きざみ食を提供するほど、誤嚥性肺炎のリスクが上がることがあります。
食形態の分類として現在の標準となっているのが、「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021(学会分類2021)」です。 2013年に初版が発表され、新たな知見をもとに2021年に改訂されました。 病院・施設・在宅医療および福祉関係者が共通して使用できることを目的に制定されています。 s88e98c680409559c.jimcontent(https://s88e98c680409559c.jimcontent.com/download/version/1458714774/module/12387697790/name/%E9%A3%9F%E5%BD%A2%E6%85%8B%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%EF%BC%88%E6%8F%90%E5%87%BA%E7%94%A8%EF%BC%89.pdf)
学会分類2021は「食事」と「とろみ」の2項目に分かれています。 食事はコード0〜4の5段階、とろみは段階1〜3の3段階に分類されています。 つまり食事ととろみを組み合わせて、患者一人ひとりの嚥下機能に合わせた提供が可能になるわけです。 almediaweb(https://www.almediaweb.jp/swallowing/swallowing-care-002/part7/01.html)
各コードの概要は以下のとおりです。
| コード | 名称の目安 | 形態の特徴 | 必要な口腔機能 |
|---|---|---|---|
| 0j | 嚥下訓練食(ゼリー) | 均質・なめらかなゼリー状 | 舌で送り込む程度 |
| 0t | 嚥下訓練食(とろみ水) | とろみのついた水分 | 送り込みのみ |
| 1j | 嚥下調整食1j | 均質なゼリー・プリン状 | 舌の軽い動きで変形 |
| 2-1 | 嚥下調整食2-1 | 均質でなめらかなペースト | 舌と下顎で食塊形成 |
| 2-2 | 嚥下調整食2-2 | 不均質なものも含むムース状 | 下顎と舌の運動 |
| 3 | 嚥下調整食3(ソフト食) | 舌で押しつぶせるやわらかさ | 舌による押しつぶし |
| 4 | 嚥下調整食4 | 箸やスプーンで切れるやわらかさ | 歯槽堤での押しつぶし |
コード番号が大きいほど通常食に近く、小さいほど嚥下機能が低い方向けです。 これが基本です。 kaigosyoku-lab.benesse-palette.co(https://kaigosyoku-lab.benesse-palette.co.jp/blog/2025/10/33.html)
歯科的な観点でいえば、義歯の状態や残存歯数によってどのコードが適切かが変わります。 義歯調整や歯科治療を行うだけで、食形態を1段階上げられるケースも珍しくありません。 hosp.jihs.go(https://www.hosp.jihs.go.jp/s027/100/A_202409.pdf)
参考:学会分類2021の正式な基準文書(日本摂食嚥下リハビリテーション学会)
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021(公式)
学会分類2021が標準とはいえ、それ以外の分類体系も現場では使われています。 代表的なものに「嚥下ピラミッド」と「スマイルケア食」があります。 clinico.co(https://www.clinico.co.jp/columns/carefood003/)
嚥下ピラミッドは、金谷栄養研究所所長の金谷節子氏が2004年に発表した分類で、摂食・嚥下の難易度にもとづき普通食から嚥下食まで6段階に分けています。 歯科臨床では、嚥下ピラミッドと学会分類の対応関係を把握しておくと、多職種連携の場で話がかみ合いやすくなります。これは使えそうです。 healthy-food-navi(https://healthy-food-navi.jp/?post_type=search&p=75)
スマイルケア食は消費者庁が制定したもので、青・黄・赤のマークで食品を区分します。 clinico.co(https://www.clinico.co.jp/columns/carefood003/)
- 🔵 青マーク:栄養補給が必要な方向け(咀嚼・嚥下問題なし)
- 🟡 黄マーク:かむことに問題がある方向け(4段階に細分)
- 🔴 赤マーク:飲み込みに問題がある方向け
患者が市販の介護食品を使う場面では、このマーク体系が学会分類のどのコードに対応するか確認する習慣が重要です。 現場では施設によって呼称が混在しているため、分類間の対応表を手元に置いておくと効率的です。 clinico.co(https://www.clinico.co.jp/columns/carefood003/)
参考:学会分類以外の分類体系を詳しく解説(クリニコ)
学会分類以外の食形態の分類について|森永乳業クリニコ
「細かく刻めば食べやすい」という認識は、実は半分しか正しくありません。 きざみ食は咀嚼機能が低下した方に向けた食形態ですが、嚥下機能が同時に低下している場合には危険が増します。 engesyoku(https://www.engesyoku.com/kiso/kiso04.html)
口の中でパラパラした食材はまとまりにくく、咽頭に残留しやすくなります。 そのまま気道に入ると誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まります。誤嚥が続くと命に関わります。 tyojyu.or(https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/koureisha-shokuji/hint-kizakishoku.html)
きざみ食の問題はもう一つあります。刻むことで食材の切断面が増え、細菌が増殖しやすい環境になります。 調理済みのきざみ食は再加熱されずに提供されることが多く、時間経過とともに細菌数が増えるという点は見落とされがちです。 kaigosyoku-lab.benesse-palette.co(https://kaigosyoku-lab.benesse-palette.co.jp/blog/2025/07/post-22.html)
歯科従事者が患者の食形態をアセスメントする際には、「咀嚼機能」と「嚥下機能」を分けて評価することが原則です。 噛む機能だけに問題があるならコード3〜4、嚥下機能も低下しているならコード0〜2の検討が必要になります。きざみ食のコードは学会分類2021には独立したカテゴリとして存在せず、適切な段階のコードに置き換えることが推奨されています。 engesyoku(https://www.engesyoku.com/kiso/kiso04.html)
参考:きざみ食と誤嚥リスクの関係を詳しく解説
リスクが大きい「きざみ食」|嚥下食の基礎知識
食形態の分類では、食事のコードだけでなく「とろみ」の段階も同時に設定する必要があります。 学会分類2021のとろみは、薄いとろみ(段階1)・中間のとろみ(段階2)・濃いとろみ(段階3)の3段階です。 nutri.co(https://www.nutri.co.jp/nutrition/society_classification/index.html)
ここで注意したいのは、「とろみを濃くすれば安全」という思い込みです。 濃いとろみは口腔内に付着しやすく、咽頭に残留するリスクがかえって高まる場合があります。 とろみは適切な濃度にする、という点が条件です。 eiyounet.nestlehealthscience(https://www.eiyounet.nestlehealthscience.jp/archives/swallowing)
歯科的な口腔機能の観点からいえば、舌の運動機能・口唇閉鎖力・唾液分泌量が、とろみの適切な段階を左右します。 口腔乾燥がある患者では、食材の付着性が高まるため、とろみ段階を慎重に選ぶ必要があります。 hosp.jihs.go(https://www.hosp.jihs.go.jp/s027/100/A_202409.pdf)
とろみ調整食品を使う場合、製品によって同じ添加量でも粘度にばらつきがあります。 施設内でスタンダードを決め、調製方法を統一することが誤差を減らす上で有効です。 eiyounet.nestlehealthscience(https://www.eiyounet.nestlehealthscience.jp/archives/swallowing)
参考:とろみの段階と活用方法の詳細
共通言語化した基準「学会分類」|ニュートリー株式会社
食形態の分類を正確に知っていても、多職種間で共有されなければ意味がありません。 従来は施設・病院ごとに独自の名称が使われており、「軟菜食」「ミキサー食」「きざみ食」といった呼び方が混在していました。 学会分類2021のコードを用いることで、職種を超えた共通言語が生まれます。 s88e98c680409559c.jimcontent(https://s88e98c680409559c.jimcontent.com/download/version/1458714774/module/12387697790/name/%E9%A3%9F%E5%BD%A2%E6%85%8B%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%EF%BC%88%E6%8F%90%E5%87%BA%E7%94%A8%EF%BC%89.pdf)
歯科従事者が多職種連携に貢献できる具体的な場面は以下のとおりです。
口腔機能の維持・向上が食形態を改善させるという視点は、看護や介護スタッフには馴染みが薄い部分です。 歯科従事者がこの視点を提供することで、患者のQOL向上につながる意思決定が促せます。これが原則です。 hosp.jihs.go(https://www.hosp.jihs.go.jp/s027/100/A_202409.pdf)
分類の段階変更を提案する際は、VF検査(嚥下造影)やVE検査(嚥下内視鏡)の結果を根拠に示すと、他職種への説得力が上がります。 判断に迷ったときは検査につなぐ、というルーティンを持つことが安全管理の上で有効です。 hosp.jihs.go(https://www.hosp.jihs.go.jp/s027/100/A_202409.pdf)
参考:観察による食形態判定の実践的手引き
観察による食形態判定のための手引き|国立感染症研究所病院