歯科受診率の年齢別傾向と歯科医が知るべき実態

歯科受診率は年齢によって大きく異なります。厚生労働省のデータが示す年代別の受診傾向や、見落とされがちな男性中年層の低受診問題を歯科従事者の視点で解説。あなたのクリニックのアプローチは本当に正しいですか?

歯科受診率を年齢別に読み解く:歯科従事者が知るべき現状と対策

30代男性の歯科受診率はわずか31.9%で、子どもよりも低いことがある。


歯科受診率・年齢別の主要ポイント
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全体受診率は63.8%に上昇

令和6年歯科疾患実態調査では、過去1年間の歯科検診受診率が初めて6割を超え63.8%に達した。男性より女性の方が高い傾向が続いている。

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30〜50代男性が最低水準

令和4年調査では、30代前半男性の受診率は31.9%。同年代の女性(47.9%)と比べて大きな差があり、働き盛り世代のアプローチが課題。

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小学生の受診率は84〜88%と高水準

学校歯科検診の義務化により5〜14歳の受診率は高い。しかし15歳以降に急落し、20代前半では38.1%まで落ち込む。


歯科受診率の年齢別データ:厚労省調査が示すリアルな数字

令和4年(2022年)歯科疾患実態調査によると、過去1年間に歯科検診を受診した人の割合は全体で58.0%でした。 その後、令和6年(2024年)の最新調査では63.8%まで上昇し、初めて6割を超えた結果となっています。 増加傾向は続いていますが、年齢層による格差は依然として大きい点が問題です。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33814.html)


年齢別に細かく見ると、5〜9歳は84.4%、10〜14歳は88.6%と非常に高い水準にあります。 これは学校歯科検診の義務的な仕組みが大きく貢献しているといえますね。ところが15〜19歳になると61.4%に急落し、20〜24歳ではさらに38.1%まで低下します。 つまり15歳以降が「受診率の崖」です。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf)


30〜34歳では40.0%、35〜39歳では49.1%と、働き盛りの世代全般で50%を下回る傾向が続きます。 60代以降になると再び上昇し、65〜69歳では64.6%に達します。 この年齢別の二極化したU字型の傾向は、歯科医院の集患戦略を考えるうえで極めて重要なデータです。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf)


参考:令和4年歯科疾患実態調査(厚生労働省)の詳細数値(性・年齢階級別受診状況など)
令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要 - 厚生労働省


歯科受診率の年齢別推移:2009年〜2024年で何が変わったか

平成21年(2009年)時点では、過去1年間の歯科検診受診率は全体で34.1%に過ぎませんでした。 それが令和5年(2023年)には58.8%となり、令和6年には63.8%へとおよそ30ポイント近く上昇しています。 約15年間でほぼ倍増したことになります。 lion-dent-health.or(https://www.lion-dent-health.or.jp/statistics/20_shikakenshin/)


特に伸びが著しいのは60代以上の高齢層です。 2009年に41.4%だった60代の受診率は、2016年には58.1%、そして2024年にはさらに高い水準となっています。 高齢者が「治療から予防へ」の意識に転換した結果といえます。 bestsmile(https://bestsmile.jp/about/about_04/)


一方で20〜40代の受診率の伸びは相対的に緩やかです。 国全体の受診率が上がっているにもかかわらず、この世代の底上げが追いついていない現状があります。歯科従事者にとっては、この世代への働きかけが長期的な口腔健康の底上げにつながる重要な課題といえるでしょう。 lion-dent-health.or(https://www.lion-dent-health.or.jp/statistics/20_shikakenshin/)


参考:受診率の年次推移と年齢別データの比較(ライオン歯科衛生研究所)
歯科検診の受診状況の年次比較 - ライオン歯科衛生研究所


30〜50代男性の低受診率:歯科従事者が直面する最大の課題

令和4年の調査データを性別・年齢別に見ると、男性の30〜34歳の受診率はわずか31.9%です。 同じ年代の女性は47.9%ですから、16ポイント以上の開きがあります。これは想像以上の差です。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf)


男性では30歳から50歳未満の年齢階級において、歯科検診受診率が特に低い傾向が確認されています。 40〜44歳男性は39.7%、45〜49歳男性は39.0%と、3人に2人近くが1年間まったく歯科を受診していない計算になります。 痛いですね。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33814.html)


この世代が受診しない主な背景として「仕事が忙しい」「症状がないと行かない」という意識が挙げられます。しかし歯周病は自覚症状が出る前に進行するため、この受診パターンは後の大きな治療費・歯の喪失リスクと直結します。歯科衛生士や受付スタッフによるリコール強化と、夜間・土日診療の充実が受診率改善に有効です。


子ども世代の歯科受診率が高い理由と、歯科従事者が活かすべき仕組み

5〜14歳の受診率が80〜88%と高いのは、学校歯科健診(学校保健安全法に基づく義務的な健診)の恩恵が大きいです。 学校健診では全児童が対象になるため、自発的な受診意欲が低くても自動的に受診記録が残ります。これが高い数値の主な理由です。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf)


しかし15〜19歳に入ると高校・大学進学とともに学校検診の対象が変わり、受診率が一気に下落します。 高校生・大学生の世代に対して積極的なアプローチをとっている歯科医院は少なく、ここに潜在的な集患チャンスがあります。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf)


具体的には「学生証提示で割引」「学校近隣クリニックの校内ポスター掲示」「大学生協との連携」など、若年層の接点を作る工夫が有効です。この世代に定期通院の習慣を根付かせることが、その後の長期患者定着につながります。結論は「早期接触がリテンションを生む」です。


高齢者の受診率が上昇している背景と歯周病・残存歯数との関係

65歳以上の歯科受診率が高まった背景には、8020運動(80歳で20本以上の歯を保つ)の普及と、介護予防の観点から口腔ケアが重視されるようになった社会的背景があります。 実際に令和6年調査では8020達成者の割合が61.5%に達し、前回(51.6%)から大きく上昇しました。 これは高齢者の受診率向上の成果といえるでしょう。 seikatsusyukanbyo(https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2025/010885.php)


65〜69歳では受診率が64.6%と全世代の中でも高水準です。 しかし85歳以上になると44.3%まで下落します。 身体的な移動困難や施設入居が影響していると考えられます。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf)


この世代へのアプローチとしては、訪問歯科診療の展開が有効です。令和4年調査では4mm以上の歯周ポケットを持つ75歳以上の割合が60.5%に達しており、受診できていない高齢者ほど口腔状態が悪化している可能性があります。 訪問診療への参入は、未受診高齢者を取り込む重要な選択肢です。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf)


参考:令和6年歯科疾患実態調査の公式発表(最新の8020達成率・受診率データ)
「令和6年歯科疾患実態調査」の結果(概要)- 厚生労働省


歯科受診率の年齢別格差を縮める:独自視点「受診率の可視化」がもたらす院内改革

多くの歯科医院では患者の年齢層を漠然と把握しているだけで、「何歳の患者が何人来ていて、何歳の層が来ていないか」を数値で管理しているケースは多くありません。これが院内改革のスタート地点です。


自院の患者データを年齢別に集計すると、地域の平均的な受診率格差とほぼ同じ傾向が見えてきます。30〜50代男性の受診数が少なければ、その地域に住む未受診の中年男性が多数いることを意味します。 このデータを根拠に、院内掲示・SNS発信・地域の事業所へのアプローチを絞り込む戦略が立てられます。これは使えそうです。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33814.html)


具体的な手順として、①レセプトコンピュータで患者年齢分布を月次で確認、②30〜49歳男性の来院数が全患者の15%を下回る場合はアプローチ強化の対象と設定、③その層に向けた「忙しい人のための短時間メンテナンスコース」などを設けて訴求する、という流れが効果的です。自院の受診率の可視化が対策の第一歩です。


参考:生活習慣病予防のための健診受診状況に関する最新統計
過去1年の歯科検診受診者は58.8% 令和5年「国民健康・栄養調査」より