歯科衛生士業務範囲と厚生労働省の最新指針を解説

歯科衛生士の業務範囲は歯科衛生士法と厚生労働省の通知で定められていますが、浸潤麻酔や特定行為など2024年以降に大きく変化しています。あなたの職場での対応は最新情報に追いついていますか?

歯科衛生士業務範囲と厚生労働省が示す三大業務の全体像

浸潤麻酔を歯科衛生士が行うと、資格取り消しになる場合があります。


📋 この記事の3ポイント要約
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業務範囲は「三大業務+指示の有無」で決まる

歯科衛生士の業務は「歯科予防処置・歯科診療補助・歯科保健指導」の三大業務が基本。絶対的歯科医行為はいかなる場合も不可、相対的歯科医行為は歯科医師の指示があれば実施可能という2軸で理解することが重要です。

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浸潤麻酔は「指示があれば可」だが教育整備が急務

2024年に厚生労働省が疑義照会に回答し、歯科医師の指示・管理のもとであれば浸潤麻酔は業務範囲内と確認されました。ただし卒前教育での実習実施率は極めて低く、現在も研修体制整備の検討が進行中です。

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業務記録の未作成・不保存は法律違反に直結する

歯科衛生士法施行規則第18条により、業務記録の作成と3年間の保存は義務です。記録を怠ると行政指導の対象となり、守秘義務違反は50万円以下の罰金が科される可能性があります。


歯科衛生士の業務範囲を定義する歯科衛生士法の構造


歯科衛生士の業務は、昭和23年に制定された歯科衛生士法(法律第204号)によって規定されています。法律の第一条には「歯科疾患の予防及び口腔衛生の向上を図ることを目的とする」と明示されており、この目的から業務範囲が導かれています。


第二条では具体的に三つの業務が定義されています。まず「歯牙露出面及び正常な歯茎の遊離縁下の付着物・沈着物を機械的操作によって除去すること」、次に「歯牙及び口腔に対して薬物を塗布すること」、そして第三項として「歯科保健指導」が業務として位置づけられています。これが三大業務の法的根拠です。


三大業務が基本です。実際の診療現場では、この三大業務が相互に絡み合いながら展開されます。たとえばスケーリングは「歯科予防処置」に分類されますが、その前後に口腔内の状態説明や正しいブラッシング指導を行えば「歯科保健指導」にも該当します。


また、法第二条第二項には「保健師助産師看護師法の規定にかかわらず、歯科診療の補助をなすことを業とすることができる」と記されており、看護師と並んで診療補助が正式に認められていることが分かります。つまり歯科衛生士は歯科診療補助においても独立した根拠を持つ専門職です。


【e-Gov 法令検索】歯科衛生士法(昭和23年法律第204号)の全文。業務範囲の根拠条文を正確に確認できます。


歯科衛生士が「できること・できないこと」——絶対的・相対的歯科医行為の分類

歯科衛生士の業務範囲を理解するうえで不可欠なのが、「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」の区分です。この2つの概念は法令上の明文規定ではなく、運用上の解釈として定着しています。


絶対的歯科医行為とは、歯科医師のみが実施できる行為であり、歯科衛生士を含む他の医療従事者がいかなる条件下でも行ってはならない行為です。具体例は、①歯牙の切削、②抜歯や歯茎の切開などの観血的処置、③精密印象・咬合採得、④麻酔注射のうち伝達麻酔・全身麻酔・静脈内鎮静、⑤インプラント体の固定などが挙げられます。厳しいところですね。


一方、相対的歯科医行為は、歯科医師の指示と監督のもとであれば歯科衛生士が実施可能な行為です。歯肉縁下スケーリング、ルートプレーニング(SRP)、表面麻酔の塗布、浸潤麻酔(詳細は後述)、矯正ワイヤーの装着補助などが含まれます。


ここで注意が必要なのは、「歯科医師の指示・監督」の内容です。同室で目の届く状態でリアルタイムに指示が出せる状況が原則とされており、電話口での指示だけで実施することは認められていません。歯科医師の監督体制が条件です。


なお、歯科助手はこれらのどちらも行うことができません。患者の口腔内に触れる医療行為は全て不可です。歯科衛生士との最大の違いはここにあります。国家資格を持つ歯科衛生士だからこそ、医療行為への参加が認められているのです。
























区分 代表的な行為 歯科衛生士の可否
絶対的歯科医行為 歯牙切削・抜歯・伝達麻酔・インプラント固定など ❌ 不可(いかなる場合も)
相対的歯科医行為 SRP・表面麻酔・浸潤麻酔・矯正補助など ✅ 歯科医師の指示・監督下で可
三大業務(独占業務) スケーリング・フッ素塗布・保健指導など ✅ 歯科衛生士のみが業として行える


厚生労働省が確認した浸潤麻酔の業務範囲——2024年通知の詳細

2024年(令和6年)6月、厚生労働省は日本歯科医師会からの疑義照会に対して、歯科衛生士による浸潤麻酔に関する公式の見解を示しました。これは現場の歯科従事者にとって非常に重要な内容です。


結論から言えば、「歯科医師が患者の状態や歯科衛生士の知識・技能等を踏まえて実施の可否を判断し、歯科衛生士に対して指示をした上で実施される必要がある」とされました。つまり歯科医師の指示管理のもとでの浸潤麻酔は業務範囲内ということです。


これは実は昭和40年(1965年)の回答を踏襲したものでもあります。厚生省(現在の厚生労働省)医務課長は当時、「麻酔行為は医行為であるが、歯科衛生士でない者が業として従事することは歯科衛生士法に違反する」と示しており、裏返せば歯科衛生士は業として麻酔行為に関われるという解釈が成立していました。意外ですね。


ただし重大な課題も同時に浮上しています。厚生労働省の調査によると、歯科衛生士養成施設における浸潤麻酔の実習は、相互実習での実施率が約0.7%(SRP時)にとどまっており、全ての養成施設で臨床・臨地実習での実施実績がゼロでした。これは局所麻酔に関する講義時間が30分未満の施設が多いという実態とも一致します。


現場では行為として認められているのに、教育が追いついていない——これが今まさに検討されている問題の核心です。


この問題を受け、令和6年12月に第1回「歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会」が開催されました。令和8年(2026年)中のとりまとめを目標に、浸潤麻酔の研修体制整備、そして「特定行為」制度(手順書に基づく包括的指示による診療補助)の歯科衛生士への導入が論点として検討されています。


【厚生労働省】歯科衛生士の業務(歯科診療の補助行為)について——浸潤麻酔に関する疑義照会と回答が掲載された公式資料。


歯科衛生士業務記録の義務と保存期間——知らないと罰則対象になる法的要件

三大業務の内容だけでなく、業務の記録についても法的な義務が課されています。ここを見落としている職場が多いのが現実です。


歯科衛生士法施行規則第18条には明確にこう記されています。「歯科衛生士は、その業務を行った場合には、その記録を作成して三年間これを保存するものとする。」つまり、スケーリングや保健指導を実施するたびに記録を作成し、その日から3年間は廃棄できません。


記録が必要です。では、どのような内容を記録すべきでしょうか。一般的に「歯科衛生士業務記録」には①実施日時、②患者の氏名・生年月日、③実施した業務の内容(たとえば「歯肉縁下スケーリング:上顎右側臼歯部」)、④歯科医師の指示内容、⑤歯科衛生士の署名が含まれます。


これを怠った場合、保険診療上の指摘を受けるだけでなく、行政指導の対象となりえます。さらに、業務記録に関連して患者情報を外部に漏らした場合は、歯科衛生士法第13条の6(守秘義務)の違反として50万円以下の罰金が科せられます。


痛いですね。また、罰金刑以上の刑が確定すると、厚生労働省から歯科衛生士資格の取り消しや業務停止処分が下される可能性があります(歯科衛生士法第4条・第8条)。日常業務の記録一つが、最悪の場合は資格喪失につながり得るわけです。


業務記録の作成・保存について、職場のルールが曖昧な場合は、日本歯科衛生士会が公開している「歯科衛生士業務記録に関する指針」(2024年5月版)を参照することをおすすめします。PDF形式で無料公開されており、記録様式の例も収載されています。


【日本歯科衛生士会】歯科衛生士業務記録に関する指針(2024年5月版)——記録義務の根拠と実務的な記載例が確認できます。


今後の業務範囲拡大——厚生労働省検討会が示す「特定行為」導入の行方

現在の歯科衛生士をめぐる環境は、法制度の転換点にあると言っても過言ではありません。令和6年末から始まった厚生労働省の検討会では、歯科衛生士の業務のあり方について、具体的な制度設計が進んでいます。


背景には二つの大きな要因があります。一つは高齢化の加速です。令和6年の就業歯科衛生士数は149,579人(衛生行政報告例)と増加傾向にありますが、免許取得者321,241人のうち就業割合は46.6%にとどまっており、ニーズの伸びに供給が追いついていません。もう一つは在宅・介護施設における口腔管理ニーズの急増です。歯科診療所の外での業務が求められる一方、現行制度では歯科医師がリアルタイムで指示を出せない場面が多くなっています。


これは使えそうです。この課題を解決するために議論されているのが、看護師の「特定行為研修制度」を歯科衛生士にも応用する仕組みです。具体的には、研修を受けた歯科衛生士が「手順書」に基づいて、都度歯科医師の確認を得ることなく一定の診療補助行為を行えるようにするというものです。


令和8年3月に公開された第5回検討会資料では、訪問歯科診療における咽頭内吸引や、義歯の処置補助、歯周処置などを「特定行為」候補として検討するイメージが示されています。この流れが実現すれば、訪問診療や介護施設での歯科衛生士の活躍の場が大きく広がります。


一方で「業務範囲の拡大ではなく、包括的指示の範囲内での整理」という立場も検討会内にはあり、制度の名称や位置づけについて議論が続いています。また研修時間については、看護師の特定行為研修250時間という水準は現実的でないとの意見も多く、歯科衛生士の勤務実態(ほぼ100%が歯科医院勤務)を踏まえた設計が求められています。


【厚生労働省】歯科衛生士の業務のあり方等について(案)令和8年3月9日・第5回検討会資料——特定行為導入の検討イメージが具体的に示されています。


【独自視点】地域偏在と「見えない業務範囲格差」が歯科衛生士に与えるリスク

一般的な業務範囲の解説では語られることが少ないですが、実は都道府県間の歯科衛生士偏在が、現場の業務運営に深刻な影響を与えています。


厚生労働省のデータによると、人口10万人対の就業歯科衛生士数は、最大の都道府県と最小の都道府県で2倍以上の差があります(令和6年・衛生行政報告例)。就業者の少ない地域では、1人の歯科衛生士が担う業務量が多くなり、「歯科医師の指示をいちいち受けている時間がない」という状況が生まれます。


これが問題です。こうした環境では、「慣習的にやってきた」という理由で相対的歯科医行為を無指示で実施しているケースが出てきます。特に長年勤続しているベテラン歯科衛生士ほど、知らず知らずのうちにグレーな実施に慣れてしまうリスクがあります。「指示があったからOK」という思い込みが生まれやすいのです。


医院に1~2人しか歯科衛生士がいない環境(診療所1か所あたりの平均は約1.8人)では、業務整理や法的確認を相互にチェックする仕組みも弱くなりがちです。自院の業務フローを改めて確認する機会が必要です。


具体的な対策として、日本歯科医師会や日本歯科衛生士会が提供する「歯科衛生士業務に関するQ&A集」を定期的に参照し、疑問が生じたらためらわず確認する習慣が、法的リスク回避の第一歩です。また、厚生局への疑義照会制度(無料)を活用すれば、判断に迷うケースの法的整理を直接行政に確認することができます。



  • ✅ 日本歯科衛生士会の業務ガイドラインを年1回以上確認する

  • ✅ 院内で「指示の出し方ルール」を文書化しておく(電話指示の禁止範囲の明確化など)

  • ✅ 業務記録の様式を統一し、記録漏れが出ない運用フローを作る

  • ✅ 浸潤麻酔を実施する場合は、研修修了の記録と歯科医師指示の記録を両方残す


「法律を知らなかった」では守れないことがあります。現場の実態と制度のギャップを縮めるためにも、最新の検討会動向をウォッチしておくことが、現代の歯科従事者には求められています。


【厚生労働省】第3回 歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会——過去の検討会資料・議事録が一覧でき、最新の政策動向を追うのに最適です。






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