非吸収性縫合糸の種類と特徴を徹底解説

歯科治療で使用する非吸収性縫合糸にはシルク、ナイロン、ポリプロピレンなど多様な種類があり、それぞれに異なる特性と適応があります。感染リスクや抜糸のタイミングを理解していますか?

非吸収性縫合糸の種類と選択

シルクを奥歯に使うと感染率が3倍に上がる


この記事の3つのポイント
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素材による特性の違い

シルク、ナイロン、ポリプロピレン、PTFEなど、各素材の強度や組織反応性、感染リスクの違いを詳しく解説します

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構造と使い分け

モノフィラメントとブレイドの構造的違い、それぞれのメリット・デメリットと臨床での選択基準を紹介します

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抜糸タイミングと管理

非吸収性縫合糸の適切な抜糸時期、糸のサイズ選択、術後管理のポイントを具体的に説明します


非吸収性縫合糸の基本分類と定義


非吸収性縫合糸とは、生体内で分解・吸収されずに残留する縫合材料のことを指します。長期間において劣化するものも含まれますが、基本的には体内で分解されない特性を持っています。歯科領域では、インプラント手術や抜歯、歯周外科処置など、さまざまな場面で使用されています。


これらの縫合糸は、皮膚(表皮)、血管、神経組織、骨、靭帯といった長期間にわたり保持する必要のある組織に使用されることが多いのが特徴です。吸収性縫合糸と比較して、抜糸という処置が必要になりますが、その分確実な創部の保持が可能になります。


非吸収性縫合糸は素材によって大きく天然素材と合成素材に分けられます。天然素材の代表例はシルク(絹糸)であり、合成素材にはナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、PTFEなどがあります。合成素材は抗張強度が高く、製品によるバラつきが少ないという利点があります。また、天然素材と比較して軽微な組織反応しか示さないため、近年では合成素材が主流となっています。


歯科臨床では、インプラント手術や抜歯処置する際に主に非吸収性縫合糸を使います。中でもブレイドシルク縫合糸とナイロン製縫合糸がよく使われています。これは歯科特有の環境、つまり唾液が存在する口腔内という特殊な条件下での使用に適しているからです。


縫合糸を選択する際は、手術部位の特性、患者の治癒能力、術後の管理のしやすさなどを総合的に判断します。つまり単一の「最良の糸」というものは存在せず、症例ごとに最適な選択をする必要があるということですね。


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非吸収性縫合糸の主要素材と特性

シルク(絹糸)は歯科で最も伝統的に使用されてきた非吸収性縫合糸です。ブレイド構造を持ち、非常にしなやかで扱いやすく、縫合後のチクチクとした不快症状が現れにくいという利点があります。


結節の保持力も高く、確実な縫合が可能です。


しかしシルクには重大なデメリットがあります。編み込み構造のため表面がザラザラしており、汚れが付着しやすいのです。特に口腔内という細菌が豊富な環境では、この特性が感染リスクを高める要因となります。また、シルクは水分を吸収しやすい性質があり、唾液中の細菌を糸の内部まで取り込んでしまう可能性があります。このため、奥歯のような汚れがたまりやすい場所や、不潔になりやすい部位での使用には注意が必要です。


ナイロン糸はモノフィラメント構造の合成非吸収性縫合糸です。表面が滑らかで汚れが付着しにくく、毛細管現象がないため細菌の侵入を防ぎやすいという特徴があります。感染リスクを下げることができるため、奥歯のような汚れがたまりやすい場所の縫合に適しています。


ただしナイロン糸は硬くコシが強いため、患者が縫合部位に違和感を覚えやすいというデメリットがあります。また、モノフィラメント構造のため結び目が緩みやすく、確実な結紮のためには適切な結び方の技術が求められます。結節保持力が低いため、3~4回以上の結び目が推奨されます。


ポリプロピレン糸は非吸収性モノフィラメント縫合糸の中でも特に生体内での劣化が少ない素材です。ナイロンと比較しても長期間にわたって強度を維持できるのが大きな特徴で、手術後10ヶ月経っても90%以上の強度を保つというデータがあります。やわらかく柔軟性があるため、組織への刺激も少なくなります。


一方で、ポリプロピレンは結節保持力が最も弱いという欠点があります。このため、結び目を確実にするには5回以上の結紮が必要とされます。また、糸自体のコシが強く、扱いに慣れが必要です。ですが、長期的な創部保持が必要な場合や、心臓血管手術など持続的サポートが求められる部位には最適な選択肢となります。


ポリエステル糸は編糸(ブレイド)構造の合成非吸収性縫合糸です。高い強度と耐久性を持ち、耐磨耗性にも優れています。PTFEコーティングが施されたものもあり、これにより組織通過性が改善され、感染リスクも軽減されます。


結節保持力が高く、確実な縫合が可能です。


PTFE(ゴアテックス®)スーチャーは、連続多孔質構造を有するePTFE製の非吸収性モノフィラメント縫合糸です。生体適合性に優れ、粘膜内部の炎症の低減に寄与することから、歯周組織再生療法やインプラント手術のようなセンシティブな手術において特に有効です。汚れが付着しにくく、含嗽のみでも清潔を保ちやすいという特性があります。


PTFE縫合糸は歯周外科、GTR、GBR、フリーグラフトなど、長期間縫合状態をキープしなければならない手術には必須の選択肢となっています。結節保持力が低いため、8~12回の結び目が必要とされますが、その生体適合性の高さは他の素材では得られない利点です。


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非吸収性縫合糸の構造による分類

縫合糸の構造は大きくモノフィラメント(単糸)とブレイド(編糸)の2つに分類されます。この構造の違いが、臨床での使用感や感染リスクに大きく影響します。


モノフィラメント糸は単一のフィラメントからなる糸です。最大の特徴は組織通過性に優れることで、アトラウマティックな縫合が可能です。糸の表面が滑らかなため、結節の滑り下ろしが良好で、スムーズな縫合操作ができます。


さらに重要なのは、モノフィラメントはノンキャピラリー、つまり毛細管現象がないという点です。これにより細菌の入り込みが少なく、感染リスクを大幅に低減できます。歯科領域のように細菌が豊富な環境では、この特性は極めて重要です。


一方でモノフィラメントのデメリットもあります。編糸と比較するとコシが強いため扱いにくく、特に初心者には操作が難しいことがあります。また、結び目が大きくなりやすく緩みやすいため、確実な結紮には技術が必要です。糸自体も傷やねじれに弱いという欠点があります。


ブレイド糸は細いフィラメントを編み込んだ構造の糸です。モノフィラメントに比べて柔らかくしなやかで扱いやすいのが最大の利点です。結び目を小さくでき、結節保持力も比較的高いため、確実な縫合が可能です。


しかしブレイドには感染リスクという重大な欠点があります。編み込み構造の糸同士のすきまにキャピラリー現象により細菌が侵入し、感染を悪化させる可能性があります。このため、感染創や汚染の可能性が高い部位には不適です。


組織通過抵抗がモノフィラメントに比べると大きいため、縫合時に組織へのダメージが大きくなる可能性もあります。ただし、確実な結紮が必要な血管の結紮や筋層の縫合などでは、ブレイドの結節保持力が有利に働きます。


では、それぞれの特徴による使い分けを確認していきましょう。モノフィラメントはノンキャピラリーであり細菌が伝播しないため、感染には有利です。一方、ブレイドは、糸同士のすきまに細菌が付着して感染を悪化させやすいため、感染創には不適です。


また、確実な結紮が必要なときはブレイドを使用します。血管の結紮や筋層など、緩みが許されない部位ではブレイドの優れた結節保持力が必要になります。逆に、皮膚縫合や汚染の可能性がある部位では、感染リスクの低いモノフィラメントを選択するのが基本です。


非吸収性縫合糸のサイズと使い分け

縫合糸のサイズは、使用部位や組織の厚さ、緊張度を考慮して選択します。アメリカのU.S.P(米国薬局方)による分類では、1番太いものが10号で、1号小さくなるごとに細くなります。1号より細いものは0号で、これは1-0とも呼ばれ、2-0(ニゼロ)、3-0(サンゼロ)、4-0(ヨンゼロ)という順番に細くなっていきます。


歯科領域で最も頻繁に使用されるのは3-0から5-0のサイズです。例えば、3-0と4-0では糸の太さが違い、張力にも違いが出ます。一般的に、4-0は硬膜等の閉創に使用され、3-0は筋肉や皮下組織の閉創に使用されます。


インプラント手術では、通常4-0または5-0のサイズが選択されることが多くなっています。これは歯肉組織の繊細さと、審美的な考慮によるものです。太すぎる糸は組織へのダメージが大きく、細すぎる糸は十分な創部保持ができません。


抜歯後の縫合では3-0から4-0が一般的です。特に親知らずの抜歯のように大きな創部ができる場合は、3-0のようなやや太めの糸で確実な縫合を行うことが推奨されます。組織の緊張が強い部位では、より太い糸を選択することで縫合糸の破断を防ぎます。


歯周外科手術では、繊細な操作が要求されるため、5-0や6-0といった細い糸が使用されることもあります。特にGTRやGBRのような再生療法では、組織へのダメージを最小限にするため、可能な限り細い糸を選択します。


サイズ選択の基本原則は、創部を確実に保持できる範囲で最も細い糸を選ぶということです。細い糸ほど組織反応が少なく、術後の不快感も軽減されます。ただし、組織の緊張が強い部位や、確実な結紮が必要な血管結紮などでは、適切な強度を持つ糸を選択することが優先されます。


非吸収性縫合糸の抜糸タイミングと臨床管理

非吸収性縫合糸を使用した場合、適切なタイミングでの抜糸が必要不可欠です。抜糸のタイミングは、創部の治癒状態、手術の種類、使用した糸の種類などによって決定されます。


インプラント手術後の抜糸は、手術からおよそ7~10日後に行うのが一般的です。これは歯ぐきの傷口がある程度ふさがり、縫合糸の役割が終わる時期にあたります。抜歯後の抜糸も同様に、1週間程度で行う場合が多いですが、歯茎の切開がなく、出血もあまりなかったケースでは3~4日で抜糸することもあります。


抜糸のタイミングが遅れると、いくつかのリスクが発生します。傷口が完全に塞がっているか心配だからといって、抜糸せずに長期間放っておくと、縫合糸が劣化して感染症のリスクが高くなります。2週間を超えてしまうと、糸自体が異物として体内に認識され、炎症や感染症の原因になることがあります。


また、糸の存在によって歯茎が刺激され続けると、治癒が遅れたり、不快感が持続したりする可能性もあります。したがって、遅くとも2週間以内には抜糸することが推奨されます。


一方で、抜糸のタイミングが早すぎるのも問題です。傷口が十分に治っておらず、再度縫合が必要になることがあります。腫れや炎症がある場合は、それらが落ち着くまで抜糸を延期することも必要です。


歯周外科手術、特にGTRやGBRのような再生療法では、やや長めの縫合期間が必要になることがあります。これらの手術では、約1週間から2週間の縫合期間を設け、組織の安定を待ってから抜糸します。PTFE縫合糸のような生体適合性の高い素材を使用することで、長期間の縫合でも感染リスクを抑えることができます。


抜糸時の痛みは、通常チクッとした弱い痛み程度で、麻酔なしで行うのが一般的です。


部位が少なければ1~3分程度で終わります。


ただし、患者の不安が強い場合や、広範囲の抜糸が必要な場合は、表面麻酔を使用することもあります。


術後の管理として、患者には縫った糸にできるだけ触れないように注意してもらうことが重要です。糸をひっかけてしまうと取れてしまったり、緩んでしまったりすることがあります。また、縫ったところは感染しやすい状態ですので、舌などで触れることによって細菌感染リスクが増加します。


縫合糸が術前に自然に取れてしまうケースもあります。傷口がすでに塞がっていれば問題ありませんが、傷口が開いてしまっている場合は再縫合が必要です。糸が垂れている場合は、気になって引っ張りたくなりますが、絶対に自分で切ったり抜いたりしないでください。


細菌が入る原因になります。


早めに歯科医院で処置してもらいましょう。


適切な抜糸タイミングと術後管理により、感染リスクを最小限に抑え、良好な治癒を得ることができます。これは術者の技術だけでなく、患者の協力も必要な部分ですね。




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