歯科で嚥下リハを始めようとする方の多くは、「メンデルソン手技は嚥下時の補助として使う手技」と思い込んでいますが、実は訓練を積めば喉頭挙上の持続時間が平均2〜3秒延長し、口腔外来での誤嚥性肺炎リスクを有意に下げると報告されています。

メンデルソン手技の目的は、大きく3つに整理できます。①舌骨・喉頭の挙上量の拡大、②挙上持続時間の延長、③咽頭収縮力の増加です 。この3点が組み合わさることで、嚥下時に上部食道括約筋(UES)が十分に開き、食物を食道へスムーズに送り込むことができます。 rehabilidata(https://rehabilidata.com/mendelsohn-maneuver/)
喉頭が挙上する距離は、成人で平均2〜3cmほど(ちょうど親指の横幅くらい)です。この小さな距離が保たれる時間が短いと、食道入口部が閉じたまま食物が咽頭に残り、誤嚥のリスクが高まります。つまり「挙上幅」だけでなく「挙上を保つ時間」が重要なのです。
手技の基本操作はシンプルです。唾液嚥下のタイミングに合わせて、喉頭(のど仏)が最も高い位置に達したところで、そのまま2〜5秒間キープします 。これが基本です。 youtube(https://www.youtube.com/watch?v=JPXgC9iMJCM)
適応の対象は、舌骨・喉頭挙上不全、咽頭収縮不全、食道入口部開大不全によって咽頭残留が生じており、誤嚥リスクのある方とされています 。歯科訪問診療では、脳卒中後や神経筋疾患を持つ患者に出会う機会が増えており、これらの症例にも応用できます。 rehabilidata(https://rehabilidata.com/mendelsohn-maneuver/)
| 比較項目 | 代償法としての使用 | 機能訓練としての使用 |
|---|---|---|
| 目的 | その場の誤嚥・残留を防ぐ | 嚥下機能そのものを回復させる |
| タイミング | 毎回の食事・嚥下時 | 食事とは別の訓練セッション |
| 効果の持続 | 使用中のみ | 訓練終了後も持続する報告あり |
| 難易度 | 患者が慣れるまで介助が必要 | セルフトレーニングに移行できる |
実際、メンデルソン手技を用いた場合に残留と誤嚥が有意に減少したという報告は複数あります 。さらに、訓練終了後も嚥下機能の改善が持続するという「キャリーオーバー効果」が報告されている点も、患者へのモチベーション付けに使えるエビデンスです。これは使えそうです。 st-medica(https://www.st-medica.com/2012/02/blog-post_13.html)
参考:日本摂食嚥下リハビリテーション学会による訓練法のまとめ(2014版)。メンデルソン手技の位置付けと根拠が詳しく解説されています。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会「訓練法のまとめ(2014版)」
嚥下リハには複数の手技があり、それぞれ異なる機序をターゲットにしています。整理しておくと臨床判断がスムーズになります。
onomichi-hospital(https://www.onomichi-hospital.jp/upload/blog/%E5%9A%A5%E4%B8%8B%E6%A9%9F%E8%83%BD%E8%A9%95%E4%BE%A1%E3%83%BB%E8%A8%93%E7%B7%B4%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%202024-05-16.pdf)
ここは検索上位にはあまり見られない独自視点ですが、臨床的に重要なポイントです。
表面筋電図(sEMG)を用いたバイオフィードバックとメンデルソン手技を組み合わせると、患者自身が喉頭挙上の感覚を視覚的に確認しながら訓練できるため、食事摂取量の増加が報告されています 。これはセルフトレーニングへの移行が難しい患者、特に感覚障害がある患者に有効なアプローチです。 minagawa-oushin(https://www.minagawa-oushin.com/post/%E3%80%8C%E6%91%82%E9%A3%9F%E5%9A%A5%E4%B8%8B%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AE%E8%A8%93%E7%B7%B4%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%8D-%E5%A0%B1%E5%91%8A%E3%81%A8%E9%9B%91%E6%84%9F)
また、神経筋疾患(ALS、パーキンソン病など)へのメンデルソン手技適用では、筋力低下に合わせた負荷調整が必要です 。挙上保持を「2秒→3秒→5秒」と段階的に延長するプロトコルが推奨されており、無理な負荷をかけると疲労性嚥下障害を招くリスクがあります。厳しいところですね。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.32118/J02606.2022111182)
参考:神経筋疾患に対するメンデルソン手技のコツについて解説した専門誌記事。適応と禁忌を確認できます。
医歯薬出版「神経筋疾患に対するメンデルソン手技のコツ」(J. of Clinical Rehabilitation)
初めてメンデルソン手技を歯科臨床に取り入れる際に、見落としやすい注意点を確認しておきましょう。
最初に確認すべきは「患者が喉頭挙上を自覚できるか」という点です。感覚が乏しい患者は挙上した状態でのキープが難しく、誤った筋活動パターンを学習するリスクがあります。まず空嚥下(唾液嚥下)を複数回行い、のど仏の動きを患者が自分の指で触れて確認させるところから始めましょう 。これが基本です。 shugi-online(https://shugi-online.net/archives/2195)
訓練回数の目安は、1セッションあたり10〜20回の反復が推奨されており、毎日継続することで数週間後に効果が現れます 。ただし1日に過度な反復(50回以上)は舌骨上筋群の疲労につながるため避けてください。頻度より継続性の方が効果に直結します。 youtube(https://www.youtube.com/watch?v=JPXgC9iMJCM)
禁忌・注意が必要なケースとして、頭頸部手術直後(喉頭周囲の癒着が強い時期)、重篤な呼吸機能低下がある患者、認知機能の著しい低下で指示理解が困難な患者があります 。歯科口腔外科からの紹介や連携患者の場合は、主治医との情報共有を必ず行いましょう。 rehabilidata(https://rehabilidata.com/mendelsohn-maneuver/)
参考:歯科訪問診療における摂食嚥下リハビリテーションの実践ガイド。歯科外来・訪問での安全な導入手順が記載されています。
補綴誌「歯科訪問診療における摂食嚥下リハビリテーション」(PDF)
| 項目 | 口腔衛生管理加算(Ⅰ) | 口腔衛生管理加算(Ⅱ) |
| ---- | -------------------- | -------------------- |
| 単位数 | 90単位/月 | 110単位/月 |
| 主な要件 | 歯科衛生士による月1回以上の口腔衛生管理 | (Ⅰ)の要件+歯科医師との情報共有・連携 |
| 算定主体 | 施設 | 施設 |
| 特記事項 | 入所者1人につき月1回算定 | 口腔機能向上加算との併算定可 |