ナイロン糸医療の溶ける糸使い分け基準

医療現場でナイロン糸と吸収性縫合糸をどう使い分けるか、歯科医師が知るべき感染リスクや傷跡への影響を解説します。抜糸タイミングを誤ると取り返しのつかない結果になることをご存知ですか?

ナイロン糸医療で溶ける糸の使い分け

ナイロン糸は実は溶けません。


この記事の3つのポイント
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ナイロン糸は非吸収性縫合糸

医療用ナイロン糸は体内で分解されない性質を持ち、必ず抜糸が必要な縫合糸です。炎症反応が最も少なく、感染リスクを下げるのが特徴です。

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抜糸タイミングで傷跡が変わる

抜糸が遅れると糸が組織に食い込み、ムカデの足のような跡が残ります。特に顔面や口腔内では5~10日以内の抜糸が推奨されます。

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吸収糸は皮膚縫合に不向き

溶ける糸は組織反応が強く、傷跡が目立ちやすいデメリットがあります。歯科では主に粘膜や皮下組織の縫合に使用されます。


ナイロン糸と吸収性縫合糸の根本的な違い


医療現場で使用される縫合糸は、体内で吸収されるかどうかで大きく2つに分類されます。この違いを理解することが、歯科医師として適切な糸選択の第一歩です。


ナイロン糸は非吸収性モノフィラメント縫合糸に分類され、体内で分解されることはありません。


つまり「溶ける」ことは絶対にないのです。


ポリアミド系の合成素材で作られており、生体内での劣化が極めて少なく、長期にわたって強度を維持します。これに対し、吸収性縫合糸(いわゆる「溶ける糸」)は、ポリグリコール酸やポリ乳酸などの生分解性ポリマーで構成され、加水分解により徐々に体内で吸収されていきます。


この基本的な性質の違いが原則です。


表面構造にも明確な違いがあります。ナイロン糸は1本の繊維からなるモノフィラメント構造で、表面がツルツルしています。この滑らかな表面により、汚れや細菌が付着しにくく、組織通過性にも優れています。一方、吸収性縫合糸の多くは編み糸構造(ブレイド)で、繊維の間に組織液や血液が入り込みやすい性質があります。


歯科臨床において、インプラント手術や抜歯後の縫合では、この違いが感染リスクに直結します。特に口腔内は常在菌が多い環境であり、糸への細菌付着は術後感染の重大なリスク要因となるためです。奥歯のような汚れが溜まりやすい部位では、ナイロン糸の使用が感染予防の観点から推奨されています。


抗張強度の維持期間も大きく異なります。ナイロン糸は抜糸するまで強度を保ち続けますが、吸収性縫合糸は素材によって数週間から数ヶ月で強度が低下していきます。インプラント周囲の歯肉のように、しっかりとした創部の固定が必要な場合は、この強度維持が治癒過程で重要な役割を果たします。


メドトロニック社の縫合糸分類ガイドには、各種縫合糸の抗張強度維持期間と吸収期間の詳細なデータが掲載されており、糸選択の参考になります。


ナイロン糸を使うべき歯科手術の具体例

歯科領域において、ナイロン糸が第一選択となる手術は明確に定義されています。炎症反応が最も少ないという特性を活かすべき場面を理解することが重要です。


インプラント埋入手術では、ナイロン糸が標準的に使用されます。インプラント手術では歯肉を切開し、骨膜を剥離した後に縫合するため、創部の清潔さと適切な治癒が成功の鍵を握ります。ナイロン糸は表面が滑らかで汚れが付着しにくいため、術後7~10日間の創部管理において感染リスクを最小限に抑えられます。絹糸と比較すると、ナイロン糸は水分吸収性がほぼゼロで、細菌の温床になりにくい特徴があります。


これが基本です。


歯周外科手術においても、ナイロン糸の使用が推奨されます。フラップ手術やエムドゲイン再生療法などでは、歯肉弁を正確な位置に固定し、適切な治癒環境を維持する必要があります。ナイロン糸の高い結紮抗張力により、しっかりとした創部の固定が可能になり、術後の歯肉の位置安定に寄与します。特に審美領域では、抜糸時期をコントロールすることで糸の跡を最小限にできるメリットがあります。


口腔外科領域では、智歯抜歯後の縫合にもナイロン糸が多用されます。特に下顎埋伏智歯の抜歯では、骨削除や歯肉弁の剥離範囲が大きくなるため、創部の一次治癒を促進することが重要です。ナイロン糸は組織反応が少ないため、炎症性腫脹の軽減にも貢献します。抜糸は通常7日前後で行われ、この時点で創部はほぼ閉鎖しています。


歯肉整形や小帯切除などの軟組織手術でも、ナイロン糸が選ばれます。これらの手術では、術後の審美性が重視されるため、傷跡をいかに目立たなくするかが重要なポイントです。ナイロン糸で縫合し、5~7日で早期に抜糸することで、糸の跡が残るリスクを大幅に減らせます。吸収性縫合糸では、自然脱落まで3~4週間かかるため、その間に糸の跡が形成されてしまう可能性があります。


縫合糸の太さ選択も重要で、口腔内では通常4-0から5-0(直径0.15~0.20mm)のナイロン糸が使用されます。これは髪の毛とほぼ同じかそれより細い太さで、繊細な縫合が可能になります。


吸収性縫合糸が適している歯科手術場面

すべての手術でナイロン糸を使うべきというわけではありません。吸収性縫合糸が有利に働く場面も確実に存在します。


口腔粘膜の深層縫合では、吸収性縫合糸が第一選択となります。粘膜下組織や筋層の縫合において、抜糸が物理的に困難な部位では、吸収糸の使用が合理的です。これらの部位では、糸が組織内に埋没しているため、表面の汚染リスクが低く、吸収糸のデメリットである組織反応の強さも許容範囲内です。真皮縫合や筋膜縫合と同様に、創部の内部支持を長期間維持する目的で使用されます。


つまり吸収糸は内部用です。


埋伏歯の抜歯や嚢胞摘出など、大きな骨窩洞を伴う手術では、深部の縫合に吸収糸を使い、表層のみナイロン糸で縫合する二層縫合法が用いられることがあります。この方法により、深部の組織支持を長期間維持しながら、表層は早期に抜糸して感染リスクを下げることができます。吸収糸は通常、ポリグリコール酸(PGA)やポリグラクチン(Vicryl)などが使用され、4~6週間で大部分の強度を失います。


抜歯窩の保存術では、コラーゲン膜やBio-Oss等の骨補填材を固定する際に吸収糸が使われます。これらの材料は数ヶ月かけて組織に置換されるため、縫合糸も同様に長期間存在することが望ましいのです。ナイロン糸では抜糸時に膜や骨補填材を乱してしまうリスクがありますが、吸収糸なら抜糸不要で治癒過程を妨げません。


小児の口腔外科手術でも、吸収糸の使用が検討されます。小児では抜糸時の協力が得られにくいケースがあり、全身麻酔下での抜糸は現実的ではありません。このような場合、粘膜縫合に吸収糸を使用することで、抜糸の必要性を回避できます。ただし、吸収糸が自然脱落するまで3~4週間かかるため、その間の口腔衛生管理が重要です。


抜糸が困難な遠方の患者さんの場合にも、吸収糸の使用が考慮されることがあります。しかし、インプラント手術や審美領域の手術では、たとえ遠方であっても抜糸のための再診を依頼するか、信頼できる医療機関への紹介状を作成することが推奨されます。


抜糸タイミングを誤ると起こる深刻な問題

抜糸のタイミングは、単なる手順の一つではなく、最終的な治癒結果を左右する重要な判断ポイントです。適切な時期を逃すと、取り返しのつかない結果を招くことがあります。


抜糸が遅すぎると、縫合糸が組織に食い込んでしまいます。ナイロン糸であっても、2週間を超えて放置すると、糸の周囲に上皮が増殖し、糸が組織内に埋没し始めます。この状態で無理に抜糸すると、上皮を破壊し、出血や痛みを引き起こします。さらに深刻なのは、「ムカデの足」と呼ばれる縫合痕が恒久的に残ってしまうことです。これは糸を結んだ部分が点状に色素沈着や瘢痕を形成した状態で、特に顔面や審美領域では患者さんの満足度を大きく損ないます。


結論は時期厳守です。


感染リスクも時間とともに増大します。縫合糸は創部と外部環境をつなぐ「橋」のような存在です。口腔内では食物残渣や細菌が糸に付着しやすく、時間が経つほど細菌のバイオフィルムが形成されます。特に絹糸は多繊維構造のため、繊維の隙間に細菌が侵入しやすく、2週間を超えると感染リスクが有意に上昇します。ナイロン糸でも、長期間放置すると糸の周囲に慢性炎症が生じ、治癒の遅延や肉芽組織の過剰形成を引き起こすことがあります。


インプラント手術後の抜糸が遅れた場合、特に深刻な合併症が報告されています。縫合糸が劣化して感染症のリスクが高まり、インプラント周囲炎の原因となる可能性があります。インプラント周囲の軟組織は、天然歯周囲の組織よりも血流が乏しく、感染に対する抵抗力が弱いため、ひとたび感染が成立すると治療が困難になります。


逆に抜糸が早すぎても問題が生じます。創傷治癒の炎症期(術後3~5日)は、まだ創部の接着が不十分な時期です。この段階で抜糸すると、創部が離開(デヒスセンス)する危険があります。特に張力のかかる部位や、血流の乏しい部位では、適切な治癒期間を確保することが不可欠です。一般的に、口腔粘膜では7~10日、皮膚では5~7日が適切な抜糸時期とされています。


適切な抜糸タイミングを判断するためには、創部の状態を観察することが重要です。創縁がしっかりと接着し、発赤や腫脹が軽減していることを確認します。触診で創部に痛みがなく、軽い圧迫でも離開しないことを確認できれば、抜糸可能な状態と判断できます。


ナイロン糸と絹糸の感染リスク比較データ

歯科臨床で使用される非吸収性縫合糸として、ナイロン糸と絹糸(シルク)は最も一般的な選択肢です。両者の感染リスクの違いを理解することは、術後合併症を防ぐ上で極めて重要です。


ナイロン糸の最大の利点は、汚れが付着しにくい性質にあります。モノフィラメント構造により、表面積が小さく、細菌の付着点が限られています。インプラント手術の縫合糸として使用した場合、術後7日間の観察期間における創部感染率は1~2%程度と報告されています。これは絹糸使用時の感染率と比較して、明確に低い数値です。


汚れにくいのが最大の特徴です。


絹糸は天然繊維を撚り合わせた多繊維構造(マルチフィラメント)のため、繊維の隙間に組織液、血液、食物残渣が入り込みやすい欠点があります。この構造により、細菌が繊維内部にコロニーを形成しやすく、通常の口腔清掃では除去できません。また、絹糸は吸水性があり、水分を含むことでさらに細菌繁殖の温床となります。臨床研究では、絹糸使用時の創部感染率はナイロン糸の1.5~2倍程度高いことが示されています。


ただし、絹糸にも利点があります。柔軟性が高く、結紮時の操作性に優れているため、結び目がほどけにくく、しっかりとした創部の固定が可能です。また、縫合時の組織への刺激が少なく、患者さんの術後不快感が軽減される傾向があります。チクチクとした異物感が少ないのが絹糸の特徴で、特に舌や頬粘膜に近い部位の縫合では、患者さんの快適性が向上します。


感染リスクを具体的な臨床場面で考えると、智歯抜歯後の縫合では部位による使い分けが推奨されます。下顎第二大臼歯遠心部のような、汚れが溜まりやすく清掃困難な部位では、ナイロン糸の使用が望ましいでしょう。一方、頬粘膜側のような比較的清掃しやすい部位では、絹糸の使用も許容範囲と考えられます。


インプラント周囲では、ナイロン糸の使用が強く推奨されます。インプラント体の表面はザラザラとした構造で、天然歯根より汚れが溜まりやすい特性があります。この環境下で絹糸を使用すると、糸を介してインプラント周囲に細菌が到達しやすくなり、インプラント周囲炎のリスクが上昇します。実際、インプラント手術では90%以上の歯科医師がナイロン糸を第一選択としています。


抜糸時の違いも重要です。ナイロン糸は組織との癒着がほとんどなく、「スルッ」と抵抗なく抜けるため、患者さんの痛みが最小限です。一方、絹糸は繊維間に組織の一部や滲出液が固まって入り込むため、抜糸時に癒着を剥がす必要があり、軽度の痛みを伴うことがあります。20年前の医療現場では抜糸が痛い処置とされていましたが、これは主に絹糸の使用によるものでした。


ナイロン縫合糸の適切な管理と患者指導

ナイロン糸で縫合した後の管理は、感染予防と良好な治癒結果を得るために不可欠です。患者さんへの適切な指導と、術者側の管理方針が重要になります。


術後24時間は創部を安静に保つことが最優先です。この期間は血餅形成と初期の創傷治癒が進む重要な時期で、過度な刺激は出血や創部離開のリスクを高めます。患者さんには、縫合部位を舌で触らない、強いうがいを避ける、硬い食物を避けるといった基本的な注意事項を明確に伝えます。特に飲酒や喫煙は血流に影響を与え、治癒を遅延させる要因となるため、術後1週間は控えるよう指導します。


安静第一が原則です。


口腔衛生管理については、縫合部位以外は通常通りのブラッシングを継続するよう指導します。縫合部位そのものは、柔らかい歯ブラシで優しく清掃するか、術後3日間程度は直接触れないようにします。ナイロン糸は汚れが付着しにくい性質ですが、食物残渣が周囲に残ると細菌繁殖の原因となるため、縫合部位の周辺は丁寧に清掃することが重要です。抗菌性洗口剤(クロルヘキシジン0.12%など)の使用も、術後感染予防に有効とされています。


抜糸までの期間中、異常所見の早期発見が重要です。患者さんには、持続的な痛みの増強、腫脹の悪化、発熱、排膿などの感染徴候が現れた場合は、すぐに連絡するよう伝えます。通常、術後2~3日で痛みや腫脹はピークに達し、その後徐々に軽減します。このパターンから逸脱する場合は、感染や血腫形成などの合併症を疑う必要があります。


縫合糸が切れたり、結び目がほどけたりした場合の対応も事前に説明しておきます。ナイロン糸は強度が高いため、通常の使用で切れることは稀ですが、万が一糸が外れた場合は、創部の状態を確認し、必要に応じて再縫合を行います。術後5日以上経過していれば、創部がある程度接着しているため、再縫合不要なケースも多くあります。


抜糸日の予約は、手術時に確定しておくことが望ましいでしょう。インプラント手術や抜歯後の縫合では術後7~10日、歯肉整形や小帯切除では5~7日を目安に抜糸日を設定します。患者さんのスケジュール都合で抜糸が1~2日遅れることは通常問題ありませんが、5日以上遅れると糸の食い込みや感染リスクが上昇するため、可能な限り予定通りの抜糸を行います。


遠方の患者さんへの対応として、信頼できる医療機関への紹介状作成も選択肢となります。ただし、抜糸は単純な処置に見えて、実際には繊細な技術を要します。特に口腔内の細い糸を正確に除去するには、適切な器具(細い鑷子、鋭利な抜糸用ハサミ、拡大鏡など)と経験が必要です。紹介先としては、形成外科専門医や口腔外科専門医が望ましく、一般歯科医院でも抜糸の経験が豊富な歯科医師を選択することが重要です。


抜糸後の創部管理も重要な指導ポイントです。抜糸直後は創部がまだ脆弱な状態で、強い刺激で再び開くリスクがあります。抜糸後1週間程度は、硬い食物や刺激物を避け、創部への過度な圧迫を避けるよう指導します。傷跡が完全に成熟するには3~6ヶ月かかるため、長期的な経過観察も必要です。


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