重炭酸ナトリウムを露出根面にたった5秒当てるだけで、根面に損傷が生じることが報告されています。
エアポリッシングとは、専用パウダーを圧縮空気と水で歯面に吹き付け、バイオフィルム(細菌の集合体)やステイン(着色汚れ)を除去する歯面清掃法です。『歯周病学用語集 第3版』では「エアアブレージョン」と呼ばれ、プラーク除去・歯面研磨に用いる処置として位置付けられています。
歯科衛生士が行うメンテナンスの場で急速に普及しており、北欧ではすでにスタンダードな施術となっています。日本でも歯科医院への導入が年々増えており、今後の主流となると各専門誌でも指摘されています。
仕組みをイメージするなら、外壁清掃に使う高圧洗浄機にパウダーを加えたものと考えると分かりやすいです。ハンドピースから「水+圧縮空気+専用パウダー」の混合流が噴射され、器具が歯面に直接触れることなく汚れを吹き飛ばします。
| 比較項目 | エアポリッシング | 従来のPMTC |
|---|---|---|
| 歯面への接触 | 非接触(パウダー噴射) | 直接接触(ブラシ・カップ) |
| バイオフィルム除去 | ◎ 縁下ポケットにも対応 | ○ 縁上が中心 |
| エナメル質への損傷 | 低(特に低摩耗パウダー使用時) | やや高い |
| 歯石除去 | △ 不向き | △ スケーリングが必要 |
| 施術時間 | 短縮しやすい | 時間がかかりやすい |
つまり「エアポリッシングで速く・優しくバイオフィルムを取り、歯石はスケーラーで除去する」が基本です。
この二刀流の考え方は、近年注目を集めているGBT(Guided Biofilm Therapy=ガイデッドバイオフィルムセラピー)の根幹でもあります。GBTはスイスEMS社が提唱するメンテナンスプロトコルで、「バイオフィルムを先に徹底除去し、残った歯石だけをスケーリングで処理する」という順序立てが特徴的です。
参考:エアポリッシング・エアアブレージョンの使い方と禁忌を専門的に解説した記事
エアアブレージョンの導入や使い方を徹底解説! – Dental Diamond(デンタルダイヤモンド社)
エアポリッシングに使用するパウダーは現在4種類あります。炭酸カルシウム・重炭酸ナトリウム・グリシン・エリスリトールです。この4種は粒子サイズや歯面への侵襲性が異なるため、部位と患者状態に応じた選択が欠かせません。
これは使い分けが必要なポイントです。たとえばインプラントや補綴装置が入っている患者さんに炭酸カルシウムや重炭酸ナトリウムを使ってしまうと、装置表面を傷める恐れがあります。低摩耗パウダー(グリシン・エリスリトール)を使えば問題ありません。
また、機器のチャンバーにパウダーを補充する際、容量を超えて入れすぎるとパウダーがうまく攪拌されず、作業効率が低下します。逆に少量であれば問題ないため、容量は厳守してください。
参考:パウダーの種類・特性・使用部位についての臨床的解説
歯の着色を徹底除去!エアポリッシングの効果とメリット – 上野歯科クリニック
エアポリッシングは優れたメンテナンス技術ですが、適切に使わなければ患者さんに害を与えるリスクがあります。使用禁忌の確認は、施術前の問診で必ず行うべきです。
【各製品共通の使用禁忌(10項目)】
コンタクトレンズについては、毎回外してもらうことが非現実的なため、施術時のゴーグル着用を徹底することが推奨されています。忘れがちなポイントですね。
【歯肉縁下ケアにおける追加禁忌】
【パウダー別の禁忌】
禁忌が多いと感じるかもしれませんが、正確な問診と患者情報の把握さえ徹底すれば回避できます。禁忌事項をチェックリスト化して施術前に確認するフローを整えておくと安心です。
参考:エアフローパウダー(松風社)の添付文書に記載された禁忌事項
エアフロー ワン 添付文書(松風)
エアポリッシングを含む圧縮空気を使う処置では、偶発症の発生リスクをゼロにはできません。特に知っておくべきなのが「皮下気腫」と「菌血症」の2つです。
皮下気腫とは、圧縮空気が皮下や筋膜の間(疎性結合組織内)に入り込み、貯留することで生じます。症状は患部中心のびまん性腫脹・鈍痛・耳の違和感などで、感染症ではないため基本的に自然治癒します。ただし、縦隔にまで及ぶような重症例もまれに報告されているため、軽視はできません。
皮下気腫のリスクが高まる状況として、多量の出血や排膿がある歯周ポケットへの施術、歯肉縁下に対する何らかの治療直後の歯周ポケット、などがあります。これらに該当する場合はメーカーの添付文書でも使用禁忌とされています。要注意です。
菌血症は、本来無菌の末梢血管に口腔内細菌が侵入した状態です。抜歯やSRP時などの観血処置でも起こり得ますが、エアポリッシングの縁下処置でも生じる可能性があります。多くは肝臓で処理され問題になりませんが、全身疾患・免疫低下・人工心臓弁・人工関節を使用している患者さんでは、細菌性髄膜炎や感染性心内膜炎などの合併症につながるリスクがあります。
そのため、エアポリッシングの施術前には患者さんの全身既往歴を必ず把握しておくことが重要です。
📌 施術後の説明も忘れずに。ペリクル(歯面の保護タンパク質膜)が除去された状態では、色素の再沈着リスクが高まります。処置後2〜3時間は喫煙や着色しやすい飲食(コーヒー・紅茶・カレーなど)を控えるよう、患者さんへの説明が必要です。
エアポリッシングを単独で使う時代から、GBTというプロトコル全体の一部として位置付ける時代へと移行しつつあります。これは使えそうです。
GBT(Guided Biofilm Therapy)とは、スイスEMS社が提唱するメンテナンスシステムで、「バイオフィルムを可視化し、エアフローで除去し、残った歯石だけをスケーリングする」という一連の流れを体系化したものです。予防歯科の先進国・スウェーデンで確立された手法が世界標準化されつつあり、日本でも導入クリニックが増えています。
GBTの流れを簡単に整理すると次のとおりです。
従来のスケーリング→ポリッシングという順序と逆転している点が特徴的です。先にバイオフィルムを取り除いてから歯石にアプローチするため、無駄のない処置が実現します。歯周ポケット内へのエアポリッシングについては、グリシンパウダーや縁下用ノズルを使用することで4〜5mm以上の深いポケットにも対応できます。
エアポリッシングはインプラント周囲のメンテナンスにも非常に有効です。通常の金属器具ではインプラント表面を傷つけるリスクがありますが、低摩耗パウダーを使ったエアポリッシングならインプラント体・アバットメントへの損傷を最小限に抑えながら清掃できます。矯正治療中でブラケット周囲に汚れが溜まりやすい患者さんへの応用も同様です。
エアポリッシングが「ステイン除去のための仕上げ処置」ではなく「予防歯科の主役」へと役割が変わっている、ということです。この認識の転換がメンテナンスの質を大きく左右します。
参考:GBTの概念とエアフローの関係を解説した歯科専門ページ
EMSエアフロー|株式会社フォレスト・ワン(GBTプロトコルとエアフローの関係について)
エアポリッシングの機器はスタンドアロンタイプとハンディタイプに大別されます。どちらを選ぶかは診療スタイルや患者層によって変わります。この選択が使いやすさと清掃品質に直結します。
スタンドアロンタイプはユニットのチューブに直接接続するため、圧力調整など細かいパラメータ設定が可能です。チャンバーが大きく、1回の準備で1〜2名分の患者さんに対応できます。ただし使用前後のメンテナンスに時間と専用薬剤が必要です。チャンバーやノズルを交換することで複数種のパウダーを使い分けられ、縁上・縁下の幅広い処置に対応します。
ハンディタイプはタービンホースに接続するため準備の手間が少ない反面、ユニットのエアー圧性能に左右されやすいという特徴があります。チャンバーが小さいため成人の全顎処置よりも部分使い・ポイント使いに向いています。使用後はパーツを分解して清掃する必要があります。国産・海外産ユニットによって手元圧が異なるケースもあるため、導入前に実機を試すことを強く推奨します。
どちらのタイプであっても、感染予防の観点からパウダーは患者ごとに廃棄することが原則です。継ぎ足し使用は推奨されません。
知覚過敏のある患者さんへの対応も、日常の臨床でよく直面する問題です。知覚過敏があるからといって施術できないわけではなく、事前処置で対応できます。施術の数日前からフッ化ナトリウム洗口・MIペースト塗布などのホームケアで歯質を強化してもらい、当日はシュミテクトや知覚過敏抑制剤を塗布してから症状のない歯から開始するという手順が有効です。
📌 また、ペリクル除去後のフッ化物塗布との組み合わせも有効です。エアポリッシング施術後はペリクルが除去された状態になるため、フッ化物の歯面への吸収効率が最大化されます。この流れ(エアポリッシング→フッ化物塗布)を定型化しておくと、う蝕予防効果を最大限に引き出せます。
参考:エアポリッシングの機器タイプ・使用目的・適切な運用方法の解説
エアアブレージョンの導入や使い方を徹底解説! – Dental Diamond(デンタルダイヤモンド社)
十分な情報が揃いました。記事を生成します。