連合印象と精密印象の違いは目的と材料

連合印象と精密印象は何が違うのでしょうか?歯科臨床で頻繁に使用される両者の違いを、目的・使用材料・コストの観点から徹底解説します。保険診療でシリコン印象材を避ける理由や、寸法安定性の違い、臨床での使い分けについて知りたくありませんか?

連合印象と精密印象の違い

保険診療でシリコン印象を使うと年間約22万円の赤字になります。


この記事の3つのポイント
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概念の違い

連合印象は複数の印象材を組み合わせる「手法」、精密印象は高精度な印象を採得する「目的」

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コストの差

寒天アルジネート連合印象は1回27円、シリコン精密印象は1回474円の材料費がかかる

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寸法安定性の違い

アルジネート連合印象は1時間で収縮開始、シリコン精密印象は7日間寸法安定性を維持


連合印象の定義と使用材料


連合印象とは、複数の印象材を組み合わせて採得する手法のことです。歯科臨床において最も一般的なのは、寒天印象材アルジネート印象材を組み合わせた「寒天アルジネート連合印象」になります。この方法では、寒天印象材を支台歯周囲や細部に注入し、その上からアルジネート印象材を盛ったトレーを圧接します。


寒天印象材は精度に優れていますが、単独では使いにくいという特徴があります。そこでアルジネート印象材と組み合わせることで、操作性と経済性を両立させているわけですね。保険診療において広く使われている理由は、材料費が1回あたり27円程度と非常に安価だからです。


連合印象法は、稠度の異なる2種類の材料を重ね合わせる点が最大の特徴です。シリコーンゴム印象材でも連合印象は可能で、パテタイプとライトボディタイプを組み合わせた「二重同時印象法」も連合印象の一種になります。つまり連合印象は、使用する印象材の種類ではなく、複数材料を組み合わせるという「手法」を指す用語なのです。


主に義歯や複雑な補綴装置の作製時に選択されます。保険診療では連合印象の点数が230点(2,300円)と設定されており、欠損補綴で個人トレーまたは連合印象材を用いた場合に算定できます。材料費と人件費を考慮すると、採算ラインぎりぎりの診療報酬です。


印象材の特性と使い分けについて、GCの歯科材料ハンドブック(PDF)で詳細な解説が参照できます


精密印象の定義と臨床目的

精密印象とは、補綴物の対象部位に対して概形印象よりも高精度に印象採得を行うことを指します。これは印象の「目的」や「品質」を表す言葉であり、特定の手法を指すものではありません。クラウンブリッジなら個歯トレーとシリコン印象材を用いて行い、無歯顎に対しては個人トレーとシリコン印象材を用います。


精密印象が求められる場面は、補綴物のマージン再現性が治療成否を左右するケースです。具体的には、クラウンやブリッジなどの固定性補綴装置の製作時に必須となります。マージン部が歯肉縁下にある場合や、補綴装置の適合精度が審美性に直結する前歯部では、特に精密な印象採得が要求されますね。


シリコーンゴム印象材は、精密印象に最も適した材料です。寸法精度が高く、印象撤去後の寸法安定性が良好で、硬化後30分から14日経過しても寸法変化がほとんどありません。付加型シリコーン印象材なら、7日間の寸法安定性が保証されており、印象採得後すぐに石膏を注ぐ必要がないのです。


しかし精密印象には課題もあります。シリコーン印象材は1回あたり474円の材料費がかかるため、保険診療の連合印象60点(600円)では大幅な赤字になります。時給3,000円の歯科医師が10分で型採りを行うと人件費が500円かかり、材料費に使えるのは残り100円だけ。シリコン印象材を使用すると374円の赤字、年間600回型採りすると約22万円の損失になる計算です。


保険診療でシリコン印象材を使わない経済的理由について、宮ノ下歯科クリニックのサイトで詳細な試算が確認できます


連合印象と精密印象の寸法安定性の違い

寸法安定性の違いは、補綴物の適合精度に直結する重要な要素です。寒天アルジネート連合印象の場合、主成分に水を含むため、時間経過とともに収縮や変形が起こります。印象採得後、湿箱中でもわずかに収縮し、たった1時間で寸法変化が始まってしまうのです。空気中に放置すると水分が蒸発して体積が小さくなり、逆に水中では膨張します。


これに対しシリコーン精密印象は、硬化後の寸法変化が極めて少ない特性があります。付加型シリコーン印象材なら、硬化後30分、24時間、14日経過しても寸法変化がほとんど認められません。空気中で放置しても変形せず、印象採得から7日以内であれば石膏を注いでも印象面に悪影響を与えないとされています。


寸法安定性の差は、臨床ワークフローに大きな影響を及ぼします。寒天アルジネート連合印象では、印象採得後ただちに石膏を注入するのが基本ルールです。1時間以内に石膏注入を完了させないと、模型の寸法精度が低下し、補綴物の適合不良につながります。技工所への発送タイミングも制約を受けますね。


一方、シリコーン精密印象なら、印象採得から石膏注入までに余裕があります。消毒処理や技工所への発送スケジュールを柔軟に組めるため、診療効率が向上します。ただし湿度100%の環境でも長時間保管は避けるべきで、離液による石膏面品質の低下リスクがあるのです。


連合印象で精密印象を行う場合の注意点

連合印象でも精密印象の品質を達成することは可能ですが、いくつかの条件を満たす必要があります。シリコーンパテとライトボディによる連合印象(二重同時印象法)なら、寒天アルジネート連合印象よりも高い精度が得られます。パテで概形を採得してから、ライトボディで細部を再現する二段階法が一般的です。


しかし寒天アルジネート連合印象で精密な結果を出すには、技術とタイミングが重要になります。寒天印象材の温度管理が不適切だと、患者に不快感を与えたり、印象精度が低下したりします。寒天印象材は60〜64℃で保温し、50℃以下に下がる前に操作を完了させなければなりません。


印象材の圧接タイミングも精度を左右します。寒天印象材を支台歯に注入後、すぐにアルジネート印象材を盛ったトレーを圧接することが必要です。寒天印象材はアルジネート印象材により冷却・硬化するため、注入から圧接までの時間を最小限にすべきなんですね。口腔内保持時間は3〜4分が目安とされています。


気泡の混入も失敗要因の一つです。寒天印象材のフローが良すぎると、アルジネート圧接時に支台歯周辺から逃げてしまい、気泡が残りやすくなります。また寒天印象材の物理的強度が弱いと、ちぎれやすく印象撤去時にトラブルが発生します。最新の寒天印象材は濃度を高めて弾性を改善していますが、それでもシリコーン印象材には及びません。


寒天アルジネート連合印象とシリコーン印象の臨床比較について、デンタルダイヤモンド誌の記事で詳細な検証結果が確認できます


保険診療における連合印象と精密印象の使い分け基準

保険診療での使い分けは、経済性と治療精度のバランスが判断基準になります。連合印象60点(600円)は、インレーやクラウンなど単純な歯冠修復に適用され、材料費27円の寒天アルジネート連合印象を使用します。欠損補綴で個人トレーや連合印象材を用いた場合は連合印象230点(2,300円)が算定でき、義歯製作時に選択されますね。


しかしクラウンやブリッジで高精度が求められる場合、保険点数とシリコーン印象材のコストが見合わないジレンマが生じます。シリコーン印象材の使用は保険診療でも可能ですが、採算が合わないため、ほとんどの歯科医院が寒天アルジネート連合印象を選択しているのが現状です。年間600回の型採りでシリコーンを使用すると、約22万円の赤字になる計算です。


臨床的には、症例の特性を最優先に考えるべきです。前歯部の審美領域やマージンが深い歯肉縁下の症例では、多少コスト負担があってもシリコーン精密印象を選択する価値があります。一方、動揺歯がある場合や単純な形態の補綴では、無理にシリコーンを使わず寒天アルジネート連合印象で精度を出す方が賢明な場合も多々あるのです。


自費診療なら、精密印象のコストを適正に転嫁できます。個歯トレーとシリコーン印象材を用いた精密印象法は、補綴物の適合性を大幅に向上させ、再治療リスクを低減します。患者満足度と長期予後を重視するなら、自費での精密印象を提案するのも一つの選択肢ですね。保険診療の制約を理解した上で、症例ごとに最適な印象法を選ぶデータドリブンな判断が求められます。


印象採得の基礎知識と臨床での使い分けについて、総合的な解説記事で手順と注意点が確認できます




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