個人トレー歯科における目的と精度を高める活用法

個人トレー歯科での使用目的をご存じでしょうか。義歯製作、印象採得、精密な型取りに不可欠な個人トレーの役割から、既製トレーとの違い、筋形成や印象圧コントロールの重要性まで詳しく解説します。患者満足度を向上させる精密義歯製作のポイントとは?

個人トレー歯科目的

既製トレーだけで作った義歯は8割以上が再調整を繰り返す。


個人トレー歯科目的の3つのポイント
🎯
精密な印象採得の実現

患者の口腔内形態に完全適合するトレーで、印象材の厚みを均一化し高精度な模型を作製します

⚖️
印象圧の適切なコントロール

歯根膜と粘膜の被圧変位量の差を考慮し、部位ごとに加圧・無圧を選択的に実施できます

🦷
筋形成と義歯床縁の決定

口腔周囲筋の動態を記録し、機能時に外れにくく痛みの少ない義歯外形を確立します


個人トレーによる精密印象採得の必要性


個人トレーは患者ごとの口腔内形態に合わせて製作される専用の印象用トレーです。既製トレーでは患者の顎堤や歯列弓の形態に完全に適合させることが困難なため、印象材の厚みが部位によって大きく異なってしまいます。


印象材の厚みが不均一だと、硬化時の収縮も不均一になります。結果として模型に歪みが生じ、その模型上で製作した義歯は口腔内で適合不良を起こすわけです。特に全部床義歯では辺縁封鎖が吸着力に直結するため、わずかな誤差も機能に大きく影響します。


個人トレーを使用することで印象材を2〜3mm程度の均一な厚みで盛ることができ、硬化収縮による歪みを最小限に抑えられます。


つまり精密な模型が得られるということですね。


岩手医科大学の研究によれば、個人トレーを使用した症例では義歯の適合精度が既製トレー使用時と比較して約40%向上すると報告されています。適合精度の向上は患者の咀嚼効率や発音機能の改善に直結するため、臨床的に非常に重要です。


岩手医科大学歯科補綴学講座の個人トレーに関する詳細な解説


加えて、個人トレーは患者の口腔内に適合しているため、印象採得時の不快感や嘔吐反射を軽減できます。既製トレーは辺縁が長すぎたり形態が合わなかったりして患者に苦痛を与えることがありますが、個人トレーではそのリスクが大幅に減少します。患者の協力が得やすくなり、印象採得の成功率も高まるわけです。


個人トレーでの印象圧コントロールの重要性

部分床義歯製作において、印象圧のコントロールは成功の鍵を握ります。天然歯の歯根膜と粘膜では被圧変位量に大きな差があり、歯根膜は約0.1〜0.3mm程度しか沈み込まないのに対し、粘膜は1〜2mm以上も沈下する場合があるのです。


既製トレーで印象採得すると、トレーと粘膜の間に大きな空間があり、印象材が均等に圧力をかけることができません。むしろ天然歯とトレーの距離が近いため、天然歯に過度な圧力がかかってしまいます。これでは歯根膜粘膜支持の原則に反した印象になります。


個人トレーでは事前に研究用模型上で圧力をかけたい部位、かけたくない部位を設計できます。例えばフラビーガム(動揺した歯槽粘膜)や口蓋隆起、下顎隆起などの骨突起部分にはワックスでリリーフ(スペース付与)を行い、印象材が強く圧接しないようにします。一方、印象圧をかけるべき部位では適切な厚みを確保するわけです。


さらに個人トレーには遁路(印象材の逃げ道となる穴)を設けることができます。遁路を設けることで余剰な印象材が流出し、過度な圧力が蓄積されるのを防げます。圧がかかり反発力が生じると印象全体が浮き上がってしまうリスクがありますが、遁路があればそれを回避できるということですね。


印象圧のコントロールが適切に行われた義歯は、咬合時の負担が歯と粘膜に適切に配分され、疼痛や義歯の早期破損を防げます。特に少数歯残存症例では、このコントロールの有無が予後を大きく左右します。


個人トレーを用いた筋形成と義歯床縁の設定

筋形成は義歯の辺縁形態を決定する重要な工程です。義歯床縁が長すぎると口腔周囲筋の動きを妨げ、義歯が脱離しやすくなったり粘膜に潰瘍を形成したりします。逆に短すぎると辺縁封鎖が不十分になり、吸着力が得られません。


個人トレーを用いた筋形成では、モデリングコンパウンドやグリーンスティックコンパウンドなどの熱可塑性印象材をトレー辺縁に盛り、口腔内で軟化させた状態で患者に口唇や頬の運動をしてもらいます。開口、閉口、嚥下、発音などの機能運動時に、周囲筋が自然に義歯床縁の形態を形成するわけです。


この筋形成により得られた辺縁形態は、機能時の筋圧を義歯の維持に利用できる位置と形態になっています。特に全部床義歯では辺縁封鎖による陰圧と筋圧による維持が不可欠なため、筋形成は省略できない工程です。


日本補綴歯科学会のガイドラインでは、全部床義歯製作時には義歯外形より2〜3mm短く設定した個人トレーを用いて筋形成を行い、適切な辺縁形態を獲得することが推奨されています。短めのトレーから印象材を用いて適切な長さを模索するステップが、臨床的に最も確実です。


日本補綴歯科学会の有床義歯補綴診療ガイドライン(PDF)


筋形成を適切に行った義歯は、会話中や食事中でも外れにくく、患者の満足度が大幅に向上します。実際の臨床データでは、筋形成を行った症例の義歯脱落率は行わなかった症例の3分の1以下という報告もあります。


個人トレーと既製トレーの使い分けと製作法

個人トレーが必要となる症例には明確な基準があります。第一に、既製トレーでは適合が困難で圧接しにくい症例です。顎堤の吸収が著しい無歯顎や、歯列弓の形態が特殊な症例では既製トレーのサイズが合わず、印象採得自体が困難になります。


第二に、より精密な機能的印象(選択的加圧印象)を必要とする症例です。部分床義歯で歯根膜粘膜支持を適切に実現したい場合や、全部床義歯でフラビーガムや骨隆起に対応する必要がある場合は個人トレーが必須です。


第三に、義歯床縁の位置を筋形成によって決定したい症例です。全部床義歯や大きな欠損の部分床義歯では、辺縁封鎖が維持に直結するため筋形成が不可欠になります。


個人トレーの製作は、まず既製トレーで概形印象を採得し研究用模型を作製するところから始まります。その模型上で義歯の設計を行い、必要に応じてリリーフやストッパーの位置を決定します。その後、常温重合レジンやライトキュアレジンを用いてトレーを成形するのが一般的です。


製作時にはストッパーの設定が重要です。ストッパーは印象採得時にトレーの位置を安定させるための突起で、残存歯や口蓋の適切な部位に設けます。ストッパーがないとトレーが口腔内でずれてしまい、精密な印象が得られません。


トレーの辺縁は完成義歯より2〜3mm短めに設定し、辺縁形成用の印象材のスペースを確保します。辺縁が長すぎると筋形成時に患者が苦痛を感じ、適切な機能運動ができなくなります。


厳しいところですね。


デジタル技術の進歩により、口腔内スキャナーとCAD/CAMシステム、3Dプリンターを組み合わせた個人トレー製作も普及しつつあります。デジタルワークフローでは設計の自由度が高く、製作時間も大幅に短縮できます。従来法では製作に1〜2時間を要しましたが、3Dプリンターなら約1時間で複数の個人トレーを同時製作できます。


個人トレーの応用範囲と多目的利用の可能性

個人トレーの用途は義歯製作だけにとどまりません。ホームホワイトニング用のマウストレーも個人トレーの一種であり、患者の歯列形態に完全適合するトレーを製作することで、ホワイトニング剤を均等かつ効率的に歯面に適用できます。


既製のホワイトニングトレーでは薬剤が歯肉に流出して刺激を与えたり、歯面への接触が不均一で効果にムラが生じたりします。個人トレーなら薬剤の必要量も最小限に抑えられ、患者の経済的負担も軽減できるわけです。


フッ化物塗布用の個人トレーも有効です。トレー法によるフッ素塗布では、フッ化物ジェルを入れた個人トレーを3〜4分間装着することで、歯面全体に均一にフッ素を作用させられます。特に根面齲蝕のリスクが高い高齢者や、矯正治療中の患者には効果的な予防法です。


スポーツマウスガードの製作にも個人トレー技術が応用されます。衝撃吸収性と装着感を両立させるには、精密な印象採得が不可欠です。個人トレーを用いることで、適合性の高いマウスガードが製作でき、スポーツパフォーマンスの向上と外傷予防の両方を実現できます。


ナイトガード(歯ぎしり防止用マウスピース)の製作でも個人トレーの概念が重要です。歯列全体を均等に被覆し、咬合接触を適切に配分するには、精密な模型が必要になります。個人トレーを用いた印象採得により、長期間使用しても破損しにくいナイトガードが製作できます。


近年では、睡眠時無呼吸症候群の治療に用いる口腔内装置(OA)の製作にも個人トレー技術が応用されています。下顎を前方位で保持する装置は、精密な適合が得られないと長時間装着が困難です。個人トレーによる精密印象が、治療成功の鍵を握るということですね。


歯科医院でコストを意識しながら個人トレーを活用したい場合、まず義歯症例での使用を徹底することから始めるとよいでしょう。義歯の再製作率が下がれば、チェアタイムの削減と患者満足度の向上が同時に実現します。デジタル機器の導入を検討する際は、口腔内スキャナーと3Dプリンターのセットで考えると、個人トレー製作だけでなく模型製作やサージカルガイド製作にも応用でき、投資効果が高まります。


個人トレーは一見手間がかかる工程に思えますが、その後の調整回数の減少や患者トラブルの回避を考えれば、むしろ効率的な臨床プロセスです。精密な印象採得は歯科医療の基本であり、個人トレーはその基本を確実に実現するための必須ツールといえます。臨床で質の高い補綴治療を提供したい歯科医師にとって、個人トレーの適切な活用は避けて通れない道です。




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