縫合針種類歯科で選ぶ針の形状と糸の組み合わせ方

歯科手術で使う縫合針には丸針、角針、逆角針など多様な種類があり、弯曲の程度や針孔の形状でも使い分けが必要です。適切な針と糸の選択が術後の経過を左右すると知っていますか?

縫合針種類歯科で知るべき基本形状と選定基準

歯肉を縫う針選びで組織損傷が2倍違う


この記事の3つのポイント
🔍
縫合針の先端形状による使い分け

丸針は柔らかい歯肉組織用、角針・逆角針は硬組織用として先端形状が異なり、適切に選ばないと組織損傷や術後感染リスクが高まります。

📐
弯曲度と針孔の種類

弱弯(3/8)と強弯(1/2)の使い分けや、バネ穴・ナミ穴の違いが縫合スピードと安全性を左右します。狭い口腔内では弯曲選択が作業効率に直結します。

💉
針付縫合糸と糸素材の選定

ナイロンとシルクでは感染リスクと患者快適性が異なり、糸の太さ(号数)は部位と張力に応じて4-0から7-0まで使い分ける必要があります。


縫合針の先端形状による歯科臨床での使い分け


縫合針の先端形状は歯科治療において組織へのダメージを最小限に抑えるための最重要要素です。先端形状には大きく分けて丸針、角針、逆角針、平角針、先端角針、鈍針の6種類が存在し、それぞれ刺通性と組織保護のバランスが異なります。


丸針は円錐状の先端をもち、柔らかい歯肉組織に最適です。特に歯間乳頭部や可動粘膜のような繊細な部位では、組織の損傷を最小限に抑えられるため第一選択となります。インプラント周囲組織や歯周外科における歯肉弁の縫合で多用されます。


逆角針は三角錐形状で刃が弯曲の外側についており、硬い組織への刺通性が高い特徴があります。皮膚や角化歯肉のような硬組織に適しており、歯科では口腔前庭形成術や歯肉移植術で使用頻度が高くなります。弯曲部内側の組織を保護できる構造のため、狭い術野でも安全に使えます。


角針は逆角針とほぼ同じ用途ですが、刃の配置が若干異なります。皮膚縫合や靭帯のような硬い組織の刺通に優れており、一般外科と共通の用途があります。歯科では口唇裂手術や顎顔面外傷での使用が見られます。


平角針は上面が平らな特殊形状で、組織の横側を切断する用途に特化しています。刺通外の部分まで切開する心配がないため、精密な縫合が求められる審美領域や限局した切開部位で選択されることがあります。ただし歯科での使用頻度は他の針と比べると低めです。


先端角針は基本的に柔らかい組織用ですが、石灰化した組織や人工物との縫合にも対応できる汎用性をもちます。インプラント周囲の骨膜や人工メンブレンとの縫合で有用です。組織の性状が混在する部位では、この針一本で複数の層を縫合できるメリットがあります。


鈍針は先端が丸く形成されており、組織を切らずに縫合糸を通せる特性があります。肝臓や腎臓のような出血しやすい柔らかい臓器用として開発されましたが、歯科では血管縫合や神経周囲の繊細な操作で使われることがあります。


針刺し事故のリスクも低減できます。


松田医科工業の縫合針製品ページでは、各先端形状の詳細な断面図と使用部位の解説があり、実際の針選定の参考になります。


先端形状の選択ミスは組織損傷を2倍以上に増やすリスクがあります。柔らかい歯肉に角針を使うと不必要な裂傷が生じ、逆に硬い組織に丸針を使うと針が曲がったり刺入できない事態になります。術前に縫合部位の組織性状を評価し、適切な先端形状を選ぶことが術後の治癒期間短縮につながります。


針の選定では「柔らかい組織には丸針、硬い組織には角針・逆角針」が基本原則です。


縫合針の弯曲度と歯科手術での使い分け方法

縫合針の弯曲は直針、弱弯(3/8サークル)、強弯(1/2サークル)の3つに大別され、歯科では曲針が圧倒的に多く使われます。弯曲の選択は術野の深さと作業スペースに直結するため、口腔内という限られた空間では特に重要な判断要素となります。


弱弯針は円周の3/8(約135度)の弯曲をもち、浅い術野や比較的広い作業空間で使いやすい形状です。前歯部の歯肉縫合や口腔前庭部のような視野が確保しやすい部位では、この弯曲が運針のコントロールをしやすくします。持針器での回転操作が少なく済むため、縫合時間の短縮にもつながります。


強弯針は円周の1/2(180度)の弯曲で、深い術野や狭い空間に適しています。臼歯部遠心や口蓋側のような器具の挿入角度が制限される部位では、この強い弯曲が針の出し入れを容易にします。産婦人科や一般外科でも深部縫合に多用されており、歯科では智歯抜歯後の遠心切開部や深い歯周ポケット内の縫合で選択されます。


直針は主に歯科では使用頻度が低いものの、一般外科では皮膚や筋膜の縫合で使われます。歯科領域では口腔外からのアプローチが必要な顎顔面外傷や、特殊な縫合技法で選択されることがあります。ただし口腔内の狭い空間では取り回しが難しく、通常の歯科治療では曲針が優先されます。


弯曲の選択で見落とされがちなのが、持針器との組み合わせです。マチュー型持針器は短く角度がついているため弱弯針との相性が良く、ヘガール型持針器は柄が長いため強弯針でも深部まで到達できます。器具の特性と針の弯曲を合わせることで、運針の安定性が大幅に向上します。


臨床での弯曲選択ミスは作業効率を30〜40%低下させる可能性があります。狭い臼歯部で弱弯針を使うと針の出口が見えにくくなり、逆に広い前歯部で強弯針を使うと持針器の回転操作が煩雑になります。術前に縫合部位の解剖学的特徴を確認し、作業スペースに応じた弯曲を選ぶ習慣が重要です。


つまり、浅く広い部位には弱弯、深く狭い部位には強弯を選ぶことが原則です。


縫合針の針孔の種類と糸付け効率への影響

縫合針の針孔にはバネ穴(弾機孔)とナミ穴(普通孔)の2種類があり、糸の装着方法と作業効率に大きな違いがあります。歯科臨床では時間効率と安全性の両面から、針孔の選択が術中のストレスを左右する要因となります。


バネ穴は針の後端に縦長のスリットがあり、先端が割れた構造です。糸の側面を押し込むだけで装着できるため、裁縫のように糸先を孔に通す必要がありません。この構造により装着時間が大幅に短縮され、手術の流れを止めずに次の縫合に移れます。現在の歯科臨床ではバネ穴が最も広く使われており、未滅菌の単独針を使う際の標準的な選択肢となっています。


ナミ穴は一般的な裁縫針と同じ長細い孔で、糸先を孔に通して装着します。糸先を整えて孔に通す技術が必要なため、装着に時間がかかりますが、糸が切れたり抜けたりするリスクが極めて低い利点があります。また針と糸の接合部分が組織を傷つけにくい構造のため、繊細な部位での使用に適しています。


バネ穴とナミ穴の装着時間の差は約3〜5倍に達します。バネ穴なら5秒程度で装着できるのに対し、ナミ穴では15〜20秒程度かかることが多く、複数箇所を縫合する手術では累積時間の差が無視できなくなります。ただしナミ穴は糸の固定が確実なため、長時間の縫合作業でも糸抜けの心配がありません。


現代の歯科臨床では「針付縫合糸」の普及により、針孔の種類を意識する機会は減少しています。針付縫合糸はあらかじめ針と糸が一体化した滅菌済み製品で、開封してすぐに使用できます。糸付け作業が不要なため感染リスクも低く、標準予防策の観点からも推奨されます。ただし未滅菌針を使用する施設や、特殊な糸を使いたい場合には針孔の知識が必要です。


針孔選択の判断基準は「時間効率を重視するならバネ穴、糸の固定安全性を重視するならナミ穴」ですが、実際には針付縫合糸の使用で両方のメリットを得られます。コスト面では未滅菌針と糸を別々に購入する方が安価ですが、感染管理と作業効率を考慮すると針付縫合糸が合理的です。


針孔の種類は縫合の基本ですが、現代では針付縫合糸が主流ということですね。


縫合針のサイズと糸の太さの関係性

縫合針のサイズは針の長さ(直線寸法)で表され、糸の太さは号数で表示されます。歯科では一般的に針の長さが8mm〜19mm、糸の太さが3-0〜7-0の範囲が使用され、部位と組織の張力に応じた組み合わせが求められます。


針の長さは縫合する組織の厚さと運針の軌道に影響します。8mm〜11mmの短針は歯間乳頭や薄い歯肉弁に適しており、狭い部位でも取り回しが容易です。13mm〜16mmの中程度の針は一般的な歯肉縫合に汎用され、多くの症例で第一選択となります。19mm以上の長針は厚い粘膜弁や深い層の縫合、口腔外からのアプローチで使われます。


糸の太さは数字が大きいほど細くなる表記で、3-0(サンゼロ)の太さは約0.2〜0.249mm、4-0(ヨンゼロ)は約0.15〜0.199mm、5-0(ゴゼロ)は約0.1〜0.149mm、6-0(ロクゼロ)は約0.06mm前後、7-0(ナナゼロ)は約0.05mm以下となります。人間の髪の毛の太さが約0.08mmなので、6-0や7-0の糸は髪の毛より細い計算です。


部位別の針と糸の組み合わせには一定の原則があります。歯肉弁の縫合では13mm針と4-0糸、歯間乳頭の縫合では11mm針と5-0糸、前歯部の審美領域では11mm針と6-0または7-0糸が標準的です。太い糸は強度が高く組織をしっかり固定できますが、見た目が目立ちプラークが付着しやすいデメリットがあります。


糸の太さ選択のミスは術後管理の負担を増やします。細すぎる糸は張力に耐えられず切れるリスクがあり、太すぎる糸は患者の不快感を増し感染リスクも上がります。臼歯部のように汚れがたまりやすい部位では、やや細めの糸を選んで清掃性を確保する配慮も必要です。


針と糸のサイズ比も重要です。針が太く糸が細いと針穴が大きくなり組織の保持力が低下し、針が細く糸が太いと糸が針穴を通過しにくくなります。メーカーの推奨する組み合わせを基本としつつ、症例に応じて微調整する判断力が求められます。


メドトロニックの縫合糸分類とサイズ解説では、各号数の直径と推奨使用部位が詳細に記載されており、初学者の参考になります。


組織の厚さと張力を評価して、針と糸のサイズを選ぶことが基本です。


縫合針と組み合わせる糸素材の選択基準

縫合針と組み合わせる糸素材には主にナイロン、シルク、吸収性糸があり、それぞれの特性が術後経過と患者快適性に影響します。歯科では非吸収性のナイロンとシルクが主流ですが、近年は吸収性糸の使用も増えています。


ナイロンは合成繊維のモノフィラメント糸で、表面が滑らかなため汚れやプラークが付着しにくい特徴があります。感染リスクを低減できるため、奥歯のような汚れがたまりやすい部位や、口腔衛生状態が不良な患者での使用に適しています。抗張強度が高く製品によるバラつきも少ないため、確実な組織固定が可能です。ただし硬めの素材のため、患者が異物感を訴えることがあります。


シルク(絹糸)は天然素材で非常に柔らかく、縫合後のチクチクとした不快感が少ない利点があります。結紮性能が優れているため、しっかりと結び目を作りやすく、緩みにくい特性があります。患者の快適性を重視する前歯部や、繊細な縫合が必要な部位で選ばれます。デメリットとしてナイロンよりも汚れが付きやすく、水分を吸収しやすい性質があります。また天然蛋白質のため組織反応がやや高めです。


吸収性縫合糸はバイクリルやPDSなどの合成吸収性素材で、体内で一定期間後に分解されます。抜糸が不要なため患者の通院負担が減り、小児や通院困難な患者に有用です。抗張力保持期間は製品により異なり、バイクリルは約21日で50%、PDSは約28日で70%の強度を維持します。歯科では歯肉深部の縫合や、抜糸が困難な部位で選択されます。


ナイロンとシルクの感染リスクの差は約1.5〜2倍とされます。ナイロンのモノフィラメント構造は細菌が侵入しにくく、シルクの編み構造は隙間に細菌が入り込む可能性があります。口腔内は常在菌が多い環境なので、感染予防の観点からナイロンが推奨される場面が多くなります。


糸素材の選択では「感染リスクを重視するならナイロン、患者の快適性を重視するならシルク、抜糸の手間を省くなら吸収性糸」が判断基準です。実際には部位と患者背景を総合的に評価し、最適な素材を選ぶ必要があります。


コーティング加工された糸も選択肢の一つです。テフロンコーティングされたシルクやナイロンは、プラーク付着がさらに低減され、組織通過性も向上します。コスト面ではやや高価ですが、感染リスクが高い症例では検討する価値があります。


南柏駅20秒の歯医者のインプラント手術の縫合と抜糸に関する解説では、ナイロンとシルクの使い分けについて患者向けにわかりやすく説明されています。


感染リスクと患者快適性のバランスで、糸素材を選択するということですね。


歯科縫合針を持針器で扱う際の実践的テクニック

持針器は縫合針を把持し刺入角度をコントロールする器具で、マチュー型とヘガール型が歯科で主に使用されます。針の把持位置と角度が不適切だと、針の変形や組織損傷、さらには術者の針刺し事故につながるため、正確な取り扱い技術が必須です。


持針器での針の把持位置は、針全体の根元から約1/3の位置が基本です。針先に近すぎると針が回転しやすく制御が困難になり、針の後端に近すぎると刺入時の力が伝わりにくくなります。また弾機孔(バネ穴)の部分を直接把持すると針が変形し、糸抜けの原因となるため避けなければなりません。


針の向きも重要な要素です。順針の場合は針先が術野側を向き、逆針の場合は針先が術野の反対側を向きます。歯科では口腔内の狭い空間で様々な角度から縫合するため、順針と逆針を使い分ける技術が求められます。持針器の先端に対して針を90度に取り付けるのが基本角度で、この角度が保たれることで安定した運針が可能になります。


マチュー型持針器は短く角度がついた構造で、口腔内の前歯部や臼歯頬側のような比較的浅い部位に適しています。把持力が強く針をしっかり固定できますが、深い部位では器具が邪魔になることがあります。リングに指を深く入れすぎると動きが制限されるため、親指と薬指の第一関節程度までの挿入に留めるのがコツです。


ヘガール型持針器は柄が長く、深い術野でも針の動きを確認しやすい利点があります。臼歯部遠心や口蓋側のような視野が制限される部位で有用です。針と糸の種類に合わせて使い分ける必要があり、丸針には丸針用、角針には角針用の持針器を選ぶことで組織損傷を最小限に抑えられます。


持針器の誤った使い方で最も多いトラブルは、針の接合部近くを把持して針折れや糸切れを起こすケースです。接合部は構造的に弱い部分なので、把持位置を針本体に限定する注意が必要です。また糸が持針器や術者の手指に絡まないよう、糸は持針器を持っている手の甲側にくるように配置します。


針の渡し方にも配慮が必要です。器械出し担当者は持針器の関節部分を持ち、針の両端が術者の手の平を向くように持ち手部分を術者の手の中に収めて渡します。この渡し方により、術者は受け取った瞬間から針の位置と向きを把握でき、スムーズに縫合を開始できます。


看護roo!のヘガール持針器解説では、針の持ち方と渡し方が写真付きで詳しく説明されており、実践的な技術習得に役立ちます。


持針器での針の把持は、針全体の根元から1/3の位置が原則です。




HEIWA 外科手術 縫合練習 22mm 3-0 糸付 45cm 縫合針 5本入 1袋 縫合糸 シルク糸 絹糸 黒 シルクブレード Silk Braided