カタログを「PDF1枚で完結する」と思っていると、価格情報が含まれた会員限定版を見逃して損します。
京セラインプラントは1978年に日本で初めて販売を開始した国産インプラントシステムです。国産メーカーとして最も長い歴史を持ち、現在も多くの歯科医師に支持されています。その分、カタログの種類も体系が複雑になっており、「とりあえず1冊」と探し始めると必要な情報にたどり着けないことがあります。
京セラメディカルが提供するカタログは、大きく分けてシリーズ別・用途別の2軸で構成されています。シリーズとしては「FINESIA(ファインシア)」「FINESIA Relios(レリオス)」「POI EX」「POI System」「EMINEO(エミネオ)」が存在します。さらに各シリーズに対して、コンセプトカタログ・プロダクトカタログ・外科マニュアル・補綴マニュアル・術式チャートと、用途ごとに資料が細かく分かれています。
つまり基本です。「カタログ」と一口に言っても、自分が何を確認したいのかを先に決めておかないと、資料の海に迷い込むことになります。
カタログの配布形態については、無料でPDFダウンロードできるものと、会員登録が必要な限定コンテンツに分かれている点も見落とせません。会員限定版には希望小売価格が掲載されており、コスト見積りや発注準備をする際には会員登録が実質必須となります。京セラメディカルの医療従事者向けサイト(prdct-search.kyocera.co.jp)に歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士として登録することで、価格入りのプロダクトカタログや技術マニュアルにアクセスできるようになります。
京セラメディカル 医療従事者向け製品情報サイト(各カタログのダウンロード・会員登録リンクあり)
FINESIAシリーズは「長期安定を目指したインプラントデザイン」を基本コンセプトとして開発されたシステムで、ボーンレベル(BL)・ティッシュレベル(TL)・1ピース(1P)という3種類のタイプを用意しています。これは臨床ニーズに応じた症例の使い分けを前提にしており、カタログにも各タイプの適応症例が明確に整理されています。
ボーンレベルタイプは審美的要求の高い症例に適しています。インプラント体の直径よりも小さいアバットメントを使用するプラットフォームスイッチングデザインを採用しており、インプラント周囲の歯槽骨維持と歯肉の安定が期待できます。さらにネック部にはマイクロスレッドが配置されており、荷重を骨に有効に伝達しながら応力の集中を分散させる構造になっています。コネクション部はテーパードHEXコネクション(片面8.5°)で、高い封鎖性と操作性を両立しています。
ティッシュレベルタイプはペリオリスクの高い症例向けです。歯肉に接するカラー部が曲線形状(コンケイブカントゥア)で設計されており、インプラント周囲の硬・軟組織のマネジメントに配慮されています。コネクション部はテーパードOCTAコネクション(片面8.0°)を採用しています。
1ピースタイプは下顎の中間歯欠損などの狭窄部位、またはシンプルな補綴症例に適しています。ポスト先端にトルクス形状の加工を施した内側性埋入機構により、隣接歯が干渉しやすい症例でも対応できる設計です。
これが基本です。3タイプすべてにおいて**同一のドリルセットで埋入窩を形成できる点**がFINESIAの実用上の大きな強みであり、カタログにも共通器具の一覧が掲載されています。異なるタイプを混用する症例でも器具コストを最小化できるため、ランニングコストの管理という観点からも、カタログの器具セクションを細かく確認しておく価値があります。
インプラント形状はテーパータイプ(TP)とストレートタイプ(ST)があり、ストレートタイプには6mmのショートタイプも用意されています。骨高径が限られている症例への適用範囲が広い点は、FINESIAシリーズを選ぶ際の重要な判断材料になります。
京セラメディカル FINESIAインプラントシステム詳細ページ(BL/TL/1Pの構造説明あり)
FINESIAより前世代のシステムであるPOI EXとEMINEO(エミネオ)も、現在も多くの歯科医院で使用されており、それぞれ独立したプロダクトカタログが存在します。どちらも補綴パーツの互換性が系統ごとに異なるため、既存症例のメンテナンスや追加埋入を行う際には、対応するカタログを照合する必要があります。
POI EXは2ピースタイプのインプラントシステムで、表面性状がチタン製(陽極酸化処理:FINAFIX)とHAコーティング(ハイドロキシアパタイト処理:FINATITE)の2種類から選択できます。骨質に応じた使い分けが可能で、骨が硬くしっかり初期固定が得られる症例にはFINAFIX、骨質が柔らかく骨誘導を促したい症例にはFINATITEという選択が基本となります。口径はφ3.2mmからφ5.2mmまで4種類用意されており、日本人の顎骨の特性に合わせたサイズ設計です。
EMINEOは「EMINENT(優れた)」と「OPERATION(操作性)」を組み合わせた製品名が示す通り、操作性を最優先にデザインされたシステムです。インプラント径はナロー(φ3.5mm)・レギュラー(φ3.75mm、φ4.1mm)・ワイド(φ5.0mm、φ6.0mm)と5種類、長さは7mmから15mmまでラインナップしており、組み合わせると全27種類になります。27種類という数字はハガキの縦を1cmとして並べるくらいのバリエーションのイメージです。多様な骨形態の症例に対応しやすい構成です。
これは使えそうです。さらにEMINEOは保険適用(広範囲顎骨支持装置)に対応している点が、他システムとの大きな違いです。保険請求を前提とする症例では、EMINEOのプロダクトカタログに記載された保険適用番号・償還価格の確認が不可欠です。
| システム | 表面処理 | 径のバリエーション | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| POI EX | FINAFIX(陽極酸化)/FINATITE(HA) | φ3.2〜5.2mm(4種) | 骨質別2種類の表面処理 |
| EMINEO | ブラスト処理(純チタン) | φ3.5〜6.0mm(5種)×長さ7種=27種類 | 保険適用対応 |
| FINESIA BL/TL/1P | 独自スレッドデザイン | TP・STタイプ(STは6mmショートあり) | 3タイプ共通器具で埋入可能 |
2024年以降の京セラインプラント治療において特に注目すべきなのが、FINESIAの最新ラインとして位置づけられるFINESIA Relios(レリオス)のカタログです。従来のFINESIAカタログと並行して展開されており、デジタルワークフローへの対応を大幅に強化した内容になっています。
Reliosシリーズの最大の特徴は、IOS(Intra Oral Scanner:口腔内スキャナー)対応のスキャンゲージをラインナップしている点です。独創的なデザインのIOS用スキャンゲージを使用することで、これまで精度面で課題があったフルアーチのインプラント症例に対してもモデルレスで対応できるようになっています。スキャンゲージとIOSで得られたデジタル印象データをもとに、連携先の歯科技工所でロングスパンの上部構造を製作することが可能です。
デジタル補綴対応パーツとしては、チタンベースAB・スキャンボディ・FBL DIGIアナログなどがカタログに掲載されており、CAD/CAM補綴に対応した補綴ワークフロー全体を1冊のカタログで確認できます。
また、Reliosのスレッドデザインは従来のFINESIAを踏襲しつつ、骨質制御の概念をさらに発展させています。荷重ベクトルに対して「上向き溝」と「下向き溝」が骨コラーゲン繊維の配向に影響を与えるという研究知見(Kuroshima et al., Acta Biomaterialia 2017)をもとに設計されており、咀嚼荷重下での骨リモデリングを促進する構造となっています。この内容はReliosのコンセプトカタログに参考文献とともに掲載されているため、インフォームドコンセントや院内勉強会の資料作成にも活用できます。
Reliosカタログはボーンレベル(BL)とティッシュレベル(TL)の2タイプに対応した術式チャートも独立して提供されており、ST・TPそれぞれにストッパーあり・なしの4パターンが揃っています。ダウンロード先は京セラメディカルのFINESIA専用サイト(finesia.world)になっています。
FINESIA Relios カタログ・マニュアル一覧ページ(BL/TL術式チャート・サージカルガイドカタログ含む)
カタログを入手すること自体は難しくありませんが、臨床で実際に活用する段階になってはじめて「見るべきポイント」を外していたと気づくことがあります。ここでは現場でよく起きる3つの落とし穴を整理します。
**① カタログの発行年・バージョンを必ず確認する**
京セラメディカルのカタログには「当カタログに記載の情報は2020年5月時点のものです」といった表記が含まれているものがあります。製品の仕様変更・廃番・追加ラインナップは随時発生しており、古いカタログをもとに発注を行うと欠品や互換性の不一致につながる可能性があります。カタログPDFのファイル名や末尾のバージョン番号(例:v4、v6など)を記録しておき、定期的に最新版への更新確認をする習慣をつけることが重要です。
**② 会員限定の価格入りカタログと非会員向けの違いを理解する**
京セラメディカルの医療従事者向けサイトでは、同一製品に対して「価格表示なし」と「価格表示あり(会員限定)」の2バージョンのカタログが存在します。非会員がダウンロードできるカタログでは希望小売価格が記載されていないため、コスト計算には会員版が必須です。会員登録は無料で行えますが、歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士・その他医療従事者としての職種の選択が求められます。登録後は価格入りのプロダクトカタログのほか、抜歯即時埋入のテクニカルマニュアルや臨床経過報告といった会員限定の学術資料にもアクセスできるため、早めの登録がメリットになります。
**③ 術式チャートとプロダクトカタログは別資料として管理する**
プロダクトカタログには製品番号・サイズ・価格などの一覧情報が集約されており、術式チャートには実際の手術手順・ドリルシーケンス・適用器具が記載されています。この2種類を混同したまま術前準備をすると、器具選択のミスや手術時間のロスにつながる場合があります。
術式チャートはStraight Type(ST)とTapered Type(TP)でそれぞれ別ファイルになっており、ストッパーの有無によっても計4パターンに分かれています。手術計画に合わせて正確なバージョンを印刷・ラミネート加工して診療台のそばに配置しておくと、スタッフとの情報共有もスムーズになります。ドリル使用回数チェックシートも京セラメディカルのサイトから別途ダウンロードできるため、術中管理の補助ツールとして活用することを検討してみてください。
臨床の確認事項ごとに参照する資料が異なる点を理解しておけば、検索時間を大幅に短縮できます。カタログを単なる「製品一覧」ではなく、術式準備・コスト管理・患者説明・スタッフ教育それぞれの場面で使い分けるツールとして位置づけることが、京セラインプラントの効率的な運用につながります。
FINESIA カタログ・マニュアル一覧ページ(術式チャート・ドリル使用回数チェックシートも掲載)
十分なリサーチが完了しました。記事を作成します。