埋没材 歯科 種類と選び方 鋳造精度への影響

歯科技工の鋳造精度を左右する埋没材の種類と特性を解説。クリストバライト系とリン酸塩系の違い、混水比の管理、温度コントロールが鋳造体に与える影響を知っていますか?

埋没材 歯科 種類と特性

混水比を1%変えるだけで鋳造体が適合しなくなります。


この記事の3つのポイント
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埋没材の種類と選択基準

クリストバライト系とリン酸塩系の成分差、膨張率の違い、適合する金属種別を理解し、症例に応じた使い分けができる

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混水比と温度管理の重要性

混水比1%の違いが鋳造体の適合精度に直結する理由と、室温・埋没材温度・水温を管理する具体的な手順

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鋳造欠陥の原因と対策

気泡・バリ・鋳巣などの欠陥が起こる埋没作業のミスと、真空攪拌時間・加熱スケジュールの適正化による予防法


埋没材 歯科 クリストバライト系の特徴


クリストバライト系埋没材は、歯科鋳造において最も普及している石膏系の埋没材です。主成分はクリストバライトと呼ばれるシリカの結晶形で、全体の約40%を占めています。残りの約35%が石英、そして約25%が微細な石膏粒子と微量の水溶性レジンで構成されています。つまり、「石膏系」と呼ばれながらも、実際には約75%がシリカ系素材でできているということです。


この埋没材の最大の特徴は、750℃以下の焼成温度で使用できることにあります。金合金、銀合金、銅合金、アルミ合金など、融点1200℃以下の金属に対応可能です。クラウンやインレー、ブリッジなどの一般的な補綴物の製作に広く使われています。


操作性の面では、混水比が33%程度で、硬化時間は約12分です。流動性が高く設定されているため、マージン部の細部まで埋没材が行き渡りやすい特性があります。この流動性の高さが、鋳造体の精度向上に直結します。


ただし、注意すべき点もあります。石膏成分は700℃で分解し始め、800℃以上になると三酸化硫黄を発生します。これがガス鋳巣の原因になるため、最高焼成温度が750℃に制限されています。融点が1200℃に近い金属や、純銅・銅成分の多い合金には、シリカ系埋没材の使用を検討する必要があります。


埋没材 歯科 リン酸塩系との違い

リン酸塩系埋没材は、結合材として酸化マグネシウムと第1りん酸アンモニウムを使用し、耐火材としてシリカ、アルミナ、ジルコンなどを含む高温鋳造用の埋没材です。クリストバライト系との最も大きな違いは、使用可能な温度域にあります。リン酸塩系は900℃から950℃という高温での焼却に対応できるため、プレスセラミックスやチタン鋳造など、より高度な技工作業に適しています。


膨張率の面でも明確な差があります。クリストバライト系の熱膨張率は800℃で約0.7%から1.2%の範囲ですが、混水比によって変動します。一方、リン酸塩系は専用液(コロイダルシリカ水溶液)との混液比で膨張率を調整でき、より精密な膨張コントロールが可能です。CAD/CAM技術との相性も良く、デジタルワークフローに対応した製品も登場しています。


GCのりん酸塩系埋没材に関する技術資料


操作性では、リン酸塩系は硬化後の反応層除去が容易という利点がありますが、価格はクリストバライト系より高価です。また、リン酸塩系は湿気の影響を受けやすく、クリストバライト系で使われるシリカゲルによる防湿効果がほとんど得られません。


保管時の湿度管理が重要になります。


症例の選択基準としては、一般的なクラウン・インレーにはクリストバライト系、オールセラミックのプレス成形やメタルフレームの高精度な適合が求められる症例にはリン酸塩系という使い分けが基本です。ブリッジのような大型補綴物では、鋳型強度の高いリン酸塩系が選ばれることもあります。


埋没材 歯科 混水比による膨張率の変化

混水比は鋳造体の適合精度を決定する最重要因子の一つです。同じ埋没材でも、混水比を変えると熱膨張率が大きく変動します。例えば、混水比38%では800℃での熱膨張が1.1~1.2%になるのに対し、42%では約0.8%まで低下します。わずか4%の差で、膨張率が約0.3~0.4%も変わってしまうのです。


この数値の差は、臨床的に無視できない影響を及ぼします。鋳造体の適合不良、マージンの浮き上がり、咬合高径のズレなどの原因になります。特にブリッジのような長いスパンの補綴物では、この誤差が累積し、両端の支台歯で数百ミクロン単位の適合誤差として現れます。


混水比を正確に管理するためには、粉末と水の計量を電子はかりで行い、0.1g単位まで測定することが推奨されます。自動計量器を使用すれば、はかりと連動して瞬時に混水比が表示されるため、ヒューマンエラーを防げます。


温度管理も同様に重要です。室温が適温になっても、埋没材自身が適温になるまで3~4時間かかります。朝一番の作業では、前日から室温管理された埋没材を使用するか、使用前に十分な時間を置く必要があります。水温も18~20℃に管理することで、硬化時間を安定させられます。水温が高いと硬化が早まり、作業時間が短くなります。


埋没材 歯科 真空攪拌と気泡除去

埋没材の真空攪拌は、鋳造欠陥を防ぐための必須工程です。手練和だけでは、埋没材泥中に多数の気泡が残留してしまいます。これらの気泡は鋳造時に金属が流入し、鋳造体表面に突起やバリとして現れます。真空攪拌器を使用することで、気泡を効率的に除去できます。


推奨される攪拌時間は、手練和15~20秒の後、真空攪拌器で60~90秒です。60秒未満では脱泡が不十分になり、90秒を超えると埋没材の流動性が低下し始めます。真空圧は0.08~0.09MPa程度が適切で、これ以下では脱泡効果が弱く、これ以上では埋没材の過度な膨張を引き起こす可能性があります。


歯科技工士コミュニティでの埋没ミスに関する議論(埋没材の攪拌の重要性について)


真空攪拌器は水平・垂直の双方向に攪拌できる機種が理想的です。単一方向の攪拌では、容器の底部や側面に練り残しが発生しやすくなります。攪拌中は容器内の埋没材の動きを観察し、全体が均一に混ざっていることを確認します。


気泡が残留した場合の具体的な影響として、鋳造体の内面がボコボコになったり、表面に荒れや気泡痕が出現したりします。特にマージン部分に気泡が残ると、適合精度に直接影響するため、埋没時のバイブレーターの使用も重要です。ただし、長時間のバイブレーションは部分的に混水比を変化させる恐れがあるため、必要最低限にとどめます。


埋没材 歯科 急速加熱と焼却時間の最適化

急速加熱法は、埋没後の待ち時間を大幅に短縮できる技術です。従来の標準加熱法では埋没後7~8時間の放置が必要でしたが、急速加熱型の埋没材を使用すれば、埋没後15分から30分で焼却炉に投入できます。これにより、当日中に鋳造まで完了させることが可能になります。


急速加熱の具体的なスケジュールは、埋没材の種類によって異なります。15分タイプでは、埋没後15分間室温で放置した後、700℃に予熱した電気炉に直接投入します。30分タイプでは、埋没後30分間の放置後、800~850℃の炉で30分以上係留してから鋳造します。係留時間が短すぎると、鋳型内部のワックスが完全に燃焼せず、鋳造欠陥の原因になります。


注意すべき点として、埋没後3時間以内に焼却しない場合は、保湿可能な容器で密封保存する必要があります。


乾燥収縮を防ぐためです。


翌日以降に鋳造する場合は、10分間室温水に浸漬させてから、室温から約1時間かけて850℃まで昇温します。急速加熱を行わず、標準的な加熱カーブを使用します。


焼却温度の管理も重要です。石膏系埋没材の場合、750℃を超えると石膏成分が分解して三酸化硫黄を発生し、ガス鋳巣の原因になります。リン酸塩系では900~950℃という高温が必要ですが、過度の高温や長時間の係留は埋没材の劣化を引き起こします。金属メーカーが推奨する焼却スケジュールを厳守することで、安定した鋳造品質を維持できます。




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