カタログを全ページ読んでいる歯科医師ほど、症例選択で損しています。
ストローマン・ジャパンが公開しているカタログ群は、大きく「STRAUMANNインプラント系」「NEODENTインプラント系」「デジタルソリューション系」「再生ソリューション系」「ClearCorrect系」の5カテゴリに分類されています。歯科医院や技工所で日常的に参照するのは主にSTRAUMANNインプラント系のカタログですが、デジタルワークフローの普及に伴い、デジタルソリューション系のカタログも重要度が増しています。
入手方法はとてもシンプルです。ストローマン・ジャパンの公式サイト(straumann.com/jp)にある「全カタログ・フライヤー 一覧」のページから、PDFを無料でダウンロードできます。医療機器承認番号や最新の添付文書情報もそこから参照可能です。
公式カタログ一覧ページは定期的に更新されており、2024年以降は「BLX × Pro Archカタログ」「Straumann SIRIOS™(口腔内スキャナー)」など、新製品に対応したフライヤーが随時追加されています。印刷版の請求については担当の営業担当者(テリトリーマネージャー)経由での申請が必要になるケースもあります。最新情報は公式に直接確認するのが確実です。
カタログを入手したら、まず確認したいのがBASIC INFORMATION(ベーシックインフォメーション)と呼ばれる製品ごとの基本資料です。BLX、BLT、TLなど系列ごとに別冊で提供されており、外科術式・補綴手順・適応症例・禁忌・各パーツの品番が一覧されています。いわゆる「製品カタログ」と「術式マニュアル(サージカルプロシージャー)」は別資料として分かれているため、両方をセットで手元に置いておくことが基本です。
参考:ストローマン・ジャパン公式カタログ一覧ページ(PDF・フライヤー全種を無料ダウンロード可能)
https://www.straumann.com/jp/ja/dental-professionals/catalogs.html
製品ごとのカタログを読む際に最初に押さえるべきは、「素材(マテリアル)」と「表面性状(サーフェイス)」の組み合わせです。ストローマンのインプラントにはチタン合金「Roxolid®(ロクソリッド)」と純チタンの2種類のマテリアル、そして「SLActive®」と「SL(サンドブラスト・酸エッチング)」の2種類の表面性状があります。これが基本軸です。
Roxolid®はチタン約85%・ジルコニウム約15%の合金で、純チタンと比較して約50%高い強度を誇ります。強度が高い分、インプラントをより細く設計できるため、直径2.9mmという細径インプラント(BLT ø 2.9mm)の実現につながっています。骨幅が限られる前歯部の症例でも、骨造成なしで対応できる可能性が広がるのはこの素材あってのことです。これは使えそうです。
SLActive®の特徴はオッセオインテグレーション(骨結合)のスピードにあります。通常のインプラントでは3〜6ヶ月かかることが多い骨結合期間を、SLActive®では最短3〜4週間程度に短縮できるとされています。参照データでは、一般的なSLサーフェイスの場合4週目でまだ25%程度の骨結合にとどまるところ、SLActive®では2週目の時点で75%以上の骨結合が達成されるというグラフが公式資料に掲載されています。治療期間の大幅な短縮につながるため、患者の通院負担軽減という観点でも重要な情報です。
各製品ラインのカタログを読み解く際は、以下の製品系列ごとの特徴を基本軸として整理することをおすすめします。
| 製品系列 | 主な特徴 | 代表的な適応 |
|---|---|---|
| ティッシュレベル(TL) | 1回法対応、清掃性良好 | 奥歯・歯肉が厚い症例 |
| ボーンレベル(BL) | 審美性優先、骨移植症例にも対応 | 前歯部・審美要求が高い症例 |
| BLT(ボーンレベルテーパード) | テーパー形状で高い初期固定、SLActive®採用 | 軟骨・即時荷重が必要な症例 |
| BLX | 最大の初期固定力、Roxolid+SLActive | 抜歯即時埋入・即時荷重・全顎症例 |
| BLT ø 2.9mm | 細径・高強度、単冠修復専用 | 前歯部・狭スペース・骨幅不足症例 |
カタログ内の「インプラント長さと径のマトリクス」は症例選択において非常に実用的です。長さは6mm・8mm・10mm・12mm・14mmのラインアップが基本ですが、注意したいのは6mmインプラントの生存率データです。ストローマンの臨床データでは、8mm以上の長さ同士は生存率に有意差が見られないのに対し、6mmは8mm以上と比べて生存率が統計的に低くなる傾向が示されています。カタログのサイズ一覧を見るだけでは分からない、この点は術前計画で必ず意識すべき情報です。
カタログ活用において最も見落とされがちなのが「補綴コンポーネント(アバットメント)」のセクションです。インプラントフィクスチャーの選択に注力するあまり、アバットメントのカタログを後回しにする場面が少なくありません。しかし実際の臨床では、アバットメントの選択が最終補綴物の審美性・長期安定性に直結します。アバットメント選択が原則です。
ストローマンのアバットメントは「スクリューリテインド(スクリュー固定式)」と「セメントリテインド(セメント固定式)」の大きく2系統があり、それぞれ接合部の設計(コネクションタイプ)によってTLコネクション・RNコネクション・RC(ボーンレベル用)などに分類されます。系列が異なるインプラントにアバットメントを誤って組み合わせると適合しないため、カタログ上の「コンパティビリティ(互換性)マトリクス」を必ず参照する必要があります。
特にデジタルワークフローで補綴を行う場合、スキャンボディ(スキャンに使用するポジショニング用パーツ)の品番がインプラント径・コネクション・カスタムアバットメントの種類によって細かく分かれているため、カタログのスキャンボディ対応表はオーダー前に必ず確認すべきポイントになります。技工士との連携においても、このセクションの情報共有が補綴トラブルを防ぐ鍵です。
また、アバットメントのカタログには推奨締め付けトルク値も記載されています。ストローマンの場合、アバットメントスクリューの標準推奨トルクは25Ncm(ニュートンセンチメートル)とされています。これはノーベルバイオケアの30〜35Ncmやメガジェンの35〜40Ncmとは異なる数値です。複数メーカーを扱うクリニックでは、メーカーごとのトルク値の違いをカタログで必ず確認する習慣が欠かせません。数値を取り違えると、スクリュー破折や補綴物の緩みにつながります。厳しいところですね。
参考:ストローマン推奨トルク値をはじめ、インプラントメーカー別の適正トルク管理について解説されています。
https://www.kaigan-chiba.com/entry.php?eid=276968
カタログを手元に置いたとき、どの製品を選ぶべきか迷う場面は多いものです。症例に応じた製品選択のフローを持っておくと、カタログの参照効率が大幅に上がります。
まず確認すべきは「骨質・骨量」です。骨幅が5.3mm未満の場合、標準径(3.3〜4.8mm)のインプラントでは埋入が難しくなります。この状況では骨造成を行うか、細径のBLT ø 2.9mmインプラントを検討するか、カタログの骨量対応表を参照しながら判断します。骨幅が基準以下なら、まず造成か細径かの2択を検討するのが基本です。
次に「即時荷重の要否」を確認します。抜歯即時埋入や即時荷重(手術当日または翌日に仮歯を装着)を計画する場合は、BLXが第一選択肢に上がります。BLXはアグレッシブなスレッド設計と独自の形状により高い初期固定力を発揮し、40Ncm以上の挿入トルクが安定して得られる症例での即時荷重プロトコル適用が可能とされています。一方、BLTも即時荷重に対応しますが、BLXほどの初期固定力を想定した設計ではないため、骨質がD3〜D4(軟らかい骨)の症例では慎重な判断が必要です。
全顎症例(無歯顎)の場合は「Straumann® Pro Arch(プロアーチ)」のカタログを参照します。Pro ArchはBLXインプラントをベースに、片顎4本のインプラントで全顎の固定性補綴を即時荷重で実現するコンセプトで、Straumann ガイドソフト(coDiagnostiX®)を活用したデジタル計画立案にも対応しています。通常の全顎インプラント治療が数ヶ月単位の骨結合待機を要するのに対し、Pro Archでは治療当日に仮歯を装着できるため、患者のQOLが大幅に向上します。
審美要求が高い前歯部症例では、インプラント埋入後の「歯肉マージンの管理」がポイントになります。BL(ボーンレベル)系列はインプラントが骨の高さで終わり、歯肉レベルの調整が補綴段階で可能なため、前歯部の自然な見た目の再現に有利です。TL(ティッシュレベル)系列はインプラントが歯肉の上まで突出した設計で、クラウンとのジャンクションを口腔外で管理しやすいという利点がある一方、前歯部の審美症例には不向きなケースがあります。つまり審美と清掃性はトレードオフの関係です。
| 症例条件 | 推奨製品 | 確認するカタログ |
|---|---|---|
| 骨幅不足・前歯部・単冠 | BLT ø 2.9mm | BLTカタログ・Roxolidページ |
| 抜歯即時埋入・即時荷重 | BLX | BLXカタログ・BLXベーシックインフォメーション |
| 無歯顎・全顎即時荷重 | BLX + Pro Arch | Pro Archカタログ |
| 審美前歯部・骨移植症例 | BL(ボーンレベル) | BLカタログ・再生ソリューション系カタログ |
| 清掃性重視・奥歯・歯肉厚 | TL(スタンダード/スタンダードプラス) | ティッシュレベルカタログ |
参考:ストローマン社製TLXインプラントの特徴と臨床応用について、各製品系列の骨質・骨量への対応条件が詳しく解説されています。
https://my-dental-cl.com/2574/
カタログには豊富な製品ラインナップが掲載されていますが、実際のクリニック運営では「すべての品番を在庫すること」は現実的ではありません。ここが、カタログをそのまま受け取るだけでは見えてこない独自視点の課題です。
ストローマンのインプラントは直径・長さ・マテリアル・表面性状の組み合わせによって、BLXだけでも数十種類の品番が存在します。それらすべてをクリニックで在庫化すると、期限切れリスクと保管コストが膨らみます。実際、インプラントの滅菌有効期限は製品によって異なりますが、多くは製造後5年程度が目安とされています。使用頻度の低い品番を大量在庫すると、期限内に使いきれず廃棄コストが発生するリスクがあります。
現実的な在庫戦略として有効なのは、自院でよく扱う症例の傾向を分析し、「コア品番」と「オーダーオン品番」を分けることです。たとえば最も使用頻度が高いBLT 4.1mm × 10mmをコア在庫とし、細径や全顎向け品番はケースごとにエショップ(ストローマンのオンライン注文システム)から都度発注する体制を作る方法があります。エショップへのアクセスはストローマン・ジャパンの会員登録で可能です。
また、カタログに記載されているが実際には廃番・リニューアルとなった品番が存在する場合があります。旧型TLインプラントのアバットメントコンパティビリティなど、旧カタログを参照し続けることで互換性の誤認が発生するリスクがある点は見落とされやすいポイントです。最新カタログへのアップデートが原則です。古いカタログに依存するのはダメです。
技工士との連携においても、在庫品番の共有は重要です。技工所側がストローマンのライブラリー(exocadなどのCADソフト向けインプラントライブラリー)を持っていない場合、デジタルワークフローでのスキャンボディ選択からアバットメント設計まで対応できないケースがあります。新しいインプラント系列を導入する際は、技工所側のライブラリー対応状況を事前に確認することが、補綴段階でのトラブルを防ぐ上で不可欠です。
🔍 連携先技工所がストローマンのCADライブラリーに対応しているか、導入前に確認しておく行動が1つで済みます。ストローマン・ジャパンのデジタルサポート窓口(公式サイト記載)に問い合わせるか、担当営業に確認するのが最短ルートです。
参考:ストローマン・ジャパンによる歯科技工士向けデジタルワークフローセミナー情報と、3Shape等のソフトウェア活用ガイドが掲載されています。
https://skill.straumann.com/jp/ja-JP/Event/Course/26923
2024年以降のストローマン・ジャパンのカタログ更新の傾向として、デジタルソリューション関連の資料の比重が急速に高まっています。従来の「インプラント体+アバットメント+補綴」という静的な製品カタログから、「データ取得から補綴製作までのワークフロー全体」を示すカタログへのシフトが進んでいます。意外ですね。
代表的な新資料として、「Straumann SIRIOS™(シリオス)」の製品フライヤーがあります。SIRIOSはストローマンが2025年に国内で本格展開を始めた口腔内スキャナーで、特定メーカーのシステムに依存せずオープンフォーマット(STLデータ)での出力が可能です。クラウドプラットフォーム「AXS(アクシス)」との連携により、スキャンデータを歯科医院と技工所がリアルタイムで共有できる仕組みも整備されつつあります。
また、「Smilecloud 3DNA(スマイルクラウド スリーDNA)」は2025年11月にリリースされたデジタル診断・スマイルデザインシステムで、ストローマンのカタログにも関連フライヤーが追加されています。2D写真から3Dの口腔内状態を予測し、インプラント計画から審美修復まで一気通貫で立案できる点が特徴です。治療計画の視覚化ツールとして患者説明の質を高める効果も期待されています。
デジタル化の流れの中で、「カタログ=紙やPDFで完結する情報媒体」という認識は変わりつつあります。ストローマン・ジャパンでは、カタログ情報と連動する形でウェビナー・オンラインコース・SKILLプラットフォーム(公式Eラーニング)が整備されており、カタログを読んだ上でSKILLプラットフォームの該当コースを視聴することで、術式理解の精度が大幅に上がります。製品理解はカタログとセミナーの併用が条件です。
特にBLXとBLTの使い分けについては、「BLXとBLTの違い〜どちらを選ぶべき?」というオンデマンドコースがストローマン・ジャパンから公開されており、臨床ビデオと合わせた学習が可能です。カタログのスペック比較表だけでは判断しにくいケースにおいても、動画で術中の挙動の違いを確認できるため、実際の症例対応力を高めやすい環境が整っています。
再生ソリューション領域では、「Straumann® Emdogain(エムドゲイン)」や「BioGuide®(バイオガイド)」などの骨誘導再生(GBR)材料に関するカタログも整備されています。インプラント治療において骨造成が必要な症例は少なくなく、インプラントカタログと再生ソリューションカタログをセットで参照する習慣が臨床の幅を広げます。同じストローマン・ジャパンのページから一括ダウンロード可能ですので、まだ再生系カタログを手元に置いていない場合はこの機会に入手しておくことをおすすめします。
参考:ストローマングループの創業70周年にあわせて公開された、製品戦略とデジタル化方針に関するプレスリリースです。最新の製品ロードマップを把握するのに役立ちます。
https://www.atpress.ne.jp/news/391869
十分な情報が集まりました。記事を生成します。