ペースメーカー装着患者に根管長測定器を使うと誤作動を起こします。
根管長測定器は電気的抵抗の測定により根管の長さを正確に把握する装置です。この測定器の仕組みは、口腔粘膜と根管内に挿入したファイルとの間に生じる電気抵抗の差を利用しています。インピーダンス測定法と呼ばれるこの技術により、目視では確認できない根管の深部まで正確に測定できるのです。
電極の設置手順は、まず患者の口角に針金状のパーツ(リップクリップ)を装着することから始まります。次にファイルやリーマーと呼ばれる治療器具に電極を取り付け、根管内に挿入します。この2つの電極間で微弱な電流を流し、その電気抵抗を測定することで根管の長さを割り出せるわけです。
つまり電極の正確な設置が基本です。
測定器本体には通常、液晶ディスプレイとバーグラフが搭載されており、ファイルが根尖に近づくにつれて表示が変化します。根尖最狭窄部に到達すると「ピピピ」という電子音が鳴り、これが測定完了の合図となります。この音は機械の故障やエラーではなく、正常な動作を示すサインですのでご安心ください。
電極の位置が不適切だと測定精度が大きく低下します。リップクリップは口角の湿潤した粘膜にしっかりと接触させる必要があり、乾燥していると電流が流れず測定できないことがあります。また、ファイルに装着する電極クリップも、ファイルをしっかりと保持していなければ正確な測定は不可能です。
根管長測定器には世代による技術進化があり、現在では第三世代の測定器が主流となっています。第一世代は直流電流を使用していましたが、根管内の出血や洗浄液などの電解質の存在下では測定値に誤差が生じる問題がありました。第二世代では改良が進んだものの、根管内が湿潤環境または乾燥状態だと正確に読み取れないという課題が残っていました。
第三世代の代表的な製品であるルートZXは、この問題を画期的に解決しました。2つの異なる周波数で根管インピーダンスを測定し、その比を計算することで、根管内がドライでもウェットでも根尖位置を高い精度で検出できるのです。具体的には、根尖孔または根尖最狭窄部から0.5mm以内の精度が90%、1mmが許容される場合はなんと100%の精度を示すと報告されています。
90%の精度は驚異的です。
この高精度を実現する技術の鍵は、インピーダンス測定における界面インピーダンスの除去にあります。血液や根管洗浄液などの湿潤根管内でも精度良く根管長の検出値が得られるよう、測定アルゴリズムが最適化されているのです。また、最新機種にはオートキャリブレーション機能が搭載されており、気温や湿度などの環境変化、経年変化によって生じる測定値の誤差を自動で補正し、安定した測定精度を保つことができます。
かさはら歯科医院のブログでは、電気的根管長測定器の世代ごとの進化と精度について詳しく解説されており、第三世代測定器の臨床的有用性が確認できます。
とはいえ、測定器の精度には限界もあります。根管形態や根管内の環境によっても測定値に誤差が生じることがあり、太い根管や根尖孔が開大している場合は短めに表示される傾向があります。また、根尖部狭窄部が未発育な乳歯や、根尖部の膿瘍症例で狭窄部が崩壊している場合も正しく測定できません。このような測定器の特性を理解したうえで、臨床で適切に使用することが求められます。
根管長測定器の精度が高いとはいえ、レントゲン撮影との併用は根管治療において必須といえます。測定器単独では得られない情報をレントゲンが補完するため、両者を組み合わせることで治療の成功率が飛躍的に向上するのです。電気的根管長測定器には多少の誤差があることを認識し、測定値を過信せずレントゲンで確認する姿勢が重要になります。
レントゲンとの併用が推奨される理由はいくつかあります。まず、測定器は根管の長さを数値で示しますが、根管の曲がり具合や形態的特徴まではわかりません。レントゲン画像では根管の走行方向、湾曲の程度、根尖部の骨の状態などを視覚的に把握できるため、治療計画を立てる際に不可欠な情報となります。
両者を組み合わせるのが原則です。
実際の臨床では、根管長測定時にファイルを挿入した状態でレントゲン撮影を行う「デンタル撮影」が効果的です。この方法により、測定器で得た数値とレントゲン画像上の位置を照合し、ファイルの先端が本当に根尖最狭窄部に到達しているかを確認できます。測定器で信頼性の高い瞬間が得られても、レントゲンで確認すると実際にはファイルが根尖を突き抜けていたり、逆に十分に到達していなかったりするケースがあります。
根管治療では初診時、根管長測定時、根管充填後など、複数回のレントゲン撮影が必要になります。デンタル撮影は機器コストが低く撮影ごとの負担も小さいため、頻回に撮影して経過観察しやすい利点があります。一方、症例によっては歯科用CTによる三次元撮影が有効で、根管の数や形態、病巣の大きさを正確に確認できます。
根管長測定器の使用にあたっては、いくつかの重要な禁忌事項と注意点があります。最も重要なのが、ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)などの植込み型医用電機器を装着している患者への使用禁止です。根管長測定器は微弱とはいえ電流を患者の体内に流すため、これらのデバイスの誤作動を誘発する可能性があり、添付文書上でも使用が禁止されています。
ペースメーカー患者には使えません。
患者が心臓ペースメーカーを装着しているかどうかは、問診票の記入内容や「ペースメーカー手帳」の提示で確認できます。もし根管治療が必要な場合、ペースメーカー患者に対してはレントゲン撮影と触診による根管長測定を行うか、専門医療機関への紹介を検討する必要があります。超音波スケーラーや電気メスなども同様に使用が制限されるため、治療前の確認が極めて重要です。
また、可燃性麻酔ガスなどの雰囲気下での使用も禁止されています。火災や爆発の危険があるためで、現代の歯科診療では通常該当しませんが、医療安全の観点から認識しておくべき事項です。測定器本体やコード類の破損、電極の汚れや腐食なども測定精度に影響するため、使用前の点検が欠かせません。
根管内の状態によっても測定に注意が必要です。根管内に大量の出血がある場合や、隣接する虫歯から電流が歯肉に漏れる場合、正確な測定ができないことがあります。こうした状況では、ペーパーポイントで根管内を一度乾燥させてから測定する、または虫歯部分を事前に除去するなどの対応が求められます。骨欠損が大きい症例や根尖部膿瘍がある場合も、測定値が不安定になりやすいため注意が必要です。
根管長測定器を臨床で効率的に活用するには、いくつかの実践的なテクニックを習得することが重要です。まず、ファイルの挿入速度に注意を払いましょう。急速にファイルを進めると測定器が正確に反応しない場合があるため、ゆっくりと段階的に挿入し、測定器のディスプレイとバーグラフの変化を確認しながら進めるのが基本です。
根管長測定器には通常、複数の目安位置を設定できる機能が搭載されています。たとえば点滅表示バーとメモリーバーの2箇所に設定することで、根尖から1mm手前の位置や根尖最狭窄部など、複数のポイントを記録しながら治療を進められます。この機能を活用すると、根管拡大の進行状況を把握しやすく、過拡大を防ぐことにもつながります。
設定機能の活用が効率化の鍵です。
根管長測定器は根管長の測定だけでなく、歯根破折や亀裂、内部吸収、外部吸収など、神経のお部屋と歯根膜の間が繋がっている状態を検知することもできます。測定中に予想外の位置で反応が出た場合、根管の穿孔や亀裂を疑うサインとなります。このような測定器の副次的な用途を知っておくと、診断能力が向上します。
ニッケルチタン(Ni-Ti)ファイルを使用したエンジン駆動の根管形成と根管長測定器を併用すると、治療時間の大幅な短縮が可能です。根管長測定機能付きモーターを使用すれば、ファイルの先端位置をリアルタイムで確認しながら根管拡大ができ、手用ファイルのみで30分以上かかっていた作業が大幅にスピードアップします。ファイルが根尖に近づくと自動的に回転速度が低下する「アピカルアクション」機能を搭載した機種もあり、安全性と効率性を両立できます。
測定値の記録も忘れずに行いましょう。各根管の測定値をカルテに記入し、次回の治療時に参照できるようにしておくことで、一貫性のある治療が提供できます。特に複数の根管がある歯では、各根管の長さが異なることが多いため、混同を避けるためにも記録が重要になります。
デンタルプラザの学術記事では、根管長測定機能付きモーターを用いた根管治療の実践的なテクニックが詳しく紹介されており、臨床応用の参考になります。

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