バキュームの意味と種類や使い方感染対策

歯科治療で使われるバキュームとは何でしょうか。口腔内・口腔外の違いや正しい使い方、感染対策における役割まで、知らなかった意外な事実も含めて詳しく解説します。

バキュームの意味と役割

口腔内バキュームだけでは粉塵の30%しか吸引できません。


この記事の3つのポイント
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バキュームとは吸引装置の総称

英語の「vacuum(真空)」が語源で、口腔内の唾液・血液・削りカスを吸引する装置を指します。 口腔内用と口腔外用の2種類があります。

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口腔内バキュームの吸引率は70~80%

実験データによると、口腔内バキュームだけでは発生する粉塵の70~80%しか除去できず、残り20~30%は診療室内に飛散します。

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口腔外バキュームで感染対策を強化

口腔外バキュームを併用すると飛沫粒子の捕集率が40~60%向上し、エアロゾル感染のリスクを大幅に低減できます。


バキュームの基本的な意味と語源


バキュームとは、歯科治療において使用される吸引装置の一種です。語源は英語の「vacuum」であり、「真空」を意味します。この真空の力を利用して、口腔内の唾液や血液、その他の液体を吸引する仕組みになっています。


歯科治療の現場では、視界を確保し患者の快適さを向上させるために不可欠な機器です。治療中に口腔内に溜まる水分や削りカスを効率よく除去することで、術者は正確な処置を行うことができます。


英語圏では「dental suction」や「dental vacuum」と呼ばれています。厳密には、サクション(suction)は吸引する行為を指し、バキューム(vacuum)はその装置を指すため、使用する場面によって使い分けが必要です。


日本の歯科医院では「バキューム」という呼び方が一般的ですが、「サクション」と呼ぶ医院もあります。どちらも同じ吸引装置を指す言葉として使われています。


バキュームの種類と口腔内・口腔外の違い

歯科用バキュームには、大きく分けて口腔内バキュームと口腔外バキュームの2種類があります。それぞれの役割と特徴を理解することが、適切な使用には欠かせません。


口腔内バキュームは、患者の口の中に直接挿入して使用する吸引装置です。歯を削るときに出る水や口腔内に溜まった唾液、血液などを吸い取ります。先端が細くなっており、治療部位を直接吸引できる設計になっています。


一方、口腔外バキュームは、患者の口の外に装置を設置します。


これが最大の違いです。


義歯やクラウンの研磨、タービンエンジンで切削するときに発生する飛沫や粉塵、エアロゾルなどを吸引するために使用します。


実験データによると、口腔内バキュームだけでは診療時に発生する粉塵の70~80%しか除去できません。残る20~30%の切削片は空気中を浮遊し、診療室内を汚染してしまいます。


つまり、口腔内バキュームだけでは不十分なのです。


口腔外バキュームを併用すると、飛沫粒子の捕集率が40~60%向上するという調査結果があります。両方を組み合わせることで、より安全な診療環境を実現できるということですね。


JMS株式会社の口腔外バキュームQ&Aでは、吸引率のデータと装置の選び方について詳しく解説されています。


バキュームが果たす感染対策の役割

バキュームは単なる吸引装置ではなく、院内感染対策の要となる重要な設備です。新型コロナウイルス感染症の流行以降、その重要性はさらに高まっています。


歯科治療では、タービンや超音波スケーラーの使用時に大量のエアロゾルが発生します。エアロゾルとは、空気中に浮遊する微細な粉塵や液滴のことで、ウイルスや細菌を含む可能性があります。


これらのエアロゾルは数時間も空中を漂い続けるため、換気だけでは十分に対策できません。口腔外バキュームがあれば、発生源である患者の口元で素早く吸引し、院内への拡散を防ぐことができます。


厚生労働省も歯科診療における院内感染防止対策として、口腔内バキュームの確実な操作と口腔外バキュームの活用を推奨しています。特にエアロゾルが発生する可能性がある治療時には、両方の併用が望ましいとされています。


口腔外バキュームは施設基準の要件にもなっており、歯科外来診療環境体制加算を算定するためには設置が必要です。患者の安全と医療スタッフの健康を守るために、今や必須の設備といえるでしょう。


バキュームの正しい使い方と操作のコツ

バキュームの効果を最大限に引き出すには、正しい使い方と操作技術が求められます。特にアシスタントワークにおいて、バキューム操作は最も重要なスキルの一つです。


バキュームチップの挿入位置は、両側の臼後三角を基本とします。中央の咽頭周囲はできるだけ避けるのが原則です。軟口蓋・咽頭部・舌根部は禁忌部位と呼ばれ、患者が不快感を示したり嘔吐反応を示す場合があります。


治療部位に応じて、バキュームの角度や位置を調整することが大切です。上顎臼歯部では頬粘膜を内側から膨らませ、下顎臼歯部では舌を保護しながら吸引します。歯列と平行に挿入し、スムーズに動かすのがコツです。


奥の水を吸引する際は、必ず「奥を吸います」と声をかけてから行います。これにより術者に注意を促し、誤飲や誤嚥のリスクを減らすことができます。水平位診療の際には、舌根部にガーゼを置くことも有効な予防策です。


口腔外バキュームは、患者の口元から5~10cm程度の距離に吸引口を設置します。治療の種類や飛沫の飛び方を考慮して、最適な位置に調整してください。移動式の場合は、治療部位に応じて柔軟に移動させることができます。


バキュームのメンテナンスと清掃管理

バキュームの性能を維持し、衛生的に使用するためには、適切なメンテナンスと清掃が欠かせません。定期的な管理を怠ると、吸引力の低下や院内感染のリスクにつながります。


口腔内バキュームは、毎使用後に洗浄と消毒を行う必要があります。バキュームチップはぬるま湯または中性洗剤を使用して洗浄後、135℃以下のオートクレーブ滅菌を行います。バキュームホースは午前の診療終了後と1日の診療終了後に洗浄アダプタを使用して洗浄します。


口腔外バキュームの毎日の清掃として、フード部分の吸引口をアルコールや中性洗剤で拭き取ります。フィルターは週に1回程度チェックし、汚れが目立つ場合は交換が必要です。メーカーによって推奨される交換頻度が異なるため、取扱説明書を確認しましょう。


月1回程度は本体内部の点検も行います。吸引力が弱くなっていないか、異音がしないか、ホースに亀裂がないかなど、細かくチェックしてください。不具合があれば早めに修理や部品交換を行うことで、長期間安定して使用できます。


洗浄除菌剤として、バイオクリーンなどの専用製品を使用すると効果的です。各デンタルユニットに毎日1~2回吸引させることで、バキュームホース、ユニット内の分離器、排水管、スピットンを洗浄除菌できます。使用頻度に応じて最長1週間まで洗浄除菌でき、経済的です。


デュール社のデンタルハイジーンシステムカタログでは、バキューム洗浄除菌の具体的な方法が紹介されています。




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