齢推定」のための指標としても使われています。これは多くの歯科従事者があまり意識していない活用例のひとつです。
永久歯列の歯槽突起吸収指数を用いた年齢推定法は、X線写真上で歯根長に対する歯槽骨の吸収量を数値化し、加齢による吸収の進行パターンから年齢を推定するアプローチです。奈良県立医科大学をはじめとする研究機関で研究されており、「生死を問わずに応用できる点」「複雑な実験機器を必要としない点」が法医学・歯科鑑定の場での利点とされています。
これは使えそうです。
なぜこのような方法が成立するかというと、歯槽突起の吸収は生理的な加齢変化としても緩やかに進行するためです。歯周病のない正常な歯列でも、加齢とともに歯槽頂の位置は徐々に根尖方向へ移動し、一定の規則性を持った骨吸収パターンを示します。この点は、日常の歯周検査でX線写真を撮影する際にも意識すると、長期的な経過観察において役立つ視点です。
歯槽突起は「今ここにある骨」を評価するだけでなく、その人の口腔の歴史を記録している構造でもあります。抜歯の履歴、歯周病の既往、咬合力のかかり方、年齢、これらすべてが歯槽突起の形態に反映されます。治療計画を立てる際に、X線写真から歯槽突起の状態を丁寧に読み取る習慣を持つことが、より精度の高い診断につながります。
参考:奈良県立医科大学学術リポジトリ「永久歯列の歯槽突起吸収指数を用いての年齢推定」
奈良医大リポジトリ PDF

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