気管挿管時に喉頭鏡を使うと、上顎前歯が3,000例に1例の割合で折れることがあります。 nms-anesthesiology(http://nms-anesthesiology.jp/pdf/protocol11.pdf)

気管挿管では、まず患者を「スニッフィングポジション」にすることが大原則です。 これは後頭部に枕を入れて頭部を挙上させ、顔面を水平か頭側にわずかに傾けた姿勢で、喉頭鏡で声門を直視しやすくなります。 体位が不適切なままでは、視野が確保できず挿管が難しくなります。 www7.kmu.ac(http://www7.kmu.ac.jp/anesthw/airway_management)
使用するデバイスは、マッキントッシュ型喉頭鏡が標準ですが、最近はAirway ScopeやMcGRATHといったビデオ喉頭鏡も普及しています。 ビデオ喉頭鏡は声門の映像をモニターに映し出すため、通常の喉頭鏡では視野が取りにくい患者にも対応しやすいのが特徴です。つまり、デバイス選択が挿管成功率を左右します。 www7.kmu.ac(http://www7.kmu.ac.jp/anesthw/airway_management)
気管チューブの挿入深度の目安は、成人男性で門歯から21cm・女性で19cmとされています。 チューブカフが声帯を2cm越えた位置に来るよう確認することが条件です。 挿入後は心窩部・両側中腋窩線・前胸部の聴診で位置を確認します。 pref.wakayama.lg(https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/011600/d00210888_d/fil/4kikansoukan.pdf)
麻酔導入の流れは、鎮痛薬→鎮静薬→筋弛緩薬の順に投与するのが基本です。 具体的には、レミフェンタニル(鎮痛作用の発現・消失が早い)を投与後、プロポフォール(鎮静薬)を投与し、続いてロクロニウム(筋弛緩薬)を使用します。 自発呼吸の消失に合わせて用手換気(マスク換気)を開始するのが手順です。 chugaiigaku(https://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse4756.pdf)
意識下挿管が必要な場面では、薬剤の使い方が通常と異なります。 この場合、十分な表面麻酔と軽度の鎮静を組み合わせ、患者の協力を得ながら挿管します。 これは通常の全身麻酔導入後の挿管とは別の技術です。 jsrcm43.umin(https://jsrcm43.umin.jp/pdf/kyoiku_kouen_6.pdf)
挿管後は専用固定器具でチューブを固定し、頭部の位置は水平に保ちます。 固定後に用手換気による気道確保に戻ることは禁止されています。 固定の確実性が気道管理全体の質を左右します。 pref.wakayama.lg(https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/011600/d00210888_d/fil/4kikansoukan.pdf)
全身麻酔中の気管挿管に伴う歯の損傷発生率は0.17%と報告されています。 低く聞こえるかもしれませんが、手術件数が多い施設では決して無視できない数字です。損傷が起きた場合、患者への説明責任と補償対応が発生します。 academia.carenet(https://academia.carenet.com/share/news/cb45cc55-3901-4030-80bb-4f32def1a954)
損傷が起きやすい部位は上顎前歯です。 主な原因は気管内挿管時の喉頭鏡操作で、マスク換気時・エアウェイ・バイトブロックによる損傷も報告されています。 歯牙損傷のリスクファクターとして、歯の動揺(齲蝕・歯周病・顔面外傷)・挿管困難(頸椎可動域制限・開口制限・前突歯・小顎)・緊急手術・未熟な挿管技術が挙げられています。 nms-anesthesiology(http://nms-anesthesiology.jp/pdf/protocol11.pdf)
歯科従事者が術前に動揺歯・補綴物の状態を麻酔科医へ情報提供することで、このリスクは大幅に減らせます。 動揺歯は気管挿管中に脱落し誤飲・誤嚥の危険があるため、入れ歯を含めた術前の口腔状態評価が非常に重要です。 歯科側からの情報提供が事故防止の第一歩です。 anesth.or(https://anesth.or.jp/users/common/preoperative_complications/37)
気管挿管時の歯牙損傷予防のために、口腔内装置(マウスガード様プロテクター)の活用も研究されています。 動揺歯や補綴物が多い患者では、歯科側で術前にプロテクターを作製・提供する取り組みが行われています。 これは手術チームと歯科チームの連携が形になった実例です。 kcch.kanagawa-pho(https://kcch.kanagawa-pho.jp/data/media/kanagawa-hospital/page/pdf/dental/op2023eki56.pdf)
参考:気管挿管時の歯牙損傷予防のための口腔内装置活用実態調査(神奈川県立病院機構)
気管挿管時の歯牙損傷予防のための口腔内装置活用の実態調査(PDF)
挿管困難症例とは、喉頭鏡で声門が見えにくい、または気管挿管を3回試みても成功しない状態を指します。 挿管試行は1回30秒以内が原則で、3回以上は禁止とされています。 これを超えると気道損傷・低酸素血症のリスクが急激に上がります。 www7.kmu.ac(http://www7.kmu.ac.jp/anesthw/difficult_airway)
歯科領域では、顎変形症・開口制限・口腔底の病変などが困難気道の原因になりやすいです。 術前のアセスメントで困難気道が予測される場合、麻酔科医との事前カンファレンスと代替手技の準備が不可欠です。 準備が整っていれば対応できます。 oned(https://oned.jp/posts/9485)
参考:困難気道管理アルゴリズムの詳細(関西医科大学麻酔科学講座)
挿管困難への対応 | 関西医科大学麻酔科学講座
挿管チューブを伝う唾液や口腔内分泌物が術後肺炎の原因となることが明らかになっています。 口腔由来細菌が人工呼吸回路を汚染し、人工呼吸器関連肺炎(VAP)につながるリスクがあります。 これは歯科側のケアが直接的に術後合併症の予防につながることを意味します。 wakayama-med.jrc.or(https://www.wakayama-med.jrc.or.jp/department/shikakokuu/qnk2b3000000aryc-att/shujyutukikokukinougaido.pdf)
周術期口腔機能管理では、術前の口腔衛生指導・歯石除去・動揺歯の処置が含まれます。 口腔内細菌を減らしておくことで、挿管時に気道へ細菌が入り込むリスクを下げることが目的です。 手術前に口腔を清潔にしておくことが原則です。 nsmc.hosp.go(https://nsmc.hosp.go.jp/Journal/2018-8/SMCJ2018-8_review02.pdf)
また、チューブカフの過膨張は気管粘膜の褥瘡性潰瘍・気管食道瘻形成などの重篤な合併症を引き起こします。 低圧カフを使用し、通常10mlを超えないエア量で管理することが推奨されています。 カフ圧管理は見落とされやすいですが重要です。 pref.wakayama.lg(https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/011600/d00210888_d/fil/4kikansoukan.pdf)
歯科従事者が手術チームと連携して情報共有を行うことで、患者安全に直結する口腔管理が実現します。 術前・術中・術後を通じた歯科の関わりが、現代の周術期医療では標準化されつつあります。このような連携体制が整っている施設では、術後合併症の発生率が低下するというデータも蓄積されています。 nsmc.hosp.go(https://nsmc.hosp.go.jp/Journal/2018-8/SMCJ2018-8_review02.pdf)
参考:周術期口腔機能管理の意義と取り組みについての総説(国立病院機構)
周術期口腔機能管理の意義とその取り組みについて(PDF)
気管挿管の合併症として、低酸素血症・不整脈・頭蓋内圧亢進・気管支攣縮が知られています。 しかし歯科領域で見落とされがちな合併症は、口腔内軟組織損傷と歯牙損傷の複合リスクです。 特に小児患者では気管挿管中の外傷性歯牙損傷(TDI)の発生率が16.00%という報告もあります。 shien.co(https://www.shien.co.jp/media/sample/s3/BK00418.pdf)
誤挿管(食道挿管)は最も危険な合併症の一つです。 挿管後に心窩部でゴボゴボと音がして胸壁が上がらない場合は、直ちにチューブを抜去する必要があります。 挿管後の確認手順を怠ることが許されないのはこのためです。 oned(https://oned.jp/posts/9485)
歯科側から麻酔科医へ伝えるべき情報は、①動揺歯の有無と部位、②補綴物(クラウン・ブリッジ)の状態、③開口制限・顎関節症の有無、④口腔内感染巣の状態、の4項目が基本です。 これらを術前に共有するだけで、挿管リスクを大幅に低減できます。 情報提供は記録に残すことも必須です。 nms-anesthesiology(http://nms-anesthesiology.jp/pdf/protocol11.pdf)
>🦷 動揺歯の部位と動揺度
>🔩 クラウン・ブリッジ・部分入れ歯の状態
>👄 開口制限・顎関節症の有無
>🦠 口腔内感染巣(歯周病・根尖病変)の状態
参考:麻酔中の歯牙損傷時の対応プロトコール(日本麻酔科学会関連)
麻酔中の歯牙損傷時の対応について(PDF)
以下が記事です。
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