MRONJポジションペーパー2025の要点と歯科対応の最新指針

MRONJポジションペーパー2023改訂でリスク評価・休薬方針・治療戦略が大きく変わりました。歯科従事者として知っておくべき最新エビデンスとは何でしょうか?

MRONJポジションペーパー2023改訂の要点と歯科対応の最新指針

実は「抜歯前に骨吸収抑制薬を休薬しないと訴訟リスクがある」というのは誤解で、休薬しないことが現在の公式推奨です。 emerald-orthopedic-pain-clinic(https://www.emerald-orthopedic-pain-clinic.com/osteoporosis/mronj/)


🦷 MRONJポジションペーパー最新指針:3つのポイント
💊
休薬は「原則不要」に変わった

抜歯前のARA(骨吸収抑制薬)予防的休薬について、現在のPP2023では「原則として休薬しないことを提案する」と明記。従来の常識が根拠なしと判明しました。

🔬
抜歯よりも「感染」がリスク因子

根尖病変・歯周病・智歯周囲炎などの持続的な歯性感染こそがMRONJ発症の主要リスク因子として強調。抜歯行為そのものよりも感染管理が重要です。

🏥
外科治療を積極的に優先

ステージ2・3では外科的治療の方が保存療法より治癒率が高いとされ、全身状態が許す限り外科治療を第一選択とする方針に変わりました。


MRONJポジションペーパー2023の主な改訂ポイントとは



改訂の主な内容を以下にまとめます。


- 📝 疾患名の統一:BRONJ・ARONJからMRONJへ変更(ビスホスホネートとデノスマブに原因薬を絞り込み)
- 🗂️ 定義の変更:「悪性原発腫瘍を除く」の文言を追加
- 📊 ステージ0の廃止:診断・統計からステージ0を削除し、ステージ分類を整理
- 💉 年間投与量による分類:高用量・低用量に分け、日本国内における各発症率を明示
- 🤝 医科歯科薬科連携の強調:処方医・薬剤師の歯科知識向上も推奨


前回2016年版との大きな違いは「治療目標が症状緩和から治癒へ格上げされた」点です。 2012年版・2016年版では「症状の緩和と進行予防」が目標でしたが、現在は積極的な治癒を目指す方向へ転換しています。これは歯科臨床の現場で大きな意識変革を求めるものです。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390018904582153344?lang=en)


MRONJのリスク因子:抜歯より感染が問題

リスク因子を整理すると、以下のとおりです。


- 🔴 高リスク:悪性腫瘍に対する高用量ビスホスホネートの静脈内投与、デノスマブ(がん適応)の使用
- 🟡 中リスク:糖尿病自己免疫疾患、人工透析、全身ステロイド長期使用
- 🟢 低リスク:骨粗鬆症に対する低用量経口ビスホスホネートの単独使用(4年未満は有病率0.1%) msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/06-%E7%AD%8B%E9%AA%A8%E6%A0%BC%E7%B3%BB%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%A8%E7%B5%90%E5%90%88%E7%B5%84%E7%B9%94%E7%96%BE%E6%82%A3/%E9%AA%A8%E5%A3%8A%E6%AD%BB/%E8%96%AC%E5%89%A4%E9%96%A2%E9%80%A3%E9%A1%8E%E9%AA%A8%E5%A3%8A%E6%AD%BB-mronj)
- 🦷 歯科由来リスク:根尖病変歯周病の放置、インプラント周囲炎の持続


MRONJポジションペーパーが示す抜歯前の休薬方針

抜歯前の予防的休薬については、PP2023では明確に「原則として抜歯時にARAを予防的に休薬しないことを提案する」と記載されています。 これは、系統的レビューの結果として「抜歯前にARAを2〜3ヶ月間休薬してもMRONJ発症率が有意に低下するというエビデンスが得られていない」という根拠に基づきます。 hosp.hyo-med.ac(https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/medical/seminar/interview/file20/)


休薬しない方針の根拠を具体的に示すと以下のとおりです。


| 観点 | 内容 |
|------|------|
| エビデンス | 予防的休薬がMRONJ発症率を下げるという有意な証拠はない tokyo-ohc(https://tokyo-ohc.org/wp/wp-content/uploads/2024/08/s48.pdf) |
| 感染リスク | 休薬待機中に歯性・顎骨感染が進行する恐れがある |
| 骨折リスク | 長期休薬により骨粗鬆症性骨折(骨卒中)リスクが上昇する yokoshi(https://www.yokoshi.net/pdf/2024/mronj.pdf) |
| 患者QOL | 不必要な治療遅延は患者の生活の質を損なう |


ただし注意が必要です。 一部メディアで「休薬は一切不要」というセンセーショナルな報道がなされていますが、これは「休薬しなければMRONJが発症しない」という意味ではありません。高リスク症例でのごく短期間の休薬を完全否定するほどのエビデンスもない点は押さえておくべきです。 yokoshi(https://www.yokoshi.net/pdf/2024/mronj.pdf)


実臨床では患者のリスク層別化を行ったうえで、処方医・薬剤師と連携しながら個別に判断することが原則です。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390024478601944832)


MRONJのステージ分類と外科治療の優先

| ステージ | 所見 | 推奨治療 |
|----------|------|---------|
| ステージ1 | 無症状・感染なし・骨露出あり | 保存療法・外科療法どちらも可 |
| ステージ2 | 感染を伴う骨露出・疼痛・腫脹あり | 全身状態が許せば外科療法を優先 |
| ステージ3 | 病的骨折・口腔外瘻孔・下顎骨下縁への到達・上顎洞・下顎骨下縁の壊死 | 外科療法が第一選択 |


これは重要な方針変更です。 以前のPPでは保存療法中心でしたが、PP2023ではステージ2・3において外科的治療の方が治癒率が高いことが示され、全身状態が許す限り外科治療を積極的に優先する方針となりました。これにより治療の目標が「症状緩和」から「治癒」に格上げされたことになります。 jstage.jst.go(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjoms/69/10/_contents/-char/en)


外科的治療における骨切除の範囲については依然として議論がありますが、MRI・骨シンチグラフィーなどの画像診断を組み合わせて病変範囲を把握したうえで治療計画を立てることが推奨されています。治療の根治性を高めるためには、MRONJ治療経験のある口腔外科医への紹介も重要です。 msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/06-%E7%AD%8B%E9%AA%A8%E6%A0%BC%E7%B3%BB%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%A8%E7%B5%90%E5%90%88%E7%B5%84%E7%B9%94%E7%96%BE%E6%82%A3/%E9%AA%A8%E5%A3%8A%E6%AD%BB/%E8%96%AC%E5%89%A4%E9%96%A2%E9%80%A3%E9%A1%8E%E9%AA%A8%E5%A3%8A%E6%AD%BB-mronj)


📄 日本口腔外科学会:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023(全文PDF) — 改訂の詳細・ステージ分類・治療方針の全文を確認できます


MRONJポジションペーパーが求める医科歯科薬科連携の実践

PP2023で新たに強く打ち出されたのが「医科歯科薬科連携の実践」です。 これは単なるお題目ではなく、具体的な行動指針として以下の内容が示されています。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390024478601944832)


- 🦷 歯科側:処方医からのARA処方背景・疾患情報を理解し、投薬理由を踏まえた処置判断を行う
- 🏥 処方医(内科・整形外科など)側:う蝕・歯周病の基礎知識を身に付け、ARA処方前に歯科受診を促す
- 💊 薬剤師側:MRONJ関連情報を患者に説明する際、歯科との連携を勧める
- 📋 骨粗鬆症治療開始前:ARA開始前だけでなく、骨粗鬆症治療を開始するすべての患者に歯科スクリーニングを原則化


特に重要な点として、歯科スクリーニングの対象が「ARA開始前の患者」から「骨粗鬆症治療開始患者全員」に拡大されました。 これにより、ARAをまだ使っていない段階でも歯科医師が関与するタイミングが生まれます。これは使えそうです。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390024478601944832)


連携を実効的に行うためには、処方医や薬剤師との情報共有ツール(診療情報提供書・お薬手帳・地域連携パスなど)の活用が有効です。口腔内感染源がMRONJのリスクを高める以上、定期的な口腔管理口腔衛生指導を通じて歯性感染をゼロに近づけることが歯科側の最大の貢献といえます。


開業歯科医が今すぐできるMRONJ予防と患者説明の実際

臨床現場での実践として、以下のフローが有効です。


まず初診時または定期健診時に「骨粗鬆症・がん治療薬の服薬歴」を必ず問診票に含めましょう。 ビスホスホネート(アレンドロン酸リセドロン酸など)やデノスマブ(プラリア®・ランマーク®)の使用有無を確認するだけで、MRONJリスクのスクリーニングが完結します。 hospi.sakura.ne(http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-fujitaidai-20250729.pdf)


患者説明の際に押さえるべきポイントは以下のとおりです。


- ✅ 「お薬を飲んでいても、原則として抜歯は可能です」と伝える(不必要な恐怖を与えない)
- ✅ 「むしろ歯周病・根っこの炎症を放置する方が危険です」と強調する cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390018904582153344?lang=en)
- ✅ 処置前後に口腔衛生指導を徹底し、感染リスクを最小化する
- ✅ 高リスク患者(がん治療中・IV型ビスホスホネート使用者など)は口腔外科専門施設へ紹介を検討する


また、抗菌薬の予防投与については一定の有効性が示唆されていますが、PP2023では一律の予防投与ではなくリスク評価に基づく使用を推奨しています。 過剰な予防投与は薬剤耐性菌のリスクを高めるため、適切な症例に絞った投与判断が求められます。厳しいところですね。 shien.co(https://www.shien.co.jp/i/BK08760)


定期的なメインテナンスを通じて口腔内感染源を取り除くことが、最も費用対効果の高いMRONJ予防策です。歯科衛生士との連携により、リスク患者へのより丁寧な口腔管理を継続することが臨床上の最善策といえます。


📄 デンタルダイヤモンド:MRONJが疑われたときの対応Q&A(2025年7月) — 実際の臨床現場での判断に役立つQ&A形式の解説記事です






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