嚥下内視鏡検査の点数と算定で損しない歯科の知識

嚥下内視鏡検査(VE)の点数や算定要件は歯科従事者にとって複雑です。D298-2の720点が歯科では取れない理由から摂食嚥下機能回復体制加算まで、正しく理解できていますか?

嚥下内視鏡検査の点数と算定を歯科従事者が正しく理解する方法

VEを歯科でそのまま720点算定すると、不正請求になります。


この記事でわかること
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嚥下内視鏡検査(VE)の点数の正体

D298-2「内視鏡下嚥下機能検査」720点は医科専用。歯科では別の算定ルートがある。

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歯科が陥りやすい算定ミスと回避策

同月に摂食嚥下支援加算とVE点数を両方取れない落とし穴など、現場で起きやすい請求エラーを解説。

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VEを活かして摂食嚥下機能回復体制加算を取るルート

摂食嚥下機能回復体制加算1(週1回210点)を狙うためにVE・VFがどう機能するか、要件から整理。


嚥下内視鏡検査(VE)の点数の基本:D298-2は720点だが歯科では直接算定できない


嚥下内視鏡検査(VE:Videoendoscopic examination of swallowing)は、細い軟性内視鏡を鼻腔から咽頭に挿入し、着色水や食物を嚥下させながら咽頭の動きや誤嚥・残留の状態を直接観察する検査です。現在の診療報酬では、医科の区分番号「D298-2 内視鏡下嚥下機能検査」として720点が設定されています(令和6年度改定)。


これが重要な点です。D298-2の720点は、あくまでも医科診療報酬の点数です。


歯科診療報酬点数表には、VEに相当する独立した検査点数が存在しません。歯科の点数表を確認すると、嚥下関連で算定できる主な検査は「D012 舌圧検査(140点、3か月に1回)」に限られており、VEの点数区分は含まれていないのが現状です。つまり、歯科診療所が独立した検査として「嚥下内視鏡を行った」という理由だけでVE点数を算定しようとすると、適切ではありません。


では歯科でVEの点数はまったく関係ないかというと、そうではありません。歯科においては、VEの結果を摂食機能療法(H001)や摂食嚥下機能回復体制加算の算定根拠として活用する位置づけになっています。実施場所が歯科標榜病院などであれば、医科点数表に基づき算定が可能なケースもあります。点数の「取り方」と「使われ方」の両面を押さえるのが原則です。


参考:令和6年度診療報酬改定(摂食嚥下関連)の点数一覧はこちらで確認できます。
診療報酬点数表(摂食嚥下関連)|orarize.com


































検査名 区分番号 点数 算定主体
嚥下内視鏡検査(VE) D298-2 720点 医科のみ
嚥下造影検査(VF) E003(造影剤注入手技)等 240点+α 医科のみ
舌圧検査 D012 140点(3か月1回) 歯科
摂食機能療法(30分以上) H001 185点 歯科・医科共通


嚥下内視鏡検査の点数算定で歯科が注意すべき「VEとVFの使い分け」

歯科の摂食嚥下領域では、VE(嚥下内視鏡検査)とVF(嚥下造影検査)はしばしばセットで語られます。両者の大きな違いを整理しておくことは、算定の根拠を正確に記載するうえで非常に重要です。


VEは、軟性内視鏡を鼻腔から咽頭へ挿入して、リアルタイムで嚥下の様子を観察します。被曝がなく、患者のベッドサイドや在宅でも実施できるため、訪問歯科診療との相性が非常によい検査です。一方のVFは、バリウムなどの造影剤を使ってX線透視下で嚥下を観察します。口腔期から食道期までを一連で評価でき、不顕性誤嚥(むせ込みのない誤嚥)の診断にも有効とされています。


両者の検査結果は、摂食機能療法(H001)を算定するための「摂食機能障害の根拠」として使用できます。診療報酬上の規定では、摂食機能障害者の定義のひとつとして「内視鏡下嚥下機能検査または嚥下造影によって他覚的に嚥下機能の低下が確認できるもの」と明記されています。つまり、VEかVFのどちらかで客観的な証拠があれば算定根拠になります。これは使えそうです。


ただし注意点があります。VEとVFは医科点数上の検査であり、どちらか一方しか算定できません。「D298-2(VE)とD299(喉頭ファイバースコピー)を同時に実施した場合は主たるもののみ算定する」というルールも存在します。歯科従事者が関与する場合は、医科との連携のなかでどちらの検査を根拠にするかを明確にしてカルテに記録することが求められます。



  • 🔵 VEのメリット:ベッドサイドや在宅で実施可能。被曝なし。唾液・痰の貯留も確認できる。

  • 🟠 VFのメリット:口腔期から食道期まで一貫評価可能。不顕性誤嚥の診断に強い。嚥下のゴールドスタンダードとされる。

  • ⚠️ 算定上の注意:同日に両方実施しても主たるもののみ算定。検査の選択理由と結果をカルテに明記すること。


参考:VEとVFの臨床的な使い分けと特徴については以下が参考になります。
嚥下造影検査(VF)と嚥下内視鏡検査(VE)の使い分け|ナース専科


嚥下内視鏡検査の点数が摂食機能療法と連動する仕組みと加算の取り方

歯科における嚥下関連の算定で、最も重要な位置を占めるのが「H001 摂食機能療法」と、その加算である「摂食嚥下機能回復体制加算」です。VEの点数そのものは歯科では算定できませんが、VEの実施・活用は、この加算の要件のひとつに直結しています。


摂食機能療法は、摂食機能障害を有する患者に対して、診療計画書に基づいて医師・歯科医師や言語聴覚士・看護師・歯科衛生士等が1回30分以上の訓練を行った場合に算定できます。点数は30分以上の場合が185点、30分未満(脳卒中発症14日以内)が130点です。治療開始から3か月以内は1日につき算定でき、3か月を超えた後は月4回に限られます。


さらに施設基準の届出をしている医療機関では「摂食嚥下機能回復体制加算」が週1回加算できます。



  • 🏅 摂食嚥下機能回復体制加算1:210点(週1回)

  • 🥈 摂食嚥下機能回復体制加算2:190点(週1回)

  • 🥉 摂食嚥下機能回復体制加算3:120点(週1回・療養病棟入院料算定患者)


この加算1を算定するためには、月1回以上のVEまたはVFの実施が必須要件のひとつとして定められています。たとえば摂食機能療法185点+加算1の210点を週1回算定できれば、1週あたり395点(≒3,950円)の組み合わせが成立します。月4週で計算すると1,580点(≒15,800円)になり、1か月あたりの算定規模としては見逃せない金額になります。


VEの「点数が取れない」だけに注目するのではなく、「検査結果を算定の根拠として使って、正当な加算を取る」という発想の転換が必要です。これが基本です。


参考:摂食機能療法の算定要件の詳細は公式点数表で確認できます。
H001 摂食機能療法(歯科診療報酬点数表)|しろぼんねっと


嚥下内視鏡検査の点数算定における「同月別算定不可」の落とし穴

VEの点数と加算の関係で、多くの歯科従事者が見落としがちな重要ルールがあります。それは「摂食嚥下機能回復体制加算(旧:摂食嚥下支援加算)を算定した月においては、D298-2(内視鏡下嚥下機能検査)の点数は別に算定できない」というルールです。


これは具体的にどういうことでしょうか?加算の算定要件を満たすためにVEを実施した月に、VEの720点を「検査として別途請求した」という二重算定は認められない、という意味です。加算の要件としてVEを実施することと、VEを独立した検査として算定することは、同月内では両立しません。


主として医科での話ではありますが、病院内に歯科部門があり、摂食嚥下チームとして連携している場合にも、このルールは影響してきます。歯科が摂食嚥下支援加算(体制加算)の算定に関与する施設では、VE点数の算定月と加算月が重ならないように、チーム内で月次の管理が必要です。


もうひとつ押さえておきたいのが、「別の医療機関でVE・VFを実施しても加算の要件を満たせる」という点です。令和2年度の疑義解釈(厚生労働省)で、「摂食嚥下支援加算を算定する保険医療機関とは別の医療機関においてVEまたはVFを実施した場合にも、加算の算定は可能」との解釈が示されています。VE設備を持っていない歯科診療所であっても、連携先の病院でVEを行ってもらえれば加算の算定要件を満たせる可能性があります。これは大きなメリットです。



  • NG例:摂食嚥下支援加算(体制加算)を算定した同月に、VE720点も別途算定する。

  • OK例:VEを実施した月の翌月以降に加算を算定する、または連携先医療機関でのVE実施を要件の根拠にする。

  • 📋 記録のポイント:VEの実施月・実施機関・検査結果の記録をカルテに明記し、加算算定の根拠として管理する。


参考:別医療機関でのVE実施と摂食嚥下支援加算の取り扱いに関する疑義解釈は以下をご参照ください。
摂食嚥下支援加算、別医療機関での検査実施も可|GemMed


歯科従事者が知っておくべき嚥下内視鏡検査の点数と訪問歯科診療での活用

訪問歯科診療の場面では、VEは特に重要な評価ツールになります。在宅や施設入所中の高齢者では、X線透視設備が必要なVFは実施困難なことが多く、ポータブル機材で完結するVEの出番が自然に多くなります。


訪問歯科においてVEの結果を活用する主な算定の流れは次のようになります。まず歯科訪問診療料(C000:1人の場合1,100点)を算定したうえで、摂食機能障害の根拠としてVEまたはVFの他覚的評価があれば、摂食機能療法(H001:185点または130点)を加算できます。さらに施設基準を届け出ている医療機関では、摂食嚥下機能回復体制加算も上乗せが可能です。


ただし、訪問歯科診療の場での「VE実施点数そのものの算定」には注意が必要です。歯科診療所がVEの720点(D298-2)を直接算定することは、歯科点数表の構造上できません。実際には連携する医科(耳鼻咽喉科や内科など)にVEを依頼し、その報告書を受け取って歯科の摂食機能療法の根拠に使うという流れになるのが一般的です。


日本歯科医師会の調査(令和3年)でも、歯科標榜病院においてVEを算定しているのはわずか17.8%にとどまっています。この数字は意外ですね。裏を返せば、VEを適切に活用できている歯科医療機関はまだ少なく、連携体制を整えることで差別化できる余地がある分野だということでもあります。


在宅療養支援歯科診療所(歯援診1・2)の届出をしている診療所では、訪問歯科の算定の幅が大きく広がります。歯援診の届出を維持できない理由として「他の歯科医療機関等との歯科訪問診療連携実績回数が5回に満たない(40.3%)」「栄養サポートチーム等の連携加算の算定がない(28.3%)」が上位に挙がっており、まさに摂食嚥下連携を積極化することが施設基準の維持にもつながります。



  • 🏠 在宅でのVE活用の流れ:連携医科でVE実施 → 報告書受取 → 歯科の摂食機能療法算定の根拠へ活用

  • 📄 記録必須事項:VE実施日、実施機関名、嚥下機能評価の結果(正常/低下の別)、今後の摂食方針

  • 🤝 連携のメリット:歯援診の施設基準維持、摂食嚥下機能回復体制加算の要件充足、医科・介護との信頼構築


参考:在宅歯科医療における摂食嚥下連携の実態と課題については以下のPDFが詳しいです。
地域包括ケアシステムにおける歯科の役割(日本歯科医師会)|厚生労働省


十分な情報が揃いました。記事を作成します。




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