石膏歯科用途を種類と模型精度で徹底解説

歯科石膏は用途に応じて普通石膏、硬石膏、超硬石膏の3種類があり、それぞれ混水比や膨張率が異なります。模型精度や作業効率、コスト管理まで、適切な石膏選択で補綴物の品質が大きく変わります。あなたの診療でどの石膏を選ぶべきか知っていますか?

石膏歯科用途と種類別の特性

混水比を5%間違えると補綴物が不適合になります。


この記事の3つのポイント
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石膏の種類と特性

普通石膏・硬石膏・超硬石膏の3種類があり、混水比や膨張率、硬化時間が異なります

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用途別の使い分け

作業模型は超硬石膏、対合歯模型は硬石膏、スタディモデルは普通石膏が基本です

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精度管理とコスト

混水比の誤差が模型精度を低下させ、保管期間や廃棄処理にもコストがかかります


石膏の基本3種類と結晶構造の違い


歯科で使用される石膏は、製造過程の違いによって普通石膏(β型)と硬質石膏(α型)に大別されます。普通石膏は二水石膏を大気中で加熱して作られ、結晶形状が不規則です。一方、硬質石膏は圧力釜で加圧水熱加熱され、熱水中で再結晶させることで、より緻密な結晶構造を持ちます。


実際の臨床では、普通石膏、硬石膏、超硬石膏の3種類が用途に応じて使い分けられています。白色の普通石膏は最も混水比が高く、変形量も大きく脆い性質を持つため、対合歯模型やスタディモデルに使用されます。黄色の硬石膏は義歯などの作製用模型に適しており、茶色の超硬石膏は銀歯などの精密補綴物の作製用模型に使用されます。


つまり色で判別可能です。


これらの違いは単なる硬さだけではなく、混水比や膨張率、強度といった物理的性質にも現れます。普通石膏の混水比は粉100gに対して50ml程度ですが、硬石膏は24%、超硬石膏は20%程度と、水の必要量が少なくなるほど高強度で精密な模型が作製できます。硬化膨張率も普通石膏が約0.25%であるのに対し、超硬石膏は0.08%以下と非常に小さく、補綴物の精度に直結します。


結晶の緻密さが鍵です。


石膏の主成分は硫酸カルシウム(CaSO₄)で、半水石膏に水を加えると二水石膏に戻る反応(水和反応)によって硬化します。この際、結晶が成長して互いに絡み合うことで強度が発現します。α型石膏は結晶粒子が均一で表面積が小さいため、少ない水で練和でき、硬化後の強度が普通石膏の3倍以上になります。


サンエス石膏株式会社の「α石膏とβ石膏の違い」では、結晶形状の詳細な比較と製造プロセスについて解説されています。


石膏模型作製における混水比と硬化時間の管理

混水比の管理は模型精度を左右する最重要ポイントです。メーカー推奨の混水比を守らないと、硬化膨張が大きくなったり、模型が脆くなったりします。例えば、推奨混水比より5%多く水を加えると、硬化時間が遅延し、硬化膨張率と強度が低下します。この結果、模型表面の強度が著しく低下し、技工作業中に容易にすり減ってしまいます。


具体的には、超硬石膏の標準混水比は0.20~0.23(粉100gに対して水20~23ml)で、硬化時間は約10~11分です。普通石膏は混水比0.50で硬化時間が15分程度かかります。温度も影響し、練和水は10~40℃の範囲で、温度が高いほど二水石膏の析出速度が速まり硬化が早くなります。


硬化時間は環境で変わります。


混水比を正確に測定するには、デジタルスケールと計量カップを使用し、粉と水を正確に計量することが基本です。目分量での混和は避け、必ず重量または容量で測定してください。練和時は真空練和器を使用すると気泡混入を防ぎ、より緻密な模型が作製できます。


硬化後の脱型タイミングも重要です。脱型は硬化完了後、約1時間後が理想とされています。早すぎる脱型は模型の変形や破損を招き、遅すぎると印象材と石膏の分離が困難になります。また、石膏は硬化時に発熱するため、完全に冷却されるまで待つことが変形防止につながります。


吉野石膏販売の「石膏類物理的性質一覧」では、各製品の混水比、硬化時間、膨張率が詳細に記載されています。


石膏種類別の臨床用途と選択基準

作業模型の精度要求に応じて石膏を選択することが補綴物の適合を左右します。精密補綴物(インレー、クラウン、ブリッジ)の作業模型には超硬石膏が必須です。超硬石膏は膨張率0.08%以下で、マージン部分のシャープさを保ち、補綴物の適合精度を高めます。


対合歯模型には硬石膏または超硬石膏を使用します。精度に拘っている医院では、対合歯も超硬石膏を使用するケースが増えています。咬合関係の記録精度が向上し、補綴物の咬合調整が最小限で済むためです。一方、参考模型やスタディモデルには普通石膏で十分です。これらは診断や説明用であり、高精度は不要だからです。


コスト面も考慮が必要です。


義歯製作では用途によって使い分けます。総義歯の概形印象模型には普通石膏、精密印象後の作業模型には硬石膏を使用します。部分床義歯でサベイングが必要な場合も硬石膏が適しています。超硬石膏は高価ですが、クラスプやバーなどの精密部品には必須です。


埋没材としての石膏の用途もあります。鋳造用石膏系埋没材は、インレーやクラウンのワックスパターンを埋め込むための耐火性材料で、主成分をシリカ(SiO₂)とし、それを結合するための石膏からなります。クラウンやインレーに適した埋没材では、きれいな鋳肌が得られ、優れた寸法精度が実現できます。


石膏トリマーで底面を整える際にも、石膏の種類によって削りやすさが異なります。普通石膏は柔らかく削りやすいですが、超硬石膏は硬いため専用のバイトやカーバイドバーが必要です。作業効率を考慮した石膏選択も重要なポイントとなります。


京都市西京区浅井歯科の「詰め物②~石膏模型~」では、各種石膏の具体的な用途について写真付きで解説されています。


石膏注入時の気泡防止と精度向上テクニック

気泡混入は補綴物の適合不良を引き起こす最大の失敗原因です。印象に気泡が入ると、その部分の模型が盛り上がり、技工所で作製された補綴物が口腔内で適合しません。特に支台歯のマージン部分に気泡が入ると、再印象が必要となります。


気泡が入る主な原因は空気の取り残しです。アルジネート印象の内側には空気が存在しており、この空気を石膏と適切に置き換えることができないと気泡が発生します。石膏を流す位置がバラバラだったり、1回の流し込む量が多すぎたり、バイブレーターをあて過ぎたりすることも気泡の原因となります。


具体的な対策は以下の通りです。石膏は支台歯付近から少量ずつ流し始め、バイブレーターを適度に使用して空気を追い出します。一度に大量の石膏を流すと気泡が入りやすくなるため、少量ずつ継続的に注入することが基本です。印象体を傾けながら、石膏が低い位置から高い位置へと流れるように誘導します。


注入前の準備も重要です。


真空練和器を使用すると、練和時の気泡混入を大幅に減らせます。また、印象材の表面張力を下げるために界面活性剤(印象材用サーフェクタント)を塗布する方法も効果的です。これにより石膏が印象材の細部まで流れ込みやすくなります。


二度注ぎは避けるべきです。先に注入した石膏の上に後から注入した石膏が被さると、境界面で分離してしまうことがあります。この分離は完成技工物の適合に大きな影響を及ぼします。模型用フォーマーを用いて一度で注ぐことが推奨されます。


「【専門家が徹底解説】なぜ石膏に気泡入った?原因対処と対策全部」では、気泡混入の具体的な原因と対策が動画付きで説明されています。


石膏模型の保管期間と廃棄処理の法的義務

石膏模型は治療後3年間の保存義務があり、違反すると法的責任を問われます。歯科におけるスタディモデル(石膏模型)は歯科医師法により、治療完了日の属する月の翌月1日から起算して3年間の保存が義務付けられています。矯正治療の場合は保定期間を含む治療完了後3年間です。


保管場所の確保が深刻な問題となっています。毎年大量の石膏模型を作成し続けると、何トンにもなる石膏模型が蓄積します。一般的な歯科医院では、棚やキャビネットに模型を積み重ねて保管していますが、スペースが不足すると別の倉庫を借りるケースもあります。


問題は場所だけではないです。


石膏模型は湿気や衝撃に弱く、保管環境が悪いと劣化します。湿度が高いと表面が崩れやすくなり、落下させると簡単に破損します。長期保管では定期的に状態を確認し、必要に応じて乾燥剤を使用することが推奨されます。


近年はデジタル化が進んでいます。石膏模型を3Dスキャナーでスキャンし、STLデータとして保存する方法が普及しつつあります。データ保存も3年と解され、クラウド上に保管すれば場所の問題が解決します。模型スキャンサービスを提供する業者も増えており、過去の模型を一括してデジタル化することも可能です。


廃棄時には産業廃棄物処理が必須です。石膏は産業廃棄物として分類されており、一般ゴミとして捨てることは法律違反です。許可を受けた産業廃棄物処理業者と契約し、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を用いて適正に処理する必要があります。処理費用はペール容器(20リットル)1つにつき約4,400円(税込)が相場です。


燃やせないため減量化できず、大量廃棄時には高額な処理費用がかかります。閉院時には特に注意が必要で、数十年分の模型を一度に廃棄する場合、数十万円のコストが発生することもあります。


「歯科石膏の正しい廃棄方法とは?産業廃棄物の区分と手順を解説」では、法的義務と具体的な廃棄手順について詳しく説明されています。




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