根管治療で次亜塩素酸を使うと接着強度が80%も低下します。
レジン系セメントは歯科修復物の接着に使用される樹脂系の合着・接着材料で、大きく分けてMMA系とコンポジット系の2種類が存在します。それぞれ異なる組成と特性を持ち、臨床での使い分けが重要です。
MMA系レジンセメントは、メチルメタクリレート(MMA)を主成分とし、無機質フィラーをほとんど含まないタイプです。代表的な製品にスーパーボンドがあり、化学重合型で粉液型の形態をとります。フィラーを含まないため弾性率が低く、象牙質への高い接着性を示すのが特徴です。動揺歯の固定や補綴物の接着、義歯修理など幅広い用途で使用されています。
つまりMMA系は柔軟性が高いです。
一方、コンポジット系レジンセメントは物性向上のために50~80%程度のフィラーを含有しており、充填用コンポジットレジンに似た組成を示します。MMA系と比較して機械的強度が高く、デュアルキュア型(光重合と化学重合の併用)が主流です。
コンポジット系の強度はセラミックに近いです。
両者の最大の違いは、フィラー含有量と重合形式にあります。MMA系は化学重合のみですが、コンポジット系は光照射により即座に硬化させることも可能で、余剰セメントの除去タイミングをコントロールしやすいという臨床上のメリットがあります。近年では、余剰セメントを2~5秒の光照射で半硬化させ、探針で一塊として除去できる製品が多く開発されています。
レジン系セメントの接着は、機械的嵌合力に頼る従来のセメントとは異なり、化学的接着メカニズムを利用しています。この化学的接着により、補綴物の脱離リスクが大幅に低減し、二次齲蝕の予防にもつながります。
接着性モノマーがキーとなります。
MMA系セメントに配合される4-META(4-メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸)などの接着性モノマーは、象牙質のカルシウムイオンと化学結合を形成します。この結合により、従来のリン酸亜鉛セメントやグラスアイオノマーセメントでは得られない強固な接着力が実現されます。象牙質に対する接着強さは、適切な前処理を行うことで15~25MPa程度に達すると報告されています。
コンポジット系レジンセメントは、親水性モノマーの添加により象牙質の湿潤面にも対応できる設計になっています。ただし、過度の湿潤環境では接着強度が低下するため、適度な防湿管理が必須です。唾液汚染があると剪断接着強度が30~50%も低下するという研究報告があり、ラバーダム防湿やZOE(酸化亜鉛ユージノール)を用いない仮封材の選択が重要になります。
防湿が接着の成否を分けます。
接着界面の形成には、歯質側の前処理も大きく影響します。エナメル質に対してはリン酸エッチングにより微細な凹凸を形成し、レジンが機械的に嵌合する構造を作ります。象牙質に対しては、象牙細管への樹脂タグの形成と、脱灰された象牙質層へのレジンの浸透により、ハイブリッド層と呼ばれる強固な接着層が形成されます。
このハイブリッド層の厚さは2~5μm程度で、顕微鏡でようやく見える薄さです(人間の髪の毛の直径が約70μmなので、その20分の1以下の薄さ)。この微細な層が、補綴物と歯質を一体化させる重要な役割を果たしています。
臨床で最も見落とされやすい接着阻害因子の一つが、根管治療で使用する次亜塩素酸ナトリウムによる影響です。4-META/MMA-TBB系レジンセメント(スーパーボンドなど)は、次亜塩素酸ナトリウム処理により象牙質に対する接着強さが著しく低下することが周知の事実です。
わずか30秒の処理でも影響します。
研究によると、6%次亜塩素酸ナトリウムで180秒処理した場合でも、10%アスコルビン酸で10秒還元すれば接着力は回復しますが、10%次亜塩素酸ナトリウムで30秒以上処理してしまうと、還元処理でも完全には回復しません。そのため、ファイバーポストを用いたレジン支台築造や、根管治療後の補綴物装着では、次亜塩素酸の影響を中和する処理が必須となります。
対策としてアクセルの塗布が有効です。
サンメディカルのスーパーボンドシステムでは、歯面処理剤アクセルの塗布・乾燥により次亜塩素酸の影響を取り除くことができます。また、根管内洗浄後にアルコールで洗浄し、十分に乾燥させることで接着阻害を最小限に抑えられます。
湿気による接着力低下も重要な問題です。コンポジット系レジンセメントに使われるレドックス触媒は水分の影響を受けやすく、高湿潤環境において接着強さが低下してしまいます。デュアルキュア型やケミカルキュア型の接着性レジンセメントも、わずかな湿気でも接着強度が著しく低下するため、防湿管理は絶対に手を抜けません。
湿気対策には防湿システムが必須です。
ラバーダム防湿が理想的ですが、困難な場合はバキュームや綿球を駆使した確実な防湿を行います。セメント操作中にデンタルライトなどの強い光が当たると、光重合型セメントでは硬化が促進されてしまうため、採取・接着操作時には照射光を避ける工夫も必要です。SAルーティングMultiなどの製品では、環境光による硬化促進が報告されており、操作時間の管理が重要になります。
光照射のタイミングも失敗要因になります。余剰セメント除去のために光照射しすぎると、コンタクト部分のセメントが完全硬化してしまい、除去が困難になるケースがあります。適切なのは2~5秒の短時間照射で半硬化状態にし、一塊として除去する方法です。過度な重合反応を避けるため、「少し離して1、2秒照射」という手法を採用する臨床家もいます。
補綴物の材質によって、適切なレジンセメントと前処理方法が異なります。CAD/CAM冠、ジルコニア、セラミックなど、それぞれに最適な接着プロトコルを理解することが、長期的な予後を左右します。
材質ごとに接着戦略が変わります。
CAD/CAM冠(ハイブリッドレジンブロック)の場合、コンポジット系レジンセメントとの相性が良好です。ただし、内面処理が重要で、サンドブラスト(アルミナブラスト)による機械的な粗造化と、シランカップリング処理による化学的接着の両方が推奨されます。シラン処理により、CAD/CAM冠内面の無機フィラーとレジンセメントが化学的に結合し、脱離リスクが大幅に減少します。
シラン処理が脱離を50%減らします。
ジルコニアクラウンやブリッジに対しては、MDP(10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート)配合のレジンセメントが有効です。MDPはジルコニアのジルコニウムイオンと化学結合を形成するため、別途接着前処理が不要なケースもあります。パナビアV5などのMDP配合セメントは、ジルコニアに対して接着前処理なしで十分な接着力を発揮すると報告されています。
長石系セラミックス(e.maxなど)やハイブリッドレジンに対しては、シランカップリング処理が別途必要です。フッ化水素酸エッチング後にシラン処理を行うことで、セラミック内部の結晶構造が露出し、レジンとの強固な結合が可能になります。
エッチング時間は60~90秒が目安です。
金属補綴物(金銀パラジウム合金や貴金属)に対しては、4-META系のMMA系レジンセメント(スーパーボンドなど)が伝統的に高い接着性を示します。金属表面をサンドブラスト処理し、メタルプライマーを塗布することで、金属酸化物とレジンが化学結合します。また、最近ではユニバーサルタイプのレジンセメントも登場しており、ZENユニバーサルセメントのように、一つのシステムで複数の材質に対応できる製品も選択肢に入ります。
セメントの色調選択も審美性に影響します。CAD/CAM冠の場合、支台歯がレジンであれば「クリア」や「トランスルーセント」を使えば、CAD/CAM冠そのものの色を邪魔しません。逆に支台歯が変色している場合は、「ブラウン」や「A3」などの色付きセメントでマスキング効果を狙う選択もあります。
余剰セメント除去のタイミングは、臨床効率と治療精度の両面で重要です。デュアルキュア型レジンセメントでは、光照射により即座に半硬化状態にできるため、化学重合のみのセメントと比較して待ち時間を大幅に短縮できます。
待ち時間が半分になります。
フジルーティングEX Plusなどの製品では、3秒の光照射後、1分~1分半で余剰セメントを除去できる半硬化状態になります。化学重合のみで待つ場合と比較すると、約半分の時間で次の工程に進めるため、1日の診療効率が向上します。ブリッジのポンティック下など複雑な部位に流れ込んだセメントも、一度光を当てることで取り残しを防げます。
除去時はタイマー設定が基本です。
余剰セメント除去の失敗を防ぐには、タイマーをセットして確実に半硬化のタイミングを把握することが重要です。最初にコンタクト部分から除去し、乾いた大きめの綿球を用意しておくことで、スムーズな除去が可能になります。対合歯や隣接歯にセメントが付着していないか、最後に必ず確認します。
注意点として、超音波スケーラーやエアースケーラーは使用NGです。これらの器具は補綴物に振動を与え、接着界面にダメージを与えるリスクがあります。探針や手用スケーラーで丁寧に除去するのが安全です。
セメント練和の環境管理も見落とせません。室温が高いと硬化が早まり、操作時間が短くなります。逆に低温では硬化が遅延するため、診療室の温度を23±1℃程度に保つことが理想的です。冬季の寒冷時や夏季の高温時には、セメントの保管場所にも注意を払います。
最終硬化の確認も重要なポイントです。フジルーティングEX Plusの場合、装着後2分45秒以上で最終硬化に達します。この時間を待たずに咬合調整などの次工程に進むと、セメント層にダメージを与える可能性があります。デュアルキュア型でも、光が届かない部分は化学重合に依存するため、メーカー指定の硬化時間を守ることが長期的な予後につながります。
二次齲蝕予防の観点では、レジンセメントの封鎖性が重要です。接着性レジンセメントは唾液に溶解せず、歯と化学的に接着しているため、従来のリン酸亜鉛セメントと比較して虫歯の再発リスクが低いとされています。ただし、これは適切な接着操作が行われた場合に限ります。
接着操作の質が予後を決めます。
サンメディカル技術資料では、次亜塩素酸処理による接着阻害とその対策について詳しく解説されています(スーパーボンドの接着性能に関する重要な技術情報が記載されています)
デンタルプラザの記事では、MMA系とコンポジット系レジンセメントの弾性率や強度の比較データが示されており、症例に応じた使い分けの根拠となります
クラレノリタケのSAルーティングMultiパンフレットでは、シラン処理不要のレジンセメントの特性と使用方法が詳述されています

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