GTR法歯科適応と骨欠損治療法

GTR法の適応症例や骨欠損の種類、最新の歯周組織再生療法について詳しく解説します。2壁性・3壁性骨欠損や根分岐部病変への対応、保険適用の条件を理解できていますか?

GTR法歯科適応と治療法選択

3壁性骨欠損でも喫煙者は成功率が30%以上低下します


この記事の3ポイント要約
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GTR法の適応症例

2壁性・3壁性骨欠損と2度根分岐部病変が主な適応。1壁性は効果が限定的で骨移植材併用が推奨される

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保険適用と費用目安

吸収性メンブレン使用で保険適用。 3割負担で1歯5,000~15,000円。 非吸収性膜や特殊材料は自費診療となる

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喫煙の影響と禁煙の必要性

喫煙者は非喫煙者と比較して再生療法の成功率が大幅に低下。術前最低3週間の禁煙が治療成功に不可欠


GTR法の適応となる骨欠損形態の判断基準


GTR法の適応症例を正確に判断することは、治療成功の第一歩です。日本歯周病学会のガイドライン2023によれば、主な適応は2壁性および3壁性の垂直性骨欠損、そして2度の根分岐部病変(特に下顎大臼歯)とされています。


骨欠損の形態分類は、残存骨壁の数で決まります。3壁性骨欠損は周囲の3方向に骨壁が残っている状態で、最も予知性が高い適応症例です。イメージとしては、スマートフォンを3方向から箱で囲んだような状態を想像してください。この形態では、メンブレン(人工膜)が安定しやすく、骨再生のためのスペースを確保しやすいのが特徴です。


2壁性骨欠損は2方向に骨壁が残る形態で、3壁性よりは予知性が下がりますが、適応症例として認められています。ただし、骨移植材の併用を検討すると、より良好な結果が期待できるでしょう。


1壁性骨欠損は骨壁が1方向のみの状態です。この形態ではGTR法単独の適応は限定的とされ、塗布した薬剤や移植材が流出しやすいという問題があります。つまり、再生に必要なスペースを維持することが難しいということですね。


骨欠損の深さと幅も重要な判断基準です。具体的には、骨欠損の深さが4mm以上、幅が3mm以内であることが推奨されています。幅が広すぎると、メンブレンが骨欠損部に陥没してしまい、十分な再生スペースを確保できません。


歯周ポケットの深さも評価項目の一つです。基本治療終了後に6mm以上の歯周ポケットが残存している場合、GTR法の適応を検討します。


日本歯周病学会の再生療法ガイドライン2023では、各骨欠損形態に対する詳細な適応基準とエビデンスレベルが記載されています


GTR法の根分岐部病変への適応と予知性

根分岐部病変に対するGTR法の適応は、通常の骨欠損とは異なる評価が必要です。根分岐部病変とは、複数の歯根を持つ大臼歯の根の分かれ目(分岐部)に歯周病が進行した状態を指します。


Lindhe & Nymanの分類による2度の根分岐部病変が、GTR法の主な適応症例です。2度の病変は、プローブが分岐部を水平方向に貫通するものの、完全には反対側まで到達しない状態を指します。下顎大臼歯の2度根分岐部病変では、GTR法は極めて予知性の高い治療法であることが複数の研究で示されています。


1度の根分岐部病変は、分岐部にわずかな骨欠損がある初期段階です。この段階では、基本的な歯周治療やフラップ手術で対応可能なケースが多く、GTR法は必ずしも第一選択とはなりません。


3度の根分岐部病変は、プローブが完全に分岐部を貫通する重度の状態です。この段階になると、GTR法の適応は限定的になります。むしろ、歯根分割やトンネリングなどの他の治療法を検討する必要が出てくるでしょう。


上顎大臼歯の根分岐部病変は、3根構造という複雑な形態のため、GTR法の適応判断がより難しくなります。頬側根分岐部の2度病変であれば適応となる場合がありますが、口蓋側や根分岐部が複数方向に及ぶ場合は慎重な判断が求められます。


根分岐部病変へのGTR法実施時には、メンブレンの形態調整が重要です。分岐部の複雑な形態に合わせて、メンブレンを適切にトリミング・適合させる技術が求められるということですね。


術後の清掃性も考慮すべき点です。根分岐部は歯ブラシが届きにくい部位のため、患者の口腔衛生管理能力やモチベーションも適応判断の要素となります。


GTR法とエムドゲイン・リグロスの使い分けポイント

歯周組織再生療法には、GTR法のほかにエムドゲイン法、リグロス法があり、それぞれ特性が異なります。臨床現場では症例に応じた適切な選択が求められます。


GTR法の最大の特徴は、物理的バリア(メンブレン)によって上皮組織の侵入を遮断し、歯周組織再生のためのスペースを確保する点です。1壁性や2壁性の複雑な骨欠損形態、広範囲の骨欠損、複数歯にわたる骨欠損でも対応可能な汎用性が強みと言えます。


エムドゲインは、豚の歯胚から抽出したエナメルマトリックスタンパク質を使用します。根面に塗布するだけという手技の簡便性が特徴で、1回の手術で完結します。ただし、保険適用外のため、1歯あたり10~15万円程度の自費診療となります。


リグロスは日本発の歯周組織再生剤で、FGF-2(塩基性線維芽細胞増殖因子)を主成分とします。2016年に保険適用となり、3割負担で1~2万円程度と費用面でのメリットが大きいですね。創傷治癒を促進するサイトカインとして、細胞増殖・血管新生を誘導します。


使い分けの基本原則として、3壁性の深くて狭い垂直性骨欠損では、エムドゲインやリグロスが第一選択となることが多いです。薬剤を骨欠損部に留めやすく、流出のリスクが低いためです。


1壁性骨欠損や広範囲の骨欠損では、GTR法が有利です。メンブレンによる物理的なスペース確保が、薬剤単独よりも効果的だからです。さらに骨移植材を併用することで、再生量の増大が期待できます。


根分岐部病変への対応では、国内ではGTR法が適応となる一方、エムドゲインは根分岐部病変への保険適用がありません。リグロスは根分岐部病変にも適応がありますが、形態によってはGTR法の方が予知性が高い場合もあります。


口腔がんの既往がある患者には、リグロスは禁忌です。細胞増殖促進作用を有するため、悪性腫瘍への影響を考慮する必要があります。この場合はGTR法やエムドゲインを選択します。


複数の再生療法を併用する選択肢もあります。GTR法とエムドゲインの併用、GTR法と骨移植材の併用など、症例の複雑度に応じた組み合わせが検討されます。ただし、併用する場合は自費診療となるケースが多いため、患者への十分な説明が不可欠です。


GTR法メンブレンの種類と選択基準

GTR法で使用するメンブレン(遮断膜)には、吸収性と非吸収性の2種類があり、それぞれメリット・デメリットが存在します。


吸収性メンブレンは、コラーゲンやポリグリコール酸などの生体吸収性材料で作られています。体内で自然に分解・吸収されるため、除去のための2回目の手術が不要という大きなメリットがあります。患者の負担軽減という点で、現在の日本では吸収性メンブレンが主流です。


吸収期間は材料によって異なりますが、概ね4~8週間で分解が進みます。この期間内に十分な歯周組織再生の初期段階が完了することが期待されます。保険適用となるのは、この吸収性メンブレンを使用した場合です。


非吸収性メンブレンは、e-PTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)やチタンメッシュで作られます。長期間安定してスペースを維持できる強度が特徴ですが、4~6週間後に除去手術が必要となります。つまり、最低2回の外科処置が必要ということですね。


非吸収性メンブレンは日本国内では流通が限定的で、使用する場合は自費診療となります。ただし、広範囲の骨造成やインプラント周囲の骨造成(GBR)では、チタンメッシュなどの非吸収性膜が選択されることもあります。


メンブレン選択の基準として、骨欠損の大きさと形態が重要です。小~中程度の2壁性・3壁性骨欠損では、吸収性メンブレンで十分な効果が得られます。一方、広範囲の1壁性骨欠損や、スペース維持が困難な症例では、非吸収性メンブレンの方が有利な場合があります。


メンブレンの具備すべき条件として、①生体適合性、②細胞遮断性、③組織との一体性、④適度な強度、⑤臨床操作性が挙げられます。これらの条件を満たすメンブレンを選択することが、治療成功の鍵となります。


術後の感染リスクも考慮点です。メンブレンが歯肉縁上に露出すると、細菌感染のリスクが高まります。吸収性メンブレンは露出しても比較的感染リスクが低い一方、非吸収性メンブレンは露出すると除去が必要になることがあります。


GCメンブレンマニュアルでは、吸収性メンブレンの特性と臨床応用のポイントが詳細に解説されています


GTR法の保険適用条件と費用の実際

GTR法の保険適用と費用について正確に理解することは、患者への説明や治療計画立案に不可欠です。


保険適用となるGTR法の条件は、吸収性メンブレンを使用する場合です。具体的には、ジーシー社のGCメンブレンやテルダーミス真皮欠損用グラフトなど、厚生労働省に認可された吸収性膜を使用した場合に保険診療として実施できます。


保険診療での費用目安は、1歯あたり3割負担で約5,000~15,000円程度です。1割負担の方は約1,700~5,000円、2割負担の方は約3,400~10,000円となります。ただし、これは基本的な手術料のみで、初診料・再診料・検査費用・投薬費用などは別途必要です。


非吸収性メンブレンを使用する場合や、特殊な骨移植材を併用する場合は自費診療となります。自費診療の場合、1歯あたり5~10万円程度が相場ですが、歯科医院によって費用設定は異なります。


骨移植材の併用についても保険適用の制限があります。保険適用となる骨補填材は限定されており、一部の材料は自費扱いとなります。術前に使用材料と保険適用の有無を確認することが重要ですね。


リグロスを使用した歯周組織再生療法は保険適用で、3割負担で1~2万円程度です。一方、エムドゲインは保険適用外で、1歯あたり10~15万円程度の自費診療となります。この費用差が治療法選択に影響することもあります。


複数歯に対してGTR法を実施する場合、費用は歯数に応じて加算されます。例えば3歯に実施する場合、3割負担で1.5~4.5万円程度となり、患者にとっては負担が大きくなります。このような場合、治療を複数回に分けるなどの配慮が必要でしょう。


保険診療と自費診療の混合診療は原則として認められていません。同一の歯周組織再生手術内で、保険適用のメンブレンと自費の特殊な骨移植材を併用することはできないということです。


生命保険の手術給付金の対象となる場合があります。歯周組織再生療法は「歯周外科手術」として給付対象となる保険商品もあるため、患者に保険会社への確認を勧めることも一つの方法です。


GTR法術後管理と喫煙が成功率に与える影響

GTR法の成功には、術後管理の徹底と生活習慣の改善が欠かせません。特に喫煙は治療成績に重大な影響を及ぼします。


術後3~6週間は感染予防が最優先です。手術部位を傷つけないよう、その部位の歯ブラシやデンタルフロスでの清掃は控えます。代わりに、処方された消毒薬(クロルヘキシジンなど)で口腔内を洗浄し、清潔を保ちます。


抗生物質の服用は指示通りに完遂することが必須です。一般的にはアモキシシリンセフェム系抗生物質が5~7日間処方されます。症状が改善しても自己判断で中止せず、処方期間を守ることが感染予防につながります。


メンブレンの露出が生じた場合の対応も重要です。吸収性メンブレンが一部露出しても、感染がコントロールできていれば経過観察とすることが多いです。しかし、非吸収性メンブレンの露出や広範囲の露出では、早期除去を検討する必要があります。


喫煙が歯周組織再生療法に与える影響は極めて深刻です。複数の研究により、喫煙者は非喫煙者と比較してGTR法の成功率が30~50%低下することが報告されています。ニコチンによる血管収縮作用が、再生に必要な血流を阻害するためです。


具体的な数値として、非喫煙者のアタッチメントゲイン(歯周組織の再付着量)が平均4~5mm程度であるのに対し、喫煙者では2~3mm程度にとどまるという報告があります。つまり、喫煙により再生効果が約半分に減少してしまうのです。


禁煙のタイミングも治療成績に影響します。理想的には術前最低4週間、術後は最低8週間の禁煙が推奨されます。特に術後2~3週間は歯周組織再生の初期段階で最も重要な期間であり、この期間の喫煙は治療失敗のリスクを大幅に高めます。


禁煙支援として、患者が喫煙習慣を持つ場合は、GTR法の適応判断時点で禁煙の必要性を明確に伝えます。できれば禁煙外来の受診を勧め、ニコチンパッチやバレニクリンなどの禁煙補助薬の使用も検討してもらいます。禁煙外来を利用した場合、成功率は60~80%程度まで向上するというデータがあります。


喫煙以外の生活習慣も影響します。糖尿病のコントロール不良、過度のアルコール摂取、睡眠不足なども創傷治癒を遅延させます。HbA1cが7.0%以上の糖尿病患者では、再生療法の成功率が低下するため、内科との連携による血糖コントロールが必要です。


術後の運動制限も守るべき注意点です。手術当日から3日程度は、激しい運動、長時間の入浴、飲酒など、血流が良くなりすぎる行為は避けます。出血や腫れが増悪し、メンブレンのズレや感染リスクにつながるためです。


定期的なメインテナンス来院も成功の鍵です。術後1週間、2週間、4週間、3ヶ月、6ヶ月、1年というスケジュールでの経過観察が一般的です。各来院時にプロービング深さ、アタッチメントレベル、出血の有無を評価し、再生状況を確認していきます。




ステップアップGTR歯周組織再生誘導法