仮着材をレジン系にすると、コーティング面に接着してTeC除去できなくなります。
レジンコーティング法とは、間接修復法(インレー・クラウンなどの補綴装置を製作する治療)において、支台歯形成または窩洞形成を終えた直後、印象採得を行う前に、接着材料を用いて露出した象牙質面を薄膜で被覆・保護する処置です。本邦では1990年代前半から臨床応用が始まり、2019年12月に保険収載が認められた歴史的背景があります。
この手順が必要とされる理由は、形成後に露出した象牙質が非常に脆弱な状態に置かれるからです。仮封材やテンポラリークラウン(TeC)の封鎖性は決して万全ではなく、脱落することも臨床上よくあります。脱落が起きれば、外部からの物理的・化学的刺激や細菌侵入のリスクにさらされ、患者に冷水痛・咬合痛などの術後不快症状を引き起こす可能性が高まります。
日本接着歯学会が定めた診療指針では、レジンコーティング法の目的を以下の3つとしています。
つまり保護と接着、この2軸が基本です。
特に接着強度の向上効果は見落とされがちですが、研究データで裏付けられています。東京医科歯科大学の高橋礼奈らの研究(Akehashi et al., Dent Mater J, 2019)では、レジンコーティングを行った象牙質へのレジンセメントの接着強さが、コーティングなしの場合と比較して有意に向上したと報告されています。さらに、コーティングを行わなかった場合の破断面はレジンセメントと象牙質の界面破壊が多いのに対し、コーティングありの場合はセメントとコーティング層の間での破壊が主体となり、脱離しても象牙質表面がコーティング層で覆われた状態が維持されることも確認されています。つまり万一脱離しても歯が守られているということですね。
日本接着歯学会「保険収載された象牙質レジンコーティング法の診療指針」(PDF)
実際の手順は「支台歯形成→清掃・乾燥→コーティング材塗布→エアブロー→光照射→未重合層除去→印象採得→TeC製作と仮着」という流れになります。各工程に固有の注意点があるため、順を追って確認します。
【STEP 1】支台歯形成と清掃・乾燥
支台歯形成の基本手技は従来と変わりませんが、フィニッシュラインの設定は「接着の前提となる防湿可能な範囲」に設定することが求められます。形成後は必ず支台歯形成面を清掃・乾燥してからコーティング処理に進みます。この清掃を怠ると、切削片や唾液汚染がコーティング層の接着を著しく弱めます。防湿はロールワッテによる簡易防湿が一般的ですが、可能であればラバーダムを使用するのが理想です。
【STEP 2】コーティング材の塗布とエアブロー
コーティング材の塗布方法は製品ごとに異なります。材料は必ず使用説明書に従って使用することが大前提です。トクヤマデンタル社「トクヤマシールドフォースプラス」の場合は塗布後10秒放置し、弱めのエアーでコーティング層が動かなくなるまで乾燥させてから中圧〜強圧でエアブローします。クラレノリタケデンタル社「クリアフィルユニバーサルボンド Quick ER」の場合は塗布後の待ち時間なしで5秒以上エアブローするなど、製品ごとに手順が微妙に異なります。これは重要なポイントです。
【STEP 3】光照射と未重合層の除去
エアブロー後は光照射器(ハロゲンまたはLED)でコーティング層を重合・硬化させます。光照射後、コーティング層表面に生じた未重合層をアルコール綿球で必ず拭き取ります。未重合層が残っていると印象体の面荒れの原因になるため、この工程は省けません。また、マージンからはみ出して歯肉縁下に入り込んで硬化したコーティング材は、ハンドスケーラーや探針で除去しておく必要があります。
【STEP 4】印象採得とコーティング層の被膜厚さへの配慮
コーティング層には被膜厚さが生じます。インレー・アンレー窩洞の場合は100μm以上、クラウンの支台歯形成の場合は1回コーティングで約5μm・2回コーティングで約10μmのコーティング層が形成されます。このため、印象採得は必ずコーティング処理後に実施します。コーティング前に型を取ると、修復物の形態精度に誤差が生じます。印象材はシリコーンゴム印象または寒天・アルジネート連合印象が適しています。
東京医科歯科大学・高橋礼奈「生活歯に対するレジンコーティング法の実際」(J-Stage, 接着歯学 2022)
ここは最も見落とされやすく、かつクレームに直結しやすいポイントです。要注意です。
レジンコーティング後にテンポラリークラウン(TeC)を製作する場合、コーティング面に常温重合レジン(即重レジン)が直接接触すると、コーティング層と化学的に接着してしまいます。その結果、TeCを除去しようとしても非常に困難になり、最悪の場合、コーティング層ごと剥がしてしまうことになります。このリスクを防ぐために、TeC製作前に必ず水溶性分離剤(例:ウォッシャブルセップ〔サンメディカル〕、セパライト〔ネオ製薬工業〕等)をコーティング面に塗布します。
仮着材の選択も厳密なルールがあります。以下の2種類は禁忌とされています。
推奨される仮着材はカルボキシレートセメントまたは非ユージノール系仮着材です。カルボキシレートセメントはコーティング面への接着性が低く、次回来院時にTeCとともに比較的容易に除去できます。仮着材の種類がこれだけ厳密に制限されている処置はほかに多くないため、チーム内での情報共有が欠かせません。
次回来院時には、TeCを除去した後にコーティング面に付着した仮着材をアルコール綿球で十分に清拭します。この清拭が不十分だと、残存仮着材が最終接着の妨げになります。また、仮着材除去に超音波スケーラーを使用する場合は特に注意が必要です。コーティング層は非常に薄く(10μm程度)、超音波の振動で容易に破壊されるため、慎重に操作する必要があります。
コーティング面への後処理として、リン酸処理を行う場合も注意が必要です。象牙質に直接リン酸が触れないよう、スポンジやマイクロブラシで強く擦過してコーティング層を傷つけないようにします。また、最終装着にはセルフアドヒーシブタイプのレジンセメントは使わないほうが安全です。高い接着力が得られない恐れがあるためです。
トクヤマデンタル「トクヤマシールドフォースプラス 象牙質レジンコーティング法 使用上のポイント」(PDF)
2020年4月1日の歯科診療報酬改定により、「I001-2 象牙質レジンコーティング」が保険収載されました。点数は1歯につき46点で、算定は1回限りです(6歳未満の乳幼児または著しく歯科診療が困難な者を診療した場合は69点)。
算定要件を整理すると以下のとおりです。
この「知覚過敏処置との併算定不可」というルールは実務上で混乱しやすいポイントです。たとえば補綴予定の歯が術後過敏症状を示したとき、Rコートを既に算定していれば、知覚過敏処置を別途算定できないことになります。つまり知覚過敏処置が条件です。両処置の算定タイミングが重なる可能性がある症例では、事前に判断を明確にしておく必要があります。
保険請求の観点から見ると、算定要件を満たさない象牙質レジンコーティングの算定は、厚生労働省の「保険診療確認事項リスト(歯科)」でも指導対象として明示されています(令和7年度改訂版 ver.2507)。レセプト審査での返戻・指摘を避けるためにも、算定基準の確認を徹底することが求められます。
厚生労働省「保険診療確認事項リスト(歯科)令和7年度改訂版」(PDF)
近年、CAD/CAMシステムを使ったメタルフリー修復の普及に伴い、レジンコーティング法の重要性が改めて注目されています。これはデジタル歯科の視点から見ても見逃せないポイントです。
CAD/CAM修復、特にハイブリッドレジンブロックやセラミックブロックを用いた冠修復では、修復物をレジンセメントで接着する場面が多くなります。しかし、間接法修復の場合はレジンセメントへの光照射が修復物を通じた間接照射になるため、光の減衰が大きいという問題があります。東京医科歯科大学の研究では、厚さ3mmのCAD/CAMレジンブロックを介すると、光照射器先端から放出された光の約2%しかレジンセメントに届かないというデータが報告されています(盧山ら, 歯科審美, 2020)。ほぼ光が届かない状況です。
このように修復物を介した光照射でも高い接着強さを確保するために、レジンコーティング(IDS:Immediate Dentin Sealing)を行い、形成面に接着の基盤を作っておくことが非常に有効です。レジンコーティング層が存在すれば、最終的な光照射量が不足する状況でも安定した接着が期待できます。
また、デジタルデンティストリーが広まる中で口腔内スキャナーを使った光学印象採得の機会が増えていますが、レジンコーティングを施した支台歯でも光学印象は問題なく撮影できることが確認されています。さらに1dayトリートメント(当日装着)の場合は仮封材やTeCが不要になるため、コーティング面が仮着材で汚染されるリスクが大幅に減少します。これは使えそうです。
従来のフロー(形成→印象→TeC仮着→来院→本着)では仮着材除去の手間とコーティング層破壊のリスクが伴いましたが、デジタルワークフローとレジンコーティングの組み合わせはそれらのリスクを大きく低減します。特に多数歯補綴や審美修復ケースでの応用が増えており、今後も歯科医院の診療フローに組み込まれていく可能性が高い技術です。
チーム内での手順統一という観点でも、デジタルフローへの移行を検討している歯科医院では、レジンコーティングの手順書・チェックリストをあらかじめ整備しておくことが、スタッフ間でのエラー防止につながります。YAMAKIN社の「アクアボンド0-n」など複数のメーカーが手順を図示した専用資料を公開しており、院内教育の素材として活用できます。
YAMAKIN「TMR-アクアボンド0-n 象牙質レジンコーティング手順 特設サイト」
Excellent — now I have comprehensive data. Let me compile the full article.

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