スタンダードプリコーション順番と手指衛生タイミング手袋交換基本

スタンダードプリコーションにおける手指衛生や手袋交換の正しい順番とタイミングについて、歯科医療現場で徹底すべき基本ルールを解説。患者ごとの交換を忘れていませんか?

スタンダードプリコーション手指衛生と個人防護具の正しい順番

手袋を患者ごとに交換しない歯科医院が約46%存在します


この記事の3つのポイント
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スタンダードプリコーションにおけるPPE着脱の正しい順番

着用時と脱衣時で順番が異なり、脱衣時は手袋から外すことで汚染を防止します

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手袋交換と手指衛生のタイミング

手袋は患者ごとに必ず交換し、手袋を外した後は必ず手指衛生を実施する必要があります

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歯科医療現場で見落としやすい感染対策ポイント

手袋のピンホールや着脱時の汚染リスクを理解して適切な対策を講じましょう


スタンダードプリコーションにおける個人防護具の着脱順番

スタンダードプリコーション(標準予防策)では、個人防護具(PPE)の着脱に明確な順番が定められています。この順番を守ることは、自分自身や患者さんを感染から守るための最も重要な対策です。


着用時の順番は「ガウン・エプロン→マスク→ゴーグル・フェイスシールド→手袋」となります。つまり、最も汚染されやすい手袋を最後に装着するのが原則です。


一方、脱衣時の順番は「手袋→手指衛生→ゴーグル・フェイスシールド→ガウン・エプロン→マスク→手指衛生」です。


手袋は最初に外します。


これは手袋が最も高度に汚染されているためです。歯科診療では、唾液や血液に直接触れることが多く、手袋の表面には感染性物質が付着している可能性が非常に高くなっています。


脱衣時に最も注意すべきは、個人防護具の表面に素手で触れないことです。PPEの表面は汚染されていると考え、マスクを外す際はゴムひもを持つ、ゴーグルは耳にかける部分を持つなど、汚染されている可能性のある表面を避けて外す必要があります。


この順番を間違えると、せっかくの感染予防対策が台無しになります。例えば手袋を外す前にマスクを外してしまうと、汚染された手袋でマスクに触れることになり、顔面や口鼻周辺を汚染してしまうリスクが高まります。


スタンダードプリコーションにおける手指衛生の6つのタイミング

手指衛生のタイミングを正確に理解することは、スタンダードプリコーションの基本中の基本です。CDCのガイドラインによると、スタンダードプリコーションでは6つの手指衛生タイミングが定められています。


1つ目は患者に直接接触する前です。歯科診療では、患者さんの口腔内に触れる前に必ず手指衛生を行う必要があります。これは患者さんを医療従事者の手を介した感染から守るための対策です。


2つ目は湿性生体物質に触れた後です。


これが基本です。


唾液、血液、浸出液など、汗を除くすべての体液に触れた後には必ず手指衛生を実施します。


3つ目は患者に直接触れた後です。脈を測る、血圧を測るなど、患者さんに触れた後には手指衛生が必要になります。


4つ目は患者ケアの間に、汚染した部分から清潔な部分に手が移動するときです。同じ患者さんの処置中でも、口腔内から口腔外へ移動する際などは手指衛生を行います。


5つ目は患者の近くにある医療器具などに触れた後です。ユニット周辺の器具や環境表面に触れた後にも手指衛生が求められます。


6つ目は手袋を外した後です。つまり手袋を外した後は必ず手指衛生を行うということですね。手袋には製造過程でできた目に見えない小さな穴(ピンホール)が存在する可能性があり、また脱衣時に手袋の表面に素手が触れてしまうこともあるため、手袋を外した後の手指は汚染されている可能性が高いのです。


WHOが推奨する手指衛生の5つのタイミング(患者に触れる前、清潔・無菌操作の前、体液に曝露された可能性のある場合、患者に触れた後、患者周辺の物品に触れた後)も合わせて覚えておくとよいでしょう。歯科診療では特に口腔内処置や歯科ケアの前には必ず手指衛生を行う必要があります。


北海道大学病院の標準予防策マニュアルでは、手指衛生のタイミングについて具体的な場面を示しており、歯科診療における手指衛生の参考資料として有用です。


スタンダードプリコーションにおける手袋交換のルール

手袋交換のルールを正確に理解していないと、感染リスクを大幅に高めてしまいます。スタンダードプリコーションでは、手袋交換に関して6つの重要なルールがあります。


まず第一に、患者ごとに手袋を交換することです。どんなに時間がかかっても、必ず患者さんごとに新しい手袋を装着する必要があります。2010年の調査によると、開業歯科医院では患者ごとの手袋交換を行っているのは54%にとどまっていました。つまり約46%の歯科医院で手袋の使いまわしが行われていた可能性があります。


これは患者間感染の重大なリスクです。


第二に、同じ患者でも湿性生体物質に曝露した手袋は他の部位に触れる前に交換することです。例えば口腔内処置後にカルテ記載のためにパソコンに触れる場合は、必ず手袋を外してから触れる必要があります。


第三に、パソコンなど共有の物品に触れるときは手袋を外すことです。


これ重要ですね。


汚染された手袋で共有物品に触れると、次に触れる人への感染経路となってしまいます。


第四に、手袋を外した後は手指衛生を行うことです。これは前述の通り、手袋のピンホールや脱衣時の汚染リスクがあるためです。


第五に、手袋は再利用しないことです。一度使用した手袋を洗って再利用することは絶対に避けなければなりません。


第六に、患者や患者周囲の環境に触れて汚染された手袋は、患者ゾーンを出る前に外すことです。汚染された手袋を着けたまま診療室外に出ることは、感染を拡大させる原因となります。


厚生労働省の「一般歯科診療時の院内感染対策に係る指針」では、常に患者ごとに両手とも新しい医療用グローブを装着し、使用後は直ちに外して手を洗い、微生物を他の患者や環境周囲に移さないように努めることが奨められています。


手袋の上から手指消毒を行うことは、微生物を除去できるという保証がないため、決して手袋交換の代わりにはなりません。手袋は基本的に1処置ごとに交換し、約20分程度の使用時間でかなり劣化するという研究もあります。


スタンダードプリコーション手指衛生の回数と目標値

手指衛生の実施回数も感染対策の質を測る重要な指標です。実際に手指衛生を1日何回行うべきなのか、具体的な目標値を知っておくことが大切です。


医療現場における手指衛生の目標値は、1日1患者あたり15~20回とされています。これは1人の患者さんに対して平均15~20回の手指衛生機会があるという意味です。歯科診療でも、診療時間や処置内容によってはこれに近い回数の手指衛生が必要になります。


PPE着脱時の手指衛生だけでも、1セットの着脱で最低2回の手指衛生が必要です。着用前に1回、脱衣時に手袋を外した後に1回、そして全てのPPEを外した後に最後にもう1回行います。つまり、1人の患者さんに対してPPEの着脱だけで2~3回の手指衛生が発生するということですね。


手指消毒を行う際の消毒剤の量も重要です。1回の手指消毒に必要なアルコール手指消毒剤の使用量は、手指が15秒以内に乾燥を感じず、20~30秒ほど手指が濡れた状態を保つ量が必要とされています。つまり、少なすぎる量では十分な効果が得られないということです。


石鹸と流水による手洗いの場合は、日常的手洗いで10~15秒、衛生学的手洗いでは30秒以上が推奨されています。目に見える汚れがある場合は必ず石鹸と流水で手洗いを行う必要があります。


手指衛生を頻回に行うと手荒れのリスクが高まりますが、各手洗い場に保湿剤を設置することで対策が可能です。手荒れがひどく手指衛生が適切に実施できない場合は、手袋の頻回な交換で対応する方法もあります。


スタンダードプリコーション実践で見落としやすい歯科特有のポイント

歯科医療現場には、他の医療分野とは異なる特有の感染リスクがあります。これらを理解していないと、スタンダードプリコーションを実践していても感染対策が不十分になってしまいます。


歯科診療は唾液、血液、飛沫といった感染リスクの高い物質を日常的に取り扱う診療分野です。特に高速切削器具(タービンエンジン)を使用する際には、エアロゾルが大量に発生し、診療室全体に飛散します。そのため、歯科では一般の医療施設以上に感染対策が必要と考えられています。


手袋の管理については、歯科診療特有の注意点があります。ビニール手袋のリーク率(穴あき率)は26~61%と非常に高く、ラテックスやニトリル手袋よりも脆弱です。歯科診療で鋭利な器具を扱う場合は、材質を考慮して手袋を選択する必要があります。


X線撮影時の感染対策も見落としやすいポイントです。X線を曝露した後は、手袋を外す前に使い捨てのガーゼまたはペーパータオルで対象物を扱うなどの配慮が必要です。


手袋などの個人防護具を外す際には、それらにより環境を汚染しないよう留意しながら外し、所定の場所に廃棄することが重要です。歯科用ユニット、周囲、その他接触部位の消毒も忘れてはなりません。


グローブを外すときの注意点として、外側表面に触れないように注意しないと、手指や周囲環境に唾液や血液を付着させる可能性があります。唾液・血液など有機質が付着したままでは、消毒効果も低下します。


日本歯科医師会の「新型コロナウイルス感染症の対応ガイドライン」では、スタンダードプリコーションの概念に則って感染症対策を行うことを推奨しており、スタッフ間の衛生管理や院内全体の環境管理にも力を入れることが求められています。


日本歯科医師会の感染予防対策ガイドラインには、歯科診療所における具体的な感染対策の実践方法が詳しく記載されており、日常診療での参考資料として活用できます。


手指衛生のタイミングについても、歯科では特に「口腔/歯科処置・ケアの前」「手袋着用前」が強調されています。処置後にカルテ入力や次の器具準備を行う前には必ず手袋を外し、手指衛生を行ってから作業に移る習慣をつけることが、患者間感染を防ぐ鍵となります。