
食形態分類を歯科医療で扱うとき、まず押さえたいのは、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」が、食事ととろみを分けて整理した共通言語だという点です。 学会分類2021は、施設ごとにバラバラだった名称をそろえ、急性期病院から施設、在宅までの連携で不利益を減らす目的で作られています。 共通言語が目的ですね。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
食事側はコード0、1、2、3、4の5段階で構成され、実際の表示は0j、0t、1j、2-1、2-2、3、4のように細分化されます。 とろみ側は別軸で、薄い・中間・濃いの3段階です。 つまり別管理です。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
ここを混同すると、食事形態はコード3なのに汁物はサラサラ、という危うい運用が起きます。学会分類2021では、食事分類の早見表に液体の詳細は書かれていなくても、原則として汁物を含む水分にはとろみ付けを想定しています。 歯科医師や歯科衛生士が食形態を話題にするときは、主食・副食・水分を分けて確認するだけで、伝達事故をかなり減らせます。 web.pref.hyogo.lg(https://web.pref.hyogo.lg.jp/hnk06/documents/a3_leaflet.pdf)
学会分類2021の大きな特徴は、分類が「調理法」ではなく「でき上がった食品の形状・性状」に基づくことです。 たとえば「ミキサー食」という名前でも、スプーンですくえるか、べたつかないか、離水しないかで、コード2に該当しないことがあります。 名称で決めないことが原則です。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
歯科の現場では、咀嚼機能と嚥下機能を一緒に語りがちですが、学会分類2021でも「必要な咀嚼能力」の欄を設けつつ、それだけで嚥下可能とは判断できないと明記しています。 咀嚼が強くても嚥下に問題がある患者、逆に歯が少なくても比較的広い食形態に対応できる患者は珍しくありません。 そこが難所ですね。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
コード0jは、重度症例の評価・訓練用で、2~3g程度、長さ2cm×幅2cm×厚さ5mm程度のスライス状食塊をそのまま丸のみできるゼリーが想定されています。 残留しても吸引しやすく、たんぱく質含有量が少ないことが望ましいとされています。 かなり限定的です。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
コード0tは、ゼリー丸のみで誤嚥しやすい場合や、ゼリーが口腔内で溶けてしまう場合に選ばれる、とろみ水ベースの訓練用です。 原則として中間のとろみ、または濃いとろみが対応し、粘度は150~300mPa・sが中間、300~500mPa・sが濃いとろみの目安です。 数字で確認できます。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
コード1jは、ゼリー・プリン・ムース状で、咀嚼は不要ですが、送り込みの際に多少意識して舌を口蓋に押しつける必要がある段階です。 一口量は5g以下が目安とされ、市販品でも硬すぎるものや離水が多いものはコード3や4に外れる可能性があります。 ゼリーなら安全とは限りません。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
コード2は2-1と2-2に分かれます。2-1は均質でなめらかなペースト、2-2はやわらかい粒を含む不均質なものです。 この差は小さく見えて実務上は大きく、委員会Q&Aでは、0tの次段階としていきなり不均質な2-2ではリスクが高いため、均質な2-1を1段入れる必要性が示されています。 ここは見落としやすいです。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
コード3は、形はあるが舌と口蓋で押しつぶせ、食塊形成しやすく、多量の離水がないものです。 コード4はさらに一般食に近づきますが、箸やスプーンで切れるやわらかさで、ばらけにくく貼りつきにくいことが条件で、歯がなくても歯槽堤間で押しつぶせる程度が想定されています。 形があるだけでは足りません。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
歯科従事者が見分けるときは、義歯の有無だけでなく、舌でまとめられるか、口蓋に押しつけられるか、唾液で崩れすぎないか、口腔内でばらけないかを見ると判断しやすくなります。兵庫県の資料でも、施設ごとに「やわらかい」の意味が違い、食形態のイメージずれが課題だと整理されています。 言葉より観察です。 web.pref.hyogo.lg(https://web.pref.hyogo.lg.jp/hnk06/documents/a3_leaflet.pdf)
食形態Webマップの活用例が参考になること、施設間比較で主食・副食の区分を見える化できることは、歯科が退院前カンファレンスに入る際のヒントになります。
兵庫県のリーフレット:学会分類2021と施設間の食形態比較、食形態Webマップの使い方がまとまっています
歯科現場で最も誤解が多いのが「刻み食なら安全」という発想です。ですが学会分類2021のQ&Aでは、十分にやわらかいものを小さく刻んで中間または濃いとろみのあんをかけたものはコード3または4であり、コード2-2には該当しないと明記されています。 刻み食万能説はダメです。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
さらに、硬い食材を刻んであんをかけただけでは、嚥下調整食として適切ではない場合があります。 粒が細かいほど安全に見えますが、実際には口腔内で散らばりやすく、食塊形成しにくく、咽頭へばらけて流れ込むことがあります。 意外ですね。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
ミキサー粥も同じです。粥をそのままミキサーにかけると時間とともに「糊状」になり、付着性が増してコード2に適した食品にならないとされています。 でんぷん分解酵素やゲル化剤を用いた調整が必要になることがあり、単なる機械処理では不十分です。 ここも重要です。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
全粥も安心しきれません。食事中に唾液中のα-アミラーゼが混入すると離水が進み、コード2からコード4相当へ性状が変わることがあるとQ&Aで説明されています。 摂食に時間がかかる患者では、見た目は同じでも途中で危険性が上がるため、少量ずつ取り分ける、あるいはとろみ調整剤を使うなどの工夫が役立ちます。 離水に注意すれば大丈夫です。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
歯科衛生士が食事観察をするときは、「最初の3口」だけでなく「10分後の同じ食種」を見ると、離水や疲労による変化を拾いやすくなります。食塊形成不良が起きる場面を先に見つけられれば、誤嚥や食事時間の長期化、スタッフの再調整にかかる時間損失を減らせます。 現場負担の軽減にもつながります。 web.pref.hyogo.lg(https://web.pref.hyogo.lg.jp/hnk06/documents/a3_leaflet.pdf)
食形態分類を本当に使える形にするには、コード暗記より、口腔機能評価との接続が大切です。学会分類2021では、コード3で「舌と口蓋間の押しつぶし能力以上」、コード4で「上下の歯槽堤間の押しつぶし能力以上」が目安として示されています。 つまり歯科は主役です。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
義歯不適合、口腔乾燥、舌圧低下、頬圧不足、口唇閉鎖不全があると、見かけ上は同じコード3でも実際の食べやすさが大きく変わります。どういうことでしょうか? 食形態分類は完成品の分類ですが、実際にその分類を食べこなせるかは口腔内での保持・移送・押しつぶし能力に左右されるからです。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
たとえば義歯が外れやすい高齢者にコード4の軟菜食を出しても、上下歯槽堤での押しつぶしが不安定なら口腔内でばらけてしまいます。一方で、歯が少なくても舌と口蓋でしっかりまとめられる患者なら、コード3を安定して摂取できることがあります。 個別評価が条件です。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
ここで役立つのが、歯科側の所見を食形態の言葉に翻訳する作業です。たとえば「舌圧低下あり」だけではなく、「コード2-2の不均質粒は送り込みで散りやすい」「コード3なら一口量を小さくすれば可能」など、実際の食場面に変換して共有します。 伝わる記録が基本です。 web.pref.hyogo.lg(https://web.pref.hyogo.lg.jp/hnk06/documents/a3_leaflet.pdf)
誤嚥性肺炎に関しても、高齢者肺炎の70%以上が誤嚥性肺炎とされる資料があり、口腔機能と食形態の不一致を放置するコストは小さくありません。 歯科が食形態の見直しに入ることで、口腔衛生管理だけでなく、食支援そのものの安全性向上に関与できます。 知っていると得です。 oda.or(https://www.oda.or.jp/pdf/pab_m13.pdf)
実務で一番効くのは、「やわらか食」「ミキサー食」と書かないことです。学会分類2021本文でも、施設独自の食種名は規制できないが、退院時や施設間連携では、主食はコード3、副食はコード2~4のように、どのコードの食品で構成されているか明記すると混乱しにくいと述べています。 コード併記が原則です。 pref.tochigi.lg(https://www.pref.tochigi.lg.jp/e53/kennnanhp/documents/20251110100723.pdf)
兵庫県のリーフレットでも、施設によって「軟らかい」の意味が違い、医療職との情報共有でギャップが生まれやすいこと、転入所時には対応区分がなければ、まず低い区分にして嚥下状態を確認して再決定することが勧められています。 安全側から始める考え方ですね。 web.pref.hyogo.lg(https://web.pref.hyogo.lg.jp/hnk06/documents/a3_leaflet.pdf)
歯科医院や訪問歯科で記録するなら、最低でも次の5点をそろえると使いやすくなります。
・主食の分類
・副食の分類
・水分のとろみ段階
・一口量の目安、例として5g以下など
・観察された問題、例として離水、口腔内残留、疲労、むせ
これだけで、病棟、施設、家族、訪問看護、管理栄養士との話がかなり噛み合います。つまり共通言語です。さらに、スーパーのゼリーや茶碗蒸しには果肉や具が入る不均質なものがあり、嚥下機能によっては危険になると兵庫県資料でも注意されています。 市販品は問題ないんでしょうか?という問いには、商品名ではなく物性確認が答えになります。 web.pref.hyogo.lg(https://web.pref.hyogo.lg.jp/hnk06/documents/a3_leaflet.pdf)
院内での対策を1つに絞るなら、食形態確認票を作ることです。施設間で名称が違うリスクを減らす場面なら、狙いは伝達ミスの削減で、候補は「学会分類コード欄つきの食事観察メモを1枚使う」です。 1枚で十分です。 web.pref.hyogo.lg(https://web.pref.hyogo.lg.jp/hnk06/documents/a3_leaflet.pdf)
学会分類2021の原文を確認したい場合は、早見表だけでなく本文のQ&Aまで読むと、刻み食や離水、ミキサー粥の落とし穴まで理解できます。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会の学会分類2021本文:コード別定義、Q&A、とろみ基準、刻み食の扱いまで確認できます

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