ユーイング肉腫大人の発症と診断治療

ユーイング肉腫は小児の病気と思われがちですが、成人にも発症します。大人のユーイング肉腫は診断が遅れやすく、予後が小児より不良な傾向があることをご存知でしょうか?

ユーイング肉腫大人の発症と特徴

成人のユーイング肉腫は診断が数カ月遅れるだけで予後が悪化します。


この記事の3つのポイント
📊
成人発症の特徴

ユーイング肉腫は主に10代に発症しますが、成人でも発症し、診断の遅れや副作用の強さから小児より予後が不良な傾向があります

🦷
歯科領域での発症

口腔領域のユーイング肉腫の約86%が下顎骨に発生し、歯科医が初診となるケースも多く、早期診断のための知識が重要です

💊
集学的治療の必要性

化学療法、手術、放射線治療を組み合わせた集学的治療により、限局性ユーイング肉腫の5年無病生存率は60〜70%まで向上しています


ユーイング肉腫大人の発症頻度と年齢分布


ユーイング肉腫は小児から若年成人に多く発症する希少な悪性腫瘍ですが、成人での発症も決して珍しくありません。米国における発生頻度は、小児から若年成人100万人に対して1〜2人程度と報告されています。日本では年間約100例未満の発症数と推定されており、骨原発性悪性腫瘍の中では骨肉腫に次いで2番目に多い腫瘍です。


発症年齢の中央値は15歳で、10歳代が全体の約3分の2を占めます。活動性の高い10代に好発するという特徴があります。しかし、40歳以上での成人発症例も報告されており、実際に40歳でユーイング肉腫を発症した患者の闘病記録も公開されています。成人での発症は小児よりもまれであるため、診断が遅れやすいという問題があります。


人種的には白人系に圧倒的に多く、アジア人系やアフリカ人系には少ないとされています。日本整形外科学会骨軟部腫瘍委員会の集計によると、2006年から2017年にかけて総数644例、年間54例が報告されています。男女比は1.6対1とやや男性に多い傾向が見られます。


成人のユーイング肉腫はまれで診断が遅れやすいことが大きな課題です。


発生部位は骨原発が75〜80%を占めており、骨盤が25%、大腿骨が16%、脛骨・腓骨が14%、胸壁が12%、上肢が8%、脊椎が8%という順で好発します。骨肉腫と異なり、長管骨では骨幹部(骨の中央部分)に発生することが多いという特徴があります。骨以外にも体中の軟部組織のどこにでも発生することがわかっており、現在はユーイング肉腫ファミリー腫瘍と呼ばれています。


診断時に既に遠隔転移がある場合は予後が大きく悪化します。転移しやすい部位は肺、骨、骨髄などで、診断時に遠隔転移がある場合の5年生存率は20〜30%程度に低下すると報告されています。一方、限局性ユーイング肉腫の5年無病生存率は60〜70%と比較的良好な成績が得られるようになっています。


ユーイング肉腫大人の初期症状と診断の遅れ

ユーイング肉腫の初期症状は発生部位によって異なりますが、最も一般的なのは腫瘍がある部位の痛みと腫れです。


病変部の腫脹や疼痛が主な症状となります。


痛みは持続的で、夜間や安静時にも増強することがあるという特徴があります。間欠的な痛みや夜間に増強する痛みを生じることもあり、無痛性の硬い腫瘤のみで発症することもあります。


ユーイング肉腫の好発年齢は活動性の高い10代であり、成長痛や外傷による疼痛と判断されることが多く、診断までに数カ月かかることも珍しくありません。若年者に多い病であるため、成長痛や運動などが原因の外傷と診断され、診断の機会を逃してしまうケースが少なくないのです。実際に、13歳でユーイング肉腫を発症した患者の体験談では、「最初は成長痛だろうとのんきに構えていたが、痛みはずっと消えなかった」と語られています。


初診時には骨髄炎、蜂窩織炎、耳下腺炎などの感染症と診断されることも多いです。抗菌薬による消炎処置が行われていることも少なくありません。歯周炎による歯の動揺含歯性嚢胞、中耳炎、感覚異常として診断を受け、外科処置や経過観察を受けている場合もあります。顎骨に発生した症例では、歯肉に瘻孔と腫脹を認めるため、歯科で抗菌薬の投与を受けているケースも報告されています。


つまり誤診が非常に多いということですね。


病変が進行するに従い、疼痛や発熱、倦怠感を伴うことがあります。体重減少や疲労感などが見られることもあります。骨に発生した場合、骨折しやすくなることもあり、これを病的骨折と呼びます。骨盤や胸壁など触知しにくい部位に発生していると診断がさらに遅れる傾向があります。


ユーイング肉腫は比較的進行が速いがんで、数カ月で症状が顕著になることがあります。悪性度の高い腫瘍であり、一般的に進行が速いとされています。症状が出始めてから数週間から数カ月で、腫瘍が目に見えて大きくなったり、痛みが強くなったりすることがあります。速やかに進行することが多く、診断が遅れると肺や骨などに転移をきたすリスクが高まります。そのため、早期診断と適切な治療が予後に大きな影響を与えるのです。


成人のユーイング肉腫は診断が遅れやすく、副作用も強く出やすいため、小児より予後が不良な傾向があります。成人発症の場合、疾患の認知度が低いことや、他の疾患との鑑別が難しいことが診断の遅れにつながっています。早期診断のため、現病歴・臨床所見・CT・MRI・骨シンチグラフィー・生検などによる多面的な精査が有効です。


ユーイング肉腫の顎骨発生と歯科医の役割

口腔領域のユーイング肉腫は頭頸部領域での発生の中でもまれですが、歯科医療従事者にとって重要な疾患です。本邦では口腔領域のユーイング肉腫について過去に10例の報告があり、海外では50例以上の報告が確認されています。報告例を検討したところ、男女比に差はありませんでしたが、約60%が15歳以下の若年者でした。


口腔領域では約86%が下顎骨に発症しています。ついで上顎骨、上顎洞に認められ、硬口蓋や副咽頭に発症している報告もあります。下顎骨原発が圧倒的に多いという事実は、歯科医が初診となる可能性が高いことを意味しています。


初期の臨床症状としては、無痛性の腫脹が最も多く見られます。


腫脹部分に軽度の疼痛を伴うものもあります。


潰瘍、開口障害、歯の動揺を認めるものは少ないとされますが、これらの症状が見られることもあります。下顎骨に発生した症例では、頰側歯肉に瘻孔を認めるケースが報告されています。


歯科医が見逃しやすいポイントが存在します。


顎骨のユーイング肉腫では、CT検査において骨膜反応像(旭日像)が認められることがあります。これは骨周囲に骨梁形成を伴う骨膜反応像で、診断の重要な手がかりとなります。しかし、156例中少数例にしか骨膜反応は認められないという報告もあり、初期兆候では判断が困難な場合もあります。


MRI検査では、T1強調画像にて低信号、T2強調画像にて高信号を呈する所見が見られます。比較的境界明瞭な病変として描出されることが多いですが、周囲組織への浸潤の有無を正確に評価することが重要です。PET検査では顎骨病変の辺縁に集積亢進を認めることがあります。


診断を確定するためには、腫瘍の一部を摘出する腫瘍生検術が必須です。摘出された腫瘍組織は、病理専門医により形態学的にユーイング肉腫として診断されます。病理組織学的には、小型類円形で濃染核をもつ異型細胞が線維化を伴い増殖している像が確認されます。免疫化学染色が診断の補助に有用で、特にCD99で細胞膜にびまん性の濃染が確認されることが特徴的です。


歯科医師および小児歯科医は、口腔内または口腔外の腫脹が急速に拡大している症例を診断する際には、高い疑念指数を持つべきだと専門家は指摘しています。単なる歯科感染症や良性腫瘍として経過観察するのではなく、悪性腫瘍の可能性を常に念頭に置き、必要に応じて速やかに専門医療機関への紹介を行うことが重要です。


鑑別診断はかなり広範囲にわたります。小型円形細胞腫瘍成分は形態的に滑膜肉腫やEwing肉腫などとの鑑別を要し、免疫染色所見も非特異的であるため、小さな生検組織では診断が困難な場合があります。歯槽骨横紋筋肉腫、脱脂性小円形細胞腫瘍、分化不良な円形細胞滑膜肉腫、小細胞骨肉腫なども鑑別に挙げられます。


日本口腔外科学会雑誌の下顎骨ユーイング肉腫症例報告には、12歳男児の詳細な診断と治療経過が記載されており、歯科医療従事者にとって貴重な参考資料となっています。


ユーイング肉腫大人の治療法と予後因子

ユーイング肉腫の治療は、化学療法、手術、放射線治療を組み合わせた集学的治療が標準とされています。


この3つの治療法が重要な三本柱です。


治療方針としては、まず抗がん剤による微小転移の制御や腫瘍サイズの縮小を目的とした化学療法を先行させます。


化学療法は通常、VCR(ビンクリスチン)、CDDP(シスプラチン)、CPA(シクロホスファミド)、IFM(イホスファミド)、ETP(エトポシド)などの薬剤を組み合わせた多剤併用療法が行われます。VDC-IE療法(ビンクリスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミドとイホスファミド、エトポシドの交替療法)が標準的なレジメンとして用いられています。化学療法導入により、ユーイング肉腫の5年生存率は10%から70%に劇的に改善されたと報告されています。


手術は通常、化学療法または放射線療法の実施後に残ったがんを取り除く目的で行われます。


可能であれば、手術で腫瘍全体を切除します。


組織や骨を含めて広範囲に切除することで、腫瘍の完全な除去を目指します。下顎骨に発生した場合、下顎骨半側切除や区域切除が行われ、遊離腹直筋皮弁などによる再建が行われることがあります。


手術単独では再発リスクが高いのです。


ユーイング肉腫は高い放射線感受性を有する腫瘍です。放射線治療は化学療法導入以前から標準治療の一部として応用されてきました。放射線治療の線量については50〜60Gyが根治線量とされていますが、手術の切除度合や初期(術前)化学療法の効果によって調整されます。手術が不可能な場所では、放射線治療を先行させて、可能であれば手術を行います。


治療効果や予後は、いくつかの因子に左右されます。


最も重要な予後因子は遠隔転移の有無です。


診断時に既に遠隔転移がある場合、3年無病生存率は20〜30%程度まで低下します。遠隔転移がみられた症例のうち、79%は3年以内に死亡しており、死亡例のほとんどが遠隔転移によるものでした。


腫瘍の大きさも重要な予後因子です。原発腫瘍のサイズが8cm以上のものは予後が悪く、腫瘍径が8cm以上で転移と高LDH血症を認める症例は1年後に再発を来し、予後不良であったという報告があります。それに加え、腫瘍の位置、患者の全身状態、化学療法に対する反応性にも予後は影響されます。


再発に関しては特に注意が必要です。ユーイング肉腫は再発後の予後がよくありません。特に診断後2年以内の再発は大変予後が悪いとされます。診断後2年以内に再発した場合の5年生存率はわずか5%程度と報告されています。一方、診断後2年以降に再発した場合の5年生存率は34.9%とやや改善します。


成人発症Ewing肉腫は予後不良とされていますが、VDC-IEの交替療法を含む集学的治療を行うことで良好な成績が得られたという報告もあります。ただし、既報のとおり腫瘍径が8cm以上で、転移と高LDH血症を認める症例は予後不良であり、成人例においても予後因子を明らかにして治療戦略を立てることが重要です。


日本小児がん研究グループのユーイング肉腫解説ページでは、患者とご家族向けに治療法や予後について詳細な情報が提供されています。


ユーイング肉腫治療後の長期フォローと二次がんリスク

ユーイング肉腫の治療後は、長期にわたる慎重な経過観察が必要です。特に注目すべきは、治療関連性の二次がんの発生リスクです。ユーイング肉腫に対する放射線治療・化学療法を受けた後、20年間で二次癌の発生が確認されるものは9.2%と報告されています。そのうち肉腫の発生が最も多く6.2%にみられ、発生までの平均期間は7.6年です。


二次癌の主なリスク因子は放射線照射であり、原発腫瘍の近傍で放射線照射領域内に発生する傾向があります。照射線量が48Gy以上で二次癌発症のリスクがあり、60Gy以上で発症率は有意に高くなるとされています。45Gyの照射であれば二次癌発生のリスクは比較的低いと考えられますが、45Gyの照射で二次癌が発生している報告もあり、照射線量にかかわらず注意深い経過観察が必要です。


二次癌の発生は長期的なリスクです。


化学療法に関連した二次癌として、急性骨髄性白血病の発症リスクが有意に上昇することも報告されています。ユーイング肉腫患者における急性骨髄性白血病の発症は、治療の合併症として認識されています。特に濃度依存型抗がん剤を多量に投与する自家末梢血幹細胞移植併用超大量化学療法(PBSCT)を受けた患者では、このリスクがさらに高まる可能性があります。


長期フォローでは、再発や転移のチェックだけでなく、二次癌の早期発見も重要な目的となります。定期的な画像検査、血液検査、身体診察を通じて、異常の早期発見に努める必要があります。CT検査、MRI検査、PET検査などの画像診断を定期的に実施し、新たな病変の出現がないか確認します。


放射線治療後の晩期合併症にも注意が必要です。顎骨に放射線照射を受けた場合、顎位の偏位や咬合異常が生じることがあります。下顎半側欠損による患側後方への顎位の偏位を認めた症例では、Functional-Bite Jumping Appliance装置を装着し、顎位の改善を図る治療が行われています。成長期の患者では骨の成長障害も考慮する必要があります。


化学療法の晩期合併症としては、心機能障害、腎機能障害、聴力障害、不妊などが知られています。ドキソルビシンなどのアントラサイクリン系薬剤は心毒性があり、長期的な心機能のモニタリングが必要です。シスプラチンは腎毒性や耳毒性があるため、腎機能と聴力の定期的な評価が推奨されます。


心理社会的サポートも長期フォローの重要な要素です。若年で発症した患者は、学業や就職、結婚など人生の重要な局面で治療を受けることになります。治療による身体的な変化や機能障害は、患者の自尊心や社会生活に大きな影響を与える可能性があります。医療チームは、患者と家族に対して継続的な心理的支援を提供する体制を整える必要があります。


国立がん研究センター希少がんセンターの骨肉腫情報ページでは、ユーイング肉腫を含む骨肉腫の治療や長期フォローに関する詳細な情報が提供されており、患者と医療従事者双方にとって有用な資料となっています。


治療完了後も数十年にわたる経過観察が推奨されます。特に二次癌のリスクは治療後長期間にわたって持続するため、定期的な受診を継続することが大切です。患者自身も、異常な症状を感じた場合には速やかに医療機関を受診する意識を持つことが重要です。




ユーイング肉腫サバイバー - ユーイング肉腫がん啓発 長袖Tシャツ