間接訓練だけでは直接訓練ほど嚥下機能は改善しません。
間接嚥下訓練とは、飲食物を用いずに嚥下に関わる器官へ刺激や運動を加え、間接的に嚥下機能を改善する訓練手法です。食物を使わないため誤嚥のリスクが低く、重篤な誤嚥が認められる患者や意識障害で状態が不安定な急性期の患者にも安全に実施できます。 kompas.hosp.keio.ac(https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000270/)
間接訓練は基礎訓練とも呼ばれます。
この訓練の主な目的は、嚥下に必要な舌や頬、喉の筋肉の機能維持・強化、嚥下反射の促通、そして口腔や咽頭の感覚機能向上です。飲食物を使う直接訓練に比べて転移性(訓練効果の実際の食事への応用)は劣りますが、安全性の面で大きな利点があります。 integra-web(https://integra-web.jp/training/)
ただし、間接訓練の開始は経口摂取の確約を意味するわけではありません。あくまで嚥下機能改善の一手段であり、直接訓練へ移行できるかは別途評価が必要です。 peg.or(https://www.peg.or.jp/lecture/rehabilitation/03-q2-1_2.html)
Logemannによる標準的な手順では、冷やした間接喉頭鏡の背面を前口蓋弓の基部に当て上下に5回こすり、これを左右合わせて10~15分、1日に4~5回繰り返すとされています。ただし、いきなり喉の奥を刺激すると嘔吐反射を引き起こす可能性があるため、舌の先から徐々に中へ進めることが重要です。 kango-roo(https://www.kango-roo.com/mv/179/)
刺激後は必ず空嚥下を促します。
このとき喉頭が上下に動くことを確認することで、嚥下反射が適切に誘発されたかを判断できます。アイスマッサージは食事前の準備運動として特に有効で、唾液分泌の促進効果もあります。 kango-roo(https://www.kango-roo.com/mv/179/)
嚥下に関わる筋肉を強化する間接訓練として、頭部挙上訓練(Shaker法)が広く用いられています。これは仰向けに寝た状態で肩を床につけたまま、足の指が見えるまで頭部を挙上する訓練です。舌骨上筋群などの喉頭挙上筋を強化することで、喉頭の前上方運動を改善し、食道入口部の開大を促進します。 yumeiro-yao(https://yumeiro-yao.com/?p=2418)
標準的なプロトコルでは、頭部挙上を1分間保持し1分間休憩する動作を3回繰り返した後、頭部の上げ下げを30回連続で行います。これを1セットとして1日3セット、6週間継続することが推奨されています。ただし実際には1分間の挙上が難しいケースも多いため、5秒から10秒程度から開始することが現実的です。 haradashika(https://haradashika.jp/chiryo/%E6%91%82%E9%A3%9F%E5%9A%A5%E4%B8%8B%E3%81%AE%E8%A8%93%E7%B7%B4%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/)
つまり段階的な負荷調整が基本です。
この訓練により咽頭残留を軽減し、食塊通過をスムーズにする効果が期待できます。舌根部の後方運動も同時に鍛えられる可能性があり、複合的な嚥下機能改善につながります。 yumeiro-yao(https://yumeiro-yao.com/?p=2418)
呼吸機能の改善を目的とした間接訓練には、ブローイング訓練があります。これは鼻咽腔閉鎖不全に対する訓練であると同時に、呼吸筋の強化も図る手法です。コップに水を入れ、ストローを用いて強くあるいは弱く吹いて泡を立たせる動作を行います。 k-dc(https://www.k-dc.net/column/728)
うまく泡ができない場合、鼻からの空気漏れが原因の可能性があるため、介助者が指で鼻をふさぐサポートが有効です。ローソクの灯を一気に吹き消したり、ティッシュペーパーを小さく丸めて遠くへ吹き飛ばしたりするhard blowing、あるいはできるだけ長く息を吹き続けるsoft blowingなど、バリエーションも存在します。 swallow-web(http://www.swallow-web.com/engesyogai/approach4.html)
呼気圧を高める訓練も重要です。
息こらえ嚥下(食物を口に含んだ状態で息を止めてから飲み込む方法)や咳払い訓練(息をしっかり止めて強く吐く動作)は、腹筋を使った強い呼気を産出し、誤嚥物の喀出能力を高めます。これらは直接訓練時に一口ごとに軽く咳をする習慣づけにもつながり、誤嚥予防の実践的なスキルとなります。 kitakyushu-med.or(https://www.kitakyushu-med.or.jp/pdf/20041120-3.pdf)
間接訓練を導入する際、サービス担当者や家族との間で訓練の目的について共通理解を持つことが不可欠です。「間接訓練の開始=経口摂取の確約」や「間接訓練=誤嚥がない」といった短絡的な考えに陥らないよう、十分な説明が求められます。 peg.or(https://www.peg.or.jp/lecture/rehabilitation/03-q2-1_2.html)
間接訓練のみでは限界があります。
飲食物を用いないため誤嚥リスクは低い一方で、訓練効果の転移性は直接訓練に及びません。実際の嚥下動作では、嚥下諸器官がよりバランスよく動くため、どこかの段階で直接訓練へ移行する必要があります。間接訓練と直接訓練のバランスをいかに取るかが、嚥下リハビリテーション成功の鍵となります。 almediaweb(https://www.almediaweb.jp/swallowing/swallowing-care-002/part5/01.html)
各間接訓練には明確な適応と禁忌があります。例えばアイスマッサージは嚥下反射の促通に有効ですが、強すぎる刺激は嘔吐反射を誘発するリスクがあります。頭部挙上訓練は頸部に問題がある患者には慎重な適応判断が必要です。患者の全身状態、既往歴、現病歴を十分に聴取し、個別に訓練プログラムを組み立てることが臨床では求められます。 haradashika(https://haradashika.jp/chiryo/%E6%91%82%E9%A3%9F%E5%9A%A5%E4%B8%8B%E3%81%AE%E8%A8%93%E7%B7%B4%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/)
訓練効果の判定には、嚥下造影検査(VF)などの客観的評価が推奨されます。主観的な改善感だけでなく、実際の嚥下動態の変化を定期的に確認することで、訓練の継続・変更・中止を適切に判断できます。 jibika.or(https://www.jibika.or.jp/uploads/files/enge_guideline_2024.pdf)
人間がイメージしやすい例として、頭部挙上訓練を6週間(約1か月半)継続することで、食道入口部の開大が改善するとされています。これは毎日3セット、合計で約126セット(6週間×7日×3セット)の訓練に相当し、相応の継続的な努力が必要です。 haradashika(https://haradashika.jp/chiryo/%E6%91%82%E9%A3%9F%E5%9A%A5%E4%B8%8B%E3%81%AE%E8%A8%93%E7%B7%B4%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/)
日本摂食嚥下リハビリテーション学会による訓練法のまとめ(2014版)では、各間接訓練の詳細な手順とエビデンスが整理されています
患者のモチベーション維持も重要です。
間接訓練は地味で効果が実感しにくい場合もあるため、小さな進歩を共有し、訓練の意義を繰り返し説明することが継続のカギとなります。家族や介護者を巻き込んだ訓練プログラムを構築すれば、日常生活の中での訓練頻度を増やせます。
慶應義塾大学病院の摂食嚥下障害リハビリテーション解説ページでは、間接訓練の実際を図解入りで詳しく紹介しています