非作業側に接触があっても、それを即削合するのは間違いで、顎関節症状の改善どころか悪化につながるケースがあります。
側方運動とは、下顎が左右に滑走する動きのことです。このとき下顎が移動していく側を作業側(Working side)、逆側を非作業側(Balancing side/平衡側)と呼びます。 quint-j.co(https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/occlusion/20030)
作業側では咀嚼の主役として食物を圧砕・剪断するため、咬筋などの咀嚼筋が強く働きます。一方、非作業側の顆頭は前下内方へ滑走します。この左右非対称の運動が、咬合接触パターンの違いを生み出します。 quint-j.co(https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/occlusion/20030)
つまり基本は「作業側で咬む、非作業側は逃げる」が原則です。
| 項目 | 作業側(Working side) | 非作業側(Balancing side) |
|---|---|---|
| 別名 | 機能側・咀嚼側 | 平衡側・均衡側 |
| 顆頭の動き | わずかに外側方へ回転(ベネット運動) | 前下内方へ滑走 |
| 天然歯列での接触 | 犬歯〜臼歯が接触して誘導 | 通常は離開(約80%の人) |
| 補綴物での目標 | 犬歯誘導またはグループファンクション | 基本的に非接触(早期接触の除去) |
上の表が咬合診査の出発点になります。
参考:作業側・非作業側の定義と咬合様式について詳しく解説(クインテッセンス出版 歯科事典)
https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/occlusion/20030
作業側での接触パターンには、主に2種類あります。まず整理しましょう。
② グループファンクション咬合とは、側方運動時に作業側の犬歯・小臼歯・臼歯の複数歯が同時に接触する様式です。
つまり、「犬歯誘導が理想」という教科書的な知識は実態と必ずしも一致しないということですね。
どちらが正解かではなく、患者の口腔内状況に合わせた選択が原則です。
参考:東京医科歯科大学・作業側の歯の接触と側方運動の誘導(第20回)
問題なのは「早期接触(咬頭干渉)」として機能するかどうかです。
非作業側咬頭干渉が臨床上問題になる具体的なサインは次のとおりです。
咬合調整で削りすぎた歯は元に戻せません。症状との因果関係の確認が条件です。
参考:非作業側の咬合接触に関する詳細な解説(東京医科歯科大学 第19回)
咬合様式の考え方は、長い歴史の中で大きく変化してきました。これを知っておくと、異なる参考書や文献の内容が矛盾なく理解できるようになります。
「教科書に書いてあった咬合様式が絶対」という固定観念は危険です。意外ですね。
補綴物の咬合面設計において、作業側・非作業側をどう扱うかは教科書だけでは答えが出ない場面が多くあります。ここでは臨床現場で直面しやすい判断ポイントを整理します。
インプラント補綴の場合、天然歯と違い歯根膜がないため自己受容性(プロプリオセプション)が働きません。そのため、咬頭干渉・非作業側接触がもたらすストレスをインプラント体が直接受けます。これは大きなリスクです。インプラント補綴では非作業側は厳密に非接触を維持し、作業側もシャロウ(浅い)カスプの形態にして側方力を最小化するのが標準的な方針です。
歯周病と咬合の関係は見逃せません。
クラウン・ブリッジの再製作時に患者の既存の咬合様式を無視して犬歯誘導に変更すると、咀嚼筋・顎関節への負荷変化により違和感・疼痛が生じるケースがあります。既存のグループファンクション咬合が安定しているなら、それを維持するほうが合理的です。
参考:咬合異常の診療ガイドライン(日本補綴歯科学会)
https://www.hotetsu.com/s/doc/GAIDE-02_21649.pdf