同じバーでもメーカーで名前が違うので統一できません。
支台歯形成に使用するバーには、軸面形成用、咬合面形成用、隣接面形成用の3つの基本カテゴリーがあります。これらのバーは形態や用途によってさまざまな名前で呼ばれていますが、実は同じ形状のバーでもメーカーによって名称が異なるという課題があります。
軸面形成用のバーの代表格はシャンファーバーです。シャンファーバーは先端が丸くなっており、マージン部分に滑らかな凹状の辺縁形態を付与することができます。このバーは歯頸部のフィニッシュラインを形成する際に不可欠な器具であり、適切な角度を維持しながら連続したマージンラインを作り出すことが可能です。
咬合面形成用のバーには、洋ナシ型、たる型、つぼみ型などの形状があります。これらの名称もメーカーによって呼び方が変わることがあり、例えば洋ナシ型は「ペアシェイプ」、たる型は「バレル型」とも呼ばれます。咬合面のクリアランスを効率的に確保するために、これらの形状が設計されており、広い面積を均一に削除できる特徴があります。
隣接面形成には、スライスカットバーやタペレッドフィッシャーバーが用いられます。スライスカットバーは細長い形状をしており、隣接歯を傷つけずに隣接面を削除できるように設計されています。特に臼歯部の遠心面など直視しにくい部位での形成に有効です。
バーの名称を統一するための試みとして、ISO規格による番号表示システムがあります。ISO規格では上段3桁が頭部の形態を、下段3桁が頭部最大径を表しており、例えば「001/014」という表示であれば、形態番号が001で頭部最大径が1.4mmという意味になります。
つまり統一規格があるということですね。
松風のダイヤモンドポイントカタログ(PDF)では、ISO規格に基づいたバーの形態分類と使用用途が詳しく解説されています
ダイヤモンドバーの切削性能を決定する重要な要素が粒度です。粒度とはバー表面に電着されているダイヤモンド粒子の大きさを指し、この粒度によってバーの名称も変わってきます。現在、主要メーカーから提供されているダイヤモンドバーには5種類の粒度があります。
最も粗い粒度はスーパーコースと呼ばれ、急速に大量の歯質を削除したい場面で使用されます。スーパーコースは砥粒量を増やして切削効率を高めており、初期の粗削りや金属除去などに適していますが、形成面は比較的粗くなります。次に粗いのがコースで、支台歯形成の初期段階での使用が一般的です。
レギュラー粒度は最も汎用性が高く、多くの支台歯形成で標準的に使用されています。切削効率と形成面の滑沢性のバランスが良いため、軸面形成や咬合面形成の主要な削合に用いられます。医院によってはこれだけで形成を完了させることもありますが、より精密な仕上がりを求める場合は次の段階に進みます。
ファイン粒度は約50μmのダイヤモンド粒子を使用しており、形成面をより滑らかに仕上げることができます。CAD/CAM冠の支台歯形成では、スキャナーでの読み取り精度を高めるために、ファイン粒度での仕上げが推奨されることが多いです。
仕上げの段階が基本です。
最も細かいのがスーパーファイン粒度で、約20μmの超微粒子ダイヤモンドを使用しています。スーパーファインで形成された面は特に滑沢であり、印象採得前のマージン整えや最終仕上げに最適です。精密な印象を採得するためには、マージン部分をスーパーファインで滑らかに仕上げることが重要になります。
粒度の選択は形成の段階に応じて使い分けるのが効率的です。具体的には、まずコースまたはレギュラーで概形成を行い、必要なクリアランスを確保します。その後、ファインで形成面を整え、最後にスーパーファインでマージン部分を仕上げるという流れが理想的です。この段階的アプローチにより、チェアタイムを短縮しながら高品質な形成が可能になります。
粒度を識別するために、多くのメーカーではシャンク部分にカラーリングを施しています。例えば、ファイン粒度は青色、コースは緑色といった具合に色分けされており、使用中でも一目で粒度を判別できるようになっています。どの色がどの粒度かはメーカーによって異なるため、使用する製品のカラーコードを確認しておく必要があります。
OneD(ワンディー)の記事では、支台歯形成から補綴物除去、仕上げ研磨までの手順別バー選択について詳しく解説されています
支台歯形成バーは国内外の複数メーカーから販売されており、同じ形状のバーでもメーカーごとに異なる名称が付けられているという現状があります。この名称の不統一が、特に新人歯科医師や異なる医院間でのコミュニケーションを難しくしている要因の一つです。
主要な国内メーカーとしては、松風、ジーシー、マニー、モリタ、日向和田精密製作所(メリーダイヤ)などが挙げられます。海外メーカーではコメット(ドイツ)、ダイアテック(スイス)などが高いシェアを持っています。それぞれのメーカーが独自の命名規則を採用しており、例えばシャンファー形成用のバーでも、あるメーカーでは「S1」、別のメーカーでは「106R」といった具合に全く異なる番号で呼ばれています。
松風のダイヤモンドポイントシリーズでは、形態を数字で表現するシステムを採用しています。例えば「103R」は円錐形のラウンドエンド、「106R」はシャンファー形成用といった具合です。この数字システムは直感的ではない面もありますが、一度覚えてしまえば形態と番号を紐付けて記憶できるメリットがあります。
コメット社のSダイヤモンドバーシリーズは「S1」「S2」「S4」といったシンプルな番号体系を採用しています。S1はラウンドエンド、S4はトーピードエンドといった具合に、それぞれの番号が特定の先端形状に対応しています。コメット製品の特徴は、先端形状のバリエーションが豊富で、マージン形態に応じた細かな選択が可能な点です。
マニーのダイヤバーは、用途別にセット化されたキットを提供しており、「支台歯形成セット」「CAD/CAM形成セット」といった名称で販売されています。セット内容はそれぞれの臨床ニーズに合わせて選定されており、個別にバーを選ぶ手間を省けるという利点があります。各バーの番号も独自のものですが、セットとして使用することで体系的に習得できます。
メーカーによる名称の違いは、同じ医院内で統一したメーカーを使用することである程度解決できます。複数のメーカーのバーが混在すると、必要なバーを探す時間が増え、誤って異なる形状のバーを使用してしまうリスクも高まります。医院全体で使用するバーのメーカーとラインナップを決定し、スタッフ全員が共通認識を持つことが効率的な診療につながります。
国際的にはISO規格による統一表記が存在しますが、臨床現場では依然としてメーカー固有の名称が広く使われているのが実情です。ISO番号と各メーカーの名称を対照表にして管理することで、異なるメーカー間での互換性を理解しやすくなります。
支台歯形成において最も重要な要素の一つがマージン形態です。マージン形態とは、支台歯と補綴物が接する歯頸部の辺縁形態のことで、この形態によって使用すべきバーの名前や種類が変わってきます。主なマージン形態には、シャンファー、ショルダー、ヘビーシャンファー、ナイフエッジ、ベベルなどがあります。
シャンファー形態は、最も一般的なマージン形態の一つです。凹状の滑らかな辺縁を持ち、歯質切削量が比較的少ないのが特徴です。金属冠やメタルボンド冠の支台歯形成で頻繁に用いられます。シャンファー形成には、先端が丸くなった「シャンファーバー」または「ラウンドエンドバー」と呼ばれるバーを使用します。このバーを歯軸に対して適切な角度で当てることで、理想的なシャンファー形態が得られます。
ショルダー形態は、マージン部分が段差状になっており、歯質切削量が多いのが特徴です。オールセラミッククラウンやジルコニアクラウンなど、審美性と強度が要求される補綴物で用いられます。ショルダー形成には、先端が平坦な「ショルダーバー」または「フラットエンドバー」を使用します。ショルダーバーを用いることで、明確な段差を持つマージンラインを形成できます。
ヘビーシャンファー形態は、シャンファーとショルダーの中間的な形態で、シャンファーよりも歯質切削量が多く、角度も大きくなっています。CAD/CAM冠の支台歯形成で推奨されることが多く、ラウンドショルダーバーやヘビーシャンファーバーという名称のバーが使用されます。先端径が太めのバー(例:108R、109R)を使用することで、適切なヘビーシャンファー形態が付与できます。
ナイフエッジ形態は、マージン部分が鋭利な刃状になっており、歯質切削量が最も少ないマージン形態です。しかし、補綴物の辺縁が薄くなりすぎて破折のリスクが高いため、現在ではほとんど推奨されていません。ナイフエッジ形成には先端が尖ったテーパー型のバーを使用しますが、臨床的にはより安全な他のマージン形態を選択することが一般的です。
ベベル形態は、既存のマージンに対して斜めに削り込みを加える形態で、金属冠の辺縁適合を向上させるために用いられることがあります。ベベル付与には、細身のテーパー型バーやフレームバーと呼ばれる専用のバーを使用します。ただし、ベベルの角度や幅を適切にコントロールする技術が必要です。
マージン形態の選択は、補綴物の材質によって決まります。金属冠ではシャンファー、メタルボンド冠では唇側がショルダーで舌側がシャンファー、オールセラミッククラウンでは全周ショルダーまたはヘビーシャンファー、CAD/CAM冠ではヘビーシャンファーまたはラウンドショルダーというのが一般的な原則です。
形態と材質を一致させましょう。
スリービーラボラトリーズの記事では、支台歯形成のマージン形態の種類と選択基準について詳しく解説されています
支台歯形成に使用される切削器具には、大きく分けてダイヤモンドバーとカーバイドバーの2種類があります。これらは切削メカニズムや適用場面が異なるため、それぞれの特性を理解した上で適切に使い分ける必要があります。
ダイヤモンドバーは、金属シャンクの表面にダイヤモンド粒子を電着させた研削器具です。研削加工の原理で動作し、高速回転する細かいダイヤモンド粒子が材料表面に接触して少しずつ削り取っていきます。ダイヤモンドバーの最大の特徴は、硬組織に対する高い切削能力です。エナメル質や象牙質といった歯質の形成に最適であり、支台歯形成の主力器具として広く使用されています。
ダイヤモンドバーの利点は、形成面に微細な凹凸(マイクロリテンション)を作り出すことです。この微細な凹凸は、接着性レジンセメントを使用する際の機械的嵌合力を高める効果があり、特に接着修復において有利に働きます。また、ダイヤモンドバーは比較的長寿命で、適切に使用すれば天然歯10本程度を連続で形成しても切削力が大きく低下しないという報告もあります。
一方、カーバイドバーは、タングステンカーバイド製の刃部を持つ切削器具です。刃物的に材料を切削する加工法であり、鋭い刃が回転しながら材料を削り取っていきます。カーバイドバーの特徴は、切削感が明確で、切れ味が鋭いことです。ダイヤモンドバーに比べて振動が少なく、滑らかな切削感が得られます。
カーバイドバーの主な用途は、金属やコンポジットレジンの切削です。金属冠やメタルコアの除去、補綴物の調整などに適しています。特にクロスカットと呼ばれる刃付けパターンを持つカーバイドバーは、金属除去において非常に高い効率を発揮します。支台歯形成においても、金属系のコア材料がある場合や、旧補綴物を除去した後の仕上げ形成にカーバイドバーが用いられることがあります。
支台歯形成の一般的なワークフローでは、まずダイヤモンドバーで歯質の形成を行います。粒度の粗いダイヤモンドバー(コースまたはレギュラー)で概形成を行い、必要なクリアランスを確保します。次に、粒度の細かいダイヤモンドバー(ファインまたはスーパーファイン)で形成面を滑らかに仕上げます。この段階でマージンラインを明瞭にし、印象採得に適した状態にします。
金属コアが存在する場合は、ダイヤモンドバーとカーバイドバーを併用します。まずカーバイドバーで金属部分を効率的に削除し、その後ダイヤモンドバーで残存歯質を形成するという流れです。この使い分けにより、バーの消耗を最小限に抑えながら効率的な形成が可能になります。
適材適所が原則です。
CAD/CAM冠の支台歯形成では、ダイヤモンドバーの選択がより重要になります。CAD/CAMシステムのスキャナーは形成面の滑沢性を高精度で読み取るため、スーパーファイン粒度での仕上げが推奨されます。また、ミリングバーの形状を考慮した支台歯形態にする必要があり、鋭角部分を作らず丸みを帯びた形態に仕上げることが重要です。
OneD(ワンディー)の記事では、ダイヤモンドバーとカーバイドバーの切削感・耐久性・用途の違いについて詳しく比較されています