届出さえすれば自動的に算定できると思っていませんか?実は、届出後も「管理計画書」の作成・交付を怠ると全額返還リスクがあります。
周術期等口腔機能管理料は、がん治療や心臓手術などの周術期を対象とした歯科的サポートに対して算定できる診療報酬です。令和6年(2024年)改定後の現行点数では、区分によって算定できる対象や回数が明確に分かれています。
管理料Ⅰは、病院の歯科以外の診療科と連携して口腔機能管理を行う「病院外の歯科医院」が算定する区分です。手術前に初回の管理を行った場合は280点、手術後(周術期)に管理を行った場合は190点となっています。
管理料Ⅱは、がん治療(化学療法・放射線療法)を行う患者を対象とした場合に算定できます。初回は280点、2回目以降は170点です。ただし、Ⅱの算定は月1回が上限です。つまり算定頻度が限られています。
管理料Ⅲは、病院の歯科が院内の他科と連携して行う場合の区分で、初回300点、2回目以降170点です。病院歯科に所属する歯科医師・歯科衛生士が担う院内完結型の管理がこれに当たります。
管理料Ⅳは、令和6年改定で新設または再編された区分で、摂食機能療法と組み合わせた管理や特定の術後フォローを想定した内容です。詳細な要件は施設の届出状況により異なるため、個別に確認が必要です。これは意外と見落とされがちです。
以下に各区分の点数を整理します。
| 区分 | 初回 | 2回目以降 | 算定上限 |
|------|------|-----------|----------|
| 管理料Ⅰ(手術前) | 280点 | — | 1回 |
| 管理料Ⅰ(手術後) | 190点 | 190点 | 月1回 |
| 管理料Ⅱ | 280点 | 170点 | 月1回 |
| 管理料Ⅲ | 300点 | 170点 | 月1回 |
点数が1点=10円換算なので、初回280点は2,800円の算定額になります。これが毎月の積み重ねになります。
参考リンク先:厚生労働省が公開している令和6年度診療報酬改定の歯科点数表。周術期等口腔機能管理料の改定内容と算定要件の全文確認に使えます。
点数を算定するうえで、最も重要かつ見落とされやすいのが「管理計画書」の作成と患者への交付です。これが不完全だと、監査時に遡及返還を求められるリスクがあります。厳しいところですね。
管理計画書には、口腔内の状態のアセスメント、今後の管理方針、手術・治療との関連性の説明を文書化する必要があります。単なる口頭説明では要件を満たしません。また、患者が同意したことを示す記録(署名等)も残しておくことが求められます。
さらに、連携する病院の主治医または担当科からの「情報提供」が算定の前提となります。具体的には、手術・化学療法・放射線療法などの治療予定に関する文書(紹介状や診療情報提供書)を受け取っていることが必要です。情報提供なしでの算定は要件を満たしません。
歯科衛生士が実施する口腔衛生処置については、「歯科衛生士が実施した記録」を診療録に記載しなければなりません。氏名・実施内容・実施日の3点セットが必須です。これを記載しないまま算定すると、指導・返還の対象になります。算定漏れより算定誤りのほうが深刻な場合があります。
管理計画書の作成で役立つのが、日本歯科医師会や各都道府県歯科医師会が提供している書式例です。独自に作成する場合も、必須項目が漏れていないかチェックリストを活用するのが現実的な対策です。まずは自院の書式を確認しましょう。
参考リンク先:日本歯科医師会が公開している周術期口腔機能管理に関する手引き。管理計画書の書式例や記録のポイントが実務レベルで確認できます。
周術期等口腔機能管理料を算定するには、施設基準を満たしたうえで地方厚生局への届出が必要です。届出が受理されて初めて算定できます。これが条件です。
施設基準の主な要件は以下の通りです。
- 🏥 歯科外来診療環境体制加算(外来環)または病院内歯科診療室としての届出がある
- 👨⚕️ 常勤の歯科医師が1名以上在籍している
- 🦷 歯科衛生士が1名以上在籍している(常勤換算で0.5以上が必要な場合あり)
- 📄 連携する病院との間で文書による連携体制が整備されている
届出は、「保険医療機関の施設基準に係る届出書」と「添付書類」を管轄の地方厚生局事務所に提出する形式です。添付書類には、歯科医師・歯科衛生士の常勤証明(勤務シフト表など)や連携病院との協定書などが求められます。
注意点は、届出が受理されても「要件を満たし続けること」が義務である点です。例えば歯科衛生士が退職して要件を下回った場合、届出を取り下げる義務があります。取り下げ義務を怠ったまま算定を続けると、不正請求とみなされます。
届出後は算定が可能になりますが、実際に連携病院から患者紹介がなければ算定の機会は生まれません。紹介ルートの構築こそが収益化の鍵です。医院単独での完結は難しいです。
地方厚生局への届出状況は、各厚生局のWebサイトで公開されています。自院の届出状況の確認や、他院の参考として活用できます。
参考リンク先:関東信越厚生局が公開している届出受理医療機関名簿。施設基準の届出状況を確認する際に参照できます。
点数の算定において、管理料本体だけでなく「加算」を正しく組み合わせることが、適正な収益確保のうえで重要です。意外と知られていないポイントが複数あります。これは使えそうです。
口腔管理体制強化加算との関係では、周術期等口腔機能管理料を算定している患者に対して、同月内に口腔管理体制強化加算を算定することは原則できません。加算の重複に注意が必要です。一方で、周術期管理とは別の傷病で来院した際の処置には、それぞれの算定ルールが適用されるため、カルテ上の傷病名と管理目的の分離が重要になります。
歯科衛生士による口腔衛生指導については、歯科衛生実地指導料と周術期等口腔機能管理料は同日に並行算定できません。同日に実施した場合はどちらか一方のみの算定となります。実施日をずらすことで両方を算定できる場合があります。スケジュール管理が収益に直結します。
在宅患者に対して周術期管理を行う場合は、在宅等療養患者専門的口腔衛生処置との関係も確認が必要です。それぞれの算定要件が異なるため、混同しないよう注意が必要です。
以下に主な併算定の可否をまとめます。
| 組み合わせ | 同日算定 | 同月算定 |
|-----------|---------|---------|
| 歯科衛生実地指導料 | ❌ 不可 | ✅ 可(日をずらす) |
| 口腔管理体制強化加算 | ❌ 不可 | ❌ 原則不可 |
| 周術期における抗菌薬処方 | ✅ 可 | ✅ 可 |
| 口腔内細菌検査 | ✅ 可 | ✅ 可 |
「算定できるのに算定していない」という算定漏れも、「算定できないのに算定している」という誤算定と同様に問題です。定期的なレセプトチェックでどちらも防ぐことができます。チェック体制の整備が基本です。
レセプトソフトによっては、算定のコンビネーションチェック機能が搭載されているものもあります。自院のシステムがどこまで自動チェックしているか、一度確認しておくことをおすすめします。
施設基準の届出を済ませても、実際に算定件数が伸びない歯科医院は少なくありません。その最大の原因は「病院側から患者が紹介されてこない」ことです。届出と連携構築は別の話です。
連携を機能させるには、病院側の「がん診療連携拠点病院」や「周術期口腔機能管理チーム」との関係構築が必要です。まずは地域のがん拠点病院が連携歯科医院の登録制度を設けているか確認しましょう。登録制度がある場合、申請することで患者紹介の動線に入ることができます。
実際に連携が機能している歯科医院では、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)や退院支援看護師との関係が重要な役割を果たしています。これらのスタッフが歯科への紹介判断を行うケースが多いためです。MSWへの挨拶は優先度が高いです。
連携先への情報提供(診療情報提供書の送付)も算定要件となっているため、フォーマットの整備と定期的な送付習慣を医院のルールとして確立することが必要です。送付記録はカルテに残します。
算定件数の現実として、厚生労働省の調査データでは周術期等口腔機能管理料の算定を行っている歯科医院のうち、月5件以上を安定して算定している施設は全体の30%程度にとどまるとされています。多くの医院で「届出はしたが実績が少ない」という状況です。
連携が少ない段階でできることは、まず「自院のかかりつけ患者でがん治療中・予定の方」への積極的な声かけです。外から紹介を待つだけでなく、既存患者への対応を入り口にすることで実績を積み上げられます。身近なところから始めるのが現実的です。
参考リンク先:国立がん研究センターが公開している周術期口腔機能管理に関する情報。がん治療における口腔管理の必要性と連携の全体像を確認できます。