CCRTの治療完遂率は約70%しかなく、残り3割の患者は口腔合併症が引き金で治療を中断しています。
CCRT(Concurrent Chemoradiotherapy:化学放射線同時併用療法)とは、放射線治療と化学療法を同時に行うことで、それぞれの治療効果を相乗的に高める治療法です 。1963年にFletcherらが5-FUと放射線の同時併用療法を口腔・咽頭がん患者に実施し、著しい腫瘍縮小効果を報告したことが歴史の始まりとされています 。現在では頭頸部進行がんに対する標準的な治療として広く行われており、手術と並ぶ主要な治療選択肢となっています。 okayama-u.ac(https://www.okayama-u.ac.jp/user/ohnccpky/infomation0103.html)
頭頸部がんにおいては、初診時点でステージⅢ・Ⅳ期の進行例が60%以上を占めます 。手術単独や放射線単独では治療成績に限界があるため、CCRTが有力な選択肢として活用されているのです。つまり、進行がんに対する集学的治療の中核がCCRTということです。 dentaljuku(https://www.dentaljuku.net/oral-cancer/current-treatment)
抗がん剤の中でもシスプラチン(CDDP)は放射線増感効果が高く、CCRT の主要レジメンとして使われます 。シスプラチンを3サイクル投与した完遂率は約69.2%であるのに対し、2サイクル投与では82.1%まで上昇するという報告もあります 。投与サイクル数と完遂率の関係は、歯科チームが患者状態を把握する上でも重要な視点です。 web.apollon.nta.co(https://web.apollon.nta.co.jp/jsot34/files/abstracts/WS4.pdf)
周術期等口腔機能管理とは、がん等に係る手術・放射線治療・化学療法・緩和ケアを実施する患者に対して、治療を行う医師らと連携しながら包括的な口腔健康管理を行う取り組みです 。CCRT患者においても、歯科は治療前から治療後の退院後まで一連の管理を担うことが求められます 。これは単なる口腔清潔維持にとどまらず、感染予防から摂食嚥下機能の維持まで多岐にわたります。 perio(https://www.perio.jp/member/certification/hygienist/file/66-4.pdf)
歯科の介入効果は数字でも示されています。ある比較研究では、口腔ケア介入なしで手術を受けた35人と、介入ありで手術を受けた56人を比較した結果、口腔ケア介入が術後感染や肺炎の予防に有効であることが示されています 。これは使えそうです。 club-sunstar-pro(https://www.club-sunstar-pro.jp/medical/perioperative/oral-care/)
CCRT患者の周術期口腔機能管理では、「周術期口腔機能管理料(Ⅲ)」が算定できます 。化学療法・放射線治療中の患者に対しては歯科衛生士が口腔衛生処置を行った場合に「周術期等専門的口腔衛生処置1」も算定可能です 。制度を正しく理解することが、継続的な介入体制の構築につながります。 kpu-m.repo.nii.ac(https://kpu-m.repo.nii.ac.jp/record/2033/files/06%20ochi.pdf)
日本歯周病学会:歯科衛生士が知っておきたい周術期等口腔機能管理の知識と対応(PDF)
周術期口腔機能管理の算定や歯科衛生士の役割、連絡書の活用方法について詳しく解説されています。CCRT患者への実践的対応の参考になります。
国立がん研究センター:頭頸部放射線療法・化学放射線療法の患者への口腔健康管理(PDF)
CCRT患者への口腔健康管理の総論から急性障害の対処まで、歯科が実践で使えるエビデンスベースの情報がまとめられています。
放射線性顎骨壊死(ORN:Osteoradionecrosis)は、頭頸部がんのCCRT後に生じうる深刻な合併症です。放射線照射によって組織が損傷した結果、骨が壊死・露出する病態で、発症すると治療が非常に難渋します 。不良な口腔衛生状態が放射線性顎骨壊死の有意な危険因子とされており、照射前の口腔環境整備が予防の要です 。 cochrane(https://www.cochrane.org/ja/evidence/CD011559_dental-treatments-preventing-damage-jawbones-people-cancer-receiving-radiotherapy-head-and-neck)
照射後に抜歯などの侵襲的処置が必要になった場合、顎骨壊死のリスクが特に高まります。国立がん研究センター東病院では「抜歯などの侵襲的処置が必要な場合は、他病院との連携も考慮し対応する」と明記しています 。放射線照射後の歯科処置は、一般歯科診療とはまったく異なるリスク管理が求められます。 ncc.go(https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/dental/050/index.html)
予防の基本は3段階です。
| タイミング | 主な対応 | 目的 |
|---|---|---|
| 照射前 | 口腔内精査・感染源除去・必要な抜歯 | リスク因子の事前排除 |
| 照射中 | 口腔粘膜炎管理・口腔衛生指導の継続 | 二次感染の予防 |
| 照射後 | 定期的経過観察・侵襲処置の慎重な判断 | 壊死発症の早期発見・回避 |
照射後は数年単位での継続管理が必要です。これは必須です。骨吸収抑制薬(ビスホスホネート製剤など)を併用している患者では顎骨壊死のリスクがさらに高まるため、投与前の口腔内スクリーニングも歯科チームの重要な役割です 。 ncc.go(https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/dental/050/index.html)
コクランレビュー(日本語版):頭頸部癌の放射線治療後の顎骨障害を予防するための歯科治療
放射線性骨壊死予防に関する342人・4試験のレビューで、歯科的介入の有効性を検討しています。エビデンスに基づいた判断材料として活用できます。
CCRT患者への対応は病院の専門科だけの話、と思っていませんか。実は近年、化学療法の多くが外来で実施されるようになっており、地域の一般歯科診療所でCCRT患者を管理するケースが増加しています 。つまり、どの歯科診療所も対応できる体制を整えておく必要があるということです。 perio(https://www.perio.jp/member/certification/hygienist/file/66-4.pdf)
連携体制の整備に向けて、まず確認したいのが「歯科衛生士連絡書(周術期)」の活用です。日本歯科衛生士会のホームページからダウンロードでき、手術・化学療法・放射線療法・緩和ケアの各場面に応じた記入例も揃っています 。病院と診療所の歯科衛生士が患者情報を共有する仕組みとして機能します。 jdha.or(https://www.jdha.or.jp/pdf/contents/info/shujutsuki_02.pdf)
一般診療所での対応が増加することが予想される、と日本歯周病学会も明記しています 。全ての歯科衛生士が周術期患者への対応を標準的に知っておくべき時代に入っています。読者の行動は1つでOKです。まず歯科衛生士連絡書を手元に準備するところから始めてみてください。 perio(https://www.perio.jp/member/certification/hygienist/file/66-4.pdf)
日本歯科衛生士会:歯科衛生士連絡書(周術期)の活用について(PDF)
連絡書の記入例(手術・化学療法・放射線療法・緩和ケア)を参照でき、診療所とがん病院の連携業務をすぐに始める際の実務的な参考資料になります。