コーピング厚み0.3mmで陶材剥離します
陶材焼付鋳造冠の製作において、最初の工程である支台歯形成は最終的な補綴物の成功を左右する極めて重要なステップです。唇側と舌側で異なる辺縁形態を採用する理由は、使用する材料の特性に基づいています。
唇側は金属のコーピングと陶材の両方が存在するため、十分な厚みを確保しなければなりません。そのため、ヘビーシャンファーまたはベベルドショルダーという厚みのある辺縁形態を採用します。特にベベルドショルダーは適合性に優れており、マージン部の精密な仕上がりが期待できる形態です。肩の部分に斜面を付与することで、金属と陶材の移行部分が滑らかになり、審美的にも機能的にも優れた結果が得られます。
つまり唇側は厚めです。
一方、舌側は金属のみで構成されるため、シャンファーやナイフエッジといった薄い辺縁形態で十分です。歯質の削除量を最小限に抑えることができるため、健全な歯質の保存という観点からも理にかなっています。この部位は審美性よりも機能性が重視されるため、金属単体での強度があれば問題ありません。
縁下形成を行った場合は歯肉圧排が必要です。
精密印象採得では、寒天とアルジネートの連合印象法、またはシリコーン印象材を使用します。縁下マージンの場合、歯肉圧排を行って歯肉溝を一時的に拡大し、マージン部分を明瞭に印象することが重要です。圧排糸を歯肉溝に挿入して数分間待つことで、マージンラインが明確に記録され、適合性の高いコーピングの製作が可能になります。
作業用模型の製作には超硬石膏または硬石膏を使用します。模型の精度が最終補綴物の適合性に直結するため、気泡が入らないよう注意深く注入し、適切な硬化時間を確保することが求められます。
メタルコーピングのワックスアップ工程では、一般的な全部鋳造冠とは異なる独特の手順を踏む必要があります。多くの歯科医療従事者が見落としがちな重要ポイントは、「最初に全部鋳造冠の完成形態をワックスアップし、その後に窓開け(カットバック)を行う」という順序です。
この手順が重要な理由を説明します。
最初から前装部のスペースを空けてワックスアップすると、最終的な歯冠形態を正確に把握することが困難になります。まず完全な歯冠形態をワックスで再現することで、隣在歯とのコンタクトポイント、対合歯との咬合関係、そして全体的な外形線を三次元的に確認できます。この段階で形態に問題があれば修正も容易です。
その後、唇側または頬側の陶材が入る部分に窓開けを行います。窓開けの範囲は審美的に重要な部分に限定し、咬合面や舌側面は金属のままとするのが一般的です。窓開けの深さは陶材の必要厚み(通常1.0~1.5mm程度)を考慮して決定します。深すぎると強度が不足し、浅すぎると陶材の色調再現性が低下します。
窓開けが完了したら、コーピング表面を滑らかに仕上げます。
前装部窓開けの目的は明確です。陶材を築盛するための十分なスペースを確保し、かつ金属フレームとの境界を明確にすることで、陶材焼成時の剥離を防ぎます。境界部分は鈍角にならないよう、適度な角度をつけることが陶材の保持に有効です。
ワックスパターンが完成したら、スプルーを立てて埋没に進みます。陶材焼付用金合金は融点が高いため、リン酸塩系埋没材を使用します。この埋没材は高温での強度と寸法安定性に優れており、精密な鋳造体の製作に適しています。
陶材焼付鋳造冠のワックスアップから鋳造までの詳細な技工手順と注意点について解説されています。
鋳造が完了し、スプルーを切断してコーピングを取り出した後、陶材を焼き付ける前に必ず行わなければならない工程がディギャッシングです。この工程を省略すると、陶材と金属の接着が不十分になり、使用中に陶材が剥離する重大なトラブルにつながります。
ディギャッシングは約1000℃前後の温度で、真空中または大気中で5~10分間加熱する処理です。この処理により金属表面に均一な酸化膜層が形成されます。陶材焼付用金合金に含まれるインジウム(In)やスズ(Sn)といった成分が選択的に酸化され、この酸化膜が陶材との化学的結合を担う重要な役割を果たします。
結論は酸化膜形成です。
ディギャッシング前には、鋳造体表面をサンドブラスト処理して鋳肌を粗面化し、有機物や油分を除去しておく必要があります。表面に油脂や汚れが残っていると、不均一な酸化膜が形成され、陶材の接着不良や変色の原因となります。一部の技工指示書では酸処理を推奨する場合もありますが、これはディギャッシング前の表面清浄化を目的としています。
ディギャッシング後の鋳造体表面は、暗褐色または薄灰色の均一な酸化膜で覆われているのが理想的です。色ムラがある場合は加熱温度や時間が不適切だった可能性があり、再度ディギャッシングを行う必要があります。
この工程を怠ると後悔します。
ディギャッシングの温度管理は非常にシビアです。温度が低すぎると十分な酸化膜が形成されず、高すぎると金属が変形したり、過度な酸化により表面が荒れすぎたりします。電気炉の温度校正を定期的に行い、正確な温度で処理することが品質管理の基本です。
ディギャッシングの概要と陶材焼付前の金属表面処理の重要性について詳しく解説されています。
ディギャッシング処理が完了したら、いよいよ陶材の築盛工程に入ります。まずオペーク陶材を薄く塗布して金属色を遮蔽し、その上にデンティン陶材、エナメル陶材を順次築盛していきます。この築盛過程で極めて重要な操作がコンデンスです。
コンデンスとは、陶材粉末を蒸留水で練和して築盛した際に、内部に含まれる余分な水分を除去し、陶材粒子を密に充填させる操作を指します。振動を加える方法、吸水性の高い紙や布で水分を吸い取る方法など、複数の技法があります。コンデンスが不十分だと、焼成時に陶材内部に気泡が残り、強度低下や透明度の低下、さらには破折の原因となります。
透明度向上が目的です。
陶材の焼成は真空中(減圧下)で行うのが基本です。焼成温度は陶材の種類により異なりますが、一般的にオペーク陶材は930~940℃、デンティンやエナメル陶材は920~930℃程度です。減圧焼成を行う理由は、陶材内部に気泡が入り込むのを防ぎ、透明度と強度を向上させるためです。
大気中で焼成すると、高温で軟化した陶材に空気が巻き込まれ、内部に無数の微細な気泡が残留します。この気泡は光を乱反射させるため透明度が著しく低下し、くすんだ不自然な色調になってしまいます。また、気泡が存在する部分は応力集中が起こりやすく、咬合力が加わった際に破折の起点となる危険性があります。
真空中焼成が原則です。
焼成後、ビスケットベイク(素焼き状態)で一度口腔内試適を行います。この段階では陶材表面に光沢がなく、ザラザラした質感です。しかしこの状態でコンタクトポイントや咬合関係を確認できるため、最終調整前の重要なチェックポイントとなります。隣在歯とのコンタクトはコンタクトゲージやデンタルフロスで確認し、咬合は咬合紙を用いて早期接触がないかチェックします。
問題がなければステイニング(色付け)とグレージング(艶出し焼成)を行い、最終的な光沢と色調を付与します。グレージングは920~950℃の空気中で行われ、陶材表面がガラス化して自然な艶が生まれます。
コンデンスから焼成、グレージングまでの詳細な工程と減圧焼成の目的について解説されています。
陶材焼付鋳造冠の製作において、色調選択(シェードテイキング)のタイミングは限られています。ホワイトワックスでコーピングに歯冠形態を賦形して口腔内試適を行う段階、または陶材築盛前の段階で、隣在歯や対合歯の色調を正確に記録しておく必要があります。
シェードガイドを使用する際は、自然光または色温度5500K程度の照明下で行うのが理想的です。診療室の照明によっては色調が実際と異なって見えることがあり、患者が帰宅後に「色が合わない」とクレームになるケースも報告されています。歯の色調は部位によって微妙に異なるため、頸部・中央部・切縁部の3箇所で色を確認し、グラデーションを再現することが自然な仕上がりの鍵です。
色は3箇所で確認します。
この段階で補綴物の形態とカントゥア(豊隆)も確認しておきます。陶材は焼成時に約15~20%収縮するため、築盛時には完成形態よりもやや大きめに盛り上げる必要があります。経験豊富な歯科技工士はこの収縮率を計算に入れてワックスアップや陶材築盛を行いますが、臨床側からの明確な指示があれば、より患者の要望に沿った形態を実現できます。
ビスケットベイク試適後、グレージングを経て完成した陶材焼付鋳造冠は、最終的な装着前に複数の項目をチェックします。コンタクトの強さはコンタクトゲージで測定し、青色のゲージが適度な抵抗で通過することを確認します。強すぎると隣在歯を押し出す原因となり、弱すぎると食片圧入のリスクが高まります。
マージンの適合は探針を用いて全周にわたり触診します。段差や隙間があればそこから二次齲蝕が発生しやすくなるため、不適合が認められた場合は再製作を検討すべきです。内面適合はフィットチェッカーなどのシリコーン材料を用いて視覚的に確認します。
咬合調整では咬合紙を使い、中心咬合位および側方運動時の早期接触を除去します。陶材部分を削合する際は、金属に比べて対合歯を摩耗させるリスクがあるため、調整後は必ず研磨を行い表面を滑沢に仕上げることが重要です。荒れた陶材表面はやすりのように作用し、対合歯のエナメル質を過度に削ってしまう可能性があります。
研磨は必須工程です。
すべてのチェック項目をクリアしたら、適切な合着材を用いて支台歯に装着します。レジン系セメントやグラスアイオノマーセメントなど、症例に応じた材料選択が求められます。装着後は患者に適切なブラッシング指導と定期的なメインテナンスの重要性を説明し、長期的な予後の向上を図ります。
陶材焼付鋳造冠は審美性と強度を両立した優れた補綴装置ですが、各工程で細心の注意を払わなければ、その利点を十分に発揮できません。支台歯形成から最終装着まで、一連の手順を正確に理解し実践することが、患者満足度の高い治療結果につながります。