迷走神経咽頭枝を電気刺激した実験では、輪状咽頭筋に「強い収縮」が確認されています。 一方、同じ下咽頭収縮筋群の甲状咽頭筋は刺激に対して均一に反応するのに対し、輪状咽頭筋は刺激側から非刺激側にかけてグリコーゲン枯渇の勾配が生じることが報告されており、支配様式に独自の特性があります。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771328/)
迷走神経が基本です。
ただし、注意点があります。
輪状咽頭筋の筋線維レベルでは、肉眼的に「両側の咽頭食道神経に支配される形態」に見えても、実際には各筋線維が一側の咽頭食道神経のみの支配を受けており、正中部から対側の輪状軟骨付着部にかけて徐々に停止します。 これは臨床的に片側性の麻痺でも嚥下機能が一定程度保たれる理由の一つです。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771328/)
参考:輪状咽頭筋の神経支配様式の詳細な研究報告(KAKEN)
輪状咽頭筋の神経支配様式に関する研究 - 科学研究費助成事業データベース
意外ですね。
交感神経優位の状態(交感神経作動薬投与下)では、副交感神経優位の状態と比較して輪状咽頭筋により大きな活動電位が観察されるという報告があります。 つまり、交感神経が優位になると輪状咽頭筋のダイナミックな収縮・弛緩運動に影響が出ることが示されています。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20K18270/)
ストレス・緊張・痛みなど交感神経が亢進する場面、たとえば歯科治療中の局所麻酔時や抜歯処置時に患者が強い緊張状態にある場合、輪状咽頭筋の動態が変化している可能性があります。これが「歯科治療中の誤嚥リスク」と関わるメカニズムの一端と考えられます。
参考:食道入口部括約機構における自律神経支配様式の最新研究
食道入口部括約機構における自律神経支配様式の解明 - 科学研究費助成事業
輪状咽頭筋は遅筋(タイプ1線維)が約70〜76%を占めており、速筋(タイプ2線維)が主体の甲状咽頭筋とは対照的な構成です。 これは常時収縮して食道入口部を閉鎖し続けるという「括約筋的機能」に適した構造です。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771328/)
つまり「常時締まっている」が基本です。
輪状咽頭筋の筋線維径を測定すると、タイプ1線維が平均27.2±9.1μm、タイプ2線維が30.1±8.9μmと、どちらも細径です。 はがきの厚みが約0.1mmとすると、筋線維1本の直径はその約4分の1ほどという極めて微細な構造です。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771328/)
この筋は通常は収縮して吸気が食道に入らないよう防御し、食塊が咽頭を通過するときだけ完全に弛緩します。 嚥下が終わると即座に再収縮するというタイミングの精密さが、誤嚥防止の要です。 member.jsdr.or(https://member.jsdr.or.jp/elearning3/lesson/1476/03/)
| 筋名 | タイプ1線維(遅筋) | タイプ2線維(速筋) | 交感神経支配 |
|---|---|---|---|
| 輪状咽頭筋 | 69.9〜76.1% | 23.9〜30.1% | あり |
| 甲状咽頭筋 | 13.0〜24.3% | 75.7〜87.0% | なし |
輪状咽頭筋の弛緩不全は、咽頭期における食道入口部の通過障害の直接原因になります。 嚥下造影検査(VF)では輪状咽頭部の「圧痕像」として描出され、これが診断の重要な所見です。 nakayamashoten(https://www.nakayamashoten.jp/sample/pdf/978-4-521-75115-3.pdf)
これは使える知識ですね。
歯科訪問診療や摂食嚥下リハビリを担う歯科衛生士・歯科医師にとって、輪状咽頭筋弛緩不全は見逃せない病態です。従来の嚥下訓練やバルーンカテーテルによる拡張法を3ヶ月以上継続しても改善が乏しい症例が存在します。 その場合、A型ボツリヌス毒素の輪状咽頭筋への注入や、外科的な輪状咽頭筋切断術が選択肢になります。 oralstudio(https://www.oralstudio.net/dictionary/detail/1969)
kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-19500466/19500466seika.pdf)
参考:摂食・嚥下障害の解剖と評価アプローチ(歯科向け)
摂食・嚥下障害へのアプローチ(2) |山部歯科医院
参考:嚥下筋電図による輪状咽頭筋弛緩の評価(藤田医科大学)
ばんたね病院 リハビリテーション科 嚥下検査 - 藤田医科大学
咽頭期嚥下は「舌骨挙上に始まる嚥下反射」と「輪状咽頭筋の弛緩」の2つが協調して成立します。 口腔期の神経支配が三叉神経・顔面神経・舌下神経であるのに対し、咽頭期は迷走神経・舌咽神経・交感神経が絡む複雑な連携です。 swallow-web(http://www.swallow-web.com/engesyogai/approach2.html)
神経連携が条件です。
歯科独自の視点として、義歯の適合不良や咬合高径の変化が口腔期嚥下パターンを乱す可能性があります。舌の運動パターンが崩れると、食塊の咽頭への送り込みタイミングがずれ、輪状咽頭筋の弛緩タイミングとミスマッチが生じるリスクがあります。これは嚥下造影では「咽頭残留」として現れ、不顕性誤嚥の原因になります。
多チャンネル筋電図では「舌骨上筋群の収縮から輪状咽頭筋の弛緩」という一連の協調運動が正常に起こっているかを確認できます。 歯科治療による義歯調整・咬合改善がこの協調運動の正常化に貢献するケースは少なくありません。 info.fujita-hu.ac(http://info.fujita-hu.ac.jp/~rehabmed/bantane/kensa_a.html)
茎突咽頭筋だけが舌咽神経の単独支配であり、咽頭を構成する筋群のなかで例外的な神経支配を持つことも覚えておくと、嚥下障害の原因を神経レベルで鑑別する際に役立ちます。 輪状咽頭筋は迷走神経+交感神経という二重支配で、常時緊張を維持しながら精密な弛緩制御を行う、括約筋群のなかでも特異な存在です。 member.jsdr.or(https://member.jsdr.or.jp/elearning3/lesson/1476/03/)
参考:日本摂食嚥下リハビリテーション学会 咽頭筋の構造解説
3.構造(解剖) - 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
参考:咽頭の臨床解剖(耳鼻咽喉科・頭頸部外科)