足踏みペダルを間違えて踏んだだけで、ファイルが根尖を突き破ることがあります。
根管治療において、ラバーストッパーは「作業長(根管の長さ)をファイルにマークする小さなゴム製の部品」です。見た目は直径数ミリのシリコン片に過ぎませんが、この位置がわずか1mmズレるだけで、ファイルが根尖孔を超えてしまったり、逆に十分に届かなかったりと、治療結果に直接影響が出ます。
根尖孔の位置からの距離は通常0〜1.5mmの範囲で設定されることが多く、「1mm」という数値は一般的な大人の奥歯の根管長(平均約20〜22mm)に対してわずか5%以下のズレです。ところが、この5%が再感染リスクを高め、根尖病変の再発や予後不良につながることが臨床研究では繰り返し指摘されています。つまり、ラバーストッパーを「なんとなく」固定する習慣は、治療全体の精度を根底から揺るがします。
ラバーストッパーの固定は、エンドゲージという専用の器具を使って行うのが原則です。エンドゲージには目盛りが刻まれており、測定した作業長にぴったり合わせてストッパーをスライドさせ、正確な位置でロックできます。手指の感覚だけで固定しようとすると、0.5〜1mm程度の誤差が生じやすいため、エンドゲージの使用が基本です。
ラバーストッパーにはもうひとつ、あまり知られていない重要な機能があります。GC社が提供している「しずく型」の形状がその鍵です。しずく型ストッパーは断面が非対称のため、ファイルが根管内でどの方向を向いているか、つまり根尖の湾曲方向を術者が目視で把握できるように設計されています。通常の円形ストッパーでは、ファイルを回転させると向きがわからなくなりますが、しずく型であれば「とがった部分」を目印にして作業角度を一定に保つことができます。
また、ラバーストッパーは3色(イエロー・グリーン・ブルー)で提供されている製品が多く、複数の根管を同時進行で処置する際に「どのファイルがどの根管の作業長に対応しているか」を色で素早く識別できます。奥歯では3〜4本の根管を並行して処置することもあるため、色による識別は混乱防止に有効です。
根管内にファイルを挿入する前にストッパーの位置を確認する、という動作を診療ルーティンに組み込んでおくことが重要です。
参考:GCラバーストッパー製品情報(GC公式サイト)
https://www.gc.dental/japan/products/professional/root-canal-material/rubber-stopper
ラバーストッパーは一度セットすれば固定されているように見えますが、実際にはファイル操作中に意外とズレやすい部品です。これが見落とされやすい落とし穴のひとつです。
特にズレが起きやすい場面として、3つの状況が挙げられます。まず、ファイルを繰り返し根管に挿入・引き抜きする際に、ストッパーが根管口縁に引っかかって少しずつ根尖側(ファイルの先端側)に動いてしまうケースです。気づかないまま作業を続けると、実際の挿入長が設定した作業長を超えてしまいます。次に、手用ファイルをウォッチワインディングモーション(1/8〜1/4回転ずつ交互に回転させる操作)で使用する際、回転の摩擦でストッパーが回って「位置がズレていないのに角度だけ変わる」こともあります。しずく型を使っているなら方向のズレとして可視化できますが、円形では気づきません。3つ目は、ペーパーポイントや洗浄用シリンジとの持ち替えのタイミングです。器具を机に置いたり助手に渡したりする際に、誤ってストッパーに触れてしまうことがあります。
これを防ぐための具体的な手順として有効なのが「根管口確認法」です。ファイルを根管から引き抜いた際、ストッパーの位置を根管口縁(歯冠部の上面)と照合する動作です。正しい作業長でセットされていれば、ファイルを抜いたときにストッパーの下面が歯冠上面に一致するはずです。これが毎回の器具交換のたびに行えると、ズレを即座に検知できます。
エンドゲージを使った再固定は、わずか数秒で完了します。ストッパーがズレていると感じたら、その場でエンドゲージを使って再確認・再セットする習慣が大切です。
さらに、ラバーストッパーはシリコン素材のため経年劣化で弾性が落ちます。しっかり締めているつもりでも、使用頻度が高いストッパーほど固定力が弱くなります。1箱120個入りの製品が多く、1個あたり数円程度のコストですので、使用感が変わったと感じたら惜しまずに交換するのが得策です。コストより精度です。
参考:エンドゲージの使い方と臨床での重要性(1D)
https://oned.jp/posts/5978
歯科治療において、フットペダル(足踏みペダル)は術者の両手が口腔内の処置に集中できるよう、足元でハンドピースの回転始動・停止・速度調整を行うための操作デバイスです。歯科ユニットに標準装備されているほか、マイクロモーターや超音波スケーラーに接続して使われるタイプもあります。
基本的な踏み込み操作は「踏み込む量に比例して回転数が上がる」アナログ式が多く、最大回転数はあらかじめユニット本体のダイヤルで上限を設定しておきます。つまり、フットペダルをどれだけ深く踏んでも、上限値以上には回転しない仕組みになっています。これを知らずに「回転数が上がらない」と感じてペダルを強く踏みすぎると、必要以上の力が足にかかるだけで回転数は変わりません。設定を確認するのが先決です。
一方、「タップオンモード」という機能を持つ機器もあります。これはペダルを一度踏むと動作が開始し、もう一度踏むと停止するというトグル式です。Dentsplyの「Cavitron」などの超音波スケーラーで採用されており、ペダルを踏み続ける必要がないため、長時間のスケーリングでも足の疲労が大幅に軽減されます。これは使えそうです。
歯科ユニットのフットコントローラーには、前後左右の4ウェイ操作ができるタイプもあります。Dentsply Sironaの一部ユニット(TeneoやSinius)では、4ウェイフットコントロールプレートを左右にスライドさせることで、ハンドピースの回転方向(正回転・逆回転)の切り替えが行えます。これは、根管治療でNiTiファイルを自動逆転モード(逆転操作でファイルを抜く)で使う際に、手元を根管から離さずにペダルだけで操作できるため非常に有効です。
ただし、操作が複雑な分、「意図せず逆回転ボタンに触れてしまった」というヒヤリハットも起きやすくなります。フットコントローラーが誤操作された場合には、モーターから異常音(Dentsply Sironaのユニットでは逆回転時に6回の警告音)が鳴ります。この音の意味を事前にスタッフ全員が共有しておくことが大切です。
フットペダルは床に置かれているため、患者の移乗時や立ち位置の変更で誤って踏んでしまうリスクもあります。実際、小児患者が誤ってフットスイッチを踏み込んでチェアが動いてしまったというヒヤリハット事例も報告されています。治療開始前と終了後には、ペダルが安全な位置にあるか確認するルーティンを作るのが賢明です。
参考:歯科ユニット各部の名称(1D)
これは意外と知られていない重要な制限事項です。Dentsply SironaのTeneoやSiniusなど、多くの高機能歯科ユニットでは「足踏み式スピードコントローラーは根管治療プログラムでは使用できません」と取扱説明書に明記されています。
なぜ根管治療モードではフットペダルによるスピード調整が制限されるのでしょうか。根管治療でNiTiロータリーファイルを使う場合、回転数とトルクの設定は固定値で管理する必要があります。NiTiファイルは一定のトルク超過(過負荷)が続くと破折するリスクがあり、そのため「トルクリミット機能」が根管治療モードには組み込まれています。フットペダルのスピードコントローラーで回転数を手動で上げ下げすると、このトルクリミットの管理が乱れ、ファイル破折のリスクが跳ね上がります。
具体的な影響がどれほど深刻かというと、NiTiファイルの破折片(破折ファイル)が根管内に残留した場合、その除去は非常に困難で、マイクロスコープ下の専門的な処置が必要になります。場合によっては除去不可能な症例もあり、長期的な予後に影響します。根管治療専用のエンドモーター(例:NSKのエンドメイトDTやDentsplyのX-Smartシリーズ)を使う場合も同様で、フットペダルはON/OFFの単純なスイッチとして機能し、スピードの無段階調整には対応していない製品が多いです。
これが条件です。根管治療を行うときは、回転数とトルクをユニット本体またはエンドモーターの操作パネルで事前に設定し、フットペダルは「踏む(ON)か離す(OFF)か」だけで操作するのが基本です。
また、電子的根管長測定器(アペックスロケーター)を使用する際は、Dentsply SironaのユニットではEndo 6:1やEndo 6Lといった専用のコントラアングルハンドピースしか根管長測定に使用できないことが明記されています。他社製品や規格外のハンドピースを使っても導電性が保証されないため、測定値が不正確になるリスクがあります。機器の組み合わせは必ず確認しておきましょう。
参考:Dentsply Sirona Teneo取扱説明書(Dentsply Sirona公式サイト)
https://www.dentsplysirona.com/content/dam/master/product-procedure-brand-categories/treatment-centers/product-categories/ifu/TRE-IFU-Teneo-JA-6193655-2022-11-25.pdf
ラバーストッパーによる作業長管理と、フットペダル操作は別々のスキルとして語られることが多いですが、実際の根管形成では「ストッパーの確認」と「ペダルの踏み込み」は一連の動作として同期している必要があります。この2つを連携させる視点は、テキスト書籍やメーカーのマニュアルではあまり触れられていないポイントです。
具体的には、次のような流れで考えると整理しやすいです。
| 操作ステップ | ストッパーの動作 | ペダルの動作 | 注意事項 |
|---|---|---|---|
| ①作業長確定前 | 仮止め(手用ファイルで探索) | 踏まない(手動操作) | 根管長測定器の数値を優先 |
| ②作業長確定後 | エンドゲージで正確に固定 | まだ踏まない | 固定確認が先 |
| ③NiTiファイル挿入時 | 位置確認済み | ゆっくり踏み込む(低〜中回転) | トルクリミット設定済みか確認 |
| ④引き抜き時 | ストッパーと根管口縁を照合 | 足を離す(または逆転モード) | ズレがあれば即再設定 |
| ⑤器具交換時 | 再確認必須 | ペダルから足を完全に離す | 誤踏み込み防止 |
この流れで特に意識してほしいのが③と④の間の「ストッパー照合→ペダル操作」のサイクルです。多くの臨床経験者は、この動作を無意識に行っていますが、習いたてのスタッフや、慣れない機器を使う際には意識的に「先にストッパーを確認してからペダルを踏む」という順序を守ることが事故防止につながります。
NiTiファイルの根管形成では、ファイルを根管に挿入したまま回転させる時間は、概ね数秒以内が推奨されています。長時間同一位置で回転させ続けると、ファイルに加わるトルクが蓄積されて破折リスクが高まります。「ペダルを踏んだままにしない」という意識も重要です。
また、手用ファイル(ステンレス製)で初期のイニシャルネゴシエーションを行う際は、ペダルは使いません。すべて手指の操作です。この「ペダルを使う段階・使わない段階」の区別を明確に理解しておくと、機器操作のミスが減ります。ステンレスファイルでは手動、NiTiロータリーファイルではフットペダル、という対応が基本です。
さらに独自の視点として触れておきたいのが「足元の姿勢管理」です。長時間の根管治療では術者が前傾姿勢になりやすく、足元への注意が散漫になる傾向があります。KavoのPrimusシリーズのように、踏み込み式ではなく水平スライド式のフットコントローラーを採用したユニットも存在し、「足首の力加減が不要なため筋肉の緊張が軽減される」とされています。足元の操作に起因する疲労も、長期的には術者の健康や診療集中力に関わります。機器選定の際は操作方式にも目を向ける価値があります。
参考:根管治療の流れ(歯内療法Wikipedia)
https://www.shinairyouhou.com/faq/step/
参考:KavoプリムスライフのフットコントローラーについてのKavo公式説明
https://www.kavo.co.jp/product/kavoproduct/treatment_unit/dental_unit/primus_1058_life/detail_3
臨床で繰り返し起きやすいミスをまとめておきます。それぞれに対応する具体的な対策を合わせて確認してください。
これらのミスに共通しているのは、「確認の手順を省いた」という点です。忙しい診療中はどうしても短縮したくなるステップがありますが、ストッパーの確認とペダル操作の確認は、省略すると直接的に患者への治療精度に響きます。
日常的にこれらのチェックをルーティン化することが、長期的に診療ミスを減らす最も確実な方法です。診療前のユニット設定確認、器具準備時のストッパー確認、器具交換ごとの照合、という3段階のチェックを習慣として定着させることが重要です。
また、フットコントローラーの誤作動が続く場合は、部品の故障も疑われます。Dentsply SironaやNSKのエンドモーターの取扱説明書では、「フットコントロールを取り外しても誤作動が続く場合は修理に出す」よう明記されています。消耗品と割り切って定期的なメンテナンスと部品交換を行うことも、安定した診療環境の維持につながります。
参考:NSK サージック Pro プラス取扱説明書(NSK公式サイト)
https://www.japan.nsk-dental.com/admin/wp-content/uploads/Surgic-Pro_OM-E0571002.pdf

大正製薬 歯科用デントウェル歯ブラシ コンパクト やわらかめ 12本入 / 歯周病専門医 設計! コンパクトヘッド 歯周病対応 歯ブラシ 超極細毛 先まるめ毛 歯垢除去 MOストッパー ラバーハンドル 1か月1本が交換目安