ビタミンCを十分に摂っていても、歯肉出血が止まらない患者の約3割は実は壊血病が関与しています。
壊血病(scurvy)は、ビタミンC(アスコルビン酸)の欠乏によって生じる疾患です。 ビタミンCを全く摂取しない状態で、早ければ約29日、遅くとも90日以内に発症するとされています。 「大航海時代の水夫がかかる病気」と思われがちですが、実は現代の歯科外来でも見落とされやすい疾患の一つです。 quint-j.co(https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/terminology_basic/30254)
歯科的には、歯肉の出血・びらん・潰瘍(壊血病性口内炎)として現れることが最も多く、ビタミンCの欠乏により歯肉のコラーゲン繊維が崩壊します。 さらに進行すると、象牙質やセメント質の形成不全を引き起こし、歯の脱落にまで至ることもあります。 見逃すと歯が失われます。 station-dc.or(https://www.station-dc.or.jp/words/%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E6%80%A7%E5%8F%A3%E5%86%85%E7%82%8E%E3%81%A8%E3%81%AF-%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E6%80%A7%E5%8F%A3%E5%86%85%E7%82%8E.html)
歯科従事者として最低限おさえておくべき点は、「歯肉出血=歯周病」という一元的な診断への安易な依存を避けることです。壊血病の患者は、口腔内にはっきりした歯石や深い歯周ポケットが少ないにもかかわらず、重篤な歯肉出血を呈することがあります。つまり、スケーリングだけでは改善しないケースに出会ったら壊血病を疑うことが大切です。
| 比較項目 | 歯周病による歯肉出血 | 壊血病による歯肉出血 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 細菌性プラーク | ビタミンC欠乏 |
| 歯石・プラーク | 多い | 少ない場合も多い |
| 歯周ポケット | 深化が顕著 | 必ずしも深くない |
| 皮膚症状 | なし | 点状出血・毛包周囲出血 |
| 治療 | プラークコントロール・SRP | ビタミンC補充(300〜1,000mg/日) |
参考:日本血栓止血学会 用語集「壊血病 scurvy」(症状・診断・治療の概要)
https://jsth.medical-words.jp/words/word-469/
壊血病の口腔内症状は多彩ですが、最初に現れるのは歯肉の発赤・腫脹・自然出血です。 歯磨きしていないのに出血する、あるいは軽く触れただけで出血するといった訴えは、壊血病性歯肉炎の典型的なサインです。重要ですね。 station-dc.or(https://www.station-dc.or.jp/words/%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E6%80%A7%E5%8F%A3%E5%86%85%E7%82%8E%E3%81%A8%E3%81%AF-%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E6%80%A7%E5%8F%A3%E5%86%85%E7%82%8E.html)
一方、全身症状として皮膚の点状出血・毛包周囲出血・関節痛・倦怠感が出現します。 歯科受診時にこれらの全身症状を合わせて確認することは、壊血病の早期発見に直結します。「患者の皮膚に点状出血はないか?」という視点を持つだけで、見逃しが大幅に減ります。 courts.go(https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-85771.pdf)
以下のような患者には特に注意が必要です。
参考:日本内科学会雑誌110巻10号(壊血病の診断と治療の実際・臨床報告)
WHOはビタミンCの1日推奨摂取量を45mgとしていますが、体が適正に機能するためには1日約200mgが望ましいとされています。 日本人の食事摂取基準(2020年版)では成人の推奨量は100mg/日です。 nagoyaminami-shika(https://www.nagoyaminami-shika.jp/information/post-280/)
壊血病の治療にはビタミンC 300mg/日の経口補充が基本とされており、重症例では1g/日を3〜5日間投与した後に300〜500mg/日を維持する方法も報告されています。 ビタミンC補充が原則です。治療は比較的シンプルですが、診断に至るまでの経過が問題になります。 hospi.sakura.ne(http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-teine-191009.pdf)
歯科衛生士が患者への栄養指導を行う際、ビタミンCを豊富に含む食品を伝えることは実践的な予防策になります。以下の食品は特に意識して紹介するとよいでしょう。
なお、ビタミンCは水溶性のため体内に蓄積されません。毎日こまめに摂取することが条件です。「サプリで一気に摂ればOK」という誤解を持つ患者には、食事からの分散摂取が理想と伝えるだけで、習慣が変わることがあります。
研究によると、ビタミンCを十分に摂取することでコラーゲンの生成が約4.7倍に増加することが確認されています。 歯周外科やインプラント手術の前後には、特に意識的なビタミンC摂取を患者に促すことが、術後治癒の向上に直結します。これは使えそうです。 sakai-dental.main(https://sakai-dental.main.jp/index.php?QBlog-20251022-1)
参考:大阪・中垣歯科医院「ビタミンCと歯周組織の関係」(歯科外来でのビタミンC活用)
https://www.nakagaki-dental-clinic.com/medical/vitaminc.html
ビタミンCが不足している患者に歯周外科やインプラント手術を行うと、術後の創傷治癒が著しく遅延します。 血漿ビタミンC濃度の低下はコラーゲン繊維の合成を直接妨げるため、フラップ手術後の歯肉の再付着や骨膜の修復速度が落ちることになります。これは痛いですね。 nagoyaminami-shika(https://www.nagoyaminami-shika.jp/information/post-280/)
インプラント周囲炎のリスクは多因子ですが、ビタミンC欠乏による免疫機能の低下も重要な背景因子です。 歯肉および周囲組織の感染抵抗力が落ちると、インプラント周囲での細菌繁殖を抑えにくくなります。術前の栄養評価を怠ると、せっかくの処置が台無しになることもあります。 quint-j.co(https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/terminology_basic/30254)
では、歯科臨床でどのように対応するのかという点が実践上の課題です。術前に患者の栄養状態を把握するための簡単なスクリーニングとして、「直近1週間の野菜・果物の摂取頻度」を問診票に加えるだけでも、ビタミンC欠乏のリスク患者を絞り込めます。栄養問診は必須です。
術前・術後のビタミンC補充に関しては、医師や管理栄養士との連携が理想的ですが、歯科衛生士が患者に食品ベースの摂取を指導することも効果的です。具体的な行動としては、術前2週間から術後1か月間、1日200mg以上のビタミンCを食事から意識して摂るよう指導するという一つの方針が採用されています。患者が実践しやすい形に落とし込むことが大切です。
参考:南区道徳の歯科「歯周病とビタミンC・術後の創傷治癒との関係」
https://www.nagoyaminami-shika.jp/information/post-280/
これはあまり語られていない視点ですが、壊血病の初期症状が口腔内に最初に現れることが多いため、歯科衛生士がその「最初の発見者」になれる立場にあります。内科や皮膚科の受診よりも前に、定期メンテナンスで来院した患者に異変を見つけるケースも少なくありません。意外ですね。
多職種連携という観点から、歯科衛生士・歯科医師・管理栄養士・内科医がスムーズに情報共有できる体制を整えておくことが重要です。特に訪問歯科診療の現場では、施設入所の高齢者が偏食・低栄養になりやすく、壊血病リスクが高まります。訪問時の観察眼が命綱です。
以下の観察ポイントを定期メンテナンス時にチェックするだけで、壊血病の早期発見率が上がります。
歯肉から始まる全身疾患の発見者として、歯科従事者の役割は今後ますます重要になります。 「口腔の健康が全身の健康に密接に関係する」という歯科界全体の方針に沿って、壊血病を含む栄養欠乏疾患への感度を高めることが、患者の健康を守ることに直結します。歯科が全身管理の入口になれます。 okubo-dc(https://okubo-dc.net/blog_dean/226/)
参考:北足立歯科医師会「歯周病と全身疾患の関係」(栄養欠乏と歯肉炎・壊血病の関連)
https://www.kitaadachi-dent.or.jp/QA/QA_A25.html