縫合方法の種類と特徴を部位別に徹底解説

縫合方法には結節縫合・連続縫合・マットレス縫合など多くの種類があります。各方法の特徴や使い分けを知っていますか?傷跡や治癒に直結する重要な知識を解説します。

縫合方法の種類と特徴を部位ごとに理解する

連続縫合は「傷跡がきれいになる」は間違いで、実は結節縫合のほうが仕上がりがきれいです。


📋 この記事のポイント3つ
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縫合方法は大きく「結節」「連続」「マットレス」の3系統

それぞれに適した部位・状況があり、一概にどれが優れているとは言えません。使い分けが傷跡の美しさと治癒速度を左右します。

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皮膚縫合は「外縫い」と「真皮縫合」の二本柱

抜糸が必要な外縫い(結節縫合など)と、溶ける糸で抜糸不要な真皮縫合があります。後者は傷跡が格段に目立ちにくい特徴があります。

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縫合糸の種類(吸収糸・非吸収糸)も縫合方法の選択に影響する

糸の素材・太さ・吸収性の違いが、治癒経過や合併症リスクに直接影響します。縫合方法と糸の種類はセットで理解することが重要です。


縫合方法の種類①:結節縫合(単純結節縫合)の特徴と適応


結節縫合(けっせつほうごう)は、縫合方法のなかで最も基本的な手技です。1針ごとに糸を結紮(けっさく)し、独立した結節を作りながら創を閉鎖していきます。外科手術を学ぶ医師・医学生が最初にマスターすべき手技として、教育現場でも中心的な位置を占めています。


針を皮膚に対して直角に刺入し、針の湾曲に沿って皮下組織を丸く包むように運針します。皮膚から直角に抜くことで創面が密接に合い、確実な閉創が実現します。この動作の精度が、術後の傷跡の美しさを決定づける重要な要素です。


結節縫合の最大の強みは、1針ごとに締め具合を調整できることです。仮に一部の縫合が緩すぎたり強すぎたりした場合でも、その1針だけやり直すことができます。また、部分的な抜糸が可能なため、感染が起きた場合でも創全体を開放せずに対処できます。これが条件です。


一方、手術時間が長くなりやすい点は否定できません。1針1針丁寧に結紮していくため、連続縫合と比べると時間を要します。ただし、傷跡の仕上がりを最優先にする部位——顔面や眉下切開など——では、時間をかけても結節縫合を選択する医師が多いです。











項目 内容
別名 単純結節縫合・断続縫合・Interrupting Suture
主な適応部位 皮膚全般・顔面・外傷創
主な糸の種類 モノフィラメントナイロン(非吸収性)
抜糸 必要(術後7〜14日が目安)
メリット 1針ごとの調整可能・部分抜糸対応・感染時対応しやすい
デメリット 縫合に時間がかかる・糸の本数が多くなる


結節縫合のコツは、1結紮目で創縁をちょうどよく寄せ(強く締めすぎない)、2結紮目を1結紮目の上に置くイメージで結ぶことです。3結紮目以降は緩まないための補助として機能させます。力加減の微妙なバランスが、ステッチマーク(縫い跡のミミズ腫れ)を防ぐ鍵になります。


参考:結節縫合をはじめとした縫合手技の基本について、医師・医学生向けに動画とイラストで丁寧に解説しています。


Medtronic:外科手術 縫合結紮 縫合:皮膚


縫合方法の種類②:連続縫合とインターロッキング縫合の違いと注意点

連続縫合(れんぞくほうごう)は、1本の糸を最初から最後まで連続的に縫い進め、始点と終点のみを結紮する縫合方法です。手法的にはまつり縫いに似ており、外科では「Running Suture(ランニングスーチャー)」とも呼ばれます。


連続縫合が選ばれる最大の理由はスピードです。1針ごとに糸を結ばないため、結節縫合より明らかに短時間で閉創できます。救急の現場では患者の状態を優先し、手技時間を短縮するために連続縫合が採用されることが多いです。使用する糸の量も少なくなる(異物量の減少)という利点もあります。


ただし、連続縫合には重大な欠点があります。締め具合の微調整が極めて難しく、「ちょうど良い」テンションを維持したまま最後まで縫い続けることが難しいのです。少しでも緩く結ぶと創口から浸出液が漏れ出し、その浸出液が細菌の栄養源となって感染リスクが高まります。逆に強く結ぶと創縁の血流が悪化し、やはり傷跡が汚くなります。


また、感染が起きた場合に部分的な抜糸ができないという致命的な弱点があります。連続縫合は糸が1本でつながっているため、問題のある部分だけを開放することができず、最悪の場合は全抜糸を迫られます。感染創には適さないと覚えておけばOKです。


連続縫合には「インターロッキング縫合(連続かがり縫合)」という亜型も存在します。これは通常の連続縫合に比べ、創に対して直角に糸がかかるため創面への密着性が高く、糸の緩みも防止できます。ただし抜糸に時間を要するという特徴があります。



  • 連続縫合のメリット:縫合が速い・使用する糸の量が少ない・水密性が高い

  • ⚠️ 連続縫合のデメリット:テンション調整が難しい・感染時に部分抜糸不可・傷跡が汚くなりやすい

  • インターロッキング縫合のメリット:密着性が高く糸の緩みを防止

  • ⚠️ インターロッキング縫合のデメリット:抜糸に時間がかかる


形成外科の専門医の観点からすると、傷跡の仕上がりだけを考慮した場合、連続縫合が結節縫合より有利なケースはほとんどありません。これは意外ですね。連続縫合が選ばれる主な動機は「手術を速く終わらせられるから」であり、美容的優位性からではないのです。手術を受ける側として知っておいて損はない情報です。


縫合方法の種類③:マットレス縫合(水平・垂直)の使い分け

マットレス縫合は、1つの結節を作る前に組織へ2度縫合針を刺して糸を通す縫合方法です。糸の通し方によって「垂直マットレス縫合」と「水平マットレス縫合」の2種類に分類されます。どちらも、張力がかかりやすい部位や深い創の閉鎖に用いられます。


垂直マットレス縫合(Far-Near/Near-Far縫合とも呼ばれる)は、創縁から遠い部分と近い部分の2か所に深く糸をかける方法です。縫合糸のループを創縁ではなく創の外側の皮膚に置くことで、張力が創縁から外側に移行します。これにより、強いテンションのかかる部位でも創縁の血流を保ちながら確実な閉創が可能です。


水平マットレス縫合は、創と平行方向に糸を通す方法です。創縁への均一な緊張配分ができ、外反(皮膚を外側に向けた縫合)が得やすいという特徴があります。表皮が内側にめくれ込む「内反」を防ぎやすく、整容性の確保に役立ちます。


つまり、両者の使い分けは方向性の違いです。







種類 特徴 主な適応
垂直マットレス縫合 深い部位の張力を分散、外反を確保 張力の大きな創・関節周囲・背中
水平マットレス縫合 創縁に均一な張力をかけ外反を確保 出血が多い創・深い切開創・筋膜縫合


マットレス縫合の注意点として、縫合糸の取り扱いが単純な結節縫合より難しく、習熟が必要な点が挙げられます。また、縫合後に感染が発生した場合のリスク管理も考慮が必要です。このため、単純な表在性の創傷には過剰な手技にあたることもあります。


歯科・口腔外科の領域でもマットレス縫合は頻繁に使われています。歯肉弁の下に縫合糸が残る量を最小限にしながら創を閉鎖できるため、術後の歯周組織の回復を促す目的で選択されます。


参考:マットレス縫合が「張力のかかっている創傷の閉鎖」に用いられる理由と具体的な手技手順が詳述されています。


MSDマニュアル:垂直マットレス縫合による裂創の修復


縫合方法の種類④:真皮縫合(埋没縫合)の仕組みと傷跡への効果

真皮縫合(しんぴほうごう)は、皮膚の表層(表皮)の下にある"真皮"を縫合する方法です。糸は皮膚の中に埋没させ、結び目も表に出さず皮下で結紮します。溶ける糸(合成吸収糸:ポリジオキサノン=PDS、ポリグリコール酸=PGAなど)を用いるため、抜糸が不要です。


真皮縫合の目的は主に2つあります。ひとつは「創の減張」、つまり傷にかかる引っ張り力を和らげることです。傷が治った後に瘢痕が広がろうとする力に対抗し、瘢痕の幅を可能な限り細く保ちます。もうひとつは「suture mark(ステッチマーク)の予防」で、表皮に糸が接触しないため縫い跡のミミズ腫れが残りません。


元々は形成外科で用いられてきた技術ですが、消化器外科でも約20年前から一般化し、現在では腹腔鏡手術の小さな創にも広く適用されています。2013年にはLancet誌(Tsujinaka T, et al. Lancet 2013; 382: 1105-1112)に掲載された大規模比較試験(真皮縫合群562例・ステープラ群518例)で、下部消化管手術における創合併症の減少と肥厚性瘢痕の抑制が確認されています。権威ある国際医学誌に載った結果です。


良い真皮縫合のポイントは3つあります。



  • 🔑 創縁皮膚の緊張緩和:縛るのではなく「優しく寄せる」イメージで結紮し、皮膚の血流を保つ

  • 🔑 正確な組織の密着:皮膚に段差があると乾燥壊死→肉芽形成となるため、層を正確に合わせる

  • 🔑 皮膚の外反(evert):表皮が内側にめくれ込む「内反」を防ぐため、少し奥の組織を多めに取る「ハート形の運針」を意識する


ただし、正確な技術が伴わない真皮縫合は危険です。段差・ずれ・癒合不良(創離開)が起こり、二次治癒(肉芽形成・瘢痕化)へと進むリスクがあります。「溶ける糸を使えばきれいに治る」は間違いです。術者の技術が伴ってこそ真皮縫合の恩恵を受けられます。


術後は皮膚接合用テープ(ステリーストリップなど)で創縁のズレを防ぎ、緊張を緩和して安静を保つことが推奨されます。真皮縫合後の傷跡が安定化するまでには、半年から1年程度かかることを見込んでおくと良いでしょう。


参考:真皮縫合の抜糸不要の理由、正確な手技のコツ、および術後の傷跡経過について詳しく解説されています。


西宮敬愛会病院COKU:手術時の真皮縫合について


縫合方法の種類⑤:消化管縫合(Albert-Lembert法)と縫合糸の選び方

消化管(胃・小腸・大腸など)の縫合は、皮膚縫合とは全く異なる特殊な技術が求められます。消化管には強固な漿膜(しょうまく)という組織層があり、これをどう活用するかが吻合(ふんごう)の安全性を左右します。


消化管縫合の代表的な方法が「Albert-Lembert(アルベルト・ランベール)縫合」です。これはAlbert法(全層縫合)とLembert法(漿膜筋層縫合)を組み合わせた2層縫合であり、強固な漿膜を二重に接合させることで物理的接合力を重視しています。外科の初心者でも比較的安全に行える手技として、長年にわたって消化管外科の基本手技とされてきました。


3点縫合(3-point suture)は、救急や形成外科の現場で皮膚欠損のある創や三角形の皮弁に用いられる特殊な方法です。通常の縫合では皮弁の血流が途絶えるリスクがありますが、3点縫合では先端の血流を保ちながら固定できます。


縫合方法の選択と同様に重要なのが、縫合糸の選択です。縫合糸には大きく「吸収性縫合糸」と「非吸収性縫合糸」の2種類があります。







種類 特徴 主な使用部位
吸収性縫合糸(溶ける糸) 加水分解により体内に吸収される。抜糸不要。 消化管・皮下組織・筋膜・筋層・尿路生殖器
非吸収性縫合糸(溶けない糸) 体内で吸収されず残留する。持続的な張力が必要な部位に。 皮膚・血管・腱・筋膜(強度が長期間必要な場合)


糸の構造による分類も重要です。1本の単糸からなる「モノフィラメント」は菌が入りにくく感染リスクが低い反面、やや滑りやすく扱いにくい面があります。複数の細い糸を編み合わせた「マルチフィラメント(編み糸・撚り糸)」は結びやすくほどけにくいですが、糸の隙間に細菌が入り込みやすいというリスクがあります。


縫合糸の太さは「0」の数で表され、数字が大きくなるほど細くなります(例:4-0は3-0より細い)。シャープペンの芯ほどの太さから髪の毛より細いものまで様々です。マイクロサージャリー(血管・神経縫合)で用いる糸は10-0など極細で、虫眼鏡でないと見えないほどです。縫合糸の選択が条件です。


参考:吸収性・非吸収性縫合糸の特性と主な使用部位が一覧で整理されています。縫合糸の分類を理解する際の基礎資料として有用です。


Medtronic:縫合糸の分類とサイズ




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