縮合型シリコーンゴム印象材の特徴と臨床での使い方

縮合型シリコーンゴム印象材の組成・硬化機構・寸法安定性など、臨床現場で押さえておくべき特徴を徹底解説。付加型との違いや疎水性の注意点も。あなたの型取りは正しく行えていますか?

縮合型シリコーンゴム印象材の特徴と臨床での活用法

縮合型シリコーンゴム印象材は「精度が高いから安心」と思って型取り後に放置すると、1日で約1%収縮して補綴物が合わなくなります。


📋 この記事の3つのポイント
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組成と硬化機構

ポリジメチルシロキサン・カプリル酸スズ・エチルシリケートを主成分とし、縮合重合反応でエチルアルコールを放出しながらゴム状弾性体に硬化する。

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寸法安定性の落とし穴

副産物のエチルアルコールが揮発するため、印象採得後1日放置すると自由収縮量で約1%収縮する。石膏注入は撤去後できるだけ速やかに行うことが原則。

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付加型との比較で見える強みと弱み

温度の影響を受けにくい点は縮合型の強みだが、疎水性が高く口腔内の水分があると細部再現性が低下する点は臨床上の最大の弱点となる。


縮合型シリコーンゴム印象材の組成と硬化機構


縮合型シリコーンゴム印象材は、1950年代後半に歯科用として初めて実用化されたシリコーン系印象材です。その主成分はポリジメチルシロキサン(ジメチルポリシロキサン)エチルシリケート(アルキルシルケート)であり、これに有機金属化合物であるカプリル酸スズを触媒として加えることで硬化反応が始まります。


硬化の仕組みはいわゆる「縮合重合(縮重合)」です。つまり、化学反応の副産物としてエチルアルコールが放出されながら分子間に架橋構造が形成され、最終的にゴム状弾性体へと変化します。この副産物の存在が後述する寸法安定性の問題に直結します。


硬化反応は非可逆性です。一度硬化したら元に戻すことはできません。


室温(室温硬化型・RTV)で反応が進行するのも特徴の一つで、加熱操作が不要な点は臨床現場での取り扱いのしやすさにつながっています。硬化後の印象体はゴム状弾性を持ち、有歯顎・無歯顎を問わず精密印象材として使用できます。流動性の高いインジェクションタイプを使えば歯や歯肉の細部まで精確に型取りが可能なため、補綴治療や矯正治療など幅広い場面で活用されています。






















縮合型シリコーンゴム印象材の組成まとめ
成分 役割
ポリジメチルシロキサン 主成分・ゴム弾性の基材
エチルシリケート(アルキルシルケート) 架橋剤・硬化に関与
カプリル酸スズ 触媒(有機金属化合物)
エチルアルコール(反応副産物) 縮合反応で発生・揮発により収縮を引き起こす


縮合重合が原則です。


参考:縮合型シリコーン印象材の成分・特徴(クインテッセンス出版 歯科辞書キーワード解説)
https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/keyword/38929


縮合型シリコーンゴム印象材の寸法安定性と撤去後の管理

縮合型シリコーンゴム印象材の最も重要な注意点のひとつが、寸法安定性の低さです。硬化反応の副産物であるエチルアルコールが時間とともに揮発するため、印象体は経時的に収縮していきます。具体的には、印象撤去後1日放置した場合、自由収縮量で約1%程度の収縮が生じるという報告があります。


1%と聞くとわずかに思えるかもしれません。しかし歯科補綴の世界では、クラウンやインレーの辺縁誤差は数十マイクロメートル(0.01〜0.05mm)単位が問題になります。たとえば全長10mmの支台歯であれば1%収縮で0.1mmのズレが生じるため、補綴物の適合不良に直結します。


これは見えないところで起きる問題です。


この収縮を防ぐためには、印象撤去後できるだけ速やかに石膏(歯型材)を注入することが不可欠です。印象体を技工所に発送する場合、縮合型ではなく付加型シリコーン印象材を選択する、あるいは撤去後すぐに院内で模型を製作するといった工夫が求められます。付加型シリコーンでは反応副産物がほぼ発生しないため、寸法安定性が飛躍的に優れており、数日経過後の石膏注入でも精度を保ちやすい点が大きな違いです。


一方で縮合型は、付加型と比較して温度の影響を受けにくいという特徴があります。付加型では温度が高くなると硬化が著しく早まり操作時間が短くなるなど、温度管理が重要な課題になりますが、縮合型はその点での臨床的な扱いやすさがあります。


寸法安定性が条件です。


参考:シリコーン印象材の経時的寸法安定性と石膏注入時期の影響(デンタルダイヤモンド誌)
https://dental-diamond.jp/pages/デンタルダイヤモンド/徹底追及どっちがどっち?/8661/


縮合型シリコーンゴム印象材の疎水性と細部再現性の関係

縮合型シリコーンゴム印象材には、疎水性が高いという物性的な弱点があります。シリコーン系の素材はもともと水をはじく性質(疎水性)を持っており、口腔内に水分(唾液や歯肉溝滲出液)が残った状態で印象採得を行うと、印象材が水分の上に乗ってしまい歯肉縁下部の細部再現性が低下したり、表面に気泡が混入したりするリスクが高まります。


特に歯肉縁下マージンの印象採得時には、この疎水性が致命的な誤差につながることがあります。補綴物のマージン部の適合精度は治療の成否に直結するため、縮合型シリコーンを使用する際は印象採得前の徹底的な防湿・乾燥が不可欠です。


水分の管理が鍵です。


これに対し、付加型シリコーン印象材のなかには親水性(ハイドロフィリック)処理が施された製品も存在します。GC社や松風などのメーカーから「超親水性ハイブリッドシリコーン印象材」として販売されており、歯肉縁下部への流入性や石膏とのなじみ(濡れ性)が格段に向上しています。縮合型を使用せざるを得ない場面では、乾燥に細心の注意を払いながら使用することが前提となります。


また、印象採得のテクニックとして積層法(連合印象法)が有効です。流動性の高いインジェクションタイプを支台歯に直接注入し、その上からパテタイプ(トレー材)を圧接する方法で、歯や歯肉の細部まで精確に印象を採ることができます。印象材の気泡混入や変形を防ぐためにも、操作時間内に確実に圧接を完了させることが重要です。


参考:GC社による印象材の特性・使い分け解説(歯科材料ハンドブック)
https://www.gcdental.co.jp/member/school/images/pdf/handbook2018_01.pdf


縮合型と付加型シリコーンゴム印象材の違いを徹底比較

縮合型と付加型のシリコーンゴム印象材は、一見すると似たような材料に見えますが、硬化機構・副産物の有無・寸法安定性・温度感受性・コストなどの面で明確な違いがあります。















































縮合型 vs 付加型 シリコーンゴム印象材 比較表
項目 縮合型(縮重合型) 付加型(重付加型)
主成分 ポリジメチルシロキサン+カプリル酸スズ ビニルポリシロキサン+白金触媒
硬化機構 縮合重合(エチルアルコール放出) 付加重合(副産物なし)
反応副産物 エチルアルコール(揮発あり) ほぼなし
寸法安定性 やや劣る(1日で約1%収縮) 非常に優れる(各種弾性印象材中で最小)
温度感受性 比較的受けにくい 縮合型より強く受ける
疎水性・親水性 疎水性(水に馴染みにくい) 親水性タイプも存在
永久ひずみ 比較的小さい(精密印象に適する) 各種弾性印象材中で最小
コスト 比較的リーズナブル 縮合型よりコスト高


永久ひずみが小さいことも縮合型の評価ポイントです。アンダーカットのある部位から印象を撤去する際、弾性体が一時的にひずんでも撤去後に回復する性質(弾性ひずみ)と、ひずみが戻らずに残る性質(永久ひずみ)の両方が印象精度に影響します。縮合型シリコーンは永久ひずみが比較的小さいため、複雑な口腔内形態の精密印象材としての実績を長年積んできました。


結論は使い分けの理解が重要です。


付加型が高精度・長期安定性・親水性の面で優れている一方、縮合型は温度の影響を受けにくく、比較的低コストという長所があります。臨床現場では両者の特性を正確に理解したうえで、状況に応じた選択が求められます。


参考:付加型シリコーン印象材の特徴と寸法安定性(OralStudio歯科辞書)
https://www.oralstudio.net/dictionary/detail/5037


縮合型シリコーンゴム印象材の臨床での使用法と独自視点:「型取り後の時間管理」こそ精度を左右する

縮合型シリコーンゴム印象材を正確に扱うためには、印象採得後の時間管理が特に重要です。ここでは、多くの参考書や解説記事では軽く触れるにとどまる「型取り後のタイムライン管理」に焦点を当てます。


まず、印象採得の手順として「積層1回法(シングルステップ法)」と「積層2回法(ツーステップ法)」の2種類があります。



  • 積層1回法(シングルステップ法):パテ(トレー材)とインジェクション(流動材)を同時に練和し、インジェクションを支台歯に注入後すぐにパテを圧接する方法。操作時間内に圧接を終えることが絶対条件であり、操作時間を過ぎると印象内部に歪みが生じて寸法誤差につながる。

  • 積層2回法(ツーステップ法):まずパテで概形印象を採り、スペーサー(約1mmのワックスやガーゼ)を使ってインジェクション用の空間を確保したうえで精密印象を採る方法。パテが十分硬化してから精密印象を行うことが必須。硬化が不十分なまま進めると歪みが生じる。


重要なのは印象撤去後の流れです。縮合型では、前述のとおり撤去後の時間経過とともに寸法収縮が進みます。理想的には撤去後速やかに石膏を注入すること、どうしても時間が空く場合は密封保存することで収縮を最小限に抑えることが求められます。


これは時間との勝負です。


また、積層2回法でよく起きるミスとして「スペーサーを使わずにパテの内面を削刀で削る」という方法があります。この方法は均一な厚みが確保できず、最終的な印象の精度に悪影響を与えます。手間がかかっても1mmのスペーサーを確実に使う方が、精度の高い補綴物製作につながります。


縮合型の場合、技工所への発送前に院内で模型まで製作しておくことを強く推奨する歯科関係者も多くいます。付加型に比べてコストが低い縮合型ですが、「発送して技工所で石膏を注ぐ」という流れでは、収縮による誤差が補綴物の再製リスクを高める可能性があります。コストを取るか精度を取るかのトレードオフを、各医院の運用ルールとして明確にしておくことが実務上の重要ポイントです。


石膏注入のタイミングが条件です。


なお、縮合型シリコーンゴム印象材はポリサルファイドゴム印象材(チオコールラバー)と混同されることがありますが、両者は全く別の材料です。ポリサルファイドは主成分・硬化機構・臭気(特有の不快臭)が異なるため、臨床選択の際には注意が必要です。


参考:印象採得の術式と連合印象の注意点(長崎大学歯学部 大澤雅博 先生 デンタルダイヤモンド掲載記事)
https://dental-diamond.jp/pages/デンタルダイヤモンド/徹底追及どっちがどっち?/8661/




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