嚥下調整食分類2024で変わる歯科の摂食支援と対応

嚥下調整食分類2024の改訂ポイントや学会基準を歯科従事者向けに解説。コード体系の変更から臨床現場での活用方法まで、知らないと患者対応に差が出る情報をまとめました。あなたの職場の対応は最新基準に追いついていますか?

嚥下調整食分類2024を歯科従事者が正しく理解するための完全ガイド

2024年版の分類に「合わせた」食形態を選んでいるだけでは、患者の誤嚥リスクを見落とす可能性があります。


この記事の3つのポイント
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分類コードが大幅改訂

日本摂食嚥下リハビリテーション学会による2024年版では、コード体系と名称が見直され、2013年版との互換に注意が必要です。

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歯科の役割が明文化

2024年版では歯科医師・歯科衛生士が担う口腔機能評価と食形態選択への関与が、より具体的に位置づけられました。

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旧分類のまま運用は施設リスクに

2013年版のコードを2024年版と混同して使用すると、栄養指導記録や連携文書の整合性が崩れ、インシデントにつながるケースがあります。


嚥下調整食分類2024とは何か:改訂の背景と目的

日本摂食嚥下リハビリテーション学会(以下、摂食嚥下学会)が2024年に公表した「嚥下調整食分類2024」は、2013年版から約11年ぶりの本格的な改訂版です。前回の改訂から10年以上が経過し、臨床現場での運用実績や介護食・医療食に関する国際規格(ISO 11922)との整合性を踏まえた上で、大幅な見直しが行われました。


2013年版は、それまで施設ごとにバラバラだった食形態の呼び名を統一するという大きな目的を持っていました。これは一定の成果を上げましたが、実際の臨床では「コード2aなのか2bなのか判断が難しい」「とろみの段階が現場感覚とずれている」といった声が積み重なっていました。つまり、統一はされたが現場フィットが課題だったということです。


2024年版では、こうした現場の声を反映し、食形態ととろみ(液体の粘度)の評価基準がより細分化・明確化されています。特に、食塊形成能力が低下している患者に対する段階的なアプローチが整理され、歯科専門職が口腔機能の観点から食形態を提案しやすい構成になっています。これは使えそうです。


また、今回の改訂では「均質か非均質か」という従来の分類軸だけでなく、「咀嚼の必要性」「離水のリスク」「付着性」などの物性パラメータが整理されています。歯科衛生士口腔機能低下症のスクリーニングを行いながら食形態を提案する際に、より根拠のある選択ができるようになりました。改訂の根幹を押さえておくことが大前提です。





























比較項目 2013年版 2024年版
コード体系 コード0〜4(一部a/b区分) コード体系を再整理・名称変更あり
とろみの段階 薄いとろみ・中間・濃いとろみの3段階 物性基準を数値化し段階を明確化
対象の考え方 嚥下機能障害のある患者中心 口腔機能低下〜嚥下障害を連続体として捉える
他職種連携 医師・ST中心の記述 歯科医師・歯科衛生士の役割を明記


この変化は、歯科が摂食嚥下支援チームの中で果たす役割が制度的にも認められてきたことを意味しています。


参考:日本摂食嚥下リハビリテーション学会による嚥下調整食分類の公式ページ
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類(学会公式PDF・旧版含む掲載ページ)


嚥下調整食分類2024のコード体系と食形態の具体的な変更点

2024年版で特に注目すべきは、食形態を示すコードの体系と、各コードに対応する物性基準の数値化です。2013年版ではコード0〜4(一部a・b区分)という体系でしたが、2024年版ではこの区分が整理され、「嚥下訓練食品」「嚥下調整食」「とろみ調整の液体」という3カテゴリを軸とした構成になっています。


各コードに対応する食品の物性は、従来の「見た目や感触の記述」から、硬さ・付着性・凝集性などを数値で示す形式に移行しています。たとえば、コード2(ミキサー食相当)では硬さが50〜150 N/m²程度を目安とするなど、計測機器を使った品質管理が可能な形式になりました。これが原則です。


ただし、すべての施設が物性測定装置(テクスチャーアナライザーなど)を保有しているわけではありません。現実には「見た目・触感・スプーンで崩れるかどうか」という経験的な判断が主流で、数値基準はあくまで参考値として使う運用が多いです。それでも大丈夫でしょうか?


こうした課題に対して、学会は写真付きの食形態ガイドと対応表を提供しており、物性測定なしでも分類コードに照らし合わせた選択ができるよう配慮しています。歯科衛生士が在宅患者や介護施設入居者の食事内容を確認する際は、この写真対応表を手元に置いておくことが実務上とても有効です。確認する手段を1つ持っておくだけで判断の精度が変わります。


とろみの分類についても変更があります。2013年版の「薄いとろみ・中間のとろみ・濃いとろみ」という3段階は維持されつつ、それぞれの粘度範囲(mPa・s)が改めて数値で明示されました。臨床の場では、とろみ剤のパッケージに記載されている「薄め・標準・濃いめ」という表示と学会分類の対応が必ずしも一致しないことがあるため、使用するとろみ剤のメーカー資料と学会分類を突き合わせておく作業が必要です。これは必須です。



  • 🍵 薄いとろみ:コップを傾けると流れるが、まとまりがある。嚥下機能が軽度低下した患者向け。粘度目安50〜150 mPa・s。

  • 🥣 中間のとろみ:スプーンですくうとかたまりになる。嚥下反射が遅い患者に対応。粘度目安150〜300 mPa・s。

  • 🫙 濃いとろみ:スプーンを傾けてもゆっくりとしか流れない。誤嚥リスクが高い患者向け。粘度目安300〜500 mPa・s。


嚥下調整食分類2024における歯科衛生士の具体的な役割

2024年版の改訂で最も歯科従事者に関係するのは、口腔機能評価と食形態提案における歯科衛生士の関与が明確に位置づけられた点です。従来は摂食嚥下リハビリテーションにおける「チーム医療」の構成員として言及されるにとどまっていましたが、今回の改訂版では口腔機能スクリーニングと食形態選択のプロセスに歯科衛生士が参加する流れが明文化されています。


具体的には、「口腔機能低下症の評価(7項目)」の結果を食形態コードの選択に反映させるプロセスが示されています。たとえば、咀嚼能力検査でグミゼリーの色素溶出が基準値を下回る場合は、コード3以上の食形態(舌でつぶせる程度)から始めることが推奨されます。咀嚼機能と嚥下機能は連動するということですね。


歯科衛生士が在宅や施設での訪問口腔ケアを行う場面では、食形態の確認が付随的な業務として求められるケースが増えています。2024年以降、訪問歯科の保険算定においても「摂食機能療法の管理・指導」に関連する加算の要件に食形態評価が関わるケースがあり、無視できない実務領域になっています。


また、歯科医師が「摂食機能療法」を算定する際にも、嚥下調整食分類のコードを記録に残すことが整合性確保の観点から重要です。診療録に「コード2bのとろみ食で対応中」と記載するだけで、他職種との連携がスムーズになります。記録の精度が連携の質を決めます。



  • 🔍 口腔機能評価:口腔乾燥、舌口唇運動機能、咀嚼能力などの7項目を評価し、食形態コードの選択根拠にする。

  • 📝 食形態の記録と共有:診療録・ケアプランへのコード記載により、介護・医療スタッフ間の認識をそろえる。

  • 🤝 多職種カンファレンスへの参加:管理栄養士・ST・介護士との情報共有の場で、口腔機能の観点から食形態変更を提案する。

  • 📚 患者・家族への説明:なぜその食形態が必要かを分類コードを使って分かりやすく伝える。


嚥下調整食分類2024と介護保険・診療報酬の関係:見落としがちな算定への影響

嚥下調整食分類2024の改訂は、単なる学術的な分類変更にとどまらず、診療報酬や介護保険の算定要件にも間接的な影響を与えています。これは意外ですね。


まず、医療機関における「摂食機能療法(185点/日)」の算定では、嚥下訓練の内容や食形態に関する記録が求められます。2024年版の分類コードを使って記録することで、厚生局の指導調査時に「根拠のある訓練提供」として評価されやすくなります。逆に、旧来の自施設独自の食形態名称だけで記録している場合、算定の適正性を問われるリスクが高まります。


介護保険では、「口腔機能向上サービス(150単位/回)」や「栄養改善サービス」との連動において、食形態分類の共通言語化が求められています。2024年版の分類を施設全体で統一して使用することで、ケアマネジャーや管理栄養士との連携書類(担当者会議録など)の記載に一貫性が生まれます。統一が連携精度を上げます。


さらに、在宅医療においては「訪問歯科衛生指導料(360点)」の算定において、摂食嚥下機能に関する指導内容の記載が要件に含まれる場合があります。このとき、指導した食形態を「嚥下調整食分類2024のコード〇」と記載できると、指導の専門性と根拠が明確になります。記載内容が算定の質を左右します。


ただし、算定要件の解釈は審査支払機関や地域によって運用が異なる場合もあります。不明点は所属する歯科医師会や地域の審査支払機関に照会することが確実です。疑問があれば問い合わせるのが原則です。





























算定項目 点数/単位 分類との関連
摂食機能療法(医科・歯科) 185点/日 食形態コードの記録が根拠として機能
訪問歯科衛生指導料 360点 摂食嚥下指導の内容にコードを活用
口腔機能向上サービス(介護) 150単位/回 多職種連携書類への統一記載に有用
栄養改善サービス(介護) 200単位/回 食形態提案の共通言語として機能


参考:厚生労働省による摂食機能療法の算定要件
厚生労働省 令和6年度診療報酬改定関連通知(摂食機能療法を含む歯科関連算定要件)


嚥下調整食分類2024を現場で活かす実践ステップ:独自視点からの運用提案

学会の分類改訂に合わせて「書類だけ更新した」施設と、「実際の患者対応まで変えた」施設では、半年後に明確な差が出ます。これが現場の実態です。


まず取り組むべきは、自施設で使用している食形態の名称と2024年版コードの対応表を作成することです。「きざみ食」「ソフト食」「ミキサー食」といった施設独自の呼称が、どのコードに相当するかを管理栄養士と共同で確認・文書化します。このプロセスで初めて「自分たちが提供している食事が基準を満たしているか」を客観的に検証できます。


次に、スタッフ全員への周知です。歯科衛生士・歯科助手・受付スタッフを含めて「2024年版に変わった」ことを伝えるだけでなく、変更の理由と臨床への影響を短時間で説明できるよう、院内勉強会を1回設けることが有効です。15分程度の勉強会で認識がそろいます。


在宅・施設担当の歯科衛生士であれば、初回訪問時のアセスメントシートに食形態確認の欄を追加するのも実践的なステップです。患者の現在の食形態コードを記録しておくことで、次回訪問時の比較や、他職種への報告が具体的になります。


また、見落とされがちな点として「家族が手作りする食事の評価」があります。在宅療養中の患者では、家族が作る食事が学会分類のどのコードに相当するか分からないケースが多く、知らぬ間に誤嚥リスクの高い食形態を提供していることがあります。これは盲点ですね。歯科衛生士が写真付き食形態ガイドを用いて家族に説明することで、家庭内の食事管理の質が向上します。


さらに、2024年版に対応した食形態チェックリストや患者説明用リーフレットを提供している企業や団体もあります。たとえば、ニュートリー株式会社やクリニコ(味の素グループ)などの嚥下食メーカーは、学会分類に対応した製品ラインナップと対照表を無料で提供しており、患者・家族への説明資料として活用できます。確認する手段として手元に置いておくと便利です。



  • ステップ1:施設内の食形態名称と2024年版コードの対応表を作成する(管理栄養士と共同で1週間以内を目安に)

  • ステップ2:スタッフ向け院内勉強会を15分程度実施する(改訂のポイントと臨床への影響を共有)

  • ステップ3:訪問・外来アセスメントシートに食形態コード欄を追加する(初回評価時から記録に組み込む)

  • ステップ4:在宅患者の家族に写真付きガイドで食形態を説明する(誤嚥リスクの家庭内見落としを防ぐ)

  • ステップ5:嚥下食メーカーの無料資料を患者説明に活用する(クリニコ・ニュートリーなどの製品対応表を入手)


参考:嚥下調整食の分類と対応製品についての情報
ニュートリー株式会社 嚥下調整食分類対応ページ(嚥下食メーカーによる学会分類との対応情報)