millerの分類で見る動揺度と歯周診査の基本と臨床

millerの分類による動揺度とは何か?0度から3度の判定基準や診査方法、日本と海外の基準の違い、治療計画への活かし方まで歯科従事者が知っておきたい知識を解説します。あなたの診査は本当に正しく評価できていますか?

millerの分類で学ぶ動揺度の基準と臨床的な活かし方

「動揺度3度の歯でも炎症除去だけで動揺が改善し、抜歯を回避できる場合があります。」


この記事の3ポイント
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millerの分類の基準は日本と海外で異なる

原著(1938年)と現在日本で使われている基準は別物。特に2度の閾値が「1mm超え」か「1〜2mm」かで解釈が変わり、海外文献を読む際は注意が必要です。

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動揺度は「結果」であり原因を鑑別することが重要

歯周炎による骨吸収なのか、咬合性外傷による歯根膜腔の拡大なのか。原因によって治療アプローチが全く異なるため、動揺度の数値だけで判断してはいけません。

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Millerの分類は「アバウト」と専門家も指摘している

東京医科歯科大学の和泉教授も「Millerの分類はアバウト」と述べており、動揺の「方向」と「量」を総合的に判断することが、より正確な臨床評価につながります。


millerの分類とは何か:動揺度の定義と0〜3度の基準

歯科臨床において「millerの分類」は、歯の動揺度を評価するためのもっとも基本的なスケールとして、日本の歯周病学会ガイドラインを含む多くの標準的な文書で採用されています。歯が揺れるということは、それを支える歯根膜や歯槽骨に何らかの変化が起きているサインです。


動揺度の判定基準は以下の通りです。健康な状態でも歯はわずかに動きますが、これは「生理的動揺」と呼ばれ、病的なものとは区別されます。


| 動揺度 | 動揺の程度 | 基準(日本標準) |
|--------|-----------|-----------------|
| 0度 | 生理的動揺の範囲内 | 0.2mm以内 |
| 1度 | 頬舌的にわずかに動揺 | 0.2〜1mm |
| 2度 | 頬舌的・近遠心的に中等度動揺 | 1〜2mm |
| 3度 | 頬舌・近遠心・歯軸方向にも動揺 | 2mm以上、または垂直方向の動揺あり |


0度は正常な歯の状態です。歯根膜(厚さ約0.2mm)の弾性の範囲内で動くため、これ自体は病的ではありません。1度になると頬舌方向(前後方向)にわずかに動くようになり、歯周炎や咬合の変化が始まっているサインとして見ることができます。2度は頬舌方向に加えて近遠心方向(左右方向)にも動きが生じる状態で、歯槽骨の吸収が一定程度進んでいることを示します。


3度は最重度です。頬舌・近遠心方向のみならず、歯軸方向(垂直方向)にまで動揺が及ぶ状態を指し、歯根の支持組織が高度に失われていることを意味します。3度の歯は一般的に抜歯の適応とされることが多いですが、後述するように炎症コントロールによって改善を認めることもあります。


診査方法として、日本では一般的にピンセットを用いて歯冠部をつまみ、頬舌方向・近遠心方向・垂直方向に揺らして判定します。これが基本です。


millerの分類に潜む「2種類問題」:原著と日本標準の違い

あまり知られていない事実があります。現在の日本で使われている「Millerの分類」は、Miller本人が1950年に示した原著の分類と、実際には内容が異なります。


これは意外に重要な話です。原著(Miller 1950)における動揺度2度の定義は「動揺が水平方向に1mmを超えるもの」とされています。一方、現在の日本標準では「1〜2mm以内」という上限が設定されています。つまり、原著では1mm超えたら即2度ですが、日本では2mmに達して初めて3度になります。


また、原著の動揺度1度は「first distinguishable sign of movement(最初に識別できる動揺のサイン)」という非常にアバウトな表現にとどまっており、数値での明確な閾値は示されていません。現在広く使われているとみられる数値基準は、Gencoらが提唱した分類がMillerの分類として普及したものとされています。


この違いは日常臨床ではあまり問題になりませんが、歯周病専門医の取得を目指している先生や、海外の英語文献を読む際には注意が必要です。英語論文上でもMillerの分類は2種類存在し、文脈によってどちらを指しているかが変わるため、結果の解釈に影響が出ることがあります。


さらに、東京医科歯科大学歯周病学分野の和泉雄一教授は「Millerの分類はとてもアバウトで、ある先生が3度と診断しても、別の人には2度に見えることがある」と指摘しています。動揺度の判定は主観的な要素を含み、隣在歯の有無によっても揺れの感触が大きく変わります。動揺の「方向」と「量」を総合的に判断することが大切だということです。


参考:Miller原著と日本標準の違いについて(やまのうち歯科医院コラム)


millerの分類で見た動揺度の原因鑑別:歯周炎 vs 咬合性外傷

動揺度の数値を記録するだけでは不十分です。重要なのはその数値が示す「原因が何か」を見抜くことです。


動揺の原因は大きく2つに分けられます。1つは「歯周炎による歯槽骨の破壊」、もう1つは「咬合性外傷による歯根膜腔の拡大」です。どちらも動揺として現れますが、治療アプローチはまったく異なります。


🔵 歯周炎が原因の動揺


プラークに起因する慢性炎症が歯周組織を破壊し、歯槽骨が吸収した結果として動揺が生じます。歯周ポケットが4mm以上あり、BOP(プロービング時出血)が認められる場合は歯周炎由来の動揺を疑います。この場合、まずプラークコントロールとSRP(スケーリングルートプレーニング)による炎症の除去が優先されます。炎症が取れることで歯根膜の浮腫が改善し、動揺が軽減することがあります。これが基本です。


🔴 咬合性外傷が原因の動揺


過大な咬合力が歯根膜に加わり、歯根膜腔が拡大することで動揺が生じる状態です。歯周炎の進行がなく単独で生じるものを「一次性咬合性外傷」、歯周炎による歯槽骨減少を背景に生じるものを「二次性咬合性外傷」といいます。エックス線写真では歯槽骨頂部の歯根膜腔のロート状拡大、または根尖部方向への拡大がみられます。


動揺度1度以上あり、かつエックス線所見で辺縁部歯根膜腔の拡大・垂直性骨吸収が認められる歯については、咬合性外傷と診断します。この場合、固定や咬合調整が治療の中心になり、プラーク除去だけでは改善が期待しにくい場面もあります。


また、「フレミタス」(咬合時に指の腹で触知される歯の振動)の有無も咬合性外傷の診断に役立ちます。動揺歯においては指を歯に添えて咬合させ、フレミタスを確認することが日本歯周病学会のガイドラインでも推奨されています。


原因を見極めてから治療に入ることが、見立て違いを防ぐ唯一の方法です。


参考:日本歯周病学会「歯周治療のガイドライン 2022」(動揺度の診査・咬合性外傷の診断法を含む)


millerの分類と動揺歯固定の考え方:何度から固定すべきか

「動揺度3度になったら固定」と思っている人は少なくありません。しかし実際には、動揺度の数字だけで固定の適応を決めることはできません。


東京医科歯科大学の和泉雄一教授は「Millerの分類はアバウトだから、何度だから固定と言い切れない」と明言しています。大切なのは、その動揺が「Increasing mobility(進行している動揺)」なのか、それとも支持組織が減少した結果の安定した動揺なのかを見極めることです。


暫間固定の主な適応場面は以下の通りです。


- ✅ 動揺が強くSRP(スケーリング・ルートプレーニング)が十分に行えない場合
- ✅ 動揺が強く咬合に支障をきたしている場合
- ✅ 事故などによる外傷性の急性動揺がある場合
- ✅ 歯周外科治療時に患部の安静が必要な場合
- ✅ 保存か抜歯かを判定するための試験的固定として


一方、単に歯周支持組織が少なくなった結果の生理的範囲での動揺増加であれば、固定の適応でないと判断するケースもあります。また、動揺度2度程度であれば咬合調整で様子を見ることが多く、すぐに固定するとは限りません。


暫間固定の方法としては、コンポジットレジンを用いた「ダイレクトボンディング法(外側性固定)」が一般的です。これはGC社の「G-フィックス」のような専用材料を使い、隣接歯と連結して固定する方法で、比較的非侵襲的に行えます。


臨床的に注意したいのは、暫間固定だけで動揺が改善するわけではないという点です。フレミタスがある状態での固定単独では不十分で、原因となる過大な咬合力へのアプローチ(咬合調整・ナイトガードブラキシズムの管理)が同時に必要です。固定が必要かどうかは、方向と量の評価が条件です。


動揺度の記録と再評価:millerの分類を治療計画に活かす独自視点

millerの分類は「記録」することで真価を発揮します。一度診査しただけでは動揺が病的なのか生理的なのか判断しにくいことがあります。


再評価のタイミングで前回の動揺度と比較することで、「改善したのか」「悪化しているのか」「維持されているのか」を客観的に把握できます。これは歯周病専門医の指針でも強調されている考え方です。具体的には、歯周基本治療後の再評価(SRP後8〜12週程度)と、SPT(サポーティブペリオドンタルセラピー)中の定期的な動揺確認が重要です。


ここで現場から見えてくる課題があります。millerの分類はあくまで「水平的動揺」を中心に評価するよう設計されていますが、歯周病学会の学会講演で千葉英史先生が指摘しているように、臼歯部では「垂直的動揺」の評価も見落とせません。臼歯部で垂直的動揺がある場合、単に頬舌方向の揺れを見ているだけでは重要なサインを見逃す可能性があります。評価する際は咬合面の真ん中だけでなく、ポケットが深い部位の咬合面に指を当てて評価することが推奨されます。


また、動揺度はアタッチメントレベルの変化と強く相関することが、Pihlstromらの研究でも示されています。動揺がある歯では、動揺のない歯と比較してポケット深さ・アタッチメントロスともに大きく、歯周治療に対する反応が悪いというデータがあります。


これは何を意味するかというと、動揺度が高いまま放置していると歯周治療の効果が出にくいということです。治療の優先順位として、動揺歯の安静化(咬合調整・固定)を早期に行うことが、全体の歯周治療の成功率を高めることにつながります。


記録・比較・原因分析の3ステップを日常業務に組み込むことが、臨床水準を上げる近道です。


SPTの管理に活用できる歯周検査記録システムとしては、GC社「歯周チャート」や、クラウド型の電子カルテシステム(ORTHODONTICSなど)に附属する歯周チャート機能を活用することで、経時的な動揺度の変化を視覚的に追うことができます。自院の記録フローを見直す機会があれば、動揺度の経時記録欄が適切に設けられているか確認するのをおすすめします。


参考:歯の動揺度の診査・Millerの分類の図解解説(はる歯科診療室 歯科業界向け講義ページ)


参考:日本歯科医学会「歯周病の治療に関する基本的な考え方」(Millerの動揺度分類の使用が明記)