歯科疾患管理料を今まで通り算定すると、口腔機能管理料なしでは1人あたり月10点の純減になります。
2026年6月1日に施行される令和8年度歯科診療報酬改定では、歯科初診料が現行の267点から272点(+5点)、歯科再診料が58点から59点(+1点)に引き上げられます。本体改定率はプラス3.09%と、30年ぶりの高水準です。
この引き上げに加えて、「歯科外来物価対応料」が新設されます。内容は初診時3点・再診時1点で、施設基準の届出は不要。全患者に自動適用されます。さらに、令和9年(2027年)6月以降は点数が自動的に2倍(初診6点・再診2点)に引き上げられる段階的措置が組み込まれています。これは使えそうです。
月間レセプト件数が初診30件・再診370件の診療所でシミュレーションすると、初診料増収・再診料増収・物価対応料を合算すると月間約9,800円、年間で約11.8万円の増収になります。さらに2027年6月以降は物価対応料が倍増し、年間ベースでさらに約5.5万円上乗せされる計算です。1点10円で計算すると「たった1点」に見えますが、年間に積み上げると相当な金額になります。
一方で、忘れてはならないのがレセコンの設定確認です。基本診療料は告示変更で自動更新されますが、歯科外来物価対応料は新設項目のため、レセコンベンダーへの対応確認と算定設定の更新が必要です。施行前の5月中に必ず確認してください。
| 項目 | 現行点数 | 改定後点数 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 歯科初診料 | 267点 | 272点 | +5点 |
| 歯科再診料 | 58点 | 59点 | +1点 |
| 歯科外来物価対応料(初診時) | ─ | 3点(R9.6以降6点) | 新設 |
| 歯科外来物価対応料(再診時) | ─ | 1点(R9.6以降2点) | 新設 |
参考資料:デンタルネット「2026年歯科診療報酬改定 歯科関連抜粋1(点数確定)」では、改定後の確定点数が一覧で確認できます。
デンタルネット:2026年歯科診療報酬改定 歯科関連抜粋1(点数確定)
今回の改定で歯科従事者が最も注意すべきポイントが、歯科疾患管理料(歯管)の10点減点です。現行100点から90点に改定されます。ただし、「初診月は100分の80(80点)に減算」という規定が削除されるため、初診月も再診月も同じ90点で算定できるようになります。
つまり90点ということですね。
問題はその先です。歯管だけに頼っている体制だと、継続患者1人あたり毎月10点(100円)の純減になります。100人の患者が対象なら月1万円、年間12万円の減収です。ここが今回の改定の最大の落とし穴です。
この減点を補い、さらに増収に転じるために整備が急務なのが「口腔機能管理料」の活用です。改定後は現行60点から90点(+30点)に引き上げられます。さらに、歯科衛生士が実地指導を行う「口腔機能実地指導料」が新設(46点)されます。この指導料を組み合わせると、1人あたり歯管90点+口腔機能管理90点+実地指導46点=226点となり、改定前の160点と比較して1人あたり+66点の増収が可能です。
月間100人の対象患者で試算すると、年間約79.2万円の増収ポテンシャルがあります。ただし、口腔機能実地指導料は「適切な研修を受講した歯科衛生士が1名以上配置」されていることが施設基準の要件です。まだ未受講のDHがいる場合は、6月施行に間に合うよう今すぐ研修を手配する必要があります。
また、口腔機能管理料は検査実施の有無で「管理料1(90点)」と「管理料2(50点)」の2段階に再編されます。舌圧検査・咀嚼能力検査・咬合圧検査などを実施した患者が管理料1(90点)の対象です。検査フローを整備しておくと、より多くの患者を高い点数で算定できます。
参考資料:愛知県保険医協会「歯科診療報酬改定情報④」では、歯管の初診月減算廃止と口腔機能管理の2段階評価について詳細が確認できます。
愛知県保険医協会:歯科診療報酬改定情報④(歯管減算廃止・口機能2段階評価解説)
歯周病治療体系の最大の変更が、従来の「歯周病安定期治療(SPT)」と「歯周病重症化予防治療(P重防)」の統合です。令和8年6月からは「歯周病継続支援治療」に一本化されます。これは現場への影響が最も大きい改定の一つです。
点数は歯数に応じた3区分で設定されます。
| 区分 | 旧SPT点数 | 旧P重防点数 | 統合後点数 |
|---|---|---|---|
| 1〜9歯 | 200点 | 150点 | 170点 |
| 10〜19歯 | 250点 | 200点 | 200点 |
| 20歯以上 | 350点 | 300点 | 350点 |
算定間隔は原則として前回実施月の翌月初日から2月を経過した日以降(ほぼ3か月に1回ペース)で変わりません。重要なのは「一時的に病状が安定した状態」という算定要件が「継続支援が必要な患者」という表現に変わる点です。これによって、以前は「安定している」と言いにくかった患者にも、根拠を持って継続管理の説明がしやすくなります。
厳しいところですね。現場で特に注意が必要なのがレセコンのマスタ更新です。SPTとP重防はそれぞれ別の診療行為コードを持っていたため、6月1日以降は新しい「歯周病継続支援治療」への統合更新が必須になります。これを怠ると、請求コード誤りによる査定や返戻のリスクが生じます。レセコンベンダーへの確認と院内運用フローの見直しは、5月中に完了させるのが条件です。
また、口腔管理体制強化加算(口管強)の届出医療機関は+120点の口管強加算を算定できます。口管強の届出済みかどうかが、歯周病継続支援治療の収益に大きく影響します。未届出の場合は、6月施行に向けて取得を検討する価値があります。
賃上げ対応は今回の改定で改定率の中で最大の柱を占めており、本体改定率3.09%のうち1.70%が賃上げ対応分です。その中心が「歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」の大幅拡充です。
改定後の点数は初診時21点(継続賃上げ医療機関は23点)、再診時4点(同6点)に増点されます。令和9年6月以降はさらに約2倍に引き上げられる段階的措置も設けられています。対象職員の範囲も「主として医療に従事する職員」から「当該医療機関に勤務する職員」に拡大されており、医事課などの事務職員も対象になりました。
これは使えそうです。しかし、見落としてはならない重要な落とし穴が2つあります。
落とし穴①:評価料は全額賃上げに充当する義務がある
ベースアップ評価料で得た報酬は、全額を対象職員の賃金改善に充当することが義務づけられています。光熱費や消耗品費などに流用することは認められていません。毎年8月に「賃金改善実績報告書」を厚生局に提出する義務もあります。
落とし穴②:継続賃上げ未実施機関は減算対象になる
令和6年度・令和7年度に継続して賃上げを実施してこなかった医療機関(病院)には、入院基本料等の減算規定が新設されています。診療所においても今後の賃上げ未実施は算定上のリスクになります。賃上げ促進税制の活用と組み合わせた計画策定が重要です。
算定開始タイミングについて補足しておきます。ベースアップ評価料は届出をした日の翌月1日から算定可能です。ただし、月の最初の開庁日(第1平日)に届け出た場合はその月の1日から算定できます。届出手続きを遅らせると、その分だけ算定できる期間が短くなる点に注意が必要です。
参考資料:厚生労働省「ベースアップ評価料等について」特設ページでは届出様式と説明動画が公開されています。施行後に更新されますので要確認です。
厚生労働省:ベースアップ評価料等について(届出様式・説明動画)
今回の改定で「攻め」の対応が求められるのがデジタル関連の評価拡充です。令和6年度に100点で新設された光学印象が150点に増点されます。さらに、対象がCAD/CAMインレーだけでなくCAD/CAM冠にも拡大されました。これは大きな変化です。
光学印象は、従来の印象採得(印象64点+咬合採得18点=82点)に比べ、1歯あたり+68点(680円)の差があります。口腔内スキャナーを月30本ペースで運用できれば、購入費200万円の回収期間が大幅に短縮されます。なお、算定には「歯科補綴治療に係る3年以上の経験を持つ歯科医師の配置」と「院内にデジタル印象採得装置を保有していること」が施設基準の要件です。スキャナーを購入しただけでは算定できません。届出を先行させましょう。
また、歯科技工士との連携に関しても新しい評価が加わります。
対面よりもICT活用のほうが高い評価になっている点が特徴的です。遠方の技工所との連携でも、Web会議システムや口腔内画像の共有によってより高い点数を算定できます。
さらに、義歯分野の大きなトピックとして「3次元プリント有床義歯」が1顎につき4,000点で新設されました。これは液槽光重合方式(SLA/DLP)の3Dプリンターで製作した義歯が対象で、院内導入か対応技工所への委託かを選択できます。4,000点は患者一人あたり40,000円相当の診療額になります。対応できる体制を整えることで、義歯診療の収益力が大きく変わります。
歯科技工所へ補綴物を委託する場合は「歯科技工所ベースアップ支援料(1装置につき15点)」も新設されています。この支援料は技工士の賃上げ原資として設計されているため、取引先技工所と事前に合意形成しておくことが算定の前提になります。
| デジタル評価項目 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 光学印象(1歯につき) | 100点 | 150点(+50点) |
| 光学印象の算定対象 | CAD/CAMインレーのみ | CAD/CAM冠にも拡大 |
| 3次元プリント有床義歯(1顎) | ─ | 4,000点(新設) |
| 歯科技工士連携加算1(対面) | ─ | 60点(新設) |
| 歯科技工士連携加算2(ICT活用) | ─ | 80点(新設) |
| 歯科技工所ベースアップ支援料 | ─ | 15点/装置(新設) |
参考資料:2026年度歯科診療報酬改定完全ガイドでは、光学印象・3Dプリント義歯の収支シミュレーションが具体的に紹介されています。
歯科診療報酬改定2026年度 完全ガイド(収支シミュレーション付き)
今回の改定は、薬価改定の2026年4月1日先行施行と、本体(診療報酬)の2026年6月1日施行の2段階構成になっています。特に歯科実務で影響が大きいのは6月施行の本体部分です。
6月1日まで残り時間はわずかです。以下に月別のアクションプランを整理します。
| 時期 | やるべき対応 |
|---|---|
| 3月(告示・通知発出後) | 新設・変更項目の算定要件と施設基準の確認。届出必要項目のリストアップ。疑義解釈資料の確認 |
| 3〜4月 | レセコンベンダーへ改定対応スケジュールの確認。SPT統合に伴うマスタ変更の段取り |
| 4月 | ベースアップ評価料の賃上げ計画策定と厚生局への届出準備。税理士・社労士との連携 |
| 4〜5月 | 院内研修の実施。口腔機能管理評価フロー、歯周病継続支援治療の運用手順の策定 |
| 5月上旬 | 施設基準の届出。光学印象・口腔機能実地指導料・ベースアップ評価料の届出を厚生局へ |
| 5月中旬 | 近隣の内科・糖尿病専門医への医科歯科連携の案内。紹介状テンプレートの準備 |
| 5月下旬 | 患者向け掲示物の更新。スタッフへの最終説明とロールプレイング |
| 6月1日〜 | 新点数での算定開始。初月は算定漏れを重点的にチェック |
見落とされがちな重要ポイントが、医科歯科連携の活用です。今回の改定では糖尿病患者に対し内科からの紹介に基づいて歯周病治療を実施し診療情報を提供した場合に「重症化予防連携強化加算(100点)」が算定できるようになります。近隣の内科・糖尿病専門医クリニックに対して、受け入れ体制と連携加算の存在を周知することが新しい患者獲得のチャネルになります。
今回の改定は「届出した医院だけが恩恵を受ける」設計になっています。初再診料の引き上げのように届出不要で全員が受けられるものと、ベースアップ評価料・光学印象・口腔機能実地指導料のように届出が必要なものとが混在しています。必要な項目を漏れなく届け出ることが原則です。
告示・通知は2026年3月の発出予定です。細部の算定要件は告示・通知が出てから正確な内容が確定しますので、厚生労働省や地方厚生局の情報を定期的にチェックする習慣を今から持っておくと安心です。
参考資料:全日本医療経営研究会「令和8年度診療報酬改定 実務レポート(歯科診療所編)」では、優先度別のアクションプランが詳しく解説されています。
全日本医療経営研究会:令和8年度診療報酬改定 実務レポート(歯科診療所編)
Please continue. Now I have enough information to write the article.