骨粗鬆症の薬を正しく飲んでいるのに、骨折リスクがかえって上がることがあります。
リセドロン酸(商品名:アクトネル、ベネット)は、ビスホスホネート系薬剤の一つです。骨の溶解を抑えることで骨密度を維持し、骨折を予防するために広く処方されています。ただし、この薬には複数の副作用が報告されており、中でも最も多く見られるのが消化器系のトラブルです。
国内の臨床試験データによると、週1回17.5mg投与群では副作用発現頻度は約24.9%(249人中62人)とされています。そのうち最も多いのが胃不快感で6%(249人中15人)、続いて上腹部痛が1.6%(4人)という報告があります。月1回75mg製剤では副作用発現頻度が約22%(422人中93人)と報告されており、主な内訳は下痢5%・腹部不快感3.1%・発熱2.8%です。
| 副作用の種類 | 発現頻度の目安 |
|---|---|
| 胃不快感 | 5%以上(最多) |
| 便秘・上腹部痛 | 1〜5%未満 |
| 悪心・胃炎・下痢 | 1%未満 |
| 腹部膨満感・消化不良 | 1%未満 |
| 味覚異常・口内炎 | 1%未満 |
消化器症状が出やすいのは、服用開始後の早期です。副作用の多くは服用開始から1週間以内に現れ、中には3日以内に出現する症例も報告されています。これが消化器症状です。
一方で、1カ月以上経過してから発現した事例も記録されており、服用中は長期にわたって注意が必要です。症状が続く場合や悪化する場合は、自己判断で中止せず、必ず医師・薬剤師に相談することが基本です。
また、精神神経系のめまい・ふらつきも報告されており、服用開始後にこうした症状が出た場合も見逃さないことが重要です。高齢者は特に転倒につながるリスクがあるため、早めに医療機関に確認しましょう。
参考:骨粗しょう症治療薬による副作用の詳細(全日本民医連・副作用モニター情報より)
骨粗しょう症治療薬による副作用 - 全日本民医連
顎骨壊死は、リセドロン酸を含むビスホスホネート系薬剤で報告されている重大な副作用のひとつです。あごの骨が壊死(細胞が死んでしまう状態)し、治療が非常に困難になることがあります。
発症頻度は、経口のビスホスホネート系薬剤では1万人に1〜2人程度とされています。ただし、抜歯などの侵襲的な歯科処置が行われた症例ではこの数値が大幅に上昇し、6.67〜9.1%まで頻度が高まるとも報告されています。これは意外ですね。
なぜ顎骨壊死が起きるのでしょうか。リセドロン酸は骨の新陳代謝(骨回転)を強力に抑えます。通常、骨は古い部分が壊されながら新しい骨が形成されるサイクルを繰り返しています。このサイクルが止まると、骨の修復機能が低下し、とくに血流が少ないあごの骨で壊死が起こりやすくなるとされています。
4年以上の服用でリスクが上昇し始めるという報告もあります。長期服用中の方は特に定期的な歯科検診が重要です。もし抜歯が必要になった場合は、必ず処方医と歯科医師の双方に相談し、休薬の要否を含めて検討することが推奨されています。
参考:顎骨壊死のリスクと予防に関する詳細情報
骨吸収抑制薬と顎骨壊死 - 国立長寿医療研究センター
骨折を予防するための薬が、骨折の原因になることがあります。これが非定型大腿骨骨折です。リセドロン酸を含むビスホスホネート系薬剤を長期使用している患者において、非外傷性(外からの強い力がなくても)の大腿骨転子下や近位大腿骨骨幹部の骨折が発現したとの報告が集積され、添付文書にも記載されるようになりました。
通常の骨折(定型骨折)は転倒など外力によって起きます。非定型骨折は、骨の新陳代謝が長期にわたって抑制された結果、古い骨が蓄積されてもろくなり、軽微な力や自然発生的なヒビから骨折する点が大きく異なります。たとえるなら、修繕されないまま放置されたコンクリートの橋のようなイメージです。
つまり、骨密度の数値は維持されているのに骨質が劣化しているということです。
専門家の間では、ビスホスホネート製剤は3〜5年をめどに服用継続か休薬かを検討することが重要とされています。医師の判断なく自己中断するのは危険ですが、長期服用中の方は次の受診時に「休薬について相談したい」と伝えてみることも大切な行動です。
参考:ビスホスホネート長期服用例の非定型骨折に関する学術報告
ビスホスホネート長期服用例に発生した非定型大腿骨骨幹部骨折の検討 - 千葉大学
リセドロン酸の副作用、特に消化器系のトラブルや食道炎は、服用方法を守るだけで大幅に軽減できます。これは確かなことです。薬の「飲み方のルール」が特に厳格に定められているのには、それだけの理由があるということです。
薬が食道に留まると炎症(食道炎・食道潰瘍・最悪の場合は食道穿孔)を引き起こすリスクがあります。コップ1杯(約180mL)の水で飲むのは、薬を一気に胃まで届けるためです。
| 服用上のルール | 理由 |
|---|---|
| 起床時(食事前)に飲む | 空腹時の方が吸収率が高い。食事があると吸収率が大幅に低下する |
| コップ1杯(約180mL)の水で飲む | 薬を食道に残留させないため。のどや食道の炎症を防ぐ |
| 服用後30分は横にならない | 横になると薬が食道に逆流し、炎症のリスクが上がる |
| 牛乳・お茶・コーヒーなどで飲まない | カルシウム・マグネシウムなどが薬の吸収を著しく妨げる |
| 就寝時や起床前には飲まない | 胃に薬が長時間とどまり、食道や胃への刺激が強まる |
正しい服用が条件です。実際に「ルールを遵守していても副作用が発現した」症例も報告されていますが、それでも服用方法を守ることがリスクを下げる最も確実な手段です。薬を飲んでからの30分をどう過ごすか、あらかじめ生活リズムを調整しておくとよいでしょう。例えば、服用後はゆっくり座って新聞を読んだり、テレビを見たりする習慣をつけるのが一つの方法です。
参考:リセドロン酸の正しい飲み方に関する患者向け情報
骨粗しょう症治療薬の正しい飲み方 - 兵庫県薬剤師会
リセドロン酸を含むビスホスホネート系薬剤には、関節痛・骨痛・筋肉痛などの「筋骨格痛」や、インフルエンザに似た急性期症状が現れることがあります。これは多くの患者が「風邪かな?」「年のせい?」と見過ごしてしまいやすい副作用です。
特に高用量製剤(月1回や週1回製剤)では、毎日服用する低用量製剤と比べて服用後3日以内の急性期反応が出やすいという特徴があります。発現頻度の目安としては「月1回製剤>週1回製剤>毎日投与」の順に多いとされています。
急性期反応の主な症状は以下の通りです。
これらは一過性であることが多く、多くは数日〜2週間以内に回復します。ただし、重度の筋骨格痛(投与中止を必要とするレベル)については、数カ月〜数年後に発現するケースも報告されており、アメリカFDAも「動作不能になるほどの骨痛・関節痛・筋痛が生じる可能性がある」と2008年に警告を発しています。
痛みが2週間以上続く場合は要注意です。一過性ではなく、薬剤の継続使用が原因の可能性を考え、医師に相談することが重要です。急性期反応には、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤が症状緩和に有効とされています。ただし、NSAIDs(ロキソプロフェンなど)は腎障害のリスクとの関係もあるため、自己判断での使用は避け、医師に確認した上で用いるのが原則です。
参考:ビスホスホネート製剤の急性期反応と筋骨格痛についての詳細
骨粗しょう症治療薬による副作用(筋骨格痛・急性期反応)- 全日本民医連